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【2027年相続税改正】貸付用不動産の評価方法が見直しへ|取得後5年以内は原則「通常の取引価額」に

執筆者の写真: 安田亮
安田亮
16 時間前
読了時間: 10分

こんにちは!代表の安田です。


不動産を活用した相続税対策に大きな影響を与える可能性のある見直しが進んでいます。

国税庁は2026年9月18日、「貸付用不動産の評価について」の通達案を公表し、意見公募手続を開始しました。


令和8年度税制改正大綱で示された方針を踏まえ、一定の貸付用不動産について、従来とは異なる評価方法を導入する内容です。


予定どおり制度化された場合、2027年1月1日以後の相続・遺贈・贈与から新しい評価方法が適用されます。


今回のポイントは、相続や贈与の直前に購入した賃貸マンションなどについて、従来の財産評価基本通達による評価ではなく、原則として課税時期における通常の取引価額で評価する点です。


本記事では、どの不動産が対象になるのか、取得価額から評価する方法、対象外となるケース、不動産小口化商品への影響まで解説します。


取得後5年以内の貸付用不動産が新評価の対象

新しい評価方法の対象となるのは、土地・家屋等のうち、相続・贈与等の課税時期前5年以内に、対価を伴う取引によって取得または新築された一定の貸付用不動産です。


<対象となる主な資産>

資産

内容

貸家

全部または一部が借家権の目的となっている家屋

家屋の附属設備・構築物

家屋とともに賃貸しているもの

貸家の敷地

貸家の敷地として使用している宅地

土地上の権利

貸家の敷地となっている借地権等

一体で貸している土地等

一定の土地・権利を含む

つまり、典型的には、

  • 賃貸マンション

  • 賃貸アパート

  • 賃貸用戸建住宅

  • 貸家の敷地

などが関係します。


なぜ貸付用不動産の評価方法を見直すのか

従来、相続税・贈与税における土地や建物は、財産評価基本通達により評価します。

そのため、不動産の実際の購入価格と相続税評価額との間に大きな差が生じることがあります。


今回の通達案では、相続や贈与の直前に取得した一定の貸付用不動産について、こうした評価差をそのまま利用するのではなく、より実際の取引価格に近い評価を行う方向が示されています。


資料では、評価の適正化を図るため、新しい評価通達を設けると説明されています。


原則は「課税時期における通常の取引価額」

対象となる貸付用不動産については、原則として、相続・贈与等の課税時期における通常の取引価額で評価します。


例えば、被相続人が相続開始の3年前に賃貸マンションを購入していた場合、その物件が新制度の対象になれば、従来の路線価等による評価だけではなく、新しい通達に基づく評価を検討することになります。


取得価額を基礎にした評価も可能

毎回、不動産鑑定などによって通常の取引価額を求めなければならないわけではありません。


貸付用不動産の取得価額について、「取得時の通常の取引価額に相当する」と認められる場合には、その取得価額を基礎として一定の調整を行った金額で評価できます。


土地は「取得価額×地価変動率×80%」

土地等については、取得価額 × 地価変動率 × 80%という考え方です。

地価変動率は、課税時期の年の路線価等 ÷ 取得時の年の路線価等を基礎として計算します。


<例>

例えば、

  • 土地取得価額:5,000万円

  • 取得時の評価基準額:4,000万円

  • 相続時の評価基準額:4,400万円

であれば、

地価変動率は、4,400万円 ÷ 4,000万円=1.1となります。


単純化すると、5,000万円×1.1×80%=4,400万円というイメージになります。


建物は「取得価額-減価分」の80%

家屋や附属設備・構築物については、(取得価額-償却費等)×80%を基本とします。

減価額は、定額法によって計算するものとされています。


また、取得時から課税時期までの期間に1年未満の端数がある場合には、その端数を1年として計算する案です。


<新ルールの整理>

資産

取得価額を使う場合の基本的な評価

土地等

取得価額×地価変動率×80%

家屋等

(取得価額-償却費等)×80%

取得後それほど時間が経っていない貸付用不動産では、従来の相続税評価額との差が大きくなる可能性があります。


「5年」をどこから数える?

