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「法人税等に関する会計基準」が改正|住民税(均等割)は販管費へ?2028年適用のポイントを解説

執筆者の写真: 安田亮
安田亮
23 時間前
読了時間: 11分

おはようございます!代表の安田です。


企業会計基準委員会(ASBJ)は2026年7月7日、改正企業会計基準第27号「法人税等に関する会計基準」などを公表しました。


今回の改正では、これまで「法人税」「住民税」「事業税」など個別の税目を列挙して適用対象を定めていた方法を改め、「課税対象利益を基礎とする税金」という原則的な考え方によって対象税金を整理する仕組みへ変更されています。


会計処理そのものについては従来の考え方を基本的に引き継いでいますが、表示については実務上重要な変更があります。


特に注意したいのが住民税(均等割)です。

従来は損益計算書上、「法人税、住民税及び事業税」等として税引前利益の後に表示されることが一般的でしたが、改正後は「法人税等」に含めず、その内容に応じて販売費及び一般管理費等へ表示することになります。


そのため、税引後利益だけを見ると影響が限定的でも、営業利益や経常利益などの段階利益には影響が生じる可能性があります。


本日は、2026年改正「法人税等に関する会計基準」の概要、住民税(均等割)の表示変更、事業税や源泉所得税の取扱い、適用時期・経過措置について、公認会計士が解説します。


2026年改正で何が公表されたのか

今回ASBJが公表したのは、法人税等会計基準だけではありません。

主な改正対象は次のとおりです。

区分

主な内容

企業会計基準第27号

「法人税等に関する会計基準」へ改正

税効果会計適用指針

税率等の取扱いを改正

グループ通算制度の実務対応報告

関連規定を改正

キャッシュ・フロー実務指針

税金のCF表示を改正

その他

税効果会計・CF基準の一部改正

補足文書

税率・対象税目等の具体的取扱いを整理

今回の改正は、単独の会計基準だけを見るのではなく、損益計算書・貸借対照表・キャッシュ・フロー計算書・税効果会計まで横断的に確認する必要がある改正といえます。


なぜ法人税等会計基準が改正されたのか

従来の基準では、

  • 法人税

  • 地方法人税

  • 住民税

  • 事業税

  • 特別法人事業税

など、具体的な税金を列挙して会計処理を定めていました。


しかし、この方法では新しい税金が創設されるたびに、会計基準そのものを改正する必要があります。


実際、防衛特別法人税の創設などを背景に、税制改正から適用開始までの短期間で会計基準を改正しなければならないという課題がありました。

そこで今回、「個別の税目を指定する方法→ 税金の性質によって判断する方法」へ変更されています。


新しいキーワード「課税対象利益を基礎とする税金」とは

改正基準では、「課税対象利益」を、「課税当局の定めに従って算定された特定事業年度の利益で、その利益を対象として税金が課されるもの」と整理しています。


さらに「課税対象利益を基礎とする税金」は、「課税対象利益を基礎として算定される税金と、その付加税」とされています。


日本の税金で代表的なものを整理すると、次のとおりです。

税金

課税対象利益を基礎とする税金

法人税

○

地方法人税

○

防衛特別法人税

○

特別法人事業税(基準法人所得割)

○

住民税(法人税割)

○

事業税(所得割)

○


損益計算書の名称も「法人税等」「税金費用」へ

改正後も、課税対象利益を基礎とする税金の基本的な会計処理は従来の考え方を踏襲します。


一方、表示科目の例については、

  • 「法人税、住民税及び事業税」→ 「法人税等」

  • 「法人税等合計」→ 「税金費用」

へ見直されています。


また、「税金費用」にグローバル・ミニマム課税制度に係る法人税等も含まれると整理されています。


最大の実務変更|住民税(均等割)は「法人税等」から外れる

今回、最も実務影響が大きいと考えられるのが住民税(均等割)です。

住民税の均等割は、会社の所得額ではなく、地方公共団体内に事務所等を有することなどに基づいて課されます。

そのため、新しい定義では「課税対象利益を基礎とする税金」には該当しないと整理されました。


<損益計算書の取扱い>


改正前

改正後

住民税(均等割)

「法人税、住民税及び事業税」等

「法人税等」には含めない

主な表示場所

税引前利益の後

内容に応じた適切な区分

想定される例

―

販売費及び一般管理費等

つまり、従来は税引前利益より後で費用化されていた住民税(均等割)が、改正後は販管費等に入るため、営業利益を押し下げる可能性があります。


数値例|住民税(均等割)100万円の場合

例えば、改正前に次の会社があったとします。

項目

改正前

営業利益

1億円

住民税(均等割)

