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ネット通販は簡易インボイスを発行できる?会員登録制ECサイトのインボイス対応を税理士が解説

  • 執筆者の写真: 安田 亮
    安田 亮
  • 2 日前
  • 読了時間: 14分

こんにちは!代表の安田です。


インボイス制度が始まり、ネット通販を行なう事業者から「当社の領収書や購入明細は簡易インボイスでよいのか」というご相談を受けることがあります。


ネット通販では、購入者がECサイト上で商品を注文し、クレジットカードや電子決済などで支払いを行います。購入者が会社や個人事業主の場合、経費精算や仕入税額控除のために、インボイス対応の領収書や請求書を求められることもあります。


一方で、ネット通販では購入者情報として氏名、住所、メールアドレスなどを取得していることが一般的です。また、会員登録をしないと購入できないECサイトもあります。


そのため、次のような疑問が生じます。

  • 購入者の氏名が分かっている場合でも簡易インボイスを発行できるのか

  • 会員登録制のネット通販は、不特定多数向けの小売業といえるのか

  • ネット通販の領収書には宛名が必要なのか

  • ECサイトで発行する購入明細や領収書はどこまで記載すればよいのか」


本日は、ネット通販における簡易インボイスの取扱いと、会員登録制ECサイトでの実務上の注意点について解説します。


簡易インボイスとは

簡易インボイスとは、正式には「適格簡易請求書」といいます。


インボイス制度では、買手が消費税の仕入税額控除を受けるために、原則として適格請求書、いわゆるインボイスの保存が必要です。通常のインボイスには、主に次の事項を記載します。

  • 適格請求書発行事業者の氏名または名称

  • 登録番号

  • 取引年月日

  • 取引内容

  • 税率ごとに区分した税込金額または税抜金額

  • 適用税率

  • 税率ごとに区分した消費税額等

  • 書類の交付を受ける事業者の氏名または名称


これに対して、簡易インボイスでは、通常のインボイスよりも記載事項が一部簡略化されています。具体的には、「書類の交付を受ける事業者の氏名または名称」、つまり買手の宛名の記載が不要です。


また、通常のインボイスでは「適用税率」と「税率ごとに区分した消費税額等」の両方が必要ですが、簡易インボイスでは「適用税率」または「税率ごとに区分した消費税額等」のいずれかを記載すれば足ります。


このため、レジレシート、領収書、購入明細、ECサイト上の注文履歴などでも、必要事項を満たせば簡易インボイスとして機能する場合があります。


簡易インボイスを発行できる事業

簡易インボイスは、すべての事業者が自由に発行できるものではありません。

適格請求書発行事業者が、一定の事業を行う場合に限り、通常のインボイスに代えて簡易インボイスを交付できます。

代表的な対象事業は、次のとおりです。

  • 小売業

  • 飲食店業

  • 写真業

  • 旅行業

  • タクシー業

  • 不特定かつ多数の者に対して行う駐車場業

  • その他これらの事業に準ずる事業で、不特定かつ多数の者に資産の譲渡等を行う事業


ネット通販は、インターネットを通じて商品を販売する形態です。

実店舗で商品を販売する小売業と同じように、インターネット上で一般消費者や事業者に商品を販売している場合には、小売業として簡易インボイスを交付できる可能性があります。


ポイントは、取引方法が実店舗かネットかではなく、事業の性質として不特定多数の者を対象に商品等を販売しているかどうかです。


ネット通販でも簡易インボイスを発行できる

適格請求書発行事業者が、インターネット上で日本国内の商品販売などを行なう場合、原則として、買手から求められればインボイスを交付する義務があります。


ただし、その事業が小売業など簡易インボイスを交付できる事業に該当する場合には、通常のインボイスではなく、簡易インボイスを交付することができます。


たとえば、ECサイトで文房具、日用品、食品、雑貨、衣料品、家電などを一般向けに販売している場合、事業の性質としては小売業に該当することが多いでしょう。


このようなネット通販事業者が適格請求書発行事業者であれば、購入者からインボイスを求められた場合でも、簡易インボイスとして必要な事項を記載した領収書や購入明細を発行することで対応できる場合があります。