判定基準となるのは、相続・贈与等の課税時期前5年以内です。

したがって、例えば2027年10月1日に相続が開始した場合には、原則としてその5年前まで遡り、対象となる取得・新築があったかを確認することになります。


実務では、

  • 不動産売買契約書

  • 建築請負契約書

  • 引渡日

  • 取得価額

  • 改良費・設備費

などを確認できるようにしておくことが重要になります。


すべての5年以内取得物件が対象になるわけではない

今回の通達案では、課税時期前5年以内に取得等した貸付用不動産であっても、課税上の弊害がない一定のケースについては、新しい評価方法の対象外とする案が示されています。


大きく5つの類型が示されています。


<主な対象外ケース>

類型

概要

① 収用等に伴う代替資産等

収用・交換処分・換地処分等により取得した一定の資産

② 固定資産の交換

所得税法58条の交換特例を利用した一定の資産

③ 特定事業用資産の買換え

一定の買換え特例を利用した資産

④ 一定の増築・改築部分

5年以内の増改築でも一定の場合

⑤ 経過措置対象の家屋

通達制定日までに新築済み・建築中の一定の家屋


個別要件は複雑ですので、単に「5年前以内に取得した」という事実だけで判断しないことが重要です。


すでに建築中の物件には経過措置も

資料3~4ページでは、通達制定日までに一定の土地に新築された家屋について、新制度の対象外とする経過措置案も示されています。


「建築中」と認められるためには、通達制定日までに、

  • 建築請負契約等を締結

  • 実際に新築工事が行われている

  • 工事代金の全部または一部を支払っている

ことが必要とされています。


「契約だけしてまだ工事を開始していない」という場合まで当然に対象となるわけではない点に注意が必要です。


非上場株式の純資産価額評価には適用しない

非常に重要なのがこの点です。

会社が貸付用不動産を所有している場合、その会社の株式を純資産価額方式で評価するときも、この新しい不動産評価を使うのか?という疑問が生じます。


今回の通達案では、純資産価額方式等による非上場株式評価において、評価会社が保有する土地・家屋等を評価する際には今回の新ルールを適用しないとしています。


<整理>

ケース

今回の新評価

個人が所有する一定の貸付用不動産を相続

対象になり得る

個人が所有する一定の貸付用不動産を贈与

対象になり得る

非上場会社所有の不動産を純資産価額方式で株価評価

対象外

不動産を個人で所有している場合と法人所有の場合とで、今回の改正の影響が異なる可能性があります。


不動産小口化商品も新評価の対象

今回の見直しは、現物の賃貸マンション等だけではありません。

不動産特定共同事業等により小口化された「特定小口化商品」についても、新しい評価方法が示されています。


原則として、その商品の対象となっている貸付用不動産を、課税時期における通常の取引価額で評価します。


ただし、元本等相当額が適正な価格情報に基づいていると認められる場合には、一定の簡便的な方法も認められる案です。


不動産小口化商品はP1・P2・P3で評価可能

資料5ページでは、小口化商品の評価について3つの指標が示されています。

条件を満たす場合には、P1・P2・P3のうち最も低い金額で評価できる案です。


<評価方法>

区分

内容

P1

原則、元本等相当額×90%

P2

課税時期における貸付用不動産の精通者意見価格等

P3

課税時期前1年以内の一定の鑑定評価額×95%

P1についても、事業開始後5年以内かどうかなどによって計算方法が変わります。


5年以内に開始した小口化商品では95%評価も

特定小口化商品の事業が課税時期前5年以内に開始されている場合、単純な元本等相当額×90%ではなく、現物不動産と同様の調整を行った金額の95%を用いる仕組みが示されています。


