100%子法人の外形標準課税に負担軽減措置|東京都Q&Aと新リース会計基準の取扱いを解説
こんにちは!代表の安田です。
令和6年度税制改正では、法人事業税の外形標準課税の対象法人について見直しが行なわれました。
その一つが、一定の大規模法人の100%子法人等に対する見直しです。
これにより、資本金が1億円以下であっても、一定の100%子法人等については、2026年4月1日以後に開始する事業年度から外形標準課税の対象となっています。
一方、制度変更によって法人事業税の負担が急激に増える法人については、一定期間の「負担変動軽減措置」が設けられています。
東京都主税局は2026年9月18日、この負担変動軽減措置に関するQ&Aを公表しました。
さらに同日、「外形標準課税に関するQ&A」も更新し、新リース会計基準を適用した場合の付加価値割の取扱いについて新たな説明を追加しています。
本記事では、100%子法人等に係る外形標準課税の改正、負担軽減措置、新リース会計基準適用後の支払賃借料について整理します。
100%子法人でも外形標準課税の対象になるケース
従来、外形標準課税の対象法人を考える際には「資本金1億円超」が重要な基準でした。
しかし、令和6年度税制改正では、一定の100%子法人等について対象範囲が拡大されています。
具体的には、払込資本の額(資本金+資本剰余金)が50億円を超える親法人を「特定法人」とし、その100%子法人等について、
資本金:1億円以下
払込資本の額:2億円超
であれば、外形標準課税の対象となります。
<判定イメージ>
項目 | 要件 |
親法人の払込資本 | 50億円超 |
持株関係 | 原則100% |
子法人の資本金 | 1億円以下でも対象となり得る |
子法人の払込資本 | 2億円超 |
適用開始 | 2026年4月1日以後開始事業年度 |
つまり、「当社は資本金1億円以下だから外形標準課税とは関係ない」とは限らなくなっています。
大企業グループの100%子会社では、資本金だけでなく資本金+資本剰余金まで確認することが重要です。
急激な負担増を抑える「負担変動軽減措置」
今回の改正によって新たに外形標準課税の対象となると、法人事業税の計算方法そのものが変わります。
そこで一定期間について、税負担の急激な増加を抑えるための措置が設けられています。
対象期間は、2026年4月1日から2028年3月31日までの間に開始する事業年度です。
「基準法人事業税額」と「比較法人事業税額」を比較
負担変動軽減措置では、次の2つの税額を比較します。
<基準法人事業税額>
実際に外形標準課税の対象法人として計算した法人事業税額
<比較法人事業税額>
仮に外形標準課税の対象外だったものとして計算した法人事業税額
そして、「基準法人事業税額 > 比較法人事業税額」となる場合、その差額の一部を法人事業税から控除します。
初年度は差額の3分の2、翌年度は3分の1を控除
軽減割合は事業年度によって異なります。
開始する事業年度 | 控除額 |
2026年4月1日~2027年3月31日 | 超過額×3分の2 |
2027年4月1日~2028年3月31日 | 超過額×3分の1 |
段階的に控除割合が縮小する仕組みです。
<簡単な計算例>
例えば、
基準法人事業税額:1,000万円
比較法人事業税額:700万円
だったとします。
差額は、1,000万円-700万円=300万円です。
2026年4月1日~2027年3月31日に開始する事業年度であれば、300万円×2/3=200万円を法人事業税額から控除するイメージになります。
控除は法人事業税「全体」から行う
東京都主税局のQ&Aでは、負担変動軽減措置の控除方法も示されています。
控除は、特定の税目部分だけから行うのではなく、法人事業税額全体から行なうとされています。
次の順番で控除すると整理されています。
付加価値割
資本割
収入割
申告書作成時には、単に最終税額から一括控除するのではなく、Q&Aで示された取扱いを確認する必要があります。
中間申告では負担変動軽減措置を使えない
今回のQ&Aで特に実務上重要なのが、中間申告の取扱いです。
負担変動軽減措置は、確定申告に係る法人事業税に適用されます。
そのため、中間申告では控除できません。
<整理>
申告 | 負担変動軽減措置 |
中間申告 | 適用不可 |
確定申告 | 適用可能 |
