社用車のガソリン代とインボイス制度|レシート保存は必要?カード決済時の注意点も解説
こんばんは!代表の安田です。
インボイス制度が始まり、社用車のガソリン代について「どの書類を保存すれば仕入税額控除を受けられるのか」と迷う会社も多いのではないでしょうか。
営業車、配送車、役員車、現場用車両など、業務で車を使う会社では、ガソリン代や軽油代が日常的に発生します。
これまでは、法人カードやガソリンカードの利用明細をもとに経費処理をしており、従業員に給油時のレシート提出を厳格に求めていなかった会社もあるでしょう。
しかし、インボイス制度では、消費税の仕入税額控除を受けるために、原則としてインボイスまたは簡易インボイスの保存が必要です。
ガソリンスタンドのレシートは、簡易インボイスとして取り扱われる場合がありますが、カードの種類や決済方法によって、保存すべき書類が異なります。
本日は、社用車のガソリン代について、インボイス制度上どの書類を保存すべきか、クレジットカード決済と掛カードの違い、セルフスタンド利用時の注意点を解説します。
ガソリン代は仕入税額控除の対象になる
会社が業務用車両のためにガソリンや軽油を購入した場合、その支出は事業に必要な経費です。
消費税の課税事業者であれば、一定の要件を満たすことで、ガソリン代に含まれる消費税について仕入税額控除を受けることができます。
ただし、インボイス制度では、単に経費として支払っただけでは足りません。
仕入税額控除を受けるためには、原則として、帳簿の保存に加えて、売手であるガソリンスタンドから交付されるインボイス等の保存が必要になります。
そのため、社用車のガソリン代についても、給油時に受け取るレシートや請求書が、インボイス制度に対応しているかを確認する必要があります。
ガソリンスタンドのレシートは簡易インボイスの対象
インボイス制度では、売手が適格請求書発行事業者である場合、買手から求められたときは原則として適格請求書を交付する義務があります。
一方で、小売業、飲食店業、タクシー業など、不特定多数の者を相手にする一定の事業については、通常のインボイスに代えて「適格簡易請求書」、いわゆる簡易インボイスを交付することができます。
ガソリン販売は小売業に該当するため、ガソリンスタンドが発行するレシートは、簡易インボイスとして取り扱われる場合があります。
簡易インボイスでは、通常のインボイスと異なり、買手の氏名または名称、つまり会社名の宛名を記載する必要がありません。
そのため、ガソリンスタンドのレシートに会社名が記載されていなくても、簡易インボイスとして必要な事項を満たしていれば、仕入税額控除のための書類として保存できる可能性があります。
簡易インボイスに必要な記載事項
ガソリンスタンドのレシートを簡易インボイスとして保存する場合、主に次のような事項が記載されている必要があります。
ガソリンスタンドの名称
適格請求書発行事業者の登録番号
取引年月日
取引内容
税率ごとに区分した税込金額または税抜金額
適用税率または税率ごとに区分した消費税額等
ガソリン代の場合、通常は消費税率10%の取引です。
ただし、同じレシートに洗車、オイル交換、カー用品、軽減税率対象商品などが含まれる場合には、税率ごとの区分が必要になることがあります。
また、レシートに登録番号が記載されていない場合、そのレシートだけでは簡易インボイスとしての要件を満たさない可能性があります。
給油時のレシートを経費精算に使う会社では、従業員に「登録番号が記載されたレシートを受け取ること」を周知しておくとよいでしょう。
クレジットカード決済では給油時のレシート保存が必要
社用車のガソリン代は、現金ではなくクレジットカードで支払うことも多いでしょう。
ここで注意したいのは、クレジットカード会社から届く利用明細だけでは、原則としてインボイスの保存要件を満たさないという点です。
クレジットカード明細は、カード会社が発行する利用代金の明細であり、ガソリンスタンドが交付するインボイスではありません。
そのため、従業員が社用車に給油し、クレジットカードで都度決済をした場合には、現金払いと同じように、給油時にガソリンスタンドから発行されるレシートを保存する必要があります。
これまで、カード明細だけでガソリン代を経費処理していた会社は、インボイス制度後は運用を見直す必要があります。
法人カードを従業員に持たせている場合の注意点
営業担当者や配送担当者に法人カードを持たせ、給油時に利用してもらっている会社もあります。
この場合、会社宛にカード明細が届くため、経理担当者はカード明細でガソリン代を把握できます。
しかし、仕入税額控除のためには、カード明細だけでなく、給油時の簡易インボイスであるレシートを保存する必要があります。
そのため、社内ルールとして、次のような運用を整えておくことが重要です。
給油時には必ずレシートを受け取る
レシートを紛失しないよう保管する
経費精算時または月次締め時に経理へ提出する
電子レシートの場合は電子データで保存する
カード明細とレシートを照合できるようにする
レシートがない場合の処理ルールを決めておく
法人カードの利用明細は、支払管理には便利です。
しかし、インボイス制度上の仕入税額控除の証憑としては、ガソリンスタンドが発行するレシートの保存が基本になる点を押さえておきましょう。
掛カードの場合は請求書の保存が必要になる