つまり、ネット通販だから通常のインボイスでなければならない、というわけではありません。


会員登録制のECサイトでも簡易インボイスは可能か

実務上、特に悩みやすいのが会員登録制のECサイトです。


ネット通販では、購入前に氏名、住所、電話番号、メールアドレスなどを登録し、会員IDでログインして購入する仕組みがよく使われています。


この場合、「会員登録によって取引相手が特定されているのだから、不特定多数への販売とはいえないのではないか」と考える方もいます。


しかし、簡易インボイスを交付できるかどうかは、個々の購入者の氏名等が分かるかどうかだけで決まるものではありません。その事業自体が、不特定多数の者を対象とする小売業に該当するのであれば、会員登録の有無は通常、簡易インボイスの可否に大きく影響しないと考えられます。


たとえば、誰でも会員登録すれば購入できる一般向けECサイトであれば、購入時に氏名や住所を把握していても、事業の性質としては広く一般の購入者を対象とする小売業といえるでしょう。


このような場合、会員登録制であっても、簡易インボイスを交付できると考えられます。


購入者情報が分かっていても宛名は省略できる

簡易インボイスでは、買手の氏名または名称の記載が不要です。


そのため、ネット通販事業者が購入者情報として氏名や会社名を把握している場合でも、簡易インボイスとして発行する領収書や購入明細に、必ずしも買手の氏名等を記載する必要はありません。


たとえば、ECサイト上で発行される購入明細に、販売者名、登録番号、取引年月日、商品内容、税率ごとの金額、適用税率または消費税額等が記載されていれば、宛名がなくても簡易インボイスとして要件を満たす場合があります。


もちろん、購入者の利便性や経費精算の都合から、会社名や氏名を表示できるようにすることは実務上有効です。


しかし、簡易インボイスとしての要件だけを考えれば、購入者情報が分かっていることと、宛名記載が必須になることは別問題です。


簡易インボイスに記載すべき事項

ネット通販で簡易インボイスを発行する場合、領収書や購入明細には、少なくとも次のような事項を記載する必要があります。

  • 販売者の氏名または名称

  • 適格請求書発行事業者の登録番号

  • 取引年月日

  • 販売した商品やサービスの内容

  • 軽減税率対象品目である場合はその旨

  • 税率ごとに区分した税込金額または税抜金額

  • 適用税率または税率ごとに区分した消費税額等


ネット通販では、注文日、出荷日、決済日、領収書発行日が異なる場合があります。

取引年月日として何を表示するか、社内ルールを整理しておくことが大切です。


また、食品など軽減税率8%の対象商品と、日用品など標準税率10%の商品を同時に販売する場合には、税率ごとに金額を区分する必要があります。


ECサイトの購入明細や領収書発行機能が、複数税率や登録番号表示に対応しているか確認しておきましょう。


軽減税率対象商品を扱う場合の注意点

ネット通販では、食品、飲料、新聞など、軽減税率の対象となる商品を販売しているケースがあります。


一方で、雑貨、送料、手数料、ラッピング代、家電、衣料品などは、通常10%の消費税率が適用されます。


このように、8%と10%の商品やサービスが混在する場合、簡易インボイスであっても、税率ごとに区分した金額の表示が必要です。


たとえば、食品と雑貨を同時に購入した場合には、購入明細で次のように区分できるようにしておく必要があります。

  • 8%対象商品の税込金額

  • 10%対象商品の税込金額

  • 適用税率または税率ごとの消費税額等

  • 軽減税率対象品目であることの表示


軽減税率対象商品があるにもかかわらず、単に合計金額だけを表示している場合、買手側で仕入税額控除の処理がしにくくなります。


ECサイトや受注管理システムの設定を確認し、税率ごとの区分表示ができるようにしておきましょう。


送料・手数料の取扱いにも注意

ネット通販では、商品代金のほかに、送料、代引手数料、決済手数料、ギフト包装料などが発生することがあります。これらの費用についても、インボイス上の表示を整理しておく必要があります。


