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育成就労外国人の給与は源泉徴収が必要?2027年4月開始の新制度を税理士が解説

執筆者の写真: 安田亮
安田亮
24 時間前
読了時間: 9分

こんばんは!代表の安田です。


2027年4月1日から、現在の「技能実習制度」に代わって「育成就労制度」がスタートします。


外国人を受け入れている企業にとって、制度変更に伴い注意したいのが所得税の源泉徴収です。


国税庁は2026年9月18日、出入国在留管理庁・厚生労働省からの照会に対する文書回答を公表し、育成就労制度により日本国内で働く外国人が受入れ企業から受け取る給与について、原則として給与所得として所得税の課税対象となり、源泉徴収も必要との考え方を示しました。


現行の技能実習制度では、外国との租税条約の内容によっては一定の技能実習生の給与が所得税免税となるケースがあります。


しかし、育成就労制度では制度目的そのものが変わるため、原則として同じ免税規定を利用できません。


本記事では、技能実習制度との違いを含め、企業が給与計算上注意したいポイントを解説します。


育成就労制度とは?

育成就労制度は、2027年4月1日から開始する新たな外国人受入制度です。


現在の技能実習制度を発展的に解消し、人手不足分野における人材育成と人材確保

を目的として創設されました。


現行の技能実習制度は、日本で身につけた技能を母国へ移転することによる「国際貢献」が大きな目的でした。


一方、育成就労制度では、日本国内で3年間就労することを通じ、特定技能1号水準の技能を持つ人材を育成するとともに、日本国内の人手不足への対応につなげる制度設計となっています。


技能実習制度と育成就労制度の違い

両制度の違いを整理しましょう。

項目

技能実習制度

育成就労制度

制度の目的

技能移転による国際貢献

人材育成・人材確保

在留資格

技能実習

育成就労

在留期間

通算最長5年

原則3年

帰国

帰国を前提とする制度

帰国前提の仕組みを見直し

就労の性格

技能修得が中心

人手不足分野での就労も制度目的


この「制度の目的の違い」が、租税条約上の所得税免税の取扱いにも影響します。


育成就労外国人の給与は原則として源泉徴収対象

育成就労外国人は、受入れ企業である「育成就労実施者」と雇用契約を結びます。


そして、その事業所等において実際に業務へ従事し、その対価として給与を受け取ります。

所得税法上、日本の居住者が雇用契約に基づいて給与を受け取る場合には、原則として給与所得として課税されます。


今回の国税庁の文書回答では、育成就労外国人についても、給与所得として所得税の課税対象・源泉徴収の対象になると整理されました。


したがって、企業側では通常の給与計算と同様に、適用関係を確認したうえで源泉所得税を計算する必要があります。


現行の技能実習では租税条約で免税になる場合がある

ここが今回の制度変更で最も重要な点です。

日本が締結している一部の租税条約には、「専ら訓練を受ける者」などについて、一定の条件を満たせば日本国内で受け取る給与に係る所得税を免除する規定があります。


例として、日タイ租税条約第19条が挙げられます。

現行の技能実習制度は、技能等を日本から母国へ移転することを目的とする制度です。

そのため、外国人技能実習生が租税条約上の「専ら訓練を受ける者」に該当し、一定の場合に給与が所得税免税となるケースがあります。


育成就労ではなぜ免税にならないのか

育成就労制度は、技能実習制度とは制度目的が異なります。


育成就労外国人は、

  • 人手不足分野で働く

  • 幅広い技能を必要とする業務に従事する

  • 雇用契約に基づいて働く

  • その労働の対価として給与を受け取る

ことが予定されています。


つまり、「専ら訓練を受けるために日本へ来ている」とは原則として評価できません。

このため、国税庁は育成就労外国人について、租税条約上の「専ら訓練を受ける者」に該当せず、現行の技能実習生に認められることがある給与免税規定の対象には原則としてならないとしました。


