インボイス経過措置の7割控除で法人税処理はどう変わる?令和8年度改正後の消費税経理通達を解説
- 安田 亮
- 56 分前
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おはようございます!代表の安田です。
インボイス制度が始まって以降、免税事業者等からの仕入れに関する仕入税額控除の経過措置は、消費税実務だけでなく、法人税の経理処理にも影響する重要テーマになっています。
特に税抜経理方式を採用している法人では、「控除できる消費税相当額」と「控除できない部分」をどう会計・税務処理するかで、申告実務に差が出ます。
令和8年度改正により、免税事業者などインボイス発行事業者以外の者からの課税仕入れについて認められている経過措置は2年間延長される一方、控除可能割合は7割・5割・3割へ段階的に引き下げられます。
その結果、令和8年10月1日からは80%控除ではなく70%控除になります。さらに、法人税の取扱いを定める消費税経理通達の考え方は改正後も従前どおり維持される方向で、控除対象とならない部分は取引対価の額に含めて処理する必要があるとされています。
今回は、この改正内容と、税抜経理方式を採用する法人が押さえておきたい法人税処理のポイントを整理します。
まず押さえたい改正の全体像
今回の改正では、インボイス制度導入時に設けられた経過措置が、単純に終了するのではなく、段階的に縮小しながら延長される形になっています。免税事業者等からの課税仕入れについて、消費税額とみなされる金額は次のように変わります。
令和5年10月1日~令和8年9月30日:仕入税額相当額の80%
令和8年10月1日~令和10年9月30日:仕入税額相当額の70%
令和10年10月1日~令和12年9月30日:仕入税額相当額の50%
令和12年10月1日~令和13年9月30日:仕入税額相当額の30%
令和13年10月1日以後:なし
したがって、令和8年は9月30日までが80%、10月1日以後は70%と、年の途中で取扱いが変わる点に注意が必要です。
法人税処理で重要なのは「仮払消費税等」と「対価の額」の区分
税抜経理方式を採用している法人では、通常、仕入税額控除の対象となる課税仕入れの消費税額は仮払消費税等として処理されます。
ところが、免税事業者等からの課税仕入れでは、控除対象になるのは経過措置で認められる一定割合だけです。つまり、令和8年10月1日以後なら、仕入税額相当額のうち70%だけが仮払消費税等として扱われ、残り30%は仮払消費税等として扱えないことになります。
この「仮払消費税等として扱えない部分」をどうするかが、法人税処理のポイントです。
改正後も消費税経理通達の考え方は変わらない
ここが今回の資料の核心です。資料によると、令和8年度改正後も、消費税経理通達の取扱いは従前と同じ方向で、免税事業者等からの課税仕入れに係る“消費税額等とみなされない金額”は取引対価の額に含める必要があるとされています。
つまり、70%控除になるからといって、30%部分を独立した損失項目のように自由に処理できるわけではありません。税務上は、控除できない部分は原則として本体の取引対価に含めて考えるのが基本です。
令和8年10月1日から何が実務的に変わるのか
令和8年1月1日から9月30日までの課税仕入れでは、仕入税額相当額の80%が仮払消費税等になります。一方、令和8年10月1日から12月31日までの課税仕入れでは、仮払消費税等として扱えるのは70%になります。
そのため、同じ令和8年の中でも、10月以後の免税事業者等からの仕入れについては、控除対象外となる割合が20%から30%へ増えることになります。税抜経理を採用している法人は、この切替えを前提に会計処理やシステム設定を見直しておく必要があります。
福利厚生費などの経費処理はどうなるか
免税事業者等に対して福利厚生費などの経費を支払った場合の取扱いを考えてみましょう。
たとえば、令和8年10月1日に免税事業者等へ福利厚生費を支払い、10%相当額を仮払消費税等として計上していた場合、消費税額とみなされない部分(仕入税額相当額の30%分)は福利厚生費に含めて処理しなければならないとされています。
もっとも、実務上は決算時に「雑損失」などとして計上する方法でも対応可能とされています。その理由は、福利厚生費として損金算入すべき金額と、決算時に雑損失として計上した金額が結果的に一致するためで、最終的には申告調整は不要になると整理されています。
棚卸資産は同じ発想では処理できない
一方で、棚卸資産は注意が必要です。
令和8年10月1日に免税事業者等から棚卸資産を仕入れ、仮払消費税等を計上した場合、消費税額等とみなされない金額(30%分)は商品の取得価額に含めて処理しなければなりません。
ここで問題になるのが、期末在庫が残るケースです。
もし決算時にこの30%分を雑損失として計上した場合、在庫に対応する部分はまだ売上原価になっていないため、その在庫分は損金算入できず、法人税の所得金額に加算する申告調整が必要になると説明されています。
つまり、
福利厚生費のような期間費用は、結果的に申告調整不要となる
棚卸資産は、在庫があると申告調整が必要になる
という違いがあります。
「控除対象外消費税額等」と混同しない
消費税額とみなされない金額を、一般的な控除対象外消費税額等と同じように考えて、「そのまま損金算入できる」と誤解しないよう留意すべきと言えます。
これは実務上かなり大事です。インボイス経過措置によって控除対象外になった部分は、通常の控除対象外消費税額等とは整理が異なるため、処理を混同すると決算・申告を誤るおそれがあります。
3割特例などを使う事業者は別の扱い
簡易課税制度や2割特例に加えて、3割特例を適用する事業者についても触れてみましょう。
これらの事業者は、継続適用を条件として、課税仕入れに係る支払対価の額の110分の10(又は108分の8)を乗じて算出した金額を仮払消費税等の額とすることが認められる方向とされています。つまり、その金額を支払対価の額に含める必要はないと整理されています。
したがって、一般課税・税抜経理の法人と、簡易課税や各種特例を使う事業者とでは、法人税処理の前提が異なる点も押さえておきたいところです。
実務で今のうちに確認したいこと
今回の改正を踏まえると、税抜経理方式の法人では少なくとも次の点を確認しておく必要があります。
まず、免税事業者等からの仕入れがどの程度あるか。
次に、令和8年10月1日以後の70%控除への切替えにシステムが対応できるか。
さらに、経費処理と棚卸資産処理を分けて、決算時の追加処理や申告調整の要否を判断できる体制になっているかを確認したいところです。
特に在庫を扱う会社では、控除対象外部分を安易に雑損失へ振り替えるだけでは不十分なケースがあるため、注意が必要です。
まとめ
令和8年度改正により、免税事業者等からの課税仕入れに係るインボイス経過措置は延長されますが、令和8年10月1日以後は控除可能割合が80%から70%へ引き下げられます。
税抜経理方式を採用する法人では、仕入税額控除の対象となる部分だけが仮払消費税等となり、控除対象とならない部分は取引対価の額に含めて法人税処理するという、従前の消費税経理通達の考え方が改正後も維持される方向です。
福利厚生費などの経費では、決算時に雑損失処理をしても結果的に申告調整不要となる場合がありますが、棚卸資産では在庫分について法人税の所得加算が必要になることがあります。また、これを一般的な控除対象外消費税額等と混同しないことも重要です。
インボイス制度の経過措置は、消費税だけでなく法人税処理にも影響します。令和8年10月の70%控除への切替えに向けて、税抜経理方式の法人は、今のうちに会計処理やシステム対応、決算時の整理方法を確認しておくことをおすすめします。




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