たとえば、送料を購入者から受け取る場合、その送料がどのような取引として処理されるのかにより、消費税の取扱いを確認する必要があります。


また、食品など軽減税率対象の商品と送料が一緒に請求される場合でも、送料自体は通常、軽減税率の対象ではありません。


そのため、商品代金と送料を分けて表示し、税率ごとの金額を明確にすることが重要です。

ECサイトの領収書で、商品代金、送料、手数料、ポイント利用額、クーポン値引きなどがどのように表示されるかも確認しておきましょう。


ポイント・クーポン利用時の領収書表示

ネット通販では、ポイントやクーポンを利用して購入するケースも多くあります。

ポイント値引きやクーポン値引きがある場合、領収書や購入明細にどの金額を表示するかは、経理処理上も重要です。


たとえば、商品代金10,000円に対して1,000円分のクーポンを利用し、実際の支払額が9,000円になった場合、値引き後の金額や消費税額を適切に表示する必要があります。


また、ポイントを販売者側が負担するのか、モール運営者が負担するのかによって、販売者側の売上計上や消費税処理が異なる場合があります。


インボイス制度では、買手が保存する書類に税率ごとの金額や消費税額等が正しく表示されていることが重要です。ポイント・クーポンを多く利用するECサイトでは、領収書表示と会計処理の整合性を確認しておきましょう。


ECモールに出店している場合

ネット通販事業者は、自社ECサイトだけでなく、大手ECモールに出店して商品を販売していることもあります。


この場合、インボイスを誰が交付するのかを確認する必要があります。

出店者が販売者として商品を販売しているのか、モール運営者が販売者として商品を販売しているのか、あるいはモールが単に取引の場や決済手段を提供しているのかにより、インボイスの発行主体が変わる可能性があります。


また、モールのシステムから発行される領収書に、出店者の登録番号が表示されるのか、モール運営者の登録番号が表示されるのかも確認が必要です。


出店者側では、次の点を確認しておきましょう。

  • 販売者は自社か、モール運営者か

  • 領収書や購入明細は誰の名義で発行されるか

  • 自社の登録番号が表示されるか

  • 簡易インボイスとして必要な事項が記載されるか

  • 複数税率に対応しているか

  • 購入者から個別にインボイスを求められた場合の対応方法


ECモールごとに仕様が異なるため、出店しているモールのインボイス対応を確認しておくことが大切です。


BtoB向けECサイトの場合は慎重に判断

ネット通販といっても、すべてが一般消費者向けとは限りません。

法人や事業者だけを対象とするBtoB向けECサイトもあります。


たとえば、取引先として事前審査を行った法人だけが購入できるサイト、特定の会員企業だけに販売するサイト、卸売業者向けの受発注システムなどです。


このような場合、事業の性質として「不特定多数の者に資産の譲渡等を行う小売業」といえるかは、個別に検討が必要です。


誰でも登録すれば購入できる一般向けECサイトとは異なり、取引先を限定している場合には、簡易インボイスの対象となる事業に該当するか慎重に判断すべきです。


特に、継続的な取引契約に基づく法人向け販売、特定顧客への卸売、取引先ごとに価格や条件を設定している取引では、通常のインボイスを発行する体制を整えておく方が安全な場合があります。


買手側が確認したいポイント

ネット通販で商品を購入する事業者側も、受け取った領収書や購入明細がインボイスとして使えるか確認する必要があります。確認したい項目は次のとおりです。

  • 販売者の名称が記載されているか

  • 登録番号が記載されているか

  • 取引年月日が分かるか

  • 購入した商品内容が分かるか

  • 軽減税率対象品目がある場合、その旨が分かるか

  • 税率ごとに区分した金額が記載されているか

  • 適用税率または消費税額等が記載されているか

  • ECモール利用時、発行者が販売者と一致しているか

  • 電子領収書の場合、電子データで保存しているか


簡易インボイスの場合、宛名がないこと自体は問題ではありません。

そのため、会社名が記載されていない領収書であっても、簡易インボイスとして必要事項を満たしていれば、仕入税額控除のための書類として保存できる場合があります。


ただし、登録番号や税率区分が不足している場合は、インボイスとして不十分になる可能性があるため注意しましょう。


電子領収書は電子帳簿保存法にも注意

ネット通販では、領収書や購入明細がPDF、メール、Web画面、注文履歴などの電子データで発行されることが多くあります。


このような電子データで受け取った領収書は、電子取引データとして保存する必要があります。単に紙に印刷して保存するだけでは、電子帳簿保存法上の保存要件を満たさない場合があります。