給与税務の違いを整理

企業の給与担当者から見ると、次の違いが重要です。

項目

技能実習

育成就労

給与所得

原則課税

原則課税

租税条約による研修・訓練者免税

条約・要件により適用可能な場合あり

原則対象外

源泉徴収

免税適用時を除き必要

原則必要

制度目的

技能移転

人材育成+人材確保

特に、現在技能実習生について租税条約による免税処理を行なっている企業では、育成就労へ制度が変わった後も同じ給与設定を引き継がないよう注意が必要です。


「外国人だから所得税が免税」ではない

外国人従業員の給与税務では、外国人だから所得税はかからないという考え方は適切ではありません。


実際には、

  • 日本の居住者か非居住者か

  • 給与の勤務場所

  • 日本と本人の母国との租税条約

  • 条約上の免税要件

  • 在留制度の性格

などを確認します。


今回の国税庁文書回答も、育成就労制度の性質を踏まえて、現行の技能実習制度で利用できる場合がある「訓練者等への免税」を原則適用しないことを明確化したものです。


「育成」なのに訓練者免税にならない理由

名称だけを見ると、「育成就労なのだから、訓練を受ける人ではないのか?」と疑問を持つかもしれません。


しかし、租税条約上の判断では制度名だけではなく、制度の実態が重要です。


育成就労制度について、

  • 人材育成だけでなく人材確保も目的

  • 帰国を前提とする要件を撤廃

  • 労働力の需給調整手段としてはならないという技能実習制度の規定が存在しない

  • 必須業務の時間制限を緩和

  • 関連業務・周辺業務という区分を廃止

など、技能実習制度から大きく変更されています。


つまり、育成就労外国人は「訓練だけを受ける人」ではなく、日本の産業を支える労働者としての性格がより強い制度と整理されています。


企業が2027年4月までに確認したいこと

現在技能実習生を受け入れている企業や、今後育成就労外国人を採用する企業では、給与計算体制を確認しておく必要があります。

チェック項目

確認内容

制度

技能実習か育成就労か

制度移行日

2027年4月1日

雇用契約

育成就労実施者との契約内容

居住者判定

日本の所得税上の区分

租税条約

本人の母国との条約内容

免税処理

技能実習時の処理をそのまま継続していないか

源泉所得税

給与から適切に徴収しているか

給与ソフト

新制度対象者の設定を確認したか

現在免税としている技能実習生は特に注意

企業実務では、現在受け入れている技能実習生について租税条約上の免税規定を利用しているケースがあります。


こうした会社では、制度移行時に、「これまで所得税ゼロだったので、そのままゼロで給与計算」としてしまうと、育成就労制度の税務上の取扱いと一致しない可能性があります。


新制度の適用対象となった時点で、

  1. 在留資格

  2. 居住者・非居住者区分

  3. 適用する租税条約

  4. 給与の源泉徴収方法

を再確認した方がよいでしょう。


源泉徴収すると手取り額も変わる可能性

これまで租税条約による免税を受けていた技能実習生が、育成就労制度へ移行して給与から所得税を源泉徴収されることになれば、他の条件が同じでも手取り給与が減る可能性があります。


そのため企業側では、

  • 本人への説明

  • 雇用条件の説明

  • 給与明細の表示

  • 採用時の手取り額説明

にも注意が必要です。


よくある疑問

Q. 育成就労制度はいつから始まりますか?

A. 2027年4月1日から開始します。現行の技能実習制度を発展的に解消し、人材育成と人材確保を目的とした制度へ移行します。


Q. 育成就労外国人の給与から所得税を源泉徴収しますか?

A. 国税庁の文書回答では、育成就労外国人が育成就労実施者から受け取る給与は、原則として給与所得として所得税の課税対象となり、源泉徴収の対象になるとされています。


Q. 技能実習生は所得税が免税なのですか?

A. 一律ではありません。一定の租税条約には「専ら訓練を受ける者」について給与所得を免税とする規定があり、技能実習生について一定の要件を満たす場合に適用できることがあります。


Q. 育成就労でも同じ租税条約免税を使えますか?

A. 今回の文書回答では、育成就労外国人は原則として「専ら訓練を受ける者」には該当せず、その免税規定の対象外とされています。


Q. 技能実習制度と育成就労制度の最大の違いは何ですか?

A. 技能実習制度の目的は「技能移転による国際貢献」であるのに対し、育成就労制度は「人材育成と人材確保」を目的としています。また、在留期間は技能実習が通算最長5年、育成就労は原則3年です。


まとめ

2027年4月1日から、技能実習制度に代わる育成就労制度が開始します。


国税庁は2026年9月18日の文書回答で、育成就労外国人が受入れ企業から受け取る給与について、原則として給与所得として所得税を課税し、源泉徴収の対象とすることを明らかにしました。


特に重要なのは、

  • 育成就労制度は2027年4月1日開始

  • 制度目的は「人材育成+人材確保」

  • 育成就労外国人は雇用契約に基づいて就労する

  • 給与は原則として所得税の課税対象

  • 給与支払時には原則として源泉徴収が必要

  • 技能実習制度では租税条約による免税が認められる場合がある

  • 育成就労ではその「訓練者免税」は原則適用されない

  • 技能実習から移行する会社では給与計算設定の見直しが必要

という点です。


外国人雇用を行なう企業では、「技能実習時代の税務処理をそのまま育成就労へ引き継がないこと」が重要です。


特に現在、租税条約を適用して技能実習生の給与を所得税免税としている企業は、2027年4月の制度開始前に源泉徴収の取扱いを確認しておくとよいでしょう。



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【この記事の執筆者】

安田 亮(公認会計士・税理士)

安田亮公認会計士・税理士事務所 代表

京都大学経済学部在学中に公認会計士試験に合格。有限責任 あずさ監査法人、株式会社神戸製鋼所での実務経験を経て、2018年に神戸市で独立。

現在は、中小企業から上場企業に対する税務顧問、決算支援、税効果会計、連結決算、新リース会計基準への対応、組織再編、補助金・助成金に関する支援などを行なっています。また、金融機関や大手企業が運営する税務・会計・経営分野のWebメディアにおいて、記事の執筆・監修にも携わっています。

事務所ブログでは、税制改正や会計基準、経営実務に関する情報を、専門用語をできるだけかみ砕き、経営者や経理担当者の方に役立つ形で解説しています。


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