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東証が投資単位50万円以上の上場会社に引下げを要請|株式分割と企業実務への影響

執筆者の写真: 安田亮
安田亮
4 時間前
読了時間: 11分

こんにちは!代表の安田です。


東京証券取引所は2026年7月28日、投資単位が50万円以上となっている上場会社に対し、投資単位の引下げに向けて株式分割を検討するよう、改めて要請しました。


東証は個人投資家が投資しやすい環境を整備するため、上場会社の望ましい投資単位を「50万円未満」としています。一方、株価上昇などの影響により、2026年6月末時点でも投資単位が50万円以上の上場会社が約270社残っています。


今回の要請を受け、該当する上場会社では、単に50万円未満にするかどうかだけでなく、個人投資家のニーズを踏まえて10万円台まで引き下げるべきか、株式分割の比率をどのように設定するかなどを検討することになりそうです。


本記事では、投資単位の意味、東証が引下げを要請した背景、株式分割の仕組み、上場会社が検討すべき実務上のポイントについて、公認会計士が解説します。


東証が投資単位の引下げを改めて要請

東証は2026年7月28日、投資単位が50万円以上の上場会社の代表者に対し、株式分割による投資単位の引下げを改めて検討するよう要請しました。


東証は2022年10月にも同様の要請を行なっています。その後、2026年6月末までに、延べ約760社が株式分割を実施しました。


しかし、最近の株価上昇などによって、株式分割をしていない会社だけでなく、過去に分割した会社でも投資単位が再び高くなるケースが考えられます。その結果、2026年6月末時点で投資単位が50万円以上の会社は約270社となっています。


東証の公表資料によれば、2026年3月末時点では上場会社の93.4%が投資単位50万円未満となっています。今回の要請は、残る高投資単位会社に対して、改めて対応を促すものといえます。


<今回の公表内容>

項目

内容

公表日

2026年7月28日

要請の対象

投資単位が50万円以上の上場会社

主な要請内容

株式分割による投資単位引下げの検討

2022年以降の株式分割

延べ約760社

投資単位50万円以上の会社

約270社

東証が示す望ましい水準

50万円未満

個人投資家が期待する水準

10万円程度・10万円台

今後の検討

少額投資に関するワーキング・グループを設置

投資単位とは

投資単位とは、株式市場でその会社の株式に投資するために必要となる最低投資金額です。

現在、東証に上場する内国株式の売買単位は原則として100株に統一されています。そのため、投資単位は次の計算式で求められます。


投資単位の計算式

投資単位 = 1株当たりの株価 × 100株

例えば、株価が6,000円である会社の場合、最低投資金額は次のようになります。

6,000円 × 100株 = 60万円

この会社の投資単位は60万円となるため、東証が望ましいとしている50万円未満の水準を上回ります。


投資単位は、会社の時価総額や企業価値を示すものではありません。同じ企業価値であっても、発行済株式数や株式分割の実施状況によって、1株当たりの株価や投資単位は変わります。


投資単位50万円未満は義務なのか

東証は、上場内国会社に対し、投資単位が50万円未満となるよう、その水準への移行と維持に努めることを求めています。


ただし、投資単位が50万円以上になったからといって、直ちに株式分割が強制されるわけではありません。


50万円未満への移行は、上場規程上の「望まれる事項」として位置付けられています。一方、投資単位が50万円以上の上場会社には、事業年度終了後3か月以内に、投資単位の引下げに関する考え方や方針などを開示する義務があります。


<50万円以上となった場合の整理>

項目

取扱い

株式分割の実施

直ちに義務付けられるわけではない

50万円未満への移行・維持

上場会社に努力が求められる

引下げ方針等の開示

原則として必要

分割を決定し50万円未満となる見込みの場合

分割の適時開示を行い、別途の方針開示が不要となる場合がある

したがって、該当会社は「分割しない」という判断をすることもできますが、その場合には、投資単位の引下げに対する会社の考え方や、今後の方針を投資家に説明する必要があります。


なぜ投資単位の引下げが求められるのか

投資単位が高い会社では、業績や将来性に関心がある個人投資家でも、まとまった資金がなければ株式を購入できません。


例えば、最低投資金額が100万円であれば、投資資金が100万円の個人投資家は、その会社の株式だけで資金の大部分を使うことになります。複数銘柄に分散して投資することも難しくなります。


投資単位を引き下げれば、より少ない資金で株式を購入できるようになります。東証は、個人投資家を含む幅広い投資者の市場参加を促し、株式市場の活性化や直接金融の拡大につなげる観点から、投資単位の引下げを推進しています。


