2026年(令和8年)年末調整の変更点|基礎控除・給与所得控除・扶養要件を税理士が解説
こんばんは!代表の安田です。
2026年の年末調整は、例年より注意が必要です。
令和8年度税制改正により、所得税について、
基礎控除
給与所得控除
扶養親族等の所得要件
生命保険料控除
などが見直されました。
しかも、これらの改正の多くは2026年12月1日以後に支払う給与や、同日以後に行なう年末調整から適用されます。
つまり、ここ2025年と同じく、2026年11月までは従来の源泉徴収→12月の年末調整では改正後の制度で年間税額を再計算という少し特殊な計算になります。
そのため、会社の給与担当者は年末になってから対応するのではなく、9月頃から従業員への案内や申告書回収の準備を進めておくことが重要です。
2026年の年末調整で特に重要な改正
主な改正を整理すると、次のとおりです。
改正項目 | 主な変更 |
基礎控除 | 控除額を引上げ |
給与所得控除 | 最低保障額を65万円から74万円へ引上げ |
扶養親族等 | 合計所得金額の要件を引上げ |
生命保険料控除 | 23歳未満の扶養親族がいる場合の一般生命保険料控除を拡充 |
通勤手当 | 一部の非課税限度額を引上げ |
食事の現物支給 | 非課税限度額を引上げ |
退職所得 | 一部ルール・源泉徴収票の提出範囲を変更 |
以下、特に年末調整実務へ影響する項目を確認します。
1.基礎控除が引き上げられる
基礎控除については、合計所得金額2,350万円以下の人について、基礎控除の本体部分が、58万円 → 62万円へ4万円引き上げられます。
さらに、一定の所得水準以下の人については加算措置が設けられています。
特に2026年・2027年については、合計所得金額489万円以下の場合などに、追加の控除が設けられています。
そのため、2026年の年末調整では、従業員本人の年間合計所得金額の見積りがこれまで以上に重要になります。
<12月賞与の金額も早めに確定した方がよい>
基礎控除額は本人の合計所得金額によって変わります。
そのため12月賞与を支給する企業について、可能であれば年末調整関係書類の提出期限より前に賞与額を従業員へ知らせることが望ましいと言えます。
例えば、「11月時点では基礎控除額を104万円と見込んでいたが、12月賞与によって所得区分が変わった」というケースでは、基礎控除申告書の記載額にも影響する可能性があります。
2.給与所得控除の最低保障額が74万円へ
給与所得控除についても改正されます。
最低保障額が、65万円 → 74万円へ引き上げられました。
特に給与収入が比較的少ない従業員ほど影響があります。
<主な変更>
項目 | 改正前 | 2026・2027年 |
給与所得控除の最低保障額 | 65万円 | 74万円 |
一方、給与収入220万円超の場合の給与所得控除額には改正がありません。
3.扶養親族の所得要件も引上げ
基礎控除・給与所得控除の変更に伴い、扶養親族等の所得要件も変わります。
例えば、扶養親族や同一生計配偶者については、合計所得金額58万円以下 → 62万円以下
へ引き上げられます。
給与収入だけの場合の目安では、123万円以下 → 136万円以下となります。
<主な所得要件>
区分 | 改正前 | 改正後 |
扶養親族・同一生計配偶者 | 58万円以下 | 62万円以下 |
給与収入だけの場合 | 123万円以下 | 136万円以下 |
特定親族 | 58万円超123万円以下 | 62万円超123万円以下 |
配偶者特別控除の対象配偶者 | 58万円超133万円以下 | 62万円超133万円以下 |
勤労学生 | 85万円以下 | 89万円以下 |
給与収入ベースでも扶養判定の境界が変わるため、これまで扶養対象外だった家族が、新たに対象となるケースがあります。
2026年11月までは新しい扶養人数を使わない
ここは非常に重要です。
今回の改正によって12月から新たに扶養親族に該当する人がいても、2026年11月30日以前に支払う給与の源泉徴収では、その人を扶養親族等の数に含めません。
2026年11月までは従来のルールを使います。
例えば従業員の子の給与収入が年間130万円の場合、
改正前:123万円超なので扶養対象外
改正後:136万円以下なので扶養対象になり得る
としても、11月給与までは扶養人数に含めず、12月の年末調整で改正後の制度を反映します。
新たに扶養対象になった場合は申告書を再提出
改正によって新たに扶養控除等の対象となる親族がいる場合には、従業員から「扶養控除等(異動)申告書」を再提出してもらう必要があります。
「異動月日及び事由」欄に、「令和8年12月1日改正」などと記載する方法が考えられます。
