免税事業者から資産を購入した場合の消費税相当額はどう処理する?インボイス制度下の法人税処理を税理士が解説
- 安田 亮
- 3 日前
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更新日:7 時間前
こんにちは!代表の安田です。
インボイス制度が始まってから、免税事業者やインボイス未登録事業者との取引について、消費税と法人税の処理に悩む会社が増えています。
特に注意したいのが、免税事業者等から固定資産や棚卸資産などを購入した場合です。
インボイス制度の下では、原則として、適格請求書発行事業者以外の者から行った課税仕入れについては、仕入税額控除を受けることができません。
ただし、制度開始後8年間は経過措置が設けられており、一定割合について仕入税額控除が認められます。
では、経過措置により控除できない部分の消費税相当額は、法人税ではどのように処理するのでしょうか。「控除対象外消費税額等」として、課税売上割合80%以上なら一時の損金にできるのでしょうか。1つの資産に係る金額が20万円未満なら、全額損金算入できるのでしょうか。
結論から言うと、免税事業者等から資産の課税仕入れをした場合、仕入税額控除の対象外となる消費税相当額は、原則として資産の取得価額に含めて法人税の所得計算を行ないます。
これは、一般的な控除対象外消費税額等とは異なる取扱いです。
税抜経理を採用している法人であっても、免税事業者等からの課税仕入れについては、法人税上、仮払消費税等がないものとして扱われます。
本日は、インボイス制度下で免税事業者等から資産を購入した場合の法人税処理、控除対象外消費税額等との違い、固定資産・棚卸資産・前払費用の取扱い、申告調整の注意点を解説します。

インボイス制度と免税事業者からの仕入れ
インボイス制度では、仕入税額控除を受けるために、原則として適格請求書の保存が必要です。適格請求書を発行できるのは、税務署に登録した適格請求書発行事業者です。
一方、免税事業者は、原則として適格請求書を発行できません。
そのため、免税事業者から商品、固定資産、サービスなどを購入した場合、買手側では原則として仕入税額控除を受けることができません。
ただし、インボイス制度開始後、急にすべての控除ができなくなると実務への影響が大きいため、経過措置が設けられています。
令和5年10月1日から令和8年9月30日までの3年間は、仕入税額相当額の80%を控除できます。
令和8年10月1日から令和10年9月30日までの2年間は仕入税額相当額の70%を、令和10年10月1日から令和12年9月30日までの2年間は50%を、令和12年10月からの1年間は50%を控除できます。令和13年10月1日以後は、原則として控除できなくなります。
経過措置で控除できない部分が問題になる
免税事業者等からの課税仕入れについて、経過措置により一部の仕入税額控除が認められるとしても、控除できない部分が残ります。
たとえば、税込110万円の固定資産を免税事業者から購入したとします。
税率10%相当で考えると、消費税相当額は10万円です。
経過措置80%の期間であれば、そのうち8万円相当が仕入税額控除の対象となり、2万円相当は控除できない部分になります。
この2万円相当を法人税でどう処理するかが問題です。
一見すると、控除できなかった消費税額なので、「控除対象外消費税額等」として処理すればよいように思えます。
しかし、免税事業者等からの課税仕入れについては、法人税上、通常の控除対象外消費税額等とは異なる整理になります。
控除対象外消費税額等とは
控除対象外消費税額等とは、税抜経理方式を採用している事業者において、仕入税額控除ができなかった仮払消費税等の額をいいます。
たとえば、課税売上高が5億円を超える場合や、課税売上割合が95%未満の場合には、課税仕入れに係る消費税額等の全額を控除できないことがあります。
この場合、控除できない仮払消費税等の金額が控除対象外消費税額等になります。
資産に係る控除対象外消費税額等については、法人税上、次のような処理が認められています。
まず、その資産の取得価額に算入し、減価償却などにより損金算入する方法です。
また、課税売上割合が80%以上である場合、棚卸資産に係るものである場合、一の資産に係る控除対象外消費税額等が20万円未満である場合には、損金経理を要件として、その事業年度で全額損金算入できる取扱いがあります。
さらに、これらに該当しない場合には、繰延消費税額等として資産計上し、一定期間で損金算入する方法があります。
