【2026年・令和8年分】年末調整の変更点を税理士が解説!178万円の壁・扶養136万円・生命保険料控除の注意点
おはようございます!代表の安田です。
2026年(令和8年分)の年末調整では、所得税の基礎控除や給与所得控除の引上げ、扶養親族の所得要件の変更など、重要な税制改正が行なわれています。
特に注目されるのが、「年収178万円の壁」と「扶養の年収136万円基準」です。また、19歳以上23歳未満の子どもを扶養している家庭や、生命保険に加入している家庭にも影響があります。
前年と同じ内容で年末調整の申告書を提出すると、本来受けられる控除を受けられなくなる可能性があるため、注意が必要です。
この記事では、2026年の年末調整について、前年からの変更点、扶養控除や配偶者控除の所得要件、申告書の記載方法、経理担当者が注意したいポイントを、税理士の視点から解説します。
2026年の年末調整は何が変わる?
2026年の年末調整では、主に次の4つの改正が行われています。
主な改正項目 | 2025年 | 2026年 |
基礎控除の最大額 | 95万円 | 104万円 |
給与所得控除の最低保障額 | 65万円 | 74万円 |
扶養親族の所得要件 | 58万円以下 | 62万円以下 |
23歳未満の扶養親族がいる場合の新生命保険料に係る一般生命保険料控除の上限 | 原則4万円 | 6万円 |
※基礎控除額は本人の合計所得金額によって異なります。また、給与所得控除74万円は令和8年分・令和9年分の特例を反映した金額です。
これらの改正は、原則として2026年12月1日から施行され、2026年分の所得税から適用されます。
そのため、2026年11月までの給与に係る源泉徴収では従来の取扱いを続け、12月の年末調整で改正後の控除額などを反映して精算することになります。
「年収178万円の壁」とは?所得税の基礎控除が最大104万円に
今回の税制改正で話題となっているのが「178万円の壁」です。
2026年分については、給与収入のみの方の場合、次のように計算されます。
控除の種類 | 金額 |
給与所得控除 | 74万円 |
所得税の基礎控除 | 104万円 |
合計 | 178万円 |
つまり、給与所得控除と基礎控除だけを考えた場合、年間の給与収入が178万円以下であれば、課税所得が発生しない計算になります。
例えば、年間給与収入が170万円の場合、給与所得控除74万円を差し引くと給与所得は96万円です。
ここから基礎控除104万円を差し引くと課税所得はゼロとなり、所得税は発生しません。
ただし、この178万円という金額は、給与収入のみの場合を前提としています。副業などによる給与以外の所得がある場合には、個別の計算が必要です。
また、住民税や社会保険料については別の基準が設けられているため、「年収178万円まで税金も社会保険料もかからない」という意味ではありません。
基礎控除104万円は全員に適用されるわけではない
注意したいのは、基礎控除104万円がすべての給与所得者に適用されるわけではないという点です。
2026年分の基礎控除額は、合計所得金額に応じて次のように異なります。
本人の合計所得金額 | 基礎控除額 |
489万円以下 | 104万円 |
489万円超655万円以下 | 67万円 |
655万円超2,350万円以下 | 62万円 |
2,350万円超2,400万円以下 | 48万円 |
2,400万円超2,450万円以下 | 32万円 |
2,450万円超2,500万円以下 | 16万円 |
2,500万円超 | 0円 |
特に重要なのは、合計所得金額が489万円を超えると、基礎控除が104万円から67万円に減少することです。
給与収入だけの場合、給与所得控除等の通常の計算では年収約665万5,556円が境目になります。この水準をわずかに超えたことで基礎控除額が37万円減り、所得税の負担が増加する場合があります。
給与収入が増えたにもかかわらず、所得税を差し引いた手取りが一時的に減少する可能性があるため、年収がこの境目に近い方は注意が必要です。
なお、給与以外の所得がある場合や所得金額調整控除の適用がある場合などには、給与収入の境目も変わります。
扶養の年収基準が123万円から136万円に引上げ
扶養親族の所得要件が62万円以下に
2026年分から、扶養控除の対象となる親族の合計所得金額の要件が、58万円以下から62万円以下に引き上げられました。
