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ものづくり補助金とは?対象経費・補助上限・申請時の注意点を公認会計士・税理士が解説

  • 執筆者の写真: 安田 亮
    安田 亮
  • 4 時間前
  • 読了時間: 11分

こんばんは!代表の安田です。


中小企業が新製品や新サービスの開発に取り組む場合、設備投資やシステム開発にまとまった資金が必要になることがあります。


そのような投資を支援する代表的な補助金が「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」、いわゆる「ものづくり補助金」です。


ものづくり補助金は、製造業だけでなく、商業・サービス業など幅広い中小企業が対象となる制度です。新製品・新サービスの開発、海外需要の開拓、インバウンド対応など、企業の生産性向上や付加価値向上につながる設備投資等を支援します。


本日は、ものづくり補助金の概要、対象となる取組、補助上限額、補助率、対象経費、申請時の注意点、会計・税務上のポイントについて、公認会計士・税理士の視点からわかりやすく解説します。


ものづくり補助金とは

ものづくり補助金とは、中小企業者や小規模事業者等が、革新的な新製品・新サービス開発や海外需要開拓を行うために必要な設備投資等の経費の一部を補助する制度です。


名称に「ものづくり」と入っていますが、製造業だけの補助金ではありません。

小売業、サービス業、IT業、飲食業、宿泊業、専門サービス業などでも、自社にとって新しい製品・サービスの開発や生産性向上につながる取組であれば、活用を検討できる場合があります。


たとえば、次のような取組が考えられます。

  • 新製品を製造するための機械装置の導入

  • 新サービス提供のための専用システム開発

  • 既存技術を活かした高付加価値商品の開発

  • 海外市場向け商品の開発や販路開拓

  • インバウンド需要に対応する新サービスの構築

  • 海外企業との共同開発に必要な設備投資

  • 生産工程を改善し、付加価値額を高める設備導入


ただし、単なる機械の買い替えや、既存業務を少し効率化するだけの投資では、ものづくり補助金の趣旨に合わない可能性があります。


重要なのは、「革新的な新製品・新サービスの開発」や「海外需要開拓」など、企業の稼ぐ力を高める取組であることです。


主な申請枠

ものづくり補助金には、主に次の2つの枠があります。


<製品・サービス高付加価値化枠>

製品・サービス高付加価値化枠は、顧客等への新たな価値提供を目的として、自社の技術力やノウハウを活かした新製品・新サービスの開発を支援する枠です。

もっとも基本的な申請枠といえます。


たとえば、製造業が新たな高精度部品を製造するための設備を導入するケース、サービス業が新たな顧客体験を提供するシステムを開発するケース、食品製造業が新商品開発のために専用設備を導入するケースなどが考えられます。


ただし、単なる機械装置の導入だけで、新製品・新サービスの開発を伴わないものは補助対象外となる可能性があります。


また、同業他社や同一地域の同業者で相当程度普及しているものは、新製品・新サービス開発とは認められにくい点にも注意が必要です。


<グローバル枠>

グローバル枠は、国内の生産性を高めるために、海外展開や海外需要の獲得に取り組む事業を支援する枠です。対象となる事業は、主に次の4つです。

  • 海外への直接投資に関する事業

  • 海外市場開拓、輸出に関する事業

  • インバウンド対応に関する事業

  • 海外企業との共同で行う事業


海外市場への展開を考えている企業や、訪日外国人向けサービスを強化したい企業、海外企業との共同開発を進めたい企業などは、グローバル枠の活用を検討できる場合があります。


グローバル枠では、通常の基本要件に加えて、海外事業に関する実現可能性調査を実施していること、社内に海外事業の専門人材がいること、または外部専門家と連携していることなどが求められます。


海外展開は国内事業よりも不確実性が高いため、市場調査、販売先、現地パートナー、輸出規制、物流、為替、資金計画などを具体的に整理することが重要です。


補助上限額と補助率

ものづくり補助金の補助上限額は、申請枠や従業員規模によって異なります。


製品・サービス高付加価値化枠では、従業員規模に応じて補助上限額が設定されています。

  • 従業員5人以下:750万円

  • 従業員6人から20人:1,000万円

  • 従業員21人から50人:1,500万円

  • 従業員51人以上:2,500万円


グローバル枠では、従業員規模にかかわらず、補助上限額は3,000万円とされています。

補助率は、中小企業の場合は原則2分の1、小規模企業者・小規模事業者や再生事業者の場合は3分の2となる場合があります。


さらに、大幅な賃上げや最低賃金引上げに係る特例を満たす場合、補助上限額や補助率が引き上げられることがあります。


ただし、補助上限額や補助率の引上げを受ける場合には、追加要件を満たす必要があります。要件を達成できない場合には、補助金の返還が必要となる場合があるため、安易に特例を選択しないことが大切です。


