税務調査で保険契約情報のオンライン照会が拡大|生命保険23社へ、クレジットカード等も対象に
おはようございます!代表の安田です。
国税庁では、税務調査や滞納整理の際に、金融機関が保有する預貯金等の情報をオンラインで照会する仕組みを利用しています。
これまで「pipitLINQ」「DAIS」というシステムが使われてきましたが、生命保険会社への照会体制をさらに拡大するため、2026年8月から新たに「フフテラス」の試行運用が始まりました。
国税庁は試行結果を踏まえ、今後、全国の国税局等で本格運用する方針です。
今回の拡充により、オンラインで保険契約情報を照会できる生命保険会社は、現在の13社から23社へ増える見込みです。また、銀行・生命保険会社・証券会社だけでなく、一部のクレジットカード会社や資金決済事業者に対するオンライン照会もすでに始まっています。
本日は、国税庁のオンライン照会とは何か、税務調査でどのように使われているのか、今後どこまで対象が広がるのかを税理士が解説します。
国税庁の「オンライン照会」とは
税務調査や滞納整理では、納税者の申告内容や財産状況を確認するため、必要に応じて金融機関等へ情報照会が行なわれます。
以前は書面による照会が中心でしたが、国税庁では2021年から金融機関の口座情報等についてオンライン照会を行っています。
資料によると、書面照会では回答まで1か月前後かかっていたものが、オンライン照会では数日程度まで短縮されています。
書面照会とオンライン照会の違い
項目 | 書面照会 | オンライン照会 |
照会方法 | 郵送等 | システム上で照会 |
回答までの期間 | 1か月前後 | 数日程度 |
税務調査での利便性 | 時間がかかる | 迅速に確認可能 |
今後の方向性 | 縮小傾向 | 対象拡大 |
税務調査のスピードアップという意味で、オンライン照会はかなり重要なインフラになっていると考えられます。
生命保険の契約情報もオンライン照会の対象
オンライン照会の対象は、預貯金だけではありません。
生命保険会社が保有する保険契約情報についても、2022年度からオンライン照会が始まっています。
対応する生命保険会社は、
2024年度末:6社
現在:13社
「フフテラス」導入後:23社
へ拡大する見込みです。
<生命保険会社へのオンライン照会拡大>
時点 | 対応会社数 |
2024年度末 | 6社 |
現在 | 13社 |
新システム導入後 | 23社 |
現在13社から10社増えるため、対応会社数は大幅に増えることになります。
新システム「フフテラス」とは
今回新たに試行運用が始まったのが「フフテラス」です。
国税局等から生命保険会社等へ調査対象者の情報を送信し、金融機関側から回答データを受信する仕組みとなっています。
各オンライン照会システムと提供会社は次のとおりです。
システム | 提供会社 |
pipitLINQ | 株式会社NTTデータ |
DAIS | SocioFuture株式会社 |
フフテラス | 富士フイルムシステムサービス株式会社 |
国税庁は、今回の試行結果を踏まえて「フフテラス」を全国の国税局等へ展開する方針です。
税務調査では何を確認される可能性がある?
生命保険会社から具体的にどの項目が回答されるかまでは詳しく示されていません。
そのため、契約者名、解約返戻金、保険金額等のどこまでが個々の照会対象になるかについて、この資料だけから断定することはできません。
ただし、少なくとも「保険契約情報」がオンライン照会の対象となっているため、税務調査や滞納整理で必要性が認められれば、生命保険会社への照会が従来より迅速に行なわれる環境が整ってきているといえます。
相続税調査でも生命保険は重要
生命保険は、相続税申告でも重要な確認項目の一つです。
例えば、
被相続人が保険料を負担していた契約
死亡保険金
解約返戻金のある契約
名義保険と判断される可能性がある契約
などについて、契約者・被保険者・保険料負担者・保険金受取人等の関係を確認する必要があります。
もっとも、今回の添付資料では相続税調査に限定した利用方法や具体例までは示されていません。
今回確認できるのは、税務調査・滞納整理全般で生命保険契約情報のオンライン照会体制が拡充されるという点です。
クレジットカード会社へのオンライン照会も開始
オンライン照会の対象はさらに広がっています。
2025年度からは一部のクレジットカード会社や資金決済事業者へのオンライン照会も始まっています。
<オンライン照会対象のイメージ>
分野 | オンライン照会 |
銀行 | 対応 |
生命保険会社 | 対応拡大中 |
証券会社 | 対応 |
クレジットカード会社 | 一部で開始 |
資金決済事業者 | 一部で開始 |
従来の預貯金中心から、金融取引全体へと照会範囲が広がっていることが分かります。
資金決済事業者とは
資金決済事業者には、さまざまな決済サービスを提供する事業者があります。
具体的にどのサービス・事業者がオンライン照会対象になっているかは示されていません。
そのため、特定の電子マネーやQRコード決済サービスについて、「このサービスは国税庁がオンラインで照会できる」と判断することはできません。
ただし、資金決済分野にもオンライン照会が広がり始めている点は、今後の税務調査実務を考えるうえで重要です。
オンライン照会件数は年間1,000万件超へ
オンライン照会は利用件数そのものも大きく増えています。2024年度末のオンライン照会件数は835万件でした。
2025年度末については集計中ですが、約2割増加し、1,000万件を超える見通しとされています。
<オンライン照会件数>
年度 | 件数 |
2024年度 | 835万件 |
2025年度 | 1,000万件超の見通し |
単純計算でも非常に大きな件数であり、オンライン照会が税務行政の通常業務として定着していることが分かります。
対応金融機関も450機関超へ
オンライン照会へ対応する金融機関の数も増加しています。
2024年度末:431機関
2025年度末:450機関を上回る見込み
となっています。
オンライン化は一部の大手金融機関だけの話ではなく、対象金融機関自体が広がっている状況です。
税務調査は今後どう変わる?