給与収入のみの場合、給与所得控除の引上げも合わせると、扶養親族に該当する収入基準は次のようになります。
年分 | 扶養親族の給与収入基準 |
2025年 | 123万円以下 |
2026年 | 136万円以下 |
例えば、配偶者や16歳以上の子どもがパート・アルバイトで年間130万円の給与収入を得ている場合、2025年分では所得要件を超えていたものの、2026年分では要件を満たすことになります。
ただし、実際に扶養控除を受けられるかどうかは、年齢、生計を一にしているかどうかなど、ほかの要件も確認する必要があります。
また、16歳未満の子どもには所得税の扶養控除がありませんが、住民税などの判定に必要となる場合があるため、申告書への記載にも注意しましょう。
配偶者控除・配偶者特別控除も変更
配偶者に関する年収基準も変わります。
2026年分について、配偶者の収入が給与のみの場合の主な基準は次のとおりです。
配偶者の給与収入 | 所得税の控除 |
136万円以下 | 配偶者控除の対象 |
136万円超169万円以下 | 配偶者特別控除の対象(最高38万円) |
169万円超207万円以下 | 配偶者特別控除が段階的に減少 |
207万円超 | 配偶者特別控除の対象外 |
※表の控除額は、控除を受ける本人の合計所得金額が900万円以下の場合を前提としています。本人の合計所得金額が900万円を超えると控除額が減少し、1,000万円を超えると配偶者控除・配偶者特別控除は適用できません。
ここで誤解しやすいのが、配偶者の年収が136万円を超えても、直ちに配偶者に関する控除がゼロになるわけではないという点です。
例えば、配偶者の給与収入が150万円の場合、給与所得は原則として76万円となります。
この場合、配偶者控除ではなく配偶者特別控除の対象となり、本人の所得要件などを満たせば38万円の控除を受けることができます。
大学生年代の子どもは年収197万円まで控除の対象になる場合も
19歳以上23歳未満の親族については、2025年から導入された「特定親族特別控除」の所得要件も、2026年分から変更されています。
この控除は、大学生年代の子どもなどの収入が扶養控除の基準を超えても、一定の範囲内で親が所得控除を受けられる制度です。
2026年分の基準は次のようになります。
子どもの年間給与収入 | 親が受けられる所得控除 |
136万円以下 | 特定扶養控除63万円 |
136万円超159万円以下 | 特定親族特別控除63万円 |
159万円超197万円以下 | 特定親族特別控除が段階的に減少 |
197万円超 | 特定親族特別控除の対象外 |
例えば、20歳の大学生の子どもがアルバイトで年間150万円の給与収入を得ている場合、親は一定の要件を満たせば63万円の特定親族特別控除を受けられます。
また、この制度は大学への在学そのものを要件としていません。基本的には、その年の12月31日時点で19歳以上23歳未満であるかなどによって判定します。
注意すべきなのは、給与収入が136万円を超えた場合、従来の扶養控除ではなく、特定親族特別控除の申告が必要になることです。
扶養控除等申告書だけで手続きが完了すると思い込み、特定親族特別控除申告書への記載を忘れないようにしましょう。
23歳未満の扶養親族がいる場合、生命保険料控除が拡充
2026年分の年末調整では、生命保険料控除にも新しい特例が設けられています。
23歳未満の扶養親族がいる場合、2012年1月1日以後に締結した新契約に係る一般生命保険料控除の上限が、従来の4万円から6万円に引き上げられました。
2026年分・2027年分の特例における、新生命保険料の控除額は次のとおりです。
年間の新生命保険料 | 控除額 |
30,000円以下 | 支払保険料の全額 |
30,000円超60,000円以下 | 支払保険料×1/2+15,000円 |
60,000円超120,000円以下 | 支払保険料×1/4+30,000円 |
120,000円超 | 60,000円 |
ただし、ここで注意したい点があります。
生命保険料控除には、一般生命保険料控除、介護医療保険料控除、個人年金保険料控除という3つの区分がありますが、3区分を合計した所得税の控除上限は従来どおり12万円です。
