法人設立届出の添付書類は省略できる? ワンストップサービスと税務署・自治体の違いを税理士が解説
- 安田 亮
- 5 時間前
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こんにちは!代表の安田です。
会社を設立した直後は、登記、税務署への届出、都道府県・市区町村への届出、社会保険関係、労働保険関係など、さまざまな手続きが必要になります。
その中でも、税務手続きとしてまず確認したいのが法人設立届出です。
実務では、次のような相談をよく受けます。
会社を設立したら、どこに法人設立届出を出す必要があるのか
税務署と自治体で添付書類は同じなのか
定款や登記事項証明書は必ず添付しなければならないのか
法人設立ワンストップサービスを使うと添付書類を省略できるのか
法人設立届出は、提出先や提出方法によって添付書類の扱いが異なるため、起業直後の方が迷いやすい手続きです。
今回は、法人設立時に必要となる法人設立届出の提出先、添付書類、法人設立ワンストップサービスを利用する場合の注意点について、税理士の視点からわかりやすく解説します。
1.法人を設立したら法人設立届出が必要
新たに法人を設立した場合、法人は税務署や自治体に対して、設立したことを届け出る必要があります。この届出により、税務署や自治体は、その法人がいつ設立され、どこに本店を置き、どのような事業年度で申告を行なうのかを把握します。
法人税、消費税、源泉所得税、地方税など、その後の税務手続きの出発点となる重要な届出です。
2.提出先は税務署だけではない
法人設立届出というと、税務署への提出だけをイメージする方も多いかもしれません。
しかし、所轄税務署と自治体に届け出の手続きをする必要があります。
つまり、国税については税務署へ、地方税については都道府県や市区町村へ、それぞれ届出が必要になります。
自治体への届出名称や提出期限、添付書類は地域によって異なることがあるため、本店所在地の自治体の案内も確認しておく必要があります。
3.法人設立ワンストップサービスとは
法人設立時の手続きを効率化する仕組みとして、法人設立ワンストップサービスがあります。法人設立ワンストップサービスは、法人を設立する際に各省庁へ提出等が必要な各種手続きを、一度にまとめてオンラインで申請できるサービスです。
国税庁の案内でも、法人設立ワンストップサービスでは、マイナポータルを利用して、法人設立に関する一連の手続きを一度で行うことができるとされています。国税・地方税に関する設立届、雇用に関する届出など、法人設立後に必要な行政手続をまとめて行なえる点が特徴です。
4.定款認証・設立登記も対象に追加
法人設立ワンストップサービスは、段階的に対象手続きが拡大されています。
令和3年2月26日から、利用できる手続きに定款認証と設立登記が加わりました。
これにより、法人設立に関する手続きを、より一体的にオンラインで進めやすくなりました。
5.添付書類を省略できるケース
添付資料で特に重要なのは、法人設立届出に必要な所定の添付書類を省略できるケースです。
法人設立届出に必要な所定の添付書類を省略するには、法人設立ワンストップサービスで、定款認証・設立登記と法人設立届出を同時に行なえばよいと整理されています。
つまり、法人設立ワンストップサービスを利用して、設立関連手続きと届出を一体で行なう場合には、税務署や自治体に別途、所定の添付書類を提出しなくてもよいケースがあります。
6.利用には事前準備が必要
法人設立ワンストップサービスを利用するには、事前準備が必要です。
利用にあたり、法人代表者のマイナンバーカード、インターネットアクセス端末、マイナポータルAPのインストールなどが必要とされています。
国税庁の案内でも、法人設立ワンストップサービスの利用には、法人代表者のマイナンバーカード、マイナンバーカード対応スマートフォンまたはパソコン、パソコン利用の場合はICカードリーダライタが必要とされています。
設立直前になって準備不足で利用できないことがないよう、代表者のマイナンバーカードや電子署名環境は早めに確認しておきましょう。
7.書面・e-Tax・eLTAXで提出する場合の添付書類
法人設立ワンストップサービスを使わず、書面やe-Tax、eLTAXで法人設立届出を提出する場合は、添付書類の扱いに注意が必要です。
書面やe-Tax・eLTAXで提出する場合、定款等の写しや登記事項証明書等などの書類添付が求められます。
ここで重要なのは、税務署への届出と自治体への届出で、添付省略の扱いが異なる点です。
8.税務署への届出では登記事項証明書等を省略できる
