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2026年度「働き方改革推進支援助成金」とは?5つのコース・対象経費・申請期限を解説

執筆者の写真: 安田亮
安田亮
16 時間前
読了時間: 12分

こんにちは!代表の安田です。


人手不足が続く中、残業時間の削減や有給休暇の取得促進を進めたいものの、勤怠管理システムや業務効率化設備の導入費用が負担となり、取組を先送りしている中小企業も少なくありません。


このような企業が検討したい制度が、厚生労働省の「働き方改革推進支援助成金」です。

働き方改革推進支援助成金は、生産性を向上させながら、時間外労働の削減、年次有給休暇の取得促進、勤務間インターバル制度の導入などに取り組む中小企業を支援する制度です。


2026年度は、従来のコースに加え、荷待ち・荷役時間の短縮を支援する「取引環境改善コース」が新設されました。また、一定の賃上げや割増賃金率の引上げを行った場合には、助成上限額が加算される仕組みもあります。


2026年度の交付申請期限は、原則として2026年11月30日(月)午後5時です。ただし、国の予算額に制約があるため、期限前に受付が終了する可能性があります。


本日は、2026年度の働き方改革推進支援助成金について、5つのコース、対象となる取組、助成上限額、申請時の注意点を解説します。


働き方改革推進支援助成金とは

働き方改革推進支援助成金は、中小企業が労働時間の設定を改善するために行う設備投資や制度整備などの費用を支援する助成金です。


単に設備を購入すれば受給できる制度ではありません。

時間外労働の削減、有給休暇制度の整備、勤務間インターバル制度の導入など、各コースで定められた「成果目標」を設定し、その達成に向けて改善事業を実施する必要があります。


2026年度は、次の5コースが設けられています。

コース

主な対象・目的

主な助成上限額

業種別課題対応コース

建設業、運送業、病院等、情報通信業・宿泊業などの業種別課題に対応

成果目標により最大250万円など

労働時間短縮・年休促進支援コース

残業削減、有給休暇や特別休暇の導入

最大150万円など

勤務間インターバル導入コース

終業から翌日の始業までの休息時間を確保

最大150万円

取引環境改善コース

荷待ち・荷役時間やトラック運送事業者の労働時間を短縮

最大100万円

団体推進コース

事業主団体等が傘下企業の働き方改革を支援

最大500万円

複数の成果目標や賃上げ加算を組み合わせる場合には、最終的な助成上限額が変わることがあります。


対象となる中小企業事業主

個別企業向けの主要なコースでは、原則として、労災保険の適用事業主である中小企業が対象です。

中小企業に該当するかどうかは、主たる業種ごとに、資本金または常時使用する労働者数で判定します。

主たる事業

資本金・出資額

常時使用する労働者数

卸売業

1億円以下

100人以下

小売業

5,000万円以下

50人以下

サービス業

5,000万円以下

100人以下

その他の業種

3億円以下

300人以下

基本的には、資本金と労働者数のいずれか一方を満たせば、中小企業の規模要件に該当します。


ただし、病院等については労働者数による独自の要件があるほか、コースごとに年休管理簿、就業規則、36協定などの整備状況も確認されます。厚生労働省は、年休管理簿の作成や、一定の事業場における年次有給休暇の時季指定に関する就業規則の整備などを要件として示しています。


5つのコースの概要

<業種別課題対応コース>

業種別課題対応コースは、長時間労働などの課題を抱えやすい特定業種を対象とするコースです。


2026年度の主な対象は、次のとおりです。

  • 建設業

  • 運送業等

  • 情報通信業・宿泊業

  • 病院等

  • 鹿児島県・沖縄県の砂糖製造業


成果目標には、月60時間を超える時間外・休日労働の削減、所定外労働時間の削減、年次有給休暇の計画的付与、勤務間インターバルの導入などがあります。


建設業では週休2日制の推進、病院等では医師の働き方改革に関する目標も設けられています。厚生労働省も、時間外労働の削減、週休2日制、勤務間インターバル、医師の働き方改革に向けた環境整備を支援対象として案内しています。


<労働時間短縮・年休促進支援コース>

業種を限定せず、一般の中小企業が比較的利用を検討しやすいコースです。


主な成果目標は次の3つです。

  1. 月60時間を超える36協定上の時間外・休日労働時間数の削減

  2. 年次有給休暇の計画的付与制度の導入

  3. 時間単位年休や一定の特別休暇の導入


成果目標ごとの助成上限額は、時間外労働の削減が最大150万円、計画的付与と時間単位年休等がそれぞれ25万円です。


このコースは、生産性を高めながら時間外労働を削減し、年次有給休暇や特別休暇の取得を進める中小企業を対象としています。


<勤務間インターバル導入コース>

勤務間インターバルとは、前日の終業時刻から翌日の始業時刻までに、一定時間以上の休息時間を確保する制度です。


例えば、勤務間インターバルを11時間とした場合、午後10時に退勤した従業員は、原則として翌日午前9時より前には勤務を開始しない運用とします。


助成上限額は、導入するインターバル時間により異なります。

インターバル時間

助成上限額

9時間以上11時間未満

100万円

11時間以上

150万円

新規導入だけでなく、対象労働者の範囲拡大や、既存のインターバル時間を延長する場合も対象となることがあります。厚生労働省は、勤務間インターバルを健康保持や過重労働防止のための休息時間と位置付け、この制度の導入に取り組む中小企業を支援しています。