期限後の確定申告 | 適用可能 |
資金繰りを考える際には、「最終的には軽減されるから中間納付も減る」と誤解しないよう注意が必要です。
期限後申告でも控除できる
一方、確定申告書の提出が期限後になった場合については、期限後申告でも負担変動軽減措置を適用できることがQ&Aで示されています。
これは実務上かなり重要なポイントです。
税制上の優遇措置には「期限内申告」が要件となるものもありますが、今回の負担変動軽減措置については、添付資料上、期限後申告でも控除可能とされています。
もちろん、期限後申告そのものに係る他の影響とは別に考える必要があります。
適用には「第6号様式別表5の7」の添付が必要
負担変動軽減措置を適用する場合には、第6号様式別表5の7「令和6年改正法附則第8条第2項の控除額に関する計算書」を確定申告書に添付します。
したがって、外形標準課税対象法人となったことだけで自動的に税額が軽減されるわけではありません。
決算・申告時に適用可否を確認し、必要な別表を作成する必要があります。
新リース会計基準と外形標準課税にも注意
今回、東京都主税局は100%子法人関係だけでなく、「外形標準課税に関するQ&A」も更新しています。
追加されたのが、新リース会計基準適用後の純支払賃借料の取扱いです。
新リース会計基準では、借手について原則としてすべてのリースをオンバランスすることとされています。
その結果、従来「賃借料」として処理していたオフィス賃料などについて、会計上は、
使用権資産の減価償却費
リース負債に係る支払利息
として費用計上するケースが生じます。
では、外形標準課税の付加価値割でも「支払賃借料」がなくなるのでしょうか。
結論は必ずしもそうではありません。
オペレーティング・リースの賃料は「支払賃借料」
資料によると、オフィスの賃借が法人税法上の一定のリース取引に該当せず、いわゆるオペレーティング・リース取引に該当する場合には、土地・家屋を使用する対価としてその事業年度に支払うこととされる金額は、付加価値割における、「支払賃借料」の対象となります。
<会計と外形標準課税を比較>
項目 | 新リース会計基準 | 外形標準課税 |
オフィス賃料 | 使用権資産を計上 | ― |
費用 | 減価償却費+支払利息 | ― |
土地・家屋使用の対価 | 会計上「賃借料」ではない場合あり | 支払賃借料の対象 |
つまり、会計上「賃借料」という勘定科目がなくなった=外形標準課税の支払賃借料もゼロではありません。
これは新リース会計基準導入後の申告実務で特に注意したい点です。
勘定科目だけで付加価値割を集計すると誤る可能性
従来、会計帳簿の「地代家賃」「賃借料」勘定を集計して支払賃借料を算出するという方法を採っていた企業もあるでしょう。
しかし、新リース会計基準では、同じオフィス賃貸借契約であっても会計上、減価償却費+支払利息へ形が変わります。
そのため、新基準適用後は、勘定科目だけを機械的に抽出すると、付加価値割の支払賃借料を漏らす可能性があります。
実務では、リース契約単位で税務上の性質を確認することが重要になります。
会計上の「支払利息」が純支払利子になるとは限らない
もう一つ重要な取扱いがあります。
新リース会計基準では、リース開始日に未払いとなっているリース料総額と、リース負債の当初現在価値との差額について、「支払利息」としてリース期間にわたり費用計上します。
しかし東京都主税局のQ&Aでは、この金額は、付加価値割の純支払利子を計算するときの、「支払利子」には含めないとされています。
<ここが重要>
会計処理 | 外形標準課税上の取扱い |
使用権資産の減価償却費 | 会計表示だけでは判断しない |
リース負債の利息相当額 | 純支払利子の「支払利子」に含めない |
オペリースの土地・家屋使用対価 | 支払賃借料に含める |
会計上の費用区分と、外形標準課税上の付加価値額計算が一致しない点に注意が必要です。
新リース会計基準適用後は税務用の組替えが重要
今回のQ&Aから、外形標準課税対象法人では新リース会計基準導入後、財務会計の数字をそのまま付加価値割計算に使えないケースが増えることが分かります。
例えばオフィス賃料について、会計上は、「減価償却費+支払利息」となっていても、外形標準課税上は、「土地・家屋使用の対価→支払賃借料」として別途把握する必要があります。