つまり、一般生命保険料控除の上限が6万円に増えても、生命保険料控除の合計額が必ず増えるわけではありません。
例えば、従来から3区分の合計で12万円の控除を受けている方は、今回の特例が適用されても、合計の控除額を12万円より増やすことはできません。
また、旧契約の生命保険料を支払っている場合は、旧契約と新契約の組み合わせによって計算が異なるため、確認が必要です。
「税金の扶養」と「社会保険の扶養」は別の制度
2026年の年末調整で特に誤解しやすいのが、税金の扶養と社会保険の扶養を混同してしまうことです。
今回の税制改正で、所得税の扶養親族の給与収入基準は136万円以下に変わりました。
しかし、健康保険の被扶養者については、原則として年収130万円未満という別の収入基準があります。
また、19歳以上23歳未満の親族(配偶者を除く)については、2025年10月から、健康保険の被扶養者認定に係る年間収入基準が150万円未満に引き上げられています。
したがって、税法上は扶養控除や特定親族特別控除の対象となっていても、社会保険上は扶養から外れる場合があります。
さらに、勤務先の規模や所定労働時間などによっては、本人が勤務先の健康保険や厚生年金保険に加入する必要があります。
働く時間を調整する際には、所得税だけでなく、住民税や社会保険も含めて総合的に判断することが重要です。
年末調整の申告書で間違いやすい5つのポイント
① 配偶者や扶養親族の「収入」と「所得」を混同しない
年末調整の申告書には、配偶者や扶養親族の「所得金額の見積額」を記載する欄があります。
この欄に、給与収入の金額をそのまま記載してしまうケースがありますが、収入と所得は異なります。
例えば、年間給与収入150万円で給与以外の所得がない場合、2026年分の給与所得は原則として76万円です。
この場合、所得金額の欄に150万円と記載するのではなく、76万円と記載することになります。
② 前年の収入ではなく2026年の見積額を記載する
配偶者控除等の判定に使用するのは、2026年の年間所得の見積額です。
2025年の源泉徴収票を見ながら、その金額をそのまま転記することは適切ではありません。
2026年1月から12月までの給与・賞与などを見積もり、給与以外の所得がある場合には、それも考慮して判断します。
特に、年の途中から働き始めた方、転職した方、勤務時間が増えた方などは注意が必要です。
③ 年金収入がある家族の所得を正しく計算する
扶養している親などが公的年金を受給している場合、年金収入をそのまま所得金額として判定するわけではありません。
公的年金等に係る雑所得は、年齢や年金収入額などに応じた公的年金等控除額を差し引いて計算します。
また、遺族年金や障害年金は原則として非課税であり、扶養親族の合計所得金額の判定には含まれません。
年金の種類や年齢によって取扱いが異なるため、給与収入と同じ方法で計算しないようにしましょう。
④ 保険料控除やiDeCoの申告を忘れない
生命保険、地震保険、個人型確定拠出年金(iDeCo)などについて、控除の申告を忘れるケースがあります。
特に、自分で支払っている国民年金保険料やiDeCoの掛金については、勤務先が把握していない場合があります。
保険料控除証明書などの必要書類を確認し、適用できる所得控除がないか確認しましょう。
⑤ 年末調整では受けられない控除にも注意する
医療費控除、寄附金控除、住宅ローン控除の初年度などは、原則として確定申告が必要です。
例えば、ふるさと納税による寄附金控除は、年末調整では手続きできません。
確定申告または、適用要件を満たす場合のワンストップ特例制度によって手続きを行う必要があります。
年末調整だけで、すべての所得控除や税額控除が適用されるわけではないことを理解しておきましょう。
会社の経理・給与担当者が確認すべきこと
2026年の年末調整では、従業員だけでなく、会社側も改正への対応が必要です。
特に確認しておきたいのは、以下の事項です。
給与計算ソフトの更新:令和8年分の基礎控除額や給与所得控除額、扶養判定基準が正しく反映されているか。
扶養親族の再確認:前年は所得要件を超えていた配偶者や親族が、2026年分では控除の対象となっていないか。
特定親族特別控除の確認:19歳以上23歳未満の親族について、対象者の確認と必要な申告書の回収ができているか。
生命保険料控除の確認:23歳未満の扶養親族がいる従業員について、新しい控除限度額を適用できるか。