<取引環境改善コース>

取引環境改善コースは、2026年度に新設されたコースです。

荷主や倉庫事業者、運送事業者などが集団を構成し、トラックドライバーの荷待ち・荷役時間や労働時間を短縮する取組を支援します。


例えば、次のような取組が対象となります。

  • トラック予約受付システムの導入

  • 荷役作業に使用する機器の導入

  • 荷主と運送事業者との取引条件の調整

  • セミナーや相談窓口の設置

  • 好事例の収集・普及


助成上限額は100万円です。

対象となる荷主集団等は、原則として3事業主以上で構成され、少なくとも荷主・倉庫事業者と運送事業者が参加することなど、一定の組織要件を満たす必要があります。


<団体推進コース>

団体推進コースは、個々の会社ではなく、事業協同組合、商工会議所、商工会、一定の一般社団法人などの事業主団体を対象とするコースです。

団体が傘下の中小企業に対して、時間外労働の削減や賃上げなどに向けた取組を実施した場合に助成されます。


対象となる取組には、次のようなものがあります。

  • 市場調査

  • 新しいビジネスモデルの開発・実験

  • 費用削減に関する実験

  • 展示会の開催・出展

  • セミナーの開催

  • 相談窓口の設置

  • 共同利用する設備・機器の導入

  • 人材確保に向けた取組


成果目標は、原則として構成事業主の2分の1以上が改善事業やその成果を活用することで、助成上限額は500万円です。


助成対象となる主な取組

業種別課題対応コース、労働時間短縮・年休促進支援コース、勤務間インターバル導入コースでは、主に次の取組が対象となります。

  • 労務管理担当者への研修

  • 労働者への研修、周知・啓発

  • 外部専門家によるコンサルティング

  • 就業規則や労使協定の作成・変更

  • 人材確保に向けた取組

  • 労務管理用ソフトウェアの導入・更新

  • 労務管理用機器の導入・更新

  • デジタル式運行記録計の導入・更新

  • 労働能率の向上に役立つ設備・機器の導入・更新


例えば、勤怠管理システムや業務効率化設備を導入し、それによって残業時間を削減する計画などが考えられます。


ただし、一般的なパソコン、タブレット、スマートフォン、乗用車などは、原則として対象外とされています。単に古い設備を新しいものへ入れ替えるだけではなく、労働時間の削減や生産性向上との具体的な関係を説明する必要があります。