免税事業者からの仕入れは控除対象外消費税額等ではない
ここが今回の最大のポイントです。
免税事業者等からの課税仕入れについて、仕入税額控除できない部分の消費税相当額は、法人税上の控除対象外消費税額等には該当しません。なぜなら、免税事業者等からの課税仕入れについては、法人税において仮払消費税等がないものとして取り扱われるためです。
控除対象外消費税額等とは、仕入税額控除ができない仮払消費税等の額です。
しかし、免税事業者等からの仕入れでは、そもそも法人税上の仮払消費税等がないと整理されます。
そのため、控除できない消費税相当額は、控除対象外消費税額等として一時損金算入するのではなく、取引の対価の額、つまり資産の取得価額に含めて法人税の所得計算を行います。
税抜経理をしていても取得価額に含める
税抜経理を採用している法人では、通常、課税仕入れについて本体価格と仮払消費税等を分けて経理します。
たとえば、税込110万円の資産を購入した場合、本体価格100万円、仮払消費税等10万円として処理することがあります。
しかし、免税事業者等からの課税仕入れについては、インボイス制度導入後、仕入税額控除の対象となる課税仕入れ等の税額がありません。
そのため、税抜経理方式で経理している場合であっても、取引の対価の額と区分して経理した消費税等相当額は、その課税仕入れに係る取引の対価の額に含めて法人税の課税所得を計算する必要があります。
つまり、会計上は仮払消費税等のように処理していても、法人税上は資産の取得価額に含める調整が必要になる場合があります。
この点を誤ると、減価償却費の計算や棚卸資産の評価、法人税申告書の申告調整に影響します。
固定資産を購入した場合
免税事業者等から固定資産を購入した場合、仕入税額控除の対象外となる消費税相当額は、その固定資産の取得価額に含めます。
たとえば、免税事業者から中古の機械装置、車両、備品、建物附属設備などを購入した場合です。この場合、経過措置により控除できる部分を除き、控除できない消費税相当額は固定資産の取得価額に含め、耐用年数に応じて減価償却します。
通常の控除対象外消費税額等のように、一の資産に係る金額が20万円未満だからその事業年度で全額損金算入する、という処理はできません。
固定資産について税抜経理の感覚で仮払消費税等を計上していると、取得価額が過少になり、償却限度額の計算を誤る可能性があります。免税事業者等から固定資産を購入した場合は、固定資産台帳の取得価額を必ず確認しましょう。
棚卸資産を購入した場合
棚卸資産についても考え方は同じです。
免税事業者等から商品や原材料などの棚卸資産を購入した場合、仕入税額控除の対象外となる消費税相当額は、棚卸資産の取得価額に含めます。
通常の控除対象外消費税額等であれば、棚卸資産に係るものは一定要件のもと一時の損金算入が認められます。
しかし、免税事業者等からの課税仕入れについては、控除対象外消費税額等に該当しないため、そのルールを使うのではありません。棚卸資産の取得価額として処理し、売上原価や期末棚卸資産の評価に反映する必要があります。
特に、免税事業者から商品を大量に仕入れている会社では、期末在庫の評価額に影響する可能性があります。
経理処理を消費税だけでなく、法人税の売上原価計算まで含めて確認しましょう。
繰延資産を取得した場合
控除対象外消費税額等の対象となる資産には、棚卸資産や固定資産のほか、繰延資産が含まれるとされています。
一方、免税事業者等からの課税仕入れについては、控除対象外消費税額等ではないため、仕入税額控除の対象外部分は、その取引の対価の額に含めて法人税の所得計算を行います。
たとえば、免税事業者等に対して、繰延資産に該当する支出を行なった場合には、控除できない消費税相当額を含めて繰延資産の額を計算することになります。
その後、繰延資産の償却期間に応じて損金算入します。
固定資産と同じく、仮払消費税等として切り離して一時損金処理すると、法人税上の処理を誤る可能性があります。
前払費用は控除対象外消費税額等の資産に含まれない
控除対象外消費税額等の取扱いでは、対象となる資産に棚卸資産、固定資産、繰延資産が含まれます。
一方、前払費用はこの資産には含まれないとされています。たとえば、前払家賃や前払保守料などのように、翌期以後のサービス提供に対応する費用です。
ただし、今回の免税事業者等からの課税仕入れについては、そもそも控除対象外消費税額等の取扱いではなく、取引の対価の額に含めて処理することになります。