補助対象経費

ものづくり補助金の補助対象経費には、次のようなものがあります。

  • 機械装置

  • システム構築費

  • 技術導入費

  • 専門家経費

  • 運搬費

  • クラウドサービス利用費

  • 原材料費

  • 外注費

  • 知的財産権等関連経費

  • 海外経費

  • 通訳

  • 翻訳費

  • 広告宣伝

  • 販売促進費


このうち、機械装置・システム構築費は必須の経費とされています。

つまり、ものづくり補助金は、単なる広告宣伝やコンサルティング費用だけを補助する制度ではなく、新製品・新サービスの開発等に必要な設備投資やシステム構築を中心とした制度です。


なお、海外経費、通訳・翻訳費、広告宣伝・販売促進費は、グローバル枠のうち海外市場開拓に関する事業など、一定の場合に限って対象となります。


補助対象経費に該当するかどうかは、申請枠や事業内容によって異なります。見積書を取る前に、対象経費の範囲を公募要領で確認しておくことが重要です。


基本要件

ものづくり補助金では、単に設備を導入するだけでなく、事業計画において複数の基本要件を満たす必要があります。主な基本要件は、次のとおりです。


1. 付加価値額の増加

事業計画期間において、付加価値額の年平均成長率を一定以上増加させる必要があります。

ものづくり補助金における付加価値額は、一般的に「営業利益+人件費+減価償却費」により算定されます。

売上だけを増やすのではなく、企業全体として付加価値を高める計画であることが求められます。


2. 賃金の増加

賃金の増加要件も重要です。

近年のものづくり補助金では、従業員の給与支給額や1人あたり給与支給額の増加が重要な要件になっています。

第23次公募からは、返還等に関わる給与支給総額について、1人あたりで成長率を判定する扱いに限定され、給与支給総額そのものでは判断しない取扱いとなっています。

そのため、従業員数の増減がある場合には、1人あたりの給与水準がどのように推移するかを慎重に確認する必要があります。


3. 事業所内最低賃金水準

事業所内最低賃金を、事業実施都道府県の地域別最低賃金より一定額以上高い水準にすることも求められます。

この要件は毎年度判定されるため、事業計画期間中に地域別最低賃金が上がることも考慮する必要があります。

特にパート・アルバイトを雇用している企業では、最低賃金との関係を確認しておくことが大切です。


4. 従業員の仕事・子育て両立支援

従業員数が一定以上の場合、次世代育成支援対策推進法に基づく一般事業主行動計画の策定・公表が必要となります。

具体的には、厚生労働省の「両立支援のひろば」に一般事業主行動計画を掲載し、その確認用URLを申請時に入力する必要があります。

公表手続には時間がかかることがあるため、申請直前に対応しようとすると間に合わない可能性があります。


要件未達の場合の返還リスク

ものづくり補助金では、一部の要件を達成できなかった場合、補助金の返還義務が生じることがあります。


特に注意すべきなのが、賃金の増加要件と事業所内最低賃金水準要件です。

賃金の増加要件については、事業計画最終年度において実績値が目標値を下回った場合、未達分の返還が必要となる場合があります。年平均成長率が0またはマイナスの場合には、全額返還となる可能性もあります。


事業所内最低賃金水準要件については、計画年数に基づいて毎年度判定されます。

たとえば3年計画で、1年目は達成、2年目は未達、3年目は達成という場合、補助金額の一部について返還が必要になる可能性があります。


一方で、災害など事業者の責めに負わない事情がある場合や、企業全体として営業利益が赤字である場合など、一定のケースでは返還が免除されることもあります。


いずれにしても、補助上限額を上げたいからといって無理な賃上げ目標を設定するのは危険です。売上計画、利益計画、人員計画、給与計画を整合させたうえで、現実的な目標を設定することが重要です。


