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外貨建生命保険を解約した場合の税金は?一時所得と為替差益の考え方を税理士が解説

執筆者の写真: 安田亮
安田亮
6 分前
読了時間: 14分

こんばんは!代表の安田です。


円安や海外金利の上昇を背景に、外貨建生命保険に加入している方から「今解約すると税金はどうなるのか」という相談を受けることがあります。


外貨建生命保険は、米ドルや豪ドルなどの外貨で保険料を支払い、解約返戻金や保険金も外貨建てで計算される保険商品です。


円建ての保険よりも予定利率が高く見えることがあり、保障だけでなく資産運用の一部として加入している方も少なくありません。


一方で、外貨建生命保険を解約するときには、税金の計算に注意が必要です。

特に、円安が進んでいる局面では、外貨ベースではそれほど利益が出ていなくても、円換算すると大きな利益が出ることがあります。


この場合

  • 外貨建生命保険の解約益は一時所得なのか

  • 為替差益は雑所得として別に計算するのか

  • ドルで受け取った場合も円換算が必要なのか

といった疑問が出てきます。


本日は、外貨建生命保険を解約した場合の一時所得の計算方法と、為替差損益の取扱いについて解説します。


外貨建生命保険とは

外貨建生命保険とは、保険料の支払い、保険金、解約返戻金などが外貨で計算される生命保険契約です。


代表的な通貨としては、米ドル、豪ドル、ユーロなどがあります。


外貨建生命保険には、主に次のような特徴があります。

  • 円建て保険より予定利率が高く設定されることがある

  • 保険料や解約返戻金が外貨で計算される

  • 為替相場の影響を受ける

  • 円安になると円換算額が増える可能性がある

  • 円高になると円換算額が減る可能性がある

  • 保障機能と資産運用機能の両面を持つことがある


外貨建生命保険は、保険商品であると同時に、為替リスクを伴う金融商品でもあります。


そのため、解約時には、保険契約としての所得計算と、外貨建取引としての円換算をあわせて考える必要があります。


生命保険を解約した場合の所得区分

個人が生命保険契約を解約し、解約返戻金を受け取った場合、その所得は原則として一時所得に該当します。


一時所得とは、営利を目的とする継続的行為から生じた所得ではなく、労務や役務の対価、資産の譲渡による対価にも該当しない一時的な所得をいいます。


生命保険契約の解約返戻金は、保険契約に基づいて一時的に受け取る金銭であるため、一般的には一時所得として取り扱われます。


一時所得は、次のように計算します。

総収入金額 - 収入を得るために支出した金額 - 特別控除額(最高50万円)= 一時所得の金額


そして、課税対象になるのは、一時所得の金額の2分の1です。

つまり、解約返戻金から支払保険料などを差し引き、さらに最高50万円の特別控除を控除した残額の2分の1が、給与所得や事業所得など他の所得と合算されます。


外貨建生命保険も一時所得として計算する

外貨建生命保険であっても、生命保険契約を解約して解約返戻金を受け取るという点は、円建ての生命保険と同じです。


そのため、個人が外貨建生命保険を解約して解約返戻金を受け取った場合、原則として一時所得として計算します。


ただし、円建て保険と違うのは、収入金額や支出した金額が外貨で表示されている点です。


所得税は日本円で計算するため、外貨建ての金額を円換算する必要があります。

たとえば、米ドル建ての生命保険で、支払保険料が10万ドル、解約返戻金が11万ドルだったとします。


外貨ベースでは1万ドルの利益です。

しかし、実際の一時所得の計算では、単に「11万ドル-10万ドル」として終わるわけではありません。


解約返戻金や支払保険料を、それぞれ所得税上のルールに従って円換算し、日本円で一時所得を計算します。


外貨建取引は取引時の為替レートで円換算する

外貨建取引については、原則として、その取引を行なった時における為替レートにより円換算した金額で所得を計算します。


外貨建生命保険の解約返戻金についても、収入金額を認識する時点、つまり解約返戻金を受け取る時点の為替レートで円換算して計算します。


このとき、一般的には電信売買相場の仲値、いわゆるTTMを用いて円換算することが基本になります。