【図解】投資単位を引き下げる狙い


ただし、株式分割を実施すれば必ず株価が上昇したり、売買高が増えたりするわけではありません。企業価値を高めるためには、業績の向上、適切な資本政策、継続的なIR活動なども必要です。


個人投資家は10万円台への引下げを期待

東証が2025年4月にまとめた「少額投資の在り方に関する勉強会」の報告書では、個人投資家が求める投資単位は10万円程度であると整理されました。


2026年6月末までの1年間に株式分割を実施した上場会社のうち、約7割は、分割後の投資単位が10万円台となっています。


このため、上場会社が株式分割を検討する際には、単に「50万円を少し下回ればよい」と考えるのではなく、個人投資家のニーズを踏まえて10万円台まで引き下げる選択肢も検討対象になります。東証も、個人投資家が求める水準を参考に株式分割を検討するよう上場会社に促しています。


<投資単位別の購入しやすさのイメージ>

投資単位

個人投資家から見た特徴

100万円以上

投資できる人が限定されやすい

50万円以上100万円未満

東証の望ましい水準を上回る

20万円台~40万円台

従来より購入しやすいが、一定の資金が必要

10万円台

個人投資家が期待する水準に近い

10万円未満

少額から購入しやすい一方、株主管理負担等も考慮が必要


株式分割で投資単位はどのように変わるのか

投資単位を引き下げる一般的な方法が株式分割です。

株式分割とは、既存の1株を2株、5株、10株などに分割する手続です。

例えば、株価6,000円の会社が1株を5株に分割した場合、理論上の株価は5分の1の1,200円となります。


株式分割によって1株当たりの株価は低下しますが、その分だけ保有株式数が増加します。そのため、理論上、既存株主が保有する株式全体の実質的価値は変わりません。


<株式分割前後の比較>

項目

分割前

1対5の分割後

1株当たりの株価

6,000円

1,200円

売買単位

100株

100株

最低投資金額

60万円

12万円

100株保有者の株式数

100株

500株

保有株式の理論上の価値

60万円

60万円


株式分割によって期待される効果

株式分割による投資単位の引下げには、次のような効果が期待されます。


  • 個人投資家が購入しやすくなる

最低投資金額が下がれば、これまで資金面から購入を見送っていた個人投資家も株式を購入しやすくなります。

特に、新NISAなどを利用して複数の個別銘柄へ分散投資したい人にとって、投資単位の低さは銘柄選択の重要な要素となり得ます。


  • 株主数の増加が期待できる

購入のハードルが下がれば、株主数が増加する可能性があります。

個人株主を増やすことをIR・資本政策上の目標としている会社にとっては、株式分割が有力な選択肢になります。


  • 株式の流動性向上が期待できる

取引に参加できる投資家が増えることで、売買高や流動性が高まる可能性があります。

ただし、流動性は会社の知名度、業績、時価総額、浮動株比率、市場環境などにも左右されます。株式分割だけで必ず改善するものではありません。


  • IR上のメッセージになる

投資単位を引き下げることは、個人投資家を重視する会社の姿勢を示すメッセージにもなります。

分割の目的や今後の株主還元方針を丁寧に説明すれば、会社への関心を高めるきっかけになる可能性があります。


上場会社が株式分割を検討する際の注意点

投資単位を引き下げればメリットだけが生じるわけではありません。

株式分割を検討する上場会社は、次の事項を総合的に判断する必要があります。


1.適切な分割比率を検討する

分割後の投資単位を、40万円台、20万円台、10万円台のどの水準にするかによって、必要な分割比率が変わります。現在の株価だけを前提にすると、分割後に株価が上昇し、短期間で再び投資単位が高くなる可能性もあります。