申請の流れ

ものづくり補助金は、電子申請で行ないます。申請には、GビズIDプライムアカウントが必要です。大まかな申請の流れは、次のとおりです。

  1. 公募要領を確認する

  2. 自社が補助対象者に該当するか確認する

  3. 新製品・新サービス開発や海外展開の内容を整理する

  4. 見積書や設備仕様を確認する

  5. 事業計画を作成する

  6. GビズIDプライムアカウントを取得する

  7. 電子申請システムで申請する

  8. 採択結果を確認する

  9. 採択後、交付申請を行う

  10. 交付決定後に補助事業を開始する

  11. 補助事業を実施する

  12. 実績報告を行なう

  13. 補助金額の確定を受ける

  14. 補助金を請求する

  15. 補助金の交付を受ける

  16. 事業化状況報告を行なう


重要なのは、採択されただけでは補助事業を開始できない点です。

原則として、交付決定後に発注、契約、購入、支払いを行う必要があります。交付決定前に発注した経費は、補助対象外となる可能性があります。


採択されるために重要なポイント

ものづくり補助金では、設備投資の内容だけでなく、事業計画の具体性や実現可能性が重要です。採択可能性を高めるためには、次のような点を整理しておく必要があります。

  • 自社の強みや技術力は何か

  • 開発する新製品・新サービスは何が新しいのか

  • 既存事業とどのように異なるのか

  • 顧客ニーズや市場規模はあるのか

  • 競合他社と比べた優位性は何か

  • 導入する設備やシステムがなぜ必要なのか

  • 補助事業により売上や付加価値額がどう増えるのか

  • 賃上げ計画に無理がないか

  • 資金繰りに問題はないか

  • 補助事業期間内に実施できるか


「機械を買えば売上が増える」という説明だけでは不十分です。

その機械を使って何を開発するのか、誰に販売するのか、なぜその市場で受け入れられるのか、どのように利益につながるのかを一貫して説明することが大切です。


会計・税務上の注意点

ものづくり補助金を受け取った場合、法人であれば原則として収益に計上され、法人税の課税対象となります。


個人事業主の場合も、原則として事業所得の収入金額に含まれます。

一方で、補助金を使って固定資産を取得した場合には、一定の要件を満たせば圧縮記帳の適用を検討できることがあります。


圧縮記帳を行なうと、補助金を受け取った年度の税負担を一定程度繰り延べることができます。ただし、税金が完全になくなるわけではありません。将来の減価償却費が少なくなるため、課税時期を調整する制度です。


また、補助金収入そのものは通常、消費税の課税売上には該当しません。ただし、補助対象経費の支払いに係る消費税、税込・税抜の申請額、仕入税額控除の取扱いには注意が必要です。


補助金は後払いであるため、設備代金やシステム開発費を先に支払うための資金繰りも重要です。金融機関借入を予定している場合は、補助金申請前から事業計画と資金計画を共有しておくことをおすすめします。


ものづくり補助金が向いている企業

ものづくり補助金は、次のような企業に向いています。

  • 新製品や新サービスを開発したい

  • 自社の技術やノウハウを活かして高付加価値化を進めたい

  • 新たな製造設備や専用システムを導入したい

  • 海外市場やインバウンド需要を開拓したい

  • 設備投資によって付加価値額を高めたい

  • 賃上げを含めた成長計画を作りたい

  • 補助金を活用して投資負担を軽減したい


一方で、単なる老朽設備の更新、既存商品の通常販売、汎用的な備品購入、小規模な広告宣伝のみを目的とする場合は、ものづくり補助金に適していない可能性があります。


その場合は、小規模事業者持続化補助金、中小企業省力化投資補助金、中小企業新事業進出補助金など、他の補助金の方が合うこともあります。


まとめ

ものづくり補助金は、中小企業や小規模事業者等が、革新的な新製品・新サービス開発や海外需要開拓に取り組む際に活用できる代表的な補助金です。


主な申請枠には、製品・サービス高付加価値化枠とグローバル枠があります。補助上限額は、製品・サービス高付加価値化枠では従業員規模に応じて最大2,500万円、グローバル枠では最大3,000万円です。一定の賃上げや最低賃金引上げに取り組む場合には、補助上限額や補助率が引き上げられる場合があります。


ただし、賃金の増加要件や事業所内最低賃金水準要件を達成できない場合、補助金の返還が必要になる可能性があります。


ものづくり補助金は、単なる設備購入の補助ではなく、新製品・新サービスの開発や海外展開を通じて、企業の付加価値向上と賃上げを目指す制度です。


活用を検討する場合は、事業計画、設備投資、資金繰り、賃上げ計画、会計・税務処理まで含めて、早めに準備を進めることをおすすめします。

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