たとえば、解約返戻金が11万ドルで、解約時の為替レートが1ドル150円であれば、収入金額は1,650万円として計算します。


11万ドル × 150円 = 1,650万円


一方、過去に支払った保険料については、保険料を支払った時点の為替レートで円換算した金額を基に、収入を得るために支出した金額として計算することになります。


そのため、外貨ベースの差額だけでなく、保険料支払時と解約時の為替レートの差が、一時所得の計算に影響します。


為替差益を雑所得として別計算するとは限らない

外貨建資産について、円安により利益が出た場合、「為替差益は雑所得になる」と考える方もいます。


たしかに、単に保有していた外貨預金を円に換えた場合など、為替変動による利益が雑所得になるケースはあります。


しかし、外貨建生命保険の解約では、為替差益部分を必ず雑所得として分けるわけではありません。重要なのは、その為替差益がどのような取引から生じているかです。


外貨建生命保険の解約返戻金は、生命保険契約の解約という取引から生じるものです。


そして、その解約返戻金に係る所得は一時所得として計算します。

解約返戻金の収入金額を解約時の為替レートで円換算するため、円安による為替差益部分も、一時所得の計算の中に含まれることになります。


つまり、外貨建生命保険の解約により得た利益について、保険契約部分は一時所得、為替差益部分は雑所得、というように単純に分けるわけではありません。


<具体例:10万ドル支払い、11万ドルで解約した場合>

具体例で確認してみましょう。前提は次のとおりです。

  • 外貨建生命保険の支払保険料:10万ドル

  • 解約返戻金:11万ドル

  • 保険料支払時の為替レート:1ドル100円

  • 解約時の為替レート:1ドル150円


まず、支払保険料を円換算します。

10万ドル × 100円 = 1,000万円


次に、解約返戻金を円換算します。

11万ドル × 150円 = 1,650万円


この場合、一時所得の計算上、収入金額は1,650万円、収入を得るために支出した金額は1,000万円です。


差額は650万円です。


ここから一時所得の特別控除額50万円を差し引きます。

650万円 - 50万円 = 600万円


一時所得は、その2分の1が課税対象になるため、他の所得と合算される金額は300万円です。


600万円 × 1/2 = 300万円


この例では、外貨ベースの利益は1万ドルだけですが、円換算では為替レートの影響により大きな利益が生じています。


この円安による増加部分も、解約返戻金に係る一時所得の計算に含めて処理します。


ドルで受け取っても所得計算は変わらない

外貨建生命保険を解約した場合、解約返戻金を円で受け取るか、ドルなどの外貨で受け取るかを選べることがあります。


ここで、「ドルで受け取れば円換算しなくてよいのではないか」と考える方がいるかもしれません。


しかし、所得税の計算では、外貨建取引について円換算が必要です。

解約返戻金を円で受け取る場合でも、ドルで受け取る場合でも、解約時の為替レートで円換算して一時所得を計算します。


つまり、ドルで受け取って外貨預金口座にそのまま置いておいたとしても、外貨建生命保険を解約した時点で、解約返戻金に係る一時所得の計算は必要になります。


「まだ円に換えていないから利益は確定していない」と考えるのは危険です。

生命保険契約を解約し、解約返戻金を受け取った時点で、所得税上は収入金額を認識することになります。


個人は年末の為替換算替えをしない

法人の場合、外貨預金などについて、期末時点の為替レートで換算替えを行い、為替差損益を認識することがあります。


そのため、個人でもドルを保有したまま年末を迎えたら、年末レートで為替差損益を計算する必要があるのではないかと疑問に思う方もいます。


しかし、個人の所得税では、法人税のような外貨預金等の期末換算替えの規定はありません。


そのため、個人が外貨のまま解約返戻金を受け取り、そのままドル口座で保有して年末を迎えたとしても、年末レートで換算替えをして為替差損益を認識する必要はありません。


ただし、その後に外貨を円に換えた場合には、外貨預金などの為替差損益について、別途、雑所得として課税関係が生じる可能性があります。


つまり、生命保険の解約時点と、その後に外貨を円転する時点は、別の取引として整理する必要があります。


