中小企業省力化投資補助金とは?カタログ注文型の対象製品・補助上限額・申請時の注意点を解説
- 安田 亮
- 2 時間前
- 読了時間: 12分
こんばんは!代表の安田です。
人手不足は、多くの中小企業にとって深刻な経営課題です。
採用しても人が集まらない
限られた人数で現場を回さなければならない
単純作業や繰り返し作業を機械化したい
省人化につながる設備を導入したいが、投資負担が重い
このような悩みを抱える中小企業が活用を検討したい制度が「中小企業省力化投資補助金」です。
中小企業省力化投資補助金のうち「カタログ注文型」は、あらかじめ登録された省力化製品をカタログから選んで導入することで、設備導入費用の一部について補助を受けられる制度です。
補助対象となるのは、IoT、ロボット、自動化機器など、人手不足の解消や業務効率化に効果がある製品です。補助率は原則として2分の1以下、補助上限額は従業員数や賃上げ要件の達成状況に応じて最大1,500万円とされています。
本日は、中小企業省力化投資補助金のカタログ注文型について、対象者、補助対象製品、補助上限額、賃上げ要件、申請時の注意点を、公認会計士・税理士の視点からわかりやすく解説します。
中小企業省力化投資補助金とは
中小企業省力化投資補助金とは、人手不足に悩む中小企業等が、省力化に役立つ設備や機器を導入する際に、その費用の一部を補助する制度です。
目的は、単なる設備投資の支援ではありません。
省力化製品を導入することで、少ない人員でも業務を回せる体制を作り、売上拡大、生産性向上、付加価値額の向上、賃上げにつなげることが目的です。
たとえば、次のような取組が想定されます。
飲食店が配膳ロボットや券売機を導入する
宿泊業が自動チェックイン機を導入する
小売業が自動精算機を導入する
製造業が検品・仕分システムや自動搬送装置を導入する
物流業や倉庫業が自動倉庫や無人搬送車を導入する
清掃業が清掃ロボットを導入する
人が行なっていた作業を機械やシステムに置き換えることで、従業員の作業負担を減らし、限られた人員でも事業を継続・拡大しやすくする制度といえます。
カタログ注文型とは
中小企業省力化投資補助金には、カタログ注文型と一般型があります。
このうちカタログ注文型は、事務局の製品カタログに掲載されている省力化製品を選んで導入する制度です。
導入したい製品がカタログに掲載されている場合、対象製品や販売事業者があらかじめ登録されているため、比較的わかりやすく申請を進めやすい点が特徴です。
また、申請は中小企業等と販売事業者が共同で行います。ファイナンス・リースを利用する場合には、対象リース会社も含めて共同申請を行います。
補助金申請に慣れていない事業者でも、販売事業者のサポートを受けながら手続きを進められる点は、カタログ注文型の大きなメリットです。
補助対象となる事業者
中小企業省力化投資補助金のカタログ注文型は、中小企業等を対象としています。
主な中小企業の基準は、業種ごとに資本金または常勤従業員数で判定されます。
代表的な基準は次のとおりです。
製造業、建設業、運輸業:資本金3億円以下または常勤従業員300人以下
卸売業:資本金1億円以下または常勤従業員100人以下
サービス業:資本金5,000万円以下または常勤従業員100人以下
小売業:資本金5,000万円以下または常勤従業員50人以下
ソフトウェア業、情報処理サービス業:資本金3億円以下または常勤従業員300人以下
旅館業:資本金5,000万円以下または常勤従業員200人以下
その他の業種:資本金3億円以下または常勤従業員300人以下
ただし、要件を満たす中小企業であっても、いわゆる「みなし大企業」に該当する場合は補助対象外となります。
親会社が大企業である場合、グループ会社がある場合、出資関係が複雑な場合には、形式的な資本金や従業員数だけでなく、みなし大企業に該当しないか確認する必要があります。
補助対象となる製品
カタログ注文型では、補助対象となる製品は、事務局の製品カタログに掲載されているものに限られます。
対象となる製品カテゴリの例は、次のとおりです。
清掃ロボット
配膳ロボット
自動倉庫・検品・仕分システム
無人搬送車、AGV、AMR
スチームコンベクションオーブン
券売機
自動チェックイン機
自動精算機
タブレット型給油許可システム
オートラベラー
飲料補充ロボット
測量機
丁合機
印刷用紙高積装置
印刷用インキ自動計量装置
段ボール製箱機
近赤外線センサ式プラスチック材質選別機
印刷紙面検査装置
鋳物用自動バリ取り装置
自動調色システム・自動裁断機
カタログ掲載製品は随時更新されます。
そのため、現時点で導入したい製品が掲載されていない場合でも、将来的に追加される可能性があります。反対に、以前掲載されていた情報が変更される可能性もあるため、実際に申請する際は必ず最新の製品カタログを確認しましょう。