一方、分割比率を過度に大きくすると、1株当たりの株価が極端に低くなることも考えられます。会社は、次の要素を踏まえて分割比率を検討することが重要です。

  • 現在の株価と投資単位

  • 今後想定される株価水準

  • 個人投資家が購入しやすい金額

  • 同業他社の投資単位

  • 株主数や売買高の状況

  • 1株当たり配当金の分かりやすさ


2.株主管理コストへの影響を確認する

株式分割により個人株主が増加すれば、株主名簿管理、株主総会関係書類の発送、配当金の支払い、問い合わせ対応などの事務負担が増える可能性があります。

現在は電子提供制度などにより一部の事務負担が軽減されていますが、株主数の増加による費用への影響は、あらかじめ試算しておく必要があります。


3.配当や株主優待を見直す

株式分割を実施する場合、1株当たり配当金は、通常、分割比率に応じて調整されます。

また、株主優待制度を導入している会社では、分割後の保有株式数に合わせて優待基準を変更するかどうかを検討する必要があります。

調整方法によっては実質的な増配や優待拡充となる場合もあるため、投資家に誤解を与えないよう、分割とあわせて丁寧な説明が求められます。


4.1株当たり情報を適切に調整する

株式分割を実施すると、1株当たり当期純利益、1株当たり純資産、1株当たり配当金などの数値が変わります。

決算短信などでは、比較可能性を確保するため、過年度の株式数についても、期首に株式分割が行われたと仮定して1株当たり指標を算定する取扱いがあります。


5.適時開示とスケジュールを確認する

株式分割の決定は、適時開示の対象です。

取締役会決議、基準日、効力発生日、分割比率、配当予想や株主優待への影響などを整理し、証券代行機関や証券取引所と連携して進める必要があります。


【表】株式分割を検討する際の実務チェックリスト

確認項目

主な検討内容

現在の投資単位

株価×100株で50万円以上か

目標とする水準

50万円未満か、10万円台まで下げるか

分割比率

1対2、1対3、1対5、1対10など

株価変動への対応

分割後に再び高投資単位とならないか

株主数への影響

個人株主の増加見込み

株主管理費用

発送費、名簿管理費、問い合わせ対応など

配当政策

1株当たり配当金の調整

株主優待

対象株式数や内容の見直し

会計・開示

1株当たり情報、決算短信、適時開示

社内制度

ストックオプションや株式報酬の調整

IR対応

分割の目的や資本政策との関係を説明


新たなワーキング・グループで何が議論されるのか

東証は今回の要請とあわせて、「更なる少額投資の実現に向けた制度・実務ワーキング・グループ」を設置しました。


ワーキング・グループには、機関投資家、上場会社その他の市場関係者が参加し、2026年10月以降、複数回にわたって議論が行われる予定です。


主な検討テーマは、より少額で日本株に投資できる環境を実現するための具体的な施策と、それに伴う上場会社の負担を軽減するための取組です。


東証の公式発表でも、投資単位の引下げ要請とあわせて、少額投資をさらに進めるための具体策を検討するとされています。


今後は、株式分割の促進に加えて、現在の100株単位の売買制度を前提としたまま、さらに少ない金額で投資できる仕組みが検討される可能性もあります。


ただし、具体的な制度変更の内容は現時点では決まっていません。上場会社は、今後のワーキング・グループの議論と東証からの公表内容を確認する必要があります。


まとめ

東京証券取引所は2026年7月28日、投資単位が50万円以上の上場会社に対し、株式分割による投資単位の引下げを改めて検討するよう要請しました。


今回のポイントは次のとおりです。

  • 東証が望ましいとする投資単位は50万円未満

  • 2026年6月末時点で投資単位50万円以上の会社は約270社

  • 2022年10月の要請以降、延べ約760社が株式分割を実施

  • 最近1年間に分割した会社の約7割は、分割後の投資単位が10万円台

  • 個人投資家が求める投資単位は10万円程度とされている

  • 2026年10月以降、新たなワーキング・グループで少額投資の具体策を議論


投資単位が50万円以上であっても、株式分割が直ちに強制されるわけではありません。

しかし、該当する上場会社には、50万円未満への移行・維持に努めることに加え、投資単位引下げに関する考え方や方針を開示することが求められます。


今後、株式分割を検討する会社は、単に50万円未満とするだけではなく、個人投資家のニーズを踏まえて10万円台まで引き下げるか、適切な分割比率、株主管理費用、配当・株主優待、IR効果などを総合的に検討する必要があります。



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【この記事の執筆者】

安田 亮(公認会計士・税理士)

安田亮公認会計士・税理士事務所 代表

京都大学経済学部在学中に公認会計士試験に合格。有限責任 あずさ監査法人、株式会社神戸製鋼所での実務経験を経て、2018年に神戸市で独立。

現在は、中小企業から上場企業に対する税務顧問、決算支援、税効果会計、連結決算、新リース会計基準への対応、組織再編、補助金・助成金に関する支援などを行なっています。また、金融機関や大手企業が運営する税務・会計・経営分野のWebメディアにおいて、記事の執筆・監修にも携わっています。

事務所ブログでは、税制改正や会計基準、経営実務に関する情報を、専門用語をできるだけかみ砕き、経営者や経理担当者の方に役立つ形で解説しています。


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