原則的な提出期限は12月1日以後最初の給与支給日前ですが、年末調整までに提出されれば、その内容を反映して年末調整できます。
4.23歳未満の扶養親族がいる場合の生命保険料控除を拡充
2026年分からは、23歳未満の扶養親族を有する場合の新生命保険料に係る一般生命保険料控除も拡充されます。
年間の新生命保険料に応じた控除額は次のようになります。
年間の新生命保険料 | 控除額 |
30,000円以下 | 支払保険料全額 |
30,000円超60,000円以下 | 保険料×1/2+15,000円 |
60,000円超120,000円以下 | 保険料×1/4+30,000円 |
120,000円超 | 60,000円 |
従来の一般生命保険料控除の上限4万円から、一定の場合には6万円まで拡大します。
ただし、一般生命保険料控除・介護医療保険料控除・個人年金保険料控除を合わせた全体の上限は12万円のままです。
保険料控除申告書の様式も変更
2026年分の保険料控除申告書には、「年齢23歳未満の扶養親族の有無」を記載する欄などが追加されています。
また、対象となる「23歳未満の扶養親族」は、合計所得金額62万円以下、給与収入のみであれば136万円以下の人です。
16歳未満のいわゆる年少扶養親族も含まれます。
共働き夫婦なら双方が特例を使える場合も
興味深い点として、この生命保険料控除の特例については、同じ23歳未満の子について、夫婦双方が特例を利用することも可能とされています。
「1人の扶養親族について世帯内の所得者1人だけ」という制限は設けられていないため、共働き夫婦に23歳未満の扶養親族が1人いる場合でも、夫婦双方が要件を満たせば適用可能とされています。
5.通勤手当の非課税限度額も変更
2026年4月1日以後に支払われる通勤手当についても変更があります。
自動車・自転車等で通勤する人について、特に片道65km以上の区分が細分化され、非課税限度額が引き上げられています。
例えば、
片道通勤距離 | 月額非課税限度額 |
55km以上65km未満 | 38,700円 |
65km以上75km未満 | 45,700円 |
75km以上85km未満 | 52,700円 |
85km以上95km未満 | 59,600円 |
95km以上 | 66,400円 |
さらに、一定の駐車場等を利用している場合には、距離区分の非課税額に月5,000円を上限として駐車場料金を加算できる制度も設けられました。
6.会社が支給する食事の非課税限度額も引上げ
食事の現物支給についても、2026年4月1日以後の支給分から非課税限度額が変更されています。
<改正内容>
項目 | 改正前 | 改正後 |
食事の現物支給 | 月3,500円 | 月7,500円 |
深夜勤務時の夜食代に代える金銭 | 1回300円以下 | 1回650円以下 |
年末調整では、これら本来非課税となる金額を誤って給与収入に含めていないか確認する必要があります。
2026年年末調整の実務スケジュール
制度変更の周知期間を考えると、9月頃から準備することが望ましいと言えます。
実務上は、次のようなスケジュールが考えられます。
時期 | 主な対応 |
9月 | 改正内容を整理し、従業員へ周知 |
10月 | 扶養家族の所得見込み等を確認 |
10~11月 | 年末調整申告書を配布・回収 |
11月 | 12月賞与額の早期確定を検討 |
12月 | 改正後ルールで年末調整 |
2027年1月 | 新しい源泉徴収税額表へ切替 |
なお、改正後の申告書については、2026年11月30日以前から従業員から提出を受けても問題ないとされています。
2026年は年末調整の「還付額」が増える可能性
2026年は、年末調整で還付される所得税が例年より増える可能性があります。
理由は、11月までの給与については改正前の源泉徴収税額表で税金を徴収している一方、年末調整では、
基礎控除の引上げ
給与所得控除の引上げ
などを反映した年間税額を計算するためです。
資料でも、例年より年末調整の過納額が多くなることが想定されるとされています。
会社側では還付資金にも注意
年末調整による過納額は、原則として12月分などの源泉所得税から差し引いて従業員へ還付します。源泉税だけでは還付しきれない場合には、その後の源泉税から順次差し引くことになります。
さらに、還付発生日の翌月から2か月経過しても還付しきれない見込みの場合は、所定の還付請求書を税務署へ提出する方法もあります。
従業員数の多い企業では、12月の給与計算前に還付額の概算を確認しておくとよいでしょう。
2027年1月から源泉徴収税額表も変更
2026年11月までの毎月の源泉徴収には今回の基礎控除等の改正は反映されません。