100万円

税引前利益

1億円

改正後、100万円を販管費へ表示すると、営業利益 1億円 → 9,900万円となります。

最終的な当期純利益への影響がなくても、営業利益率などのKPIは変化する可能性があります。


M&Aの財務制限条項、業績連動報酬、社内予算、IR資料などで営業利益を使用している企業は注意が必要です。


貸借対照表の表示も変更

住民税(均等割)は、貸借対照表でも原則として「未払法人税等」「未収還付法人税等」以外の、内容に応じた適切な科目へ表示します。


ただし、重要性が乏しい場合には従来どおり「未払法人税等」等へ含めることも可能です。

つまり損益計算書では表示変更の影響が比較的大きい一方、貸借対照表では重要性を踏まえた簡便的な表示も認められています。


キャッシュ・フロー計算書も変更

キャッシュ・フロー計算書も注意が必要です。

従来、住民税(均等割)は「法人税等の支払額」に含まれると考えられていました。

改正後も営業活動によるキャッシュ・フローには含まれますが、「法人税等の支払額」には含めないこととされました。


<住民税(均等割)の変更まとめ>

財務諸表

改正後

損益計算書

「法人税等」に含めず、販管費等

貸借対照表

原則、内容に応じた科目

BSの重要性が乏しい場合

未払法人税等等へ含めることも可

CF計算書

営業CFだが「法人税等の支払額」には含めない

今回の改正では、P/Lだけ変更してCFを直し忘れるといったことがないよう注意が必要です。


事業税(付加価値割・資本割)はどうなる?

外形標準課税における、

  • 事業税(付加価値割)

  • 事業税(資本割)

も「課税対象利益を基礎とする税金」には該当しません。


ただし、この2つについては従来から原則として販売費及び一般管理費に表示されていました。


改正後は「法人税等」には含めず、その内容に応じた適切な表示区分とされています。

したがって、住民税(均等割)ほど大きな実務変更ではありません。


源泉所得税の表示も整理

受取利息や受取配当金に課される源泉所得税についても、従来の表現には分かりにくい部分がありました。


今回の改正では、

  1. 税額控除の対象となるか

  2. 税額控除を選択するか

によって表示を整理しています。


<源泉所得税等の表示>

状況

損益計算書上の表示

税額控除対象+控除を選択

「法人税等」に含める

税額控除対象+控除を選択しない

「法人税等」に含めず適切な区分

税額控除対象外

「法人税等」に含めず適切な区分

なお、「法人税等」に含めない場合の表示先は必ず営業外費用とは限らず、内容に応じて適切な区分を判断します。


外国税も同様に整理

親会社や国内子会社が外国法令に基づいて支払う税金についても、考え方が明確化されています。


課税対象利益を基礎とする税金に該当しない外国税について、

状況

表示

外国税額控除対象+控除選択

「法人税等」

外国税額控除対象+控除しない

適切な表示区分

外国税額控除対象外

原則、適切な表示区分

と整理されました。


一方、外国子会社配当益金不算入制度の適用を受ける外国子会社からの配当に係る一定の外国源泉所得税については、従来の取扱いを踏襲し、連結・親会社個別とも「法人税等」に含める考え方です。


防衛特別法人税にも対応

今回の改正では、防衛特別法人税にも対応しています。

日本の「課税対象利益を基礎とする税金」として、

  • 法人税

  • 地方法人税

  • 防衛特別法人税

  • 特別法人事業税

  • 住民税(法人税割)

  • 事業税(所得割)

が整理されています。


今後新たな税金が創設・廃止された場合には、毎回会計基準本体を改正するのではなく、補足文書を変更することで機動的に対応する考え方です。

これは今回の改正の制度設計上、大きな変更点です。


適用時期は2028年4月1日以後開始年度から

改正基準の原則適用時期は、2028年4月1日以後開始する連結会計年度・事業年度の期首です。3月決算会社であれば、基本的には2029年3月期から適用することになります。