そのため、決算時に契約書から再集計するのではなく、平時から税務用の管理項目を設定しておくとよいでしょう。
実務担当者向けチェックリスト
確認項目 | 内容 |
親法人 | 払込資本50億円超か |
持株関係 | 100%子法人等に該当するか |
子法人資本金 | 1億円以下か |
子法人払込資本 | 2億円超か |
適用年度 | 2026年4月1日以後開始か |
軽減措置 | 基準税額>比較税額か |
中間申告 | 軽減措置を適用していないか |
確定申告 | 別表5の7を添付したか |
リース | オペレーティング・リースがあるか |
賃借料 | 会計科目だけで集計していないか |
リース利息 | 純支払利子へ誤算入していないか |
100%子法人はグループ単位で確認したい
今回の改正では、子法人単体の資本金だけを見ても適用関係を判断できません。
まず親法人の払込資本を確認し、そのうえで、
完全支配関係
子法人の資本金
子法人の資本剰余金
を確認する必要があります。
特にグループ内で増資や資本剰余金の変動がある場合には、外形標準課税の判定への影響も検討しておく必要があります。
よくある疑問
Q. 資本金1億円以下なら外形標準課税の対象外ですか?
A. 必ずしもそうではありません。払込資本50億円超の特定法人の100%子法人等で、資本金1億円以下でも払込資本の額が2億円を超える場合には、2026年4月1日以後開始事業年度から外形標準課税の対象となります。
Q. 負担変動軽減措置はいつまでありますか?
A. 今回の100%子法人等への対応については、2026年4月1日から2028年3月31日までの間に開始する事業年度について設けられています。
Q. 中間申告でも軽減措置を利用できますか?
A. 利用できません。確定申告に係る法人事業税について適用されます。
Q. 期限後申告になったら軽減措置は使えませんか?
A. 東京都主税局Q&Aでは、期限後申告でも負担変動軽減措置による控除が可能とされています。
Q. 新リース会計基準でオフィス家賃を減価償却費等にしても支払賃借料になりますか?
A. 法人税法上の一定のリース取引以外、いわゆるオペレーティング・リースに該当する場合、土地・家屋の使用対価として支払う金額は、付加価値割の「支払賃借料」の対象になるとされています。
Q. リース負債の利息は純支払利子に含めますか?
A. 今回のQ&Aでは、リース料総額と当初現在価値との差額として会計上計上する支払利息は、付加価値割の純支払利子における「支払利子」には含めないとされています。
まとめ
東京都主税局は2026年9月18日、100%子法人等の外形標準課税見直しに伴う負担変動軽減措置Q&Aを公表するとともに、外形標準課税Q&Aへ新リース会計基準に関する内容を追加しました。
今回押さえておきたいポイントは次のとおりです。
払込資本50億円超の特定法人の100%子法人等が対象になり得る
資本金1億円以下でも払込資本2億円超なら外形標準課税の対象となり得る
2026年4月1日以後開始事業年度から適用
負担増部分について初年度は3分の2、翌年度は3分の1を控除
中間申告では負担変動軽減措置を適用できない
期限後の確定申告でも適用可能
適用時は第6号様式別表5の7を添付
新リース会計基準で会計上賃借料がなくなっても、オペリースの賃料は支払賃借料になり得る
リース負債の利息相当額は純支払利子の「支払利子」に含めない
特に新リース会計基準適用会社では、会計上の勘定科目と外形標準課税上の「支払賃借料」「支払利子」の範囲が一致しないことがポイントです。
決算時に会計データだけから機械的に付加価値割を計算するのではなく、リース契約の内容を踏まえて税務上の組替えが必要か確認するとよいでしょう。
神戸での起業や開業に関するご相談、確定申告にお困りの方、顧問税理士をお探しの方は安田亮公認会計士・税理士事務所までお問い合わせください!
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【この記事の執筆者】
安田 亮(公認会計士・税理士)
安田亮公認会計士・税理士事務所 代表
京都大学経済学部在学中に公認会計士試験に合格。有限責任 あずさ監査法人、株式会社神戸製鋼所での実務経験を経て、2018年に神戸市で独立。
現在は、中小企業から上場企業に対する税務顧問、決算支援、税効果会計、連結決算、新リース会計基準への対応、組織再編、補助金・助成金に関する支援などを行なっています。また、金融機関や大手企業が運営する税務・会計・経営分野のWebメディアにおいて、記事の執筆・監修にも携わっています。
事務所ブログでは、税制改正や会計基準、経営実務に関する情報を、専門用語をできるだけかみ砕き、経営者や経理担当者の方に役立つ形で解説しています。






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