【令和8年度税制改正】関連者間取引の「みなし規定」とは?非関連者を介した取引でも書類保存が必要になるケースを解説
- 安田 亮
- 13 時間前
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おはようございます!代表の安田です。
令和8年度税制改正で創設された「関連者間取引に係る書類の整理保存の特例」は、企業グループ内の法人間取引について、対価の額の算定根拠などを明らかにする書類の保存を求める制度です。
対象は基本的に、持株関係や実質的支配関係などがある関連者との取引ですが、実務上さらに注意したいのが、非関連者を介した取引でも対象になる“みなし規定”が設けられている点です。
つまり、「相手先が直接の関連者ではないから安心」とは言えません。取引の流れや契約関係によっては、非関連者との取引も、税務上は関連者間取引として扱われ、書類保存義務が生じる可能性があります。
本記事では、公認会計士の視点から、この“みなし規定”の考え方と、実務で見落としやすいポイントを整理します。
1. まず前提:関連者間取引に係る書類保存特例とは?
この特例は、企業グループ内の法人間で行なわれる取引の実態解明を目的とした制度です。青色申告法人が、関連者から
工業所有権等の譲渡・貸付け
経営管理など一定の役務提供
を受けた場合に、法令上保存すべき書類に対価の額の算定根拠等の記載がないときは、その不足部分を明らかにする書類の取得・作成・保存が必要とされています。
そして、保存がない場合は青色申告の承認取消事由等になり得ます。
2. みなし規定とは?「非関連者を介在させた取引」も対象になる
資料によれば、この特例には、非関連者を介在させた取引を対象とするみなし規定があります。要件としては、たとえば次のような場合です。
関連者が、他の者(=非関連者)に対して行う譲渡等取引に係る工業所有権等が、
契約等により、あらかじめ青色申告法人へ移転等することが定められており、
その対価の額が、青色申告法人と関連者との間で実質的に決定されていると認められる場合
このようなケースでは、形式上は非関連者との取引に見えても、実質的にはグループ内で条件が決まっているため、関連者間取引とみなされる可能性があります。
3. 具体例:X法人(関連者)→Y法人(非関連者)→Z法人(青色申告法人)
資料には、みなし規定のイメージが分かる例が示されています。
X法人:関連者
Y法人:非関連者
Z法人:青色申告法人
このとき、X法人とY法人の間で行われた工業所有権等の譲渡等が、最終的にZ法人へ移転し、かつ前述の要件に該当する場合、Y法人とZ法人の取引は関連者間取引として扱われるとされています。
その結果、Y法人への支払額について、算定根拠等の記載がなければ、その内容を明らかにする書類の取得等が必要になります。
4. なぜこの規定があるのか?形式だけの外部取引化を防ぐため
このみなし規定の趣旨は明確です。グループ内で実質的に決めた条件を、途中に非関連者を挟むことで「外部取引」に見せて、書類保存特例の対象外にすることを防ぐ、という考え方です。
税務では、形式よりも実質が重視されます。今回の特例でも、「誰と契約しているか」だけでなく、
実質的に誰が条件を決めたのか
あらかじめどこに移転することが決まっていたのか
最終受益者は誰か
まで見て判定されることになります。
5. 実務で注意したい取引類型
みなし規定は、特に次のような場面で論点になりやすいと考えられます。
(1)無形資産・知的財産の移転
工業所有権等、ノウハウ、ソフトウェア、ライセンスなどは、契約ストラクチャが複雑化しやすく、形式と実質がずれやすい領域です。
(2)グループ間の再販・中継取引
一見すると外部法人を介した通常の商流でも、実質的にグループ内で条件や価格が決まっていると、みなし規定が問題になる可能性があります。
(3)経営管理・役務提供契約の再委託
役務提供そのものではなくても、関連者が関与し、実質的に対価が決まっている構造では、保存書類の要否を慎重に検討する必要があります。
6. 企業が今から確認すべきチェックポイント
みなし規定への対応では、単に「関連者一覧」を作るだけでは不十分です。次の観点で棚卸しするのが実務的です。
非関連者との取引でも、実質的に関連者が価格や条件を決めていないか
契約書等で、最終的な移転先や提供先があらかじめ定められていないか
工業所有権等やノウハウ関連の取引で、途中法人を介在させていないか
算定根拠(価格決定プロセス、対価計算、役務内容)を示す資料が整っているか
税務・法務・経理・事業部で、取引の実質を横断的に確認する体制があるか
まとめ:関連者間取引の書類保存特例は「直接の相手先」だけでは判断できない
令和8年度税制改正の関連者間取引に係る書類保存特例では、関連者との直接取引だけでなく、一定の場合には非関連者を介した取引も“みなし規定”により対象となります。
工業所有権等の移転や、対価の額が実質的に関連者と青色申告法人の間で決まっているようなケースでは、形式だけで判断せず、取引の実態に基づいて書類保存義務の有無を見極めることが重要です。
青色申告取消リスクもあるため、複雑なグループ取引がある会社は、早めに取引ストラクチャを点検しておくことをおすすめします




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