ガソリンスタンドで利用するカードには、クレジットカードのように給油ごとに決済されるものだけでなく、いわゆる掛カードがあります。
掛カードでは、給油時点では都度決済せず、後日、利用分をまとめて請求する仕組みが取られることがあります。
このような掛カードでは、給油時のレシートとは別に、後日、ガソリン販売会社等から会社宛に請求書が発行される場合があります。
インボイス制度上は、クレジットカードの都度決済とは異なり、掛カードの場合には、後日発行される請求書がインボイスとして整備されることがあります。
そのため、掛カードを利用している場合は、給油時のレシートではなく、後日発行される請求書を保存する運用になるケースがあります。
ただし、すべての掛カードや石油販売会社で同じ対応とは限りません。
自社が利用しているカードがクレジットカード型なのか、掛カード型なのか、どの書類がインボイスとして発行されるのかを確認しておくことが大切です。
カードの種類ごとに保存書類を整理する
社用車のガソリン代については、カードの種類によって保存すべき書類が異なる点が実務上の落とし穴です。
大きく整理すると、次のようになります。
現金払い:給油時のレシートを保存
クレジットカード決済:給油時のレシートを保存
法人カードの都度決済:給油時のレシートを保存
掛カード:後日発行される請求書を保存するケースがある
会社によっては、営業所ごと、車両ごと、従業員ごとに異なるカードを使っていることがあります。
その場合、すべてを同じルールで処理すると、インボイスの保存漏れが起きる可能性があります。
まずは、自社で利用している給油カードの種類を洗い出し、どの書類がインボイスまたは簡易インボイスに該当するのかを確認しましょう。
セルフスタンドでもレシート保存が必要
近年は、セルフ式のガソリンスタンドを利用する機会も多くなっています。
セルフスタンドで給油する場合、「自動販売機のようなものだから、帳簿だけで仕入税額控除を受けられるのではないか」と考える方もいるかもしれません。
インボイス制度には、一定の自動販売機や自動サービス機による取引について、インボイスの保存がなくても帳簿のみで仕入税額控除が認められる特例があります。
しかし、セルフスタンドでの給油は、基本的にこの自動販売機特例には該当しないとされています。そのため、有人のガソリンスタンドで給油する場合と同様に、セルフスタンドであっても、レシート等の保存が必要です。
セルフスタンドでは、給油後にレシートを取り忘れやすいため、従業員への周知が特に重要です。
レシートを紛失した場合のリスク
従業員がレシートを受け取り忘れたり、紛失したりした場合、会社はガソリン代を経費として処理できないのでしょうか。
法人税上、事業に必要な支出であることが明らかであれば、経費として認められる可能性はあります。
しかし、消費税の仕入税額控除については、インボイスまたは簡易インボイスの保存が必要です。
そのため、レシートがない場合、仕入税額控除を受けられない可能性があります。
特に、クレジットカード明細だけでは、ガソリンスタンドの登録番号や税率ごとの消費税額等など、簡易インボイスとして必要な事項が確認できないことが多いため注意が必要です。
レシート紛失時の対応としては、可能であればガソリンスタンドに再発行や利用明細の発行を依頼することが考えられます。
ただし、再発行に対応してもらえるとは限らないため、日頃からレシートを受け取り、速やかに保存する運用を徹底することが大切です。
電子レシートやアプリ明細の場合
ガソリンスタンドによっては、紙のレシートではなく、アプリやWeb上で電子レシートを発行する場合があります。
この場合、電子レシートが簡易インボイスとして必要な事項を満たしていれば、仕入税額控除のための書類として利用できます。
ただし、電子データで受け取ったレシートは、電子帳簿保存法上の電子取引データとして保存する必要があります。
つまり、電子レシートを印刷して紙で保存するだけではなく、電子データとして保存することが求められます。
会社としては、次のような保存ルールを決めておくとよいでしょう。
電子レシートをPDF等で保存する
スクリーンショットで保存する場合のルールを決める
取引年月日、金額、取引先で検索できるようにする・改ざん防止措置を講じる
経費精算システムに電子レシートを添付する
紙レシートと電子レシートが混在する場合の管理方法を決める
ガソリン代は件数が多くなりやすいため、電子レシートの保存方法をあいまいにしておくと、後から確認が大変になります。
経費精算システムを使う場合のポイント
社用車のガソリン代を従業員が立替払いする場合や、法人カードで決済する場合、経費精算システムを利用している会社も多いでしょう。
インボイス制度に対応するためには、経費精算システム上でも次のような情報を確認できるようにしておくと便利です。
給油日
給油した店舗名
登録番号
金額
消費税額または適用税率
車両番号
利用者名
支払方法
カード種別
レシート画像またはPDF
カード明細との対応関係
特に、社用車が複数ある会社では、どの車両のガソリン代なのかを把握することも重要です。
経費精算システムに車両番号や利用目的を入力できるようにしておくと、法人税上の経費性や消費税の仕入税額控除の確認もしやすくなります。
社内ルールで従業員に周知したい内容
ガソリン代のインボイス対応は、経理担当者だけで完結するものではありません。