申告書の回収漏れの確認:基礎控除申告書、保険料控除申告書、扶養控除等申告書などの必要書類を回収できているか。
また、年の途中で入社した従業員については、前職の源泉徴収票を確認し、必要に応じて前職分の給与と源泉徴収税額を合算する必要があります。
年末調整は紙の申告書でも電子申告書でも実施できます。電子化する場合は、従業員の入力方法だけでなく、提出された控除証明書データの確認や書類管理の方法も整備しておくと効率的です。
2027年からは防衛特別所得税も開始
2026年の年末調整とは直接関係ありませんが、翌年以降の給与計算についても税制改正があります。
2027年(令和9年)1月からは、防衛特別所得税が導入されます。
防衛特別所得税の税率は、基準所得税額に対して1%です。
一方、復興特別所得税の税率は現在の2.1%から1.1%に引き下げられるため、当面は両者の合計税率が2.1%となる仕組みです。
ただし、復興特別所得税の課税期間は10年間延長されます。
2027年以降の源泉徴収事務や給与計算では、令和9年分の源泉徴収税額表などを使用し、改正内容を正しく反映させる必要があります。
2026年の年末調整に関するよくある質問
Q. 年収178万円以下なら社会保険の扶養に入れますか?
A. いいえ。178万円という基準は所得税に関するものであり、社会保険の扶養判定とは異なります。社会保険については、年収130万円未満などの収入要件や、本人の勤務先での社会保険加入要件を別途確認する必要があります。
Q. 配偶者の年収が150万円でも配偶者控除を受けられますか?
A. 配偶者控除そのものの対象にはなりませんが、配偶者特別控除を受けられる可能性があります。給与収入のみの場合、2026年分は169万円以下であれば、本人の所得要件などを満たすことで最高38万円の配偶者特別控除を受けられます。
Q. 年末調整で所得税が多く還付される人は増えますか?
A. 2026年分は基礎控除などが引き上げられているため、従来と比べて所得税の負担が減少する方がいます。ただし、還付額は年間の給与収入、所得控除、毎月の源泉徴収税額などによって異なります。必ず還付額が増えるとは限りません。
Q. 2025年に扶養から外れた家族を2026年に再び扶養に入れられますか?
A. 2026年分の新しい所得要件を満たしていれば、税法上の扶養親族や控除対象配偶者に該当する場合があります。前年の申告内容をそのまま引き継ぐのではなく、2026年の所得見積額をもとに改めて判定しましょう。
まとめ|2026年の年末調整は前年の申告内容を再確認しましょう
2026年の年末調整では、基礎控除や給与所得控除の引上げにより、所得税の計算方法が変更されています。
特に、給与収入178万円の基準、扶養親族の給与収入136万円の基準、19歳以上23歳未満の親族に関する特定親族特別控除、生命保険料控除の特例は、確認しておきたいポイントです。
重要なのは、前年の申告内容をそのまま使用せず、2026年の所得見積額や家族の状況に基づいて正しく判定することです。
経理・給与担当者の方も、従業員への制度説明と申告書の確認を早めに進めることをおすすめします。
神戸での起業や開業に関するご相談、確定申告にお困りの方、顧問税理士をお探しの方は安田亮公認会計士・税理士事務所までお問い合わせください!
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【この記事の執筆者】
安田 亮(公認会計士・税理士)
安田亮公認会計士・税理士事務所 代表
京都大学経済学部在学中に公認会計士試験に合格。有限責任 あずさ監査法人、株式会社神戸製鋼所での実務経験を経て、2018年に神戸市で独立。
現在は、中小企業から上場企業に対する税務顧問、決算支援、税効果会計、連結決算、新リース会計基準への対応、組織再編、補助金・助成金に関する支援などを行なっています。また、金融機関や大手企業が運営する税務・会計・経営分野のWebメディアにおいて、記事の執筆・監修にも携わっています。
事務所ブログでは、税制改正や会計基準、経営実務に関する情報を、専門用語をできるだけかみ砕き、経営者や経理担当者の方に役立つ形で解説しています。






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