補助対象経費
補助対象となる経費は、主に次の2つです。
省力化製品の本体価格
導入に必要な導入経費
省力化製品の購入費用だけでなく、導入に必要な一定の経費も対象となる場合があります。
ただし、補助対象となるのは、カタログに掲載されている製品と、それに関連する所定の導入経費です。
カタログに掲載されていない製品、補助対象外のオプション、通常業務に関係のない設備、単なる汎用品などは対象外となる可能性があります。
また、省力化製品の購入価格が、製品ごとに設定された補助上限額の2倍を上回る場合、補助率が2分の1未満となることがあります。
単に「補助率2分の1」と考えるのではなく、製品ごとの上限額や補助対象範囲を確認することが重要です。
補助率と補助上限額
カタログ注文型の補助率は、原則として補助対象経費の2分の1以下です。
補助上限額は、従業員数によって異なります。
2026年3月19日の制度改定後の補助上限額は、次のとおりです。
従業員5人以下:500万円
従業員6人から20人以下:750万円
従業員21人以上:1,000万円
さらに、一定の賃上げ要件を達成した場合、補助上限額が引き上げられます。
賃上げ要件を達成した場合の補助上限額は、次のとおりです。
従業員5人以下:750万円
従業員6人から20人以下:1,000万円
従業員21人以上:1,500万円
今回の制度改定では、従業員20人以下の事業者について補助上限額が引き上げられています。小規模事業者や従業員数の少ない中小企業にとっては、以前よりも使いやすい制度になったといえます。
賃上げ要件に注意
カタログ注文型では、賃上げ要件を達成した場合、補助上限額が引き上げられます。
主な賃上げ要件として、申請時と比較して、補助事業期間終了時点で次のような目標を達成する見込みの事業計画を策定する必要があります。
事業場内最低賃金を3.0%以上増加させること
給与支給総額を6%以上増加させること
このうち、事業場内最低賃金の引上げについては、2026年3月19日の制度改定により、従来の「45円以上」から「3.0%以上」へ見直されています。
賃上げ要件を達成できれば補助上限額は大きくなりますが、達成できない場合には補助額が減額される可能性があります。
そのため、補助上限額を上げたいからといって、無理な賃上げ計画を設定するのはおすすめできません。
今後の売上見込み、人員計画、給与水準、最低賃金の改定見込みを踏まえて、現実的に達成できる計画を立てることが大切です。
労働生産性の向上も求められる
カタログ注文型では、賃上げだけでなく、労働生産性の向上も重要な要件です。
具体的には、労働生産性について、年平均成長率3.0%以上の向上を目指す事業計画に取り組むことが求められます。
ここで重要なのは、導入する設備によって、どの業務がどれだけ省力化されるのかを具体的に説明することです。
たとえば、次のような指標を整理しておくとよいでしょう。
作業時間が何時間削減されるか
必要人員が何人分削減されるか
残業時間がどの程度減るか
処理件数がどの程度増えるか
生産能力がどの程度向上するか
売上や粗利益がどの程度増えるか
人件費や外注費をどの程度抑制できるか
「便利そうだから導入する」というだけではなく、導入前後でどのように業務が変わり、どのように生産性が上がるのかを整理することが大切です。
2回目以降の申請には追加要件がある
中小企業省力化投資補助金は、2回目以降の交付申請も可能です。
ただし、2回目以降の交付申請は、前回以前の申請に係る補助金の支払いが完了した後に行う必要があります。また、2回目以降の申請では、追加要件があります。
主な要件は次のとおりです。
補助事業終了後3年間で毎年、申請時と比較して労働生産性を年平均成長率4.0%以上向上させること
賃上げに取り組み、その旨を交付申請時に宣誓すること
前回の補助事業によって省力化効果が得られていること
前回の交付申請時と比較して、事業場内最低賃金を3.5%以上上昇させていること
なお、前回の交付申請時から2年以上経過している場合は7.0%以上、3年以上経過している場合は10.5%以上、事業場内最低賃金を上昇させていることが必要です。
1回目の申請時点から、導入効果や賃上げ状況をきちんと記録しておくことが、将来の追加申請にもつながります。
申請の流れ
カタログ注文型は、当面の間、申請期限が設けられておらず、随時申請が可能です。
また、2026年3月19日の制度改定により、受付期間は2027年3月末頃まで延長されています。大まかな申請の流れは、次のとおりです。
GビズIDを取得する
製品カタログから対象製品を探す
販売事業者を選定する
販売事業者と導入内容を相談する
必要書類を準備する
中小企業等と販売事業者が共同で応募・交付申請を行う
交付決定を受ける
補助事業を実施する