一方、2027年1月1日以後に支払う給与からは、「令和9年分 源泉徴収税額表」を利用します。
したがって給与計算システムでは、
2026年12月:年末調整対応
2027年1月:源泉徴収税額表の切替え
という2段階の対応が必要です。
2027年1月から源泉徴収票の税務署提出も簡素化
2027年1月以後に提出する2026年分の給与所得の源泉徴収票については、市区町村へ給与支払報告書を提出すれば、原則として税務署へ源泉徴収票を別途提出する必要がなくなる「みなし提出」が始まります。
ただし、従業員本人への源泉徴収票の交付は引き続き必要です。
退職所得の源泉徴収票は提出対象が拡大
退職所得についても注意が必要です。
従来、税務署へ提出する「退職所得の源泉徴収票」は主として法人役員について必要でした。
2026年分からは、すべての受給者について税務署へ提出する取扱いに変更されています。
2026年中に退職者がいる企業では見落とさないよう注意しましょう。
<経理・給与担当者向けチェックリスト>
確認事項 | チェック |
2026年の改正内容を従業員へ周知した | □ |
扶養親族の所得要件を新基準で確認した | □ |
新たに扶養対象となる人を確認した | □ |
扶養控除等申告書の再提出を依頼した | □ |
23歳未満扶養親族の生命保険料控除を確認した | □ |
通勤手当の非課税額を確認した | □ |
食事支給の非課税額を確認した | □ |
改正後の給与所得控除後の給与等の金額の表を使用する | □ |
年末調整の還付額を見積もった | □ |
2027年1月の源泉徴収税額表更新を準備した | □ |
よくある疑問
Q. 2026年1月から毎月の源泉所得税も新制度で計算するのですか?
A. いいえ。2026年11月までに支払う給与の源泉徴収事務には変更がないとされています。12月の年末調整で改正後の基礎控除・給与所得控除等を反映します。
Q. 年末調整書類は12月1日まで従業員から受け取れませんか?
A. 受け取れます。12月1日以後に適用される改正を反映した申告書であっても、11月30日以前から提出を受けて差し支えないとされています。
Q. 子の給与が130万円ですが、扶養対象になりますか?
A. 2026年分の改正後は、扶養親族の所得要件は合計所得金額62万円以下、給与収入のみの場合は136万円以下とされています。したがって、年齢などその他の要件を満たせば、対象となる可能性があります。
Q. 2026年の年末調整では還付額が増えますか?
A. 人によりますが、11月まで旧税額表で源泉徴収し、年末調整で控除拡大を反映するため、例年より過納額が大きくなることが想定されています。
まとめ
2026年の年末調整では、令和8年度税制改正による複数の変更が同時に適用されます。
特に重要なのは次の点です。
基礎控除を引上げ
給与所得控除の最低保障額を65万円から74万円へ引上げ
扶養親族等の所得要件を58万円から62万円へ引上げ
給与収入だけの場合の扶養基準は123万円から136万円へ拡大
23歳未満の扶養親族がいる場合の一般生命保険料控除を拡充
通勤手当・食事支給の非課税限度額も変更
2026年11月までは従来の源泉徴収を継続
2026年12月の年末調整で新制度を反映
年末調整の還付額が例年より増える可能性
2027年1月から新しい源泉徴収税額表を使用
2026年の年末調整は、「12月になったら申告書を集めればよい」という例年型の対応では遅れる可能性があります。
給与担当者は9月頃から改正内容を従業員へ案内し、扶養家族の所得見込みや生命保険料控除、12月賞与等を確認できる体制を整えておくとよいでしょう。
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【この記事の執筆者】
安田 亮(公認会計士・税理士)
安田亮公認会計士・税理士事務所 代表
京都大学経済学部在学中に公認会計士試験に合格。有限責任 あずさ監査法人、株式会社神戸製鋼所での実務経験を経て、2018年に神戸市で独立。
現在は、中小企業から上場企業に対する税務顧問、決算支援、税効果会計、連結決算、新リース会計基準への対応、組織再編、補助金・助成金に関する支援などを行なっています。また、金融機関や大手企業が運営する税務・会計・経営分野のWebメディアにおいて、記事の執筆・監修にも携わっています。
事務所ブログでは、税制改正や会計基準、経営実務に関する情報を、専門用語をできるだけかみ砕き、経営者や経理担当者の方に役立つ形で解説しています。






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