相続税対策として不動産小口化商品を利用している場合には、今回の改正によって従来より評価額が上昇する可能性があります。


「相続直前に賃貸不動産を購入すれば節税」は見直しが必要

今回の改正案によって特に影響を受ける可能性があるのは、

相続開始前の数年間に、相続税評価額の圧縮を目的として賃貸不動産を購入するケース

です。

新制度では、課税時期前5年以内の一定の貸付用不動産について通常の取引価額を基礎として評価します。


そのため、現金1億円を1億円の賃貸マンションへ換えれば、相続税評価額を大幅に下げられるという従来型の考え方については、新制度施行後、同じ効果を期待できないケースが増えると考えられます。


2027年以後に相続・贈与を予定している場合のチェックポイント

確認項目

内容

物件の用途

貸付用不動産か

取得・新築時期

課税時期前5年以内か

取得方法

対価を伴う取引か

取得価額

契約書等で確認できるか

土地

地価変動率を計算できるか

建物

償却費等を計算できるか

例外

対象外類型に該当しないか

経過措置

通達制定日前の建築等か

所有形態

個人所有か法人所有か

小口化商品

特定小口化商品に該当するか

よくある疑問

Q. いつから新しい評価方法が適用されますか?

A. 通達案では、2027年1月1日以後の相続・遺贈・贈与から適用する予定です。


Q. 何年前に購入した物件が対象になりますか?

A. 原則として、課税時期前5年以内に対価を伴う取引により取得・新築された一定の貸付用不動産が対象です。


Q. 必ず不動産鑑定が必要ですか?

A. 必ずとは限りません。取得価額が取得時の通常の取引価額に相当すると認められる場合には、取得価額へ地価変動や減価等の調整を行い、その80%相当額で評価する方法も示されています。


Q. 会社が持っている賃貸不動産にも適用されますか?

A. 純資産価額方式等で非上場株式を評価する際、評価会社が所有する土地・家屋等については、今回の新しい評価方法を適用しない案となっています。


Q. 不動産小口化商品も対象ですか?

A. 対象となります。特定小口化商品の目的となっている貸付用不動産についても通常の取引価額を原則とし、一定の場合には元本等相当額や精通者意見価格、鑑定評価額を利用する評価方法が示されています。


まとめ

国税庁は、令和8年度税制改正を受け、貸付用不動産の相続税・贈与税評価を見直す通達案を公表しました。


今回のポイントは次のとおりです。

  • 2027年1月1日以後の相続・贈与等から適用予定

  • 課税時期前5年以内に取得・新築した一定の貸付用不動産が対象

  • 原則として課税時期の通常の取引価額で評価

  • 一定の場合は取得価額を基礎にした80%評価も可能

  • 土地は地価変動率を反映

  • 家屋は償却費等を控除

  • 収用・買換え等の一定資産には適用除外あり

  • 通達制定日前の一定の建築済み・建築中物件には経過措置

  • 非上場株式の純資産価額評価には今回の新ルールを適用しない

  • 不動産小口化商品にも新たな評価方法を導入


相続税対策として貸付用不動産を購入する場合、今後は「購入価格と相続税評価額との差」だけを見て投資判断することが難しくなる可能性があります。


特に2027年以後の相続・贈与を想定して、直近5年以内に賃貸不動産を購入・新築している方は、今回の通達案による評価額を試算しておくことをおすすめします。



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【この記事の執筆者】

安田 亮(公認会計士・税理士)

安田亮公認会計士・税理士事務所 代表

京都大学経済学部在学中に公認会計士試験に合格。有限責任 あずさ監査法人、株式会社神戸製鋼所での実務経験を経て、2018年に神戸市で独立。

現在は、中小企業から上場企業に対する税務顧問、決算支援、税効果会計、連結決算、新リース会計基準への対応、組織再編、補助金・助成金に関する支援などを行なっています。また、金融機関や大手企業が運営する税務・会計・経営分野のWebメディアにおいて、記事の執筆・監修にも携わっています。

事務所ブログでは、税制改正や会計基準、経営実務に関する情報を、専門用語をできるだけかみ砕き、経営者や経理担当者の方に役立つ形で解説しています。


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