解約後にドルを円に換えた場合

外貨建生命保険を解約してドルで受け取り、その後しばらくしてから円に換える場合には、注意が必要です。


解約時には、解約返戻金を解約時の為替レートで円換算し、一時所得を計算します。

その後、ドルを保有し続け、後日円に換えたときに為替レートが変動していれば、その差額について別途、為替差損益が生じることがあります。


たとえば、解約時に1ドル150円で11万ドルを受け取り、その後1ドル155円で円に換えた場合、解約時から円転時までの5円分の為替差益が生じます。


この部分は、生命保険の解約返戻金に係る一時所得ではなく、外貨を保有していたことによる為替差益として、雑所得の対象になる可能性があります。


一方、解約後に円高となり、1ドル145円で円に換えた場合には、為替差損が生じることになります。


このように、解約時点で一時所得を計算し、その後の外貨保有期間に係る為替差損益は別に考える必要があります。


円安による利益を確定したいなら円で受け取ることも検討

外貨建生命保険を解約する理由が「円安による利益を確定したい」というものであれば、解約返戻金を円で受け取ることも検討すべきです。


ドルで受け取ってそのまま外貨預金口座に置いておくと、解約時点では円換算による一時所得を計算する一方、その後も為替リスクを負い続けることになります。


たとえば、解約後に円高が進めば、ドル資産の円換算価値は下がります。

つまり、税務上は解約時の円換算額で一時所得を認識しているにもかかわらず、実際には円に換えていないため、その後の為替変動で資産価値が減る可能性があります。


円安のタイミングで利益を確定したいのであれば、解約返戻金を円で受け取る、または受取後速やかに円転することも選択肢になります。


ただし、為替手数料や保険会社の換算レート、外貨預金口座の取扱いなども確認する必要があります。


支払保険料の円換算資料を保存しておく

外貨建生命保険の一時所得を正しく計算するためには、過去に支払った保険料の円換算額を把握する必要があります。


保険料を毎月または毎年支払っている場合、支払時期ごとに為替レートが異なることがあります。


そのため、解約時になってから過去の支払保険料を円換算しようとすると、資料集めに苦労することがあります。


保存しておきたい資料としては、次のようなものがあります。

  • 保険契約書

  • 保険料の支払明細

  • 外貨建ての保険料額

  • 円で引き落とされた金額

  • 保険会社の為替レート

  • 外貨送金や外貨預金から支払った場合の取引明細

  • 解約返戻金の計算書

  • 解約時の為替レート

  • 解約返戻金の受取通貨


特に、円で保険料を支払っている場合は、実際に円で支払った金額が分かる資料が重要です。


外貨口座から保険料を支払っている場合は、外貨取得時からの為替差損益が別途問題になることもあるため、より慎重に整理する必要があります。


確定申告が必要になるケース

外貨建生命保険を解約して一時所得が発生する場合、確定申告が必要になることがあります。


一時所得には最高50万円の特別控除がありますが、利益が大きい場合や、他の一時所得がある場合には、課税対象額が生じることがあります。


たとえば、次のようなケースでは注意が必要です。

  • 解約返戻金が支払保険料を大きく上回る

  • 円安により円換算額が大きく増えている

  • 同じ年に複数の保険を解約している

  • 満期保険金を受け取っている

  • ふるさと納税の高額返礼品など、他の一時所得がある

  • 懸賞金や保険の満期返戻金などがある


一時所得の特別控除50万円は、外貨建生命保険ごとに使えるわけではありません。

その年の一時所得全体で最高50万円です。

複数の一時所得がある場合は合算して計算する必要があります。


源泉徴収や支払調書との関係

生命保険契約の解約返戻金については、保険会社から支払調書が作成されることがあります。


また、一定の契約については、保険会社から税務署へ支払情報が提出される場合があります。


ただし、保険会社から送られてくる資料だけで、必ずしも正しい一時所得の計算が完結するとは限りません。特に外貨建生命保険では、保険料支払時の円換算額、解約時の円換算額、外貨受取後の円転の有無などを確認する必要があります。


