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令和8年熊本地震で相続放棄の期限が延長|熟慮期間は2027年3月31日まで?税理士が解説

執筆者の写真: 安田亮
安田亮
4 分前
読了時間: 9分

こんばんは!代表の安田です。


2026年7月28日に発生した令和8年熊本地震について、被災者に対するさまざまな特例措置が設けられています。


税務面では国税の申告・納付期限等について一定の延長措置がありますが、相続についても重要な特例があります。


それが、相続放棄や限定承認を行うかどうかを判断する「熟慮期間」の延長です。

一定の要件を満たす相続人については、通常3か月とされている熟慮期間が、2027年3月31日まで延長されています。


ただし、熊本地震に関係するすべての相続人が自動的に対象となるわけではありません。


本日は、相続放棄の熟慮期間とは何か、令和8年熊本地震による延長措置の対象者、対象区域、複数の相続人がいる場合の注意点について解説します。


相続放棄の「熟慮期間」とは?

人が亡くなると、相続人は被相続人の財産を相続することになります。


ただし、相続財産には預金や不動産などのプラスの財産だけでなく、借入金などの債務が含まれている場合もあります。


そのため、相続人は状況に応じて、

  • 相続する

  • 相続放棄する

  • 限定承認する

といった選択を行なうことになります。

相続放棄または限定承認をする場合、原則として、「自己のために相続の開始があったことを知った時」から3か月以内に家庭裁判所で手続を行なう必要があります。


この3か月間を「熟慮期間」と呼びます。


相続方法を整理

選択肢

概要

通常の相続

相続財産や債務を引き継ぐ

相続放棄

相続人としての立場を放棄する

限定承認

相続した財産の範囲内で債務等を負担する

相続放棄や限定承認を検討するときは、熟慮期間を過ぎないことが非常に重要です。


通常の熟慮期間は3か月

例えば、相続人が2026年8月1日に自分が相続人となったことを知った場合、通常はその時点から3か月という期間を意識することになります。


しかし、大規模な災害が発生すると、

  • 自宅が被災した

  • 被相続人の財産を確認できない

  • 必要書類を集められない

  • 相続人同士で連絡を取れない

といった事情から、通常の期間内に相続放棄等を判断することが難しい場合があります。


令和8年熊本地震では、こうした事情を踏まえ、一定の相続人について熟慮期間を延長する措置が設けられました。


令和8年熊本地震では2027年3月31日まで延長

2026年8月7日に、「令和8年熊本地震による災害についての特定非常災害及びこれに対し適用すべき措置の指定に関する政令」が公布・施行されました。


これにより、一定の相続人については、相続放棄・限定承認に係る熟慮期間が、2027年3月31日まで延長されています。


誰でも延長されるわけではない

今回の特例で最も重要なのが対象者です。

地震が発生した2026年7月28日に、災害救助法の適用を受けた対象区域に住所を有していた相続人について、熟慮期間の延長対象になるとされています。


<特例のポイント>

項目

内容

災害

令和8年熊本地震

災害発生日

2026年7月28日

対象者

同日時点で対象区域に住所を有していた相続人

通常の熟慮期間

原則3か月

特例後

2027年3月31日まで延長

つまり、被相続人が熊本県に住んでいたかどうかではなく、相続人自身の住所が重要になります。


対象区域は10市10町1村

対象区域について、熊本市、八代市、氷川町、西原村など10市10町1村です。

具体的な対象自治体については、令和8年熊本地震に係る災害救助法の適用自治体として確認する必要があります。


住民票だけで住所を判断するわけではない

今回、実務上特に注意したいのが「住所」の判定方法です。

対象区域に住所を有していたかどうかは、住民票だけで機械的に判断するわけではありません。


例えば、

  • 勤務証明書

  • 公共料金の支払記録

などの資料を踏まえて判断するとされています。


<住所確認に使われ得る資料>

資料

確認内容

住民票

登録上の住所

勤務証明書

実際の生活拠点を確認する材料

公共料金の支払記録

電気・ガス等の利用状況を確認する材料

したがって、住民票が対象地域にないから絶対に特例対象外または、住民票が対象地域だから必ず対象と単純には判断できない点に注意が必要です。


相続人が複数いる場合は「人ごと」に判定する

もう一つ重要なのが、複数相続人がいるケースです。


例えば、父が亡くなり、相続人が、

  • 長男:熊本市在住

  • 次男:福岡市在住

  • 長女:東京都在住

だったとします。


この場合、熊本市が対象区域であり、長男が2026年7月28日時点で熊本市に住所を有していたとしても、次男や長女まで自動的に熟慮期間が延長されるわけではありません。