添付資料では、登記事項証明書等について、平成29年度税制改正により、法務省と国税庁との間で登記事項情報を共有できる環境が整備されたことを踏まえ、税務署への届出の際は添付を省略できるようになったとされています。
つまり、国税に関する法人設立届出では、登記事項証明書等については添付省略が可能です。ただし、定款等の写しについては、提出方法や手続内容に応じて確認が必要です。
9.自治体への届出では登記事項証明書等を省略できない
一方で、自治体への届出では扱いが異なります。
登記事項証明書等について、各自治体への届出の際は省略できないと明記されています。
ここは実務上よく間違えるポイントです。
税務署で省略できるからといって、都道府県や市区町村でも省略できるとは限りません。自治体に法人設立届を提出する場合は、登記事項証明書等の添付が必要になることがあります。
10.税務署と自治体で添付書類が違う理由
税務署への届出では、国税庁と法務省の間で登記事項情報を共有できる仕組みが整備されています。そのため、税務署側では登記事項証明書等の添付を省略できる取扱いになりました。
一方、自治体については、同じように省略できる扱いにはなっていません。
そのため、法人設立届出では、「税務署に出す書類」「都道府県に出す書類」「市区町村に出す書類」を分けて確認することが大切です。
11.法人設立時にあわせて検討したい税務届出
法人設立届出とあわせて、法人設立時にはほかにも重要な税務届出があります。
国税庁の案内では、法人設立ワンストップサービスで利用可能な国税関連手続として、法人設立届出のほか、青色申告の承認申請、事前確定届出給与に関する届出、棚卸資産の評価方法の届出、減価償却資産の償却方法の届出、消費税課税事業者選択届出、給与支払事務所等の開設届出、源泉所得税の納期の特例の承認申請などが挙げられています。
特に、青色申告の承認申請や消費税関係の届出は、提出期限を過ぎると不利になることがあります。法人設立届出だけでなく、設立初年度に必要な届出を一覧で確認しておくことが重要です。
12.実務でよくある誤解
① 法人設立届出は税務署だけに出せばよい
これは誤りです。新たに法人を設立した場合、税務署だけでなく自治体にも手続きが必要です。
② 法人設立ワンストップサービスを使えば、どんな場合でも添付書類は不要
これも注意が必要です。所定の添付書類を省略するには、法人設立ワンストップサービスで定款認証・設立登記と法人設立届出を同時に行なう必要があるとされています。
③ 税務署で登記事項証明書を省略できるなら、自治体でも省略できる
これは誤りです。登記事項証明書等は、税務署への届出では省略できますが、各自治体への届出では省略できないとされています。
④ e-TaxやeLTAXで出せば添付書類はすべて省略できる
これも危険です。書面やe-Tax・eLTAXで提出する場合には、定款等の写しや登記事項証明書等の添付が求められることがあります。提出先ごとの添付要件を確認する必要があります。
13.法人設立時に確認しておきたいポイント
法人設立後の届出では、次の点を確認しましょう。
税務署へ法人設立届出を提出するか
都道府県・市区町村への法人設立届出も必要か
法人設立ワンストップサービスを利用するか
定款認証・設立登記と法人設立届出を同時に行なうか
代表者のマイナンバーカードや利用環境を準備しているか
書面・e-Tax・eLTAX提出の場合、定款等の写しが必要か
自治体への届出で登記事項証明書等が必要か
青色申告、消費税、源泉所得税などの届出期限を確認しているか
まとめ
法人を設立した場合、税務署や自治体に対して法人設立届出を行なう必要があります。法人設立ワンストップサービスを利用して、定款認証・設立登記と法人設立届出を同時に行えば、所定の添付書類を省略できる場合があります。
一方で、法人設立ワンストップサービスを使わず、書面、e-Tax、eLTAXで届出を提出する場合には、定款等の写しや登記事項証明書等の添付が求められることがあります。このうち、登記事項証明書等については、税務署への届出では省略できる一方、各自治体への届出では省略できない点に注意が必要です。
法人設立時は、設立登記が完了して終わりではありません。青色申告の承認申請、給与支払事務所等の開設届出、源泉所得税の納期の特例、消費税関係の届出など、設立初年度に重要な手続きが続きます。だからこそ、法人設立届出の提出先、提出方法、添付書類、関連届出の期限を事前に整理し、設立後の税務手続きを漏れなく進めることが大切です。




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