保険会社の通知書、解約計算書、入金明細、外貨預金の取引明細を整理し、確定申告時に税理士へ共有できるようにしておくと安心です。


相続税・贈与税との違いにも注意

この記事では、個人が自分で保険料を負担し、自分で解約返戻金を受け取るケースを前提に説明しています。


しかし、生命保険契約では、契約者、被保険者、保険料負担者、保険金受取人の関係によって、所得税ではなく相続税や贈与税が問題になる場合があります。


たとえば、保険料を負担した人と保険金を受け取る人が異なる場合には、贈与税の対象になることがあります。


また、死亡保険金を受け取る場合には、契約関係によって相続税または所得税・住民税、贈与税のいずれかが問題になります。


外貨建生命保険は為替の論点が目立ちますが、その前に、誰が保険料を負担し、誰が受け取るのかを確認することが大切です。


実務上のチェックポイント

外貨建生命保険を解約する際には、次の点を確認しましょう。

  • 契約者、保険料負担者、受取人は誰か

  • 解約返戻金は誰が受け取るのか

  • 解約返戻金は外貨でいくらか

  • 解約時の為替レートはいくらか

  • 過去に支払った保険料の円換算額はいくらか

  • 外貨ベースだけでなく円換算で利益が出ているか

  • 一時所得の特別控除50万円を超えるか

  • 同じ年に他の一時所得があるか

  • ドルで受け取るのか、円で受け取るのか

  • ドルで受け取った後、円転する予定があるか

  • 外貨預金の為替差損益が別途発生しないか

  • 確定申告が必要か


外貨建生命保険は、保険契約、為替、所得区分が絡むため、円建て保険よりも計算が複雑になりやすい商品です。


解約前に税額の概算を確認しておくと、資金計画を立てやすくなります。


まとめ

外貨建生命保険を解約して解約返戻金を受け取った場合、その所得は原則として一時所得として計算します。


外貨建てで保険料を支払い、外貨建てで解約返戻金を受け取る場合でも、日本の所得税では円換算が必要です。


解約返戻金は、解約時の為替レートで円換算した金額を収入金額とします。一方、支払保険料については、支払時の為替レートなどにより円換算した金額を、収入を得るために支出した金額として計算します。


円安により生じた利益についても、外貨建生命保険の解約という取引から生じるものであるため、通常は一時所得の計算に含めて処理します。為替差益部分を必ず雑所得として分けるわけではありません。


また、解約返戻金をドルで受け取った場合でも、解約時点で一時所得の計算が必要です。個人の所得税では、法人税のように年末時点の外貨残高を換算替えして為替差損益を認識する必要はありません。


ただし、解約後にドルを保有し、その後円に換えた場合には、解約時から円転時までの為替差損益が、別途雑所得として問題になることがあります。


外貨建生命保険を解約する際は、外貨ベースの損益だけでなく、円換算後の一時所得、為替レート、受取通貨、他の一時所得との合算、確定申告の要否を確認しておきましょう。

外貨建生命保険の解約や確定申告で迷う場合は、早めに税理士へ相談することをおすすめします。



神戸での起業や開業に関するご相談、確定申告にお困りの方、顧問税理士をお探しの方は安田亮公認会計士・税理士事務所までお問い合わせください!


【この記事の執筆者】

安田 亮(公認会計士・税理士)

安田亮公認会計士・税理士事務所 代表

京都大学経済学部在学中に公認会計士試験に合格。有限責任 あずさ監査法人、株式会社神戸製鋼所での実務経験を経て、2018年に神戸市で独立。

現在は、中小企業から上場企業に対する税務顧問、決算支援、税効果会計、連結決算、新リース会計基準への対応、組織再編、補助金・助成金に関する支援などを行なっています。また、金融機関や大手企業が運営する税務・会計・経営分野のWebメディアにおいて、記事の執筆・監修にも携わっています。

事務所ブログでは、税制改正や会計基準、経営実務に関する情報を、専門用語をできるだけかみ砕き、経営者や経理担当者の方に役立つ形で解説しています。

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