したがって、免税事業者等との取引が固定資産なのか、棚卸資産なのか、繰延資産なのか、前払費用なのかを整理したうえで、法人税上の取得価額や費用配分を確認する必要があります。
仮払消費税等として経理してしまった場合
実務では、会計ソフトの設定や従来の経理処理により、免税事業者等からの課税仕入れについても、仮払消費税等を計上してしまうことがあります。
この場合、法人税申告で調整が必要になることがあります。
免税事業者等からの課税仕入れについて、仮払消費税等として経理した金額のうち、仕入税額控除の対象外で資産の取得価額に含めるべき部分を、損金算入している場合には、そのままでは法人税上の所得金額が少なくなってしまいます。
固定資産であれば、その金額は取得価額に含めたうえで、減価償却限度額を計算する必要があります。
もし、取得価額に含めるべき金額を仮払消費税等として費用処理してしまい、償却限度額を超過する部分がある場合には、法人税申告書で所得金額に加算する申告調整が必要になります。
経過措置期間中の計算例
簡単な例で確認してみましょう。
免税事業者から税込110万円の備品を購入したとします。
消費税率10%相当で考えると、本体価格100万円、消費税相当額10万円です。
令和5年10月1日から令和8年9月30日までの経過措置80%期間であれば、10万円の80%である8万円相当について仕入税額控除が可能です。
残り2万円相当は控除できません。
この2万円相当は、控除対象外消費税額等として一時損金算入するのではなく、備品の取得価額に含めます。
したがって、法人税上の取得価額は、税抜本体価格100万円に控除できない2万円を加えた102万円として整理することになります。
一方、8万円は消費税の仕入税額控除対象として処理します。
実務では、会計ソフトの税区分設定により、この取得価額の整理が正しくできているかを確認する必要があります。
70%経過措置期間の計算例
次に、令和8年10月1日から令和10年9月30日までの70%経過措置期間で考えてみます。
免税事業者から税込110万円の固定資産を購入した場合、消費税相当額10万円のうち、70%である7万円相当が仕入税額控除の対象になります。
残り3万円相当は控除できません。
この3万円相当は、法人税上、固定資産の取得価額に含めます。
したがって、法人税上の取得価額は103万円になります。
80%経過措置期間よりも、取得価額に含める金額が大きくなります。
令和13年10月1日以後は、経過措置がなくなるため、原則として消費税相当額10万円全額が仕入税額控除できず、法人税上の取得価額に含まれることになります。
経過措置の段階により、法人税上の取得価額も変わる点に注意しましょう。
会計ソフトの税区分設定に注意
インボイス制度後の経理では、会計ソフトの税区分設定が非常に重要です。
免税事業者等からの仕入れについて、適格請求書発行事業者からの仕入れと同じ税区分で処理してしまうと、仕入税額控除を過大に計上してしまう可能性があります。
また、消費税の控除額だけでなく、法人税上の取得価額や費用配分にも影響します。
免税事業者等から資産を購入した場合は、次の点を確認しましょう。
取引先が適格請求書発行事業者かどうか
経過措置80%または50%の対象か
経過措置の適用に必要な帳簿・請求書等を保存しているか
控除できない消費税相当額を取得価額に含めているか
固定資産台帳に正しい取得価額が登録されているか
仮払消費税等として処理した金額に申告調整が必要か
税区分を誤ると、消費税申告と法人税申告の両方に影響するため注意が必要です。
免税事業者から資産を買う場合の価格交渉
インボイス制度後は、免税事業者から資産を購入する場合、買手側で仕入税額控除が制限されるため、実質的な負担が増えることがあります。
固定資産や棚卸資産の購入では、控除できない消費税相当額が取得価額に含まれ、減価償却や売上原価を通じて損金算入されることになります。そのため、購入時点でのキャッシュフローや税負担を考えると、価格設定や契約条件の確認が重要です。
ただし、免税事業者に対して一方的に消費税相当額を値引きさせるような対応には、独占禁止法や取適法(旧下請法)上の問題が生じる可能性があります。
取引価格を見直す場合には、双方で十分に協議し、合理的な取引条件を設定することが大切です。税務処理だけでなく、取引先との関係や法務面にも注意しましょう。
税務調査で確認されやすいポイント
免税事業者等からの資産購入について、税務調査では次のような点が確認される可能性があります。