実際に給油するのは従業員であることが多いため、現場への周知が欠かせません。
社内では、次のような内容を案内しておくとよいでしょう。
給油時には必ずレシートを受け取る
セルフスタンドでもレシートを忘れずに発行する
法人カード利用時もレシート保存が必要
掛カードの場合は会社から指定された書類を保存する
レシートを紛失した場合は速やかに報告する
電子レシートは削除せず会社のルールに従って保存する
経費精算時にレシート画像を添付する
登録番号が記載されたレシートか確認する
特に、これまでカード明細だけで処理していた会社では、従業員が「カードで払ったからレシートはいらない」と思っていることがあります。
インボイス制度後は、カード決済であってもレシート保存が必要なケースがあることを明確に伝えておきましょう。
買手側が確認したいレシートのポイント
会社がガソリン代のレシートを受け取ったら、次の点を確認しましょう。
ガソリンスタンド名が記載されているか
登録番号が記載されているか
給油日が記載されているか
ガソリン、軽油など取引内容が分かるか
金額が記載されているか
適用税率または消費税額等が記載されているか
カード明細や経費精算内容と金額が一致しているか
社用車の利用に関する支出であることが分かるか
簡易インボイスでは会社名の宛名は不要ですが、登録番号や税率区分などが不足している場合は、仕入税額控除の証憑として不十分になる可能性があります。
また、私用車や私的利用分が混在している場合には、業務使用分を区分する必要があります。
帳簿への記載も忘れずに
仕入税額控除を受けるためには、レシートなどの請求書等の保存だけでなく、帳簿への記載も必要です。
ガソリン代については、帳簿に次のような内容を記載します。
課税仕入れの相手方の名称
取引年月日
取引内容
支払金額
税率区分
車両や利用目的に関する情報
実務上は、会計ソフトや経費精算システムに入力する際に、取引先名、日付、金額、税区分、摘要を正しく入力することになります。
レシートを保存していても、帳簿の記載が不十分であれば、税務調査時に確認に時間がかかります。特に、ガソリン代は件数が多くなりやすいため、摘要欄に「社用車ガソリン代」「営業車給油」など、内容が分かる記載をしておくとよいでしょう。
実務上のチェックポイント
社用車のガソリン代については、次の点を確認しましょう。
利用している給油カードの種類を把握しているか
クレジットカード決済の場合、給油時のレシートを保存しているか
掛カードの場合、後日発行される請求書がインボイス対応しているか
セルフスタンド利用時にもレシートを保存しているか
レシートに登録番号が記載されているか
電子レシートの保存方法を決めているか
カード明細とレシートを照合できるか
経費精算システムにレシート画像を添付しているか
従業員へレシート受領ルールを周知しているか
帳簿の記載内容が整っているか
インボイス制度では、ガソリン代のような日常的な支出ほど、運用ルールが重要になります。1件ごとの金額は大きくなくても、件数が多いと保存漏れや確認漏れが起きやすくなります。
まとめ
社用車のガソリン代について、会社が消費税の仕入税額控除を受けるためには、原則としてインボイスまたは簡易インボイスの保存が必要です。
ガソリン販売は小売業に該当するため、ガソリンスタンドが発行するレシートは、簡易インボイスとして取り扱われる場合があります。
現金払いの場合はもちろん、クレジットカードで都度決済する場合も、給油時に発行されるレシートの保存が必要です。クレジットカード会社の利用明細だけでは、通常、インボイスの保存要件を満たしません。
一方、掛カードを利用している場合には、給油時のレシートではなく、後日発行される請求書がインボイスとして整備されるケースがあります。自社で利用しているカードがどのタイプなのか、どの書類を保存すべきなのかを確認しておきましょう。
また、セルフスタンドでの給油であっても、基本的には自動販売機特例には該当しないため、有人スタンドと同様にレシート等の保存が必要です。
社用車のガソリン代は日常的に発生する経費です。従業員にレシート受領を周知し、法人カード明細や掛カード請求書との照合、電子レシートの保存、経費精算システムでの管理を整えておきましょう。
ガソリン代のインボイス対応や経費精算ルールの見直しで不安がある場合は、税理士へ相談することをおすすめします。
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【この記事の執筆者】
安田 亮(公認会計士・税理士)
安田亮公認会計士・税理士事務所 代表
京都大学経済学部在学中に公認会計士試験に合格。有限責任 あずさ監査法人、株式会社神戸製鋼所での実務経験を経て、2018年に神戸市で独立。
現在は、中小企業から上場企業に対する税務顧問、決算支援、税効果会計、連結決算、新リース会計基準への対応、組織再編、補助金・助成金に関する支援などを行なっています。また、金融機関や大手企業が運営する税務・会計・経営分野のWebメディアにおいて、記事の執筆・監修にも携わっています。
事務所ブログでは、税制改正や会計基準、経営実務に関する情報を、専門用語をできるだけかみ砕き、経営者や経理担当者の方に役立つ形で解説しています。






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