また、早期適用も認められており、

2026年7月7日の公表日以後に開始する連結会計年度・事業年度の期首

から適用可能です。


<適用時期まとめ>

項目

時期

原則適用

2028年4月1日以後開始年度

3月決算会社

原則2029年3月期

早期適用

公表日以後開始年度から可能


経過措置|過年度をすべて遡及修正しなくてもよい

住民税(均等割)の表示変更は営業利益等へ影響するため、本来であれば比較可能性の観点から過去年度も遡及適用することが考えられます。


しかしASBJは、実際には影響が重要でない企業も多いと想定し、経過措置を設けています。具体的には、

  • 過去の全期間について必ず遡及適用する必要はない

  • 適用初年度の期首利益剰余金に累積影響額を反映する方法も可能

  • 比較情報について新しい表示方法への組替えを行わなくてもよい

とされています。


企業側の移行負担に配慮した取扱いといえます。


製造業では「製造原価」に入る可能性も

住民税(均等割)について新しい表示方法を採用した結果、製造原価等に影響を与える場合には、棚卸資産や売上原価の金額にも影響する可能性もあります。


したがって、単に、「住民税均等割を販管費へ振り替える」だけで終わるとは限りません。

会社の原価計算方針によっては、

  • 製造原価

  • 棚卸資産

  • 売上原価

  • 営業利益

まで影響が連鎖する可能性があります。


製造業では早めの影響分析が必要です。


実務で準備しておきたいポイント

今回の改正に向けて、企業では次の事項を確認しておくことが考えられます。

 確認事項

主な内容

住民税均等割

現在どの勘定科目で処理しているか

営業利益

表示変更による影響額

原価計算

均等割を原価配賦する可能性

CF計算書

法人税等支払額からの除外方法

源泉所得税

税額控除の選択別に表示を確認

外国税

外国税額控除との関係を整理

税効果

防衛特別法人税を含む税率を確認

システム

税金勘定・CFマッピングの変更

比較情報

経過措置を利用するか

KPI

営業利益・営業利益率への影響

上場会社はKPI・IRへの影響にも注意

住民税(均等割)自体の金額は、多くの企業では法人税等全体に比べて大きくないかもしれません。


しかし、営業利益に組み替わることで、

  • 営業利益率

  • セグメント利益

  • 業績連動報酬

  • 中期経営計画のKPI

  • 投資家向け業績比較

などに影響する可能性があります。


特に多拠点展開しており、均等割の金額が相対的に大きい企業では、影響額を事前に把握しておくことが重要です。


<今回の改正を一表で整理>

論点

改正のポイント

基準名称

「法人税、住民税及び事業税等」から「法人税等」へ

対象税金

個別列挙から原則的定義へ

新しい概念

課税対象利益を基礎とする税金

住民税(均等割)

「法人税等」から除外

均等割のP/L

販管費等の適切な区分

均等割のCF

営業CFだが法人税等支払額から除外

外形標準課税

「法人税等」に含めない

源泉所得税

税額控除選択の有無等で表示を判断

外国税

税額控除との関係で表示を整理

防衛特別法人税

課税対象利益を基礎とする税金として整理

原則適用

2028年4月1日以後開始年度

早期適用

公表日以後開始年度から可能

まとめ

ASBJは2026年7月7日、改正企業会計基準第27号「法人税等に関する会計基準」等を公表しました。


今回の改正の主な目的は、特定の税金を個別に列挙する従来の方法から、「課税対象利益を基礎とする税金」という原則ベースの仕組みへ変更することです。


会計処理そのものは従来の考え方を基本的に引き継いでいますが、表示面では重要な変更があります。


特に重要なのは次の点です。

  • 住民税(均等割)は「法人税等」から外れる

  • 原則として販管費等の適切な表示区分へ変更

  • その結果、営業利益など各段階利益が変動する可能性

  • CF計算書でも「法人税等の支払額」から除外

  • 事業税の付加価値割・資本割も「法人税等」には含めない

  • 源泉所得税・外国税の表示方法を明確化

  • 防衛特別法人税にも対応

  • 原則として2028年4月1日以後開始年度から適用

  • 早期適用も可能

  • 過去年度の全面的な遡及修正を不要とする経過措置あり


今回の改正は主として住民税(均等割)の取扱いが変わるものの、影響の重要性には差があっても、すべての企業に何らかの影響があります。


2028年の適用開始までは時間がありますが、会計システム、キャッシュ・フロー計算書、原価計算、KPIなどへの影響を考えると、早い段階で影響額を試算しておくことが望まれます。



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【この記事の執筆者】

安田 亮(公認会計士・税理士)

安田亮公認会計士・税理士事務所 代表

京都大学経済学部在学中に公認会計士試験に合格。有限責任 あずさ監査法人、株式会社神戸製鋼所での実務経験を経て、2018年に神戸市で独立。

現在は、中小企業から上場企業に対する税務顧問、決算支援、税効果会計、連結決算、新リース会計基準への対応、組織再編、補助金・助成金に関する支援などを行なっています。また、金融機関や大手企業が運営する税務・会計・経営分野のWebメディアにおいて、記事の執筆・監修にも携わっています。

事務所ブログでは、税制改正や会計基準、経営実務に関する情報を、専門用語をできるだけかみ砕き、経営者や経理担当者の方に役立つ形で解説しています。


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