複数の相続人の一部だけが対象区域に住所を有していた場合でも、特例が適用されるのはその本人だけとされています。


<例>

相続人

2026年7月28日の住所

延長特例

長男

対象区域内

対象となり得る

次男

対象区域外

原則対象外

長女

対象区域外

原則対象外

同じ相続について、相続人ごとに熟慮期間が異なる可能性があるということです。


「被相続人が被災地域に住んでいた」だけでは判断できない

相続実務では、被相続人の住所地を中心に考えがちです。


しかし今回の特例については、資料上、2026年7月28日時点で相続人が対象区域に住所を有していたかが重要です。


したがって、

  • 被相続人は熊本県内

  • 相続人は東京在住

という場合には、東京在住の相続人について当然に特例が適用されるわけではありません。


反対に、被相続人が対象区域外であっても、相続人自身が対象区域に住所を有していた場合には、今回の特例との関係を確認する必要があります。


相続税の申告期限と熟慮期間は別の制度

熊本地震を受けて国税の申告・納付等についても期間延長措置が設けられていることに触れています。


ただし、

  • 相続税の申告・納付期限

  • 相続放棄・限定承認の熟慮期間

は別の制度です。


<整理>

手続

主な制度

相続税の申告・納付

税法上の手続

相続放棄

民法・家庭裁判所での手続

限定承認

民法・家庭裁判所での手続

熟慮期間

相続放棄・限定承認を判断する期間

「税務署の期限が延長されたから相続放棄も同じ期限になる」と考えるのではなく、それぞれの措置を確認する必要があります。


被災後に相続が発生した場合に確認したいこと

令和8年熊本地震に関係する相続では、まず次の事項を確認するとよいでしょう。

チェック項目

確認内容

相続開始日

被相続人が亡くなった日

相続開始を知った日

通常の熟慮期間の起点

相続人

誰が相続人となるか

2026年7月28日の住所

各相続人について確認

対象区域

災害救助法適用区域か

住所の証拠

住民票・勤務証明・公共料金記録等

相続財産

プラス・マイナス財産を確認

相続放棄

必要性を検討

限定承認

必要性を検討

熟慮期間

通常期間か特例期間か


相続放棄を検討するなら債務の調査を早めに

被災によって書類が失われている場合、被相続人の財産・債務の全体像を把握するまで時間がかかることがあります。


相続放棄を検討するときには、

  • 預貯金

  • 不動産

  • 借入金

  • 保証債務

  • 未払金

などを確認し、相続することが適切かを判断する必要があります。

今回の特例は、その判断時間を一定の被災者について確保するためのものと位置付けられます。


「2027年3月31日までだから急がなくてよい」とは限らない

特例対象者であれば熟慮期間が延長されますが、相続放棄や限定承認の判断には相続財産の調査が必要です。


また、相続人ごとに特例の適用状況が異なる可能性があります。

そのため、3月末まで延長されたから、手続は後回しでよいと考えるのではなく、早めに、

  1. 自分が特例対象か

  2. 相続財産・債務はいくらか

  3. 他の相続人の熟慮期間はどうなっているか

を確認した方がよいでしょう。


よくある疑問

Q. 令和8年熊本地震で相続放棄の期限はいつまで延長されますか?

A.一定の要件を満たす相続人について、熟慮期間が2027年3月31日まで延長されています。


Q. 熊本県の相続なら全員が対象ですか?

A.いいえ。2026年7月28日時点で災害救助法の対象区域に住所を有していた相続人が対象とされています。


Q. 住民票が対象区域にあれば必ず特例を使えますか?

A. 住所の判定は住民票だけで決まるのではなく、勤務証明書や公共料金の支払記録などを踏まえて判断するとされています。


Q. 兄弟の一人が熊本市在住なら、相続人全員の期限が延長されますか?

A. 延長されません。特例は相続人ごとに判定し、災害発生日に対象区域に住所を有していた相続人だけが対象となります。


まとめ

令和8年熊本地震を受け、相続放棄・限定承認に係る「熟慮期間」について特例措置が設けられています。


通常、相続放棄や限定承認は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に手続を行なう必要があります。


しかし今回の特例では、2026年7月28日時点で災害救助法の対象区域に住所を有していた一定の相続人について、2027年3月31日まで熟慮期間が延長されています。


特に押さえておきたいのは、

  • 対象者は相続人自身の住所で判断する

  • 対象区域は災害救助法の適用地域

  • 住所は住民票だけでなく実態を踏まえて判断される

  • 相続人が複数いても全員が自動的に延長されるわけではない

  • 特例は対象区域に住所を有していた相続人ごとに適用される

という点です。


被災地域に関係する相続では、相続税の申告期限だけでなく、相続放棄・限定承認の熟慮期間についても確認することが重要です。



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【この記事の執筆者】

安田 亮(公認会計士・税理士)

安田亮公認会計士・税理士事務所 代表

京都大学経済学部在学中に公認会計士試験に合格。有限責任 あずさ監査法人、株式会社神戸製鋼所での実務経験を経て、2018年に神戸市で独立。

現在は、中小企業から上場企業に対する税務顧問、決算支援、税効果会計、連結決算、新リース会計基準への対応、組織再編、補助金・助成金に関する支援などを行なっています。また、金融機関や大手企業が運営する税務・会計・経営分野のWebメディアにおいて、記事の執筆・監修にも携わっています。

事務所ブログでは、税制改正や会計基準、経営実務に関する情報を、専門用語をできるだけかみ砕き、経営者や経理担当者の方に役立つ形で解説しています。


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