オンライン照会の拡充により、税務調査では金融情報の確認スピードがさらに上がると考えられます。
従来であれば、
税務署が金融機関へ書面を送付
金融機関が社内で確認
回答書を返送
税務署が回答内容を確認
という流れに時間を要していました。
オンライン化が進めば、必要な情報を数日程度で確認できるケースが増えます。
その結果、納税者側にとっては、「税務調査が始まってから金融機関への照会結果が出るまで長期間かかる」というケースが減少する可能性があります。
帳簿と金融取引の整合性がより重要に
オンライン照会が高度化しても、企業側が特別な対応をする必要があるわけではありません。重要なのは、これまでどおり、
売上を正しく計上する
事業用口座と帳簿を一致させる
個人口座を事業に利用している場合は取引内容を説明できるようにする
保険契約の会計・税務処理を適切に行う
資金移動の理由を資料で説明できるようにする
といった基本的な経理・税務処理です。
税務調査で確認される情報取得が迅速になるほど、帳簿と外部情報の不一致も早期に把握されやすくなると考えられます。
個人事業主も注意したいポイント
個人事業主の場合には、事業用と家事用のお金が混在しやすいため、特に資金管理が重要です。例えば、
個人口座へ事業売上が入金されている
個人カードで事業経費を支払っている
決済サービスを複数利用している
事業用資金を個人の金融商品へ移している
といったケースがあります。
これ自体が問題というわけではありませんが、税務調査時に資金の流れを説明できるよう、帳簿との対応関係を明確にしておくことが重要です。
滞納整理でもオンライン照会を利用
オンライン照会は税務調査だけではなく、滞納整理にも利用されています。
税金を滞納している場合には、国税当局が財産状況を確認する必要があります。
金融機関等へのオンライン照会の対象が広がれば、滞納処分における財産調査も従来より迅速になる可能性があります。
特に保険契約や金融資産を保有している場合、税務調査だけではなく滞納整理との関係もある点を理解しておく必要があります。
オンライン照会の拡大状況を整理
ポイントをまとめると次のとおりです。
項目 | 内容 |
従来の主な対象 | 銀行、証券会社等 |
生命保険照会開始 | 2022年度 |
2024年度末の生命保険対応 | 6社 |
現在 | 13社 |
フフテラス導入後 | 23社 |
クレジットカード | 2025年度から一部で開始 |
資金決済事業者 | 2025年度から一部で開始 |
2024年度照会件数 | 835万件 |
2025年度見込み | 1,000万件超 |
2024年度対応金融機関 | 431機関 |
2025年度見込み | 450機関超 |
国税庁は今後も照会件数・対応金融機関を増やしていく方向です。
税務調査に備えて確認したいこと
企業や個人事業主は、次の事項を日頃から整理しておくとよいでしょう。
チェック項目 | 確認内容 |
銀行口座 | 帳簿と入出金が一致しているか |
個人口座 | 事業取引が混在していないか |
保険契約 | 契約内容と経理処理が一致しているか |
クレジットカード | 事業・私用の区分が明確か |
決済サービス | 売上計上漏れがないか |
資金移動 | 理由を説明できる資料があるか |
売上 | 決済サービス別の売上と帳簿が一致しているか |
証憑 | 契約書・明細等を保存しているか |
よくある疑問
Q. 税務署は生命保険の契約情報をオンラインで確認できますか?
A. 一定の生命保険会社についてはオンライン照会に対応しています。現在13社で、フフテラスの導入により10社増え、23社になる見込みです。
Q. 税務署がオンラインで照会すると、どのくらいで回答されますか?
A. 資料では、従来の書面照会が1か月前後だったのに対して、オンライン照会では数日程度に短縮されるとされています。
Q. クレジットカードもオンライン照会の対象ですか?
A. 2025年度から、一部のクレジットカード会社や資金決済事業者へのオンライン照会が開始されています。ただし、今回の資料では具体的な対象会社名までは示されていません。
まとめ
国税庁では、税務調査や滞納整理における金融機関へのオンライン照会を拡大しています。
今回のポイントは次のとおりです。
預貯金等のオンライン照会は2021年から実施
生命保険契約情報もオンライン照会の対象
新システム「フフテラス」の試行運用を2026年8月から開始
生命保険会社の対応数は13社から23社へ増える見込み
2025年度から一部のクレジットカード会社・資金決済事業者にも照会を開始
オンライン照会件数は2025年度に1,000万件を超える見通し
対応する金融機関も450機関を超える見込み
オンライン照会の拡充により、税務調査等では金融情報を確認するスピードがさらに速くなると考えられます。
企業や個人事業主として特別な対策をする必要はありませんが、帳簿、銀行口座、保険契約、クレジットカード、決済サービスなどの取引内容が整合している状態を日頃から維持することがこれまで以上に重要です。
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【この記事の執筆者】
安田 亮(公認会計士・税理士)
安田亮公認会計士・税理士事務所 代表
京都大学経済学部在学中に公認会計士試験に合格。有限責任 あずさ監査法人、株式会社神戸製鋼所での実務経験を経て、2018年に神戸市で独立。
現在は、中小企業から上場企業に対する税務顧問、決算支援、税効果会計、連結決算、新リース会計基準への対応、組織再編、補助金・助成金に関する支援などを行なっています。また、金融機関や大手企業が運営する税務・会計・経営分野のWebメディアにおいて、記事の執筆・監修にも携わっています。
事務所ブログでは、税制改正や会計基準、経営実務に関する情報を、専門用語をできるだけかみ砕き、経営者や経理担当者の方に役立つ形で解説しています。






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