賃上げを行なうと助成上限額が加算される

業種別課題対応コース、労働時間短縮・年休促進支援コース、勤務間インターバル導入コースでは、改善事業に加えて一定の賃上げを行うと、助成上限額が加算されます。


加算額は、賃上げ率と対象労働者数によって異なります。

例えば、常時使用する労働者数が30人以下の場合、3%以上、5%以上または7%以上の賃上げを行うことにより、対象人数に応じて助成上限額が増額されます。


また、2026年度には、割増賃金率を引き上げた場合の加算措置も新設されました。

  • 月60時間以内の時間外労働について、割増賃金率を5%以上引き上げる場合:25万円加算

  • 月45時間超60時間以内について割増賃金率を5%以上引き上げ、その他の時間帯も一定割合引き上げる場合:75万円加算


賃上げ加算を利用する場合は、単に給与を引き上げるだけでなく、就業規則や賃金台帳などによって実施状況を確認できるようにしておく必要があります。


申請から助成金受給までの流れ

働き方改革推進支援助成金は、設備を購入した後に申請する制度ではありません。


基本的な流れは次のとおりです。

  1. 改善計画と成果目標を検討する

  2. 複数の事業者から見積書を取得する

  3. 都道府県労働局へ交付申請する

  4. 労働局から交付決定を受ける

  5. 設備の契約・発注や規程整備などを行う

  6. 改善事業を実施し、成果目標の達成を目指す

  7. 事業実施報告書と支給申請書を提出する

  8. 審査後、助成金が支給される

厚生労働省の各コースのページでは、申請書類のほか、Jグランツを利用した電子申請も案内されています。


最も注意したいのは「交付決定前に契約しない」こと

この助成金で特に注意したいのが、設備の契約・発注や改善事業の実施時期です。


原則として、交付決定を受ける前に設備を契約・発注したり、改善事業を開始したりすると、その費用は助成対象になりません。


「助成金の対象になりそうだから、先に機械を注文しておこう」という進め方は危険です。

設備の納期が長い場合でも、交付決定前に契約してよいかを自己判断せず、事前に都道府県労働局へ確認する必要があります。


相見積りと証拠書類の保存が重要

申請に当たっては、改善事業に必要な費用を確認するため、原則として複数の事業者から見積りを取得します。


また、専門的な機械やソフトウェアを導入する場合には、審査担当者が内容を理解できるよう、次の事項を説明できる資料を準備することが重要です。

  • どのような設備・ソフトウェアか

  • どのような機能があるか

  • どの業務に使用するか

  • どのように労働時間が短縮されるか

  • 現在の業務フローがどう改善されるか

  • なぜその機種やシステムが必要なのか


支払いについても、誰が、誰に、何の対価として、いつ、いくら支払ったかを確認できるよう、契約書、請求書、振込記録などを保存します。


交付決定後に内容を変更するときも手続が必要

交付決定後に、購入する設備、金額、契約先、実施時期などを変更した場合、変更申請が必要になることがあります。


自己判断で別の設備へ変更したり、当初申請していない費用を追加したりすると、助成対象として認められない可能性があります。


助成金を受け取った後にも手続が必要な場合がある

助成金の支給を受けた後も、交付決定の内容によっては、次の手続が必要になる場合があります。

  • 消費税仕入控除税額が確定した場合の報告

  • 賃上げ加算を利用した場合の賃上げ状況報告

  • 助成金で取得した財産を売却・処分する場合の申請


助成金を受け取った時点で、すべての手続が終了するとは限りません。

特に、助成対象経費に消費税を含めて申請した事業者が仕入税額控除を受けた場合には、消費税仕入控除税額の確定に伴う報告や返還が必要になる可能性があります。厚生労働省も各コースの申請書類として、消費税額の確定に伴う報告書を用意しています。


2026年度の申請期限

2026年度の交付申請期限は、原則として次のとおりです。

2026年11月30日(月)午後5時


ただし、予算額に達した場合には、申請期限前でも受付が終了する可能性があります。

申請には、見積書、労働時間の実績、36協定、就業規則、年休管理簿、事業実施計画などの準備が必要です。


期限直前に検討を始めるのではなく、設備導入や制度変更を予定している段階で、早めに都道府県労働局へ相談することが大切です。


申請前のチェックリスト

申請を検討する際は、次の事項を確認しましょう。

  • 労災保険の適用事業主であるか

  • 中小企業の規模要件を満たしているか

  • 自社に適したコースを選択しているか

  • 達成可能な成果目標を設定しているか

  • 年休管理簿や36協定を整備しているか

  • 必要な就業規則を労働基準監督署へ届け出ているか

  • 設備導入と労働時間削減の関係を説明できるか

  • 複数の事業者から見積りを取得しているか

  • 交付決定前に契約・発注していないか

  • 賃上げ加算の要件を確認しているか

  • 申請後の支給申請や報告期限も確認しているか


まとめ

2026年度の働き方改革推進支援助成金は、中小企業が労働時間を削減しながら、生産性向上のための設備や仕組みを導入する際に活用できる制度です。


主なポイントは次のとおりです。

  • 2026年度は5つのコースから選択する

  • 対象は主に労災保険を適用する中小企業事業主等

  • 勤怠管理システムや労働能率向上設備などが対象になり得る

  • 各コースで成果目標を設定し、達成を目指す必要がある

  • 賃上げや割増賃金率の引上げによる助成額の加算がある

  • 助成上限額はコースや成果目標により異なり、最大500万円

  • 原則として交付決定前の契約・発注・支払いは対象外

  • 相見積りや支払いの証拠書類を準備する

  • 交付申請期限は2026年11月30日午後5時

  • 予算の都合で早期終了する可能性がある


助成金のためだけに不要な設備を導入するのは本末転倒です。


まずは、自社の残業が発生している原因や、有給休暇を取得しにくい理由を整理し、その課題を解決する設備や制度が助成対象になるかを検討することが重要です。


設備を発注した後では申請できない可能性があるため、導入計画が固まる前の段階で、都道府県労働局や専門家へ相談することをおすすめします。



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【この記事の執筆者】

安田 亮(公認会計士・税理士)

安田亮公認会計士・税理士事務所 代表

京都大学経済学部在学中に公認会計士試験に合格。有限責任 あずさ監査法人、株式会社神戸製鋼所での実務経験を経て、2018年に神戸市で独立。

現在は、中小企業から上場企業に対する税務顧問、決算支援、税効果会計、連結決算、新リース会計基準への対応、組織再編、補助金・助成金に関する支援などを行なっています。また、金融機関や大手企業が運営する税務・会計・経営分野のWebメディアにおいて、記事の執筆・監修にも携わっています。

事務所ブログでは、税制改正や会計基準、経営実務に関する情報を、専門用語をできるだけかみ砕き、経営者や経理担当者の方に役立つ形で解説しています。


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