取引先が適格請求書発行事業者かどうか
登録番号の確認状況
免税事業者等からの仕入れを正しい税区分で処理しているか
経過措置の適用要件を満たしているか
経過措置により控除した税額の計算が正しいか
控除できない消費税相当額を資産の取得価額に含めているか
控除対象外消費税額等として誤って一時損金算入していないか
固定資産台帳の取得価額が正しいか
棚卸資産の期末評価に反映されているか
仮払消費税等として処理した場合の申告調整を行なっているか
インボイス制度後は、消費税だけでなく法人税の取得価額や損金算入時期まで確認される可能性があります。
よくある誤解
免税事業者等からの資産購入について、実務上よくある誤解を整理します。
控除できない消費税だから控除対象外消費税額等になる
免税事業者等からの課税仕入れについては、法人税上、仮払消費税等がないものとされるため、控除対象外消費税額等には該当しません。
課税売上割合80%以上なら一時損金にできる
これは資産に係る控除対象外消費税額等についての取扱いであり、免税事業者等からの課税仕入れに係る控除不能部分にはそのまま使えません。
一の資産に係る金額が20万円未満なら損金算入できる
免税事業者等からの資産購入では、控除できない消費税相当額は原則として取得価額に含めます。
税抜経理なら仮払消費税等として処理すればよい
税抜経理をしていても、免税事業者等からの課税仕入れについては、法人税上、取引の対価の額に含めて計算する必要があります。
実務上のチェックポイント
免税事業者等から資産を購入した場合は、次の点を確認しましょう。
取引先は適格請求書発行事業者か
登録番号を確認しているか
免税事業者等からの課税仕入れに該当するか
経過措置80%または50%の対象か
経過措置に必要な帳簿・請求書等を保存しているか
控除できる仕入税額を正しく計算しているか
控除できない消費税相当額を資産の取得価額に含めているか
固定資産の場合、固定資産台帳に正しく登録しているか
棚卸資産の場合、売上原価や期末棚卸資産に反映しているか
繰延資産の場合、償却期間に応じて処理しているか
前払費用の場合、期間対応を確認しているか
仮払消費税等として経理した場合、法人税申告で調整しているか
控除対象外消費税額等として誤処理していないか
まとめ
インボイス制度導入後、免税事業者等から資産の課税仕入れをした場合、経過措置により一定割合について仕入税額控除が認められます。
令和5年10月1日から令和8年9月30日までの3年間は仕入税額相当額の80%、令和8年10月1日から令和10年9月30日までの2年間は仕入税額相当額の70%、令和10年10月1日から令和12年9月30日までの2年間は50%について、一定要件のもと仕入税額控除が可能です。
一方、経過措置により控除できない消費税相当額については、法人税上の処理に注意が必要です。
税抜経理を採用している法人では、仕入税額控除ができない金額を控除対象外消費税額等として処理できる場面があります。
資産に係る控除対象外消費税額等については、課税売上割合80%以上、棚卸資産に係るもの、一の資産に係る金額が20万円未満などの場合に、損金経理を要件としてその事業年度で全額損金算入できる取扱いがあります。
しかし、免税事業者等からの課税仕入れについては、法人税上、仮払消費税等がないものとされます。そのため、仕入税額控除の対象外となる消費税相当額は、控除対象外消費税額等には該当しません。
この金額は、原則として資産の取得価額に含めて法人税の所得計算を行います。
固定資産であれば取得価額に含めて減価償却し、棚卸資産であれば取得価額として売上原価や期末棚卸資産に反映します。繰延資産であれば繰延資産の額に含めて償却します。
仮に、免税事業者等からの課税仕入れについて、従来どおり仮払消費税等として経理してしまった場合には、仕入税額控除の対象外で償却限度額を超過する部分について、法人税申告で所得金額に加算する申告調整が必要になることがあります。
インボイス制度後は、免税事業者等からの仕入れについて、消費税申告だけでなく法人税上の取得価額や損金算入時期にも影響が出ます。
取引先の登録番号確認、会計ソフトの税区分設定、固定資産台帳、棚卸資産の評価、法人税申告調整をセットで確認しましょう。
免税事業者等からの資産購入やインボイス制度下の経理処理で迷う場合は、税理士へ相談することをおすすめします。
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