買手側では、次のような対応を確認しましょう。

  • PDF領収書を電子データのまま保存しているか

  • Web画面の注文履歴を必要に応じて保存しているか

  • メール本文や添付ファイルを保存しているか

  • 取引年月日、金額、取引先で検索できるようにしているか

  • 改ざん防止措置を講じているか

  • 社内の経費精算ルールに電子領収書の保存方法を定めているか


ネット通販のインボイス対応では、インボイスの記載事項だけでなく、電子データの保存方法もセットで確認することが大切です。


売手側が整備したい実務対応

ネット通販事業者が簡易インボイスに対応するためには、ECサイトや受注管理システムの表示を見直す必要があります。売手側で確認したいポイントは次のとおりです。

  • 適格請求書発行事業者として登録しているか

  • 登録番号を領収書や購入明細に表示しているか

  • 簡易インボイスとして必要事項を満たしているか

  • 軽減税率対象商品を区分表示できるか

  • 送料、手数料、値引き、ポイント利用額の表示が適切か

  • 購入者が領収書をダウンロードできるか

  • 会員登録制でも一般向け販売であることを説明できるか

  • BtoB専用サイトの場合、通常のインボイス発行体制があるか

  • ECモール出店時の発行主体を確認しているか・問い合わせ対応の社内マニュアルを整備しているか


特に、複数税率の商品を扱う事業者や、ECモールと自社サイトを併用している事業者は、販売チャネルごとに領収書の仕様が異なることがあります。


購入者から「インボイス対応の領収書をください」と問い合わせがあった場合に、どの画面から取得できるのか、どの書類がインボイスに該当するのかを案内できるようにしておきましょう。


実務上よくある誤解

ネット通販と簡易インボイスについて、実務上よくある誤解を整理します。


  • 会員登録制だから簡易インボイスは発行できない

会員登録によって購入者情報が分かる場合でも、その事業自体が不特定多数の者を対象とする小売業に該当するのであれば、簡易インボイスを交付できると考えられます。


  • 購入者の氏名が分かっているなら宛名を必ず書かなければならない

簡易インボイスでは、買手の氏名または名称の記載は不要です。購入者情報を把握していることと、宛名記載が必要になることは別です。


  • ネット通販ならすべて簡易インボイスでよい

BtoB専用サイトや特定の取引先だけを対象とする販売など、事業の性質によっては簡易インボイスの対象になるか慎重に判断すべきケースもあります。


まとめ

ネット通販を行なう適格請求書発行事業者は、買手から求められた場合、原則としてインボイスを交付する義務があります。


ただし、その事業が不特定多数の者を対象とする小売業などに該当する場合には、通常のインボイスに代えて簡易インボイスを交付することができます。


会員登録制のECサイトであっても、誰でも登録して購入できる一般向けの小売業であれば、購入者の氏名や住所が分かっていることだけを理由に、簡易インボイスが使えなくなるわけではありません。


簡易インボイスでは、買手の氏名または名称の記載が不要です。そのため、ネット通販の購入明細や領収書に宛名がなくても、販売者名、登録番号、取引年月日、取引内容、税率ごとの金額、適用税率または消費税額等などの必要事項を満たしていれば、仕入税額控除のための書類として保存できる場合があります。


一方で、BtoB専用サイトや特定顧客向けの取引では、簡易インボイスの対象となる事業に該当するか慎重な確認が必要です。


また、ネット通販では、軽減税率対象商品、送料、手数料、ポイント、クーポン、ECモール経由の販売、電子領収書の保存など、実務上確認すべき点が多くあります。

ネット通販事業者は、ECサイトや受注管理システムの領収書表示を見直し、簡易インボイスとして必要な事項を満たしているか確認しておきましょう。


買手側も、宛名の有無だけで判断せず、登録番号や税率区分などの記載事項を確認し、電子領収書は電子データとして適切に保存することが大切です。

ネット通販のインボイス対応に不安がある場合は、早めに税理士へ相談することをおすすめします。

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