省力化製品を導入する
事業実績報告を行なう
補助金額の確定を受ける
補助金の交付を受ける
事業実施効果報告を行なう
申請から交付決定までは、おおむね1か月から2か月程度が予定されています。
ただし、不備がある場合や申請が集中する場合には、さらに時間がかかる可能性があります。
設備の導入時期が決まっている場合は、余裕を持って申請準備を進めることが重要です。
申請時に必要となる主な書類
申請時には、事業者の状況や申請内容に応じて、複数の書類が必要になります。
代表的な書類としては、次のようなものがあります。
従業員名簿
財務諸表
決算書
労働生産性や賃上げ計画に関する資料
導入する省力化製品に関する資料
販売事業者との確認書類
リースを利用する場合の関連書類
特に、従業員数、財務状況、賃上げ計画、導入効果に関する資料は、申請内容の根拠になります。
販売事業者が申請をサポートしてくれるとはいえ、自社側でも数字の根拠を整理しておくことが大切です。
交付決定前の契約・発注に注意
補助金では、原則として交付決定前に契約、発注、購入、支払いを行った経費は補助対象外となる可能性があります。
省力化製品を早く導入したい場合でも、補助金を活用する場合は、必ず交付決定のタイミングを確認してから契約・発注を進める必要があります。
特に、製品の納期が長い場合や、繁忙期までに設備を導入したい場合は、申請から交付決定までの期間を見込んでスケジュールを組むことが重要です。
会計・税務上の注意点
中小企業省力化投資補助金を受け取った場合、法人であれば原則として収益に計上され、法人税の課税対象となります。
個人事業主の場合も、原則として事業所得の収入金額に含まれます。
一方で、補助金を使って固定資産を取得した場合には、一定の要件を満たせば、圧縮記帳の適用を検討できる場合があります。
圧縮記帳を行なうと、補助金を受け取った年度の税負担を一定程度繰り延べることができます。ただし、税金が完全になくなるわけではありません。将来の減価償却費が少なくなるため、課税時期を調整する制度と考える必要があります。
また、補助金収入そのものは通常、消費税の課税売上には該当しません。
ただし、省力化製品の購入時には消費税が発生します。補助対象経費を税込で申請するのか、税抜で申請するのか、仕入税額控除の取扱いをどうするのかは、申請前に確認しておく必要があります。
さらに、補助金は原則として後払いです。
採択・交付決定されたとしても、設備代金の支払い時点では、自己資金、借入、リースなどで資金を準備する必要があります。
高額な省力化設備を導入する場合は、補助金の入金時期まで含めた資金繰り表を作成しておくことをおすすめします。
中小企業省力化投資補助金が向いている事業者
中小企業省力化投資補助金のカタログ注文型は、次のような事業者に向いています。
人手不足に悩んでいる
採用に頼らず、省人化・省力化を進めたい
清掃、配膳、受付、精算、搬送、検品、仕分けなどの作業を自動化したい
カタログ掲載製品の中に導入したい設備がある
比較的早く省力化設備を導入したい
販売事業者のサポートを受けながら申請したい
賃上げや生産性向上を含めた事業計画を作成できる
設備投資によって売上拡大や業務効率化を目指したい
特に、飲食業、宿泊業、小売業、製造業、物流業、建設業、サービス業など、人手不足の影響を受けやすい業種では活用余地があります。
一方で、導入したい設備がカタログに掲載されていない場合や、個別仕様の大型設備を導入したい場合には、一般型や他の補助金の方が合うケースもあります。
まとめ
中小企業省力化投資補助金のカタログ注文型は、人手不足に悩む中小企業等が、省力化製品を導入する際に活用しやすい補助金です。
対象となるのは、製品カタログに掲載されている省力化製品です。清掃ロボット、配膳ロボット、自動倉庫、検品・仕分システム、無人搬送車、自動チェックイン機、自動精算機など、さまざまな製品カテゴリが用意されています。
補助率は原則2分の1以下で、補助上限額は従業員数に応じて500万円、750万円、1,000万円です。さらに、賃上げ要件を達成した場合には、最大1,500万円まで補助上限額が引き上げられます。
2026年3月19日の制度改定により、従業員20人以下の補助上限額が引き上げられ、公募受付期間も2027年3月末頃まで延長されています。
ただし、補助金は申請すれば必ず受けられるものではありません。
カタログ掲載製品であること、人手不足の状況、省力化効果、労働生産性の向上、賃上げ計画、資金繰り、交付決定前の契約・発注禁止など、確認すべきポイントが多くあります。
省力化設備の導入を検討している場合は、導入したい製品がカタログに掲載されているか、販売事業者が対応しているか、補助対象経費や申請スケジュールに問題がないかを早めに確認することをおすすめします。



