国税庁がインボイスQ&Aを改訂|特定金属くず特例は令和8年9月1日以後の仕入れから適用
- 安田 亮
- 12 時間前
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こんにちは!代表の安田です。
インボイス制度では、仕入税額控除を受けるために、原則として適格請求書等の保存が必要です。しかし、取引の性質上、インボイスの交付を受けることが難しい取引については、一定の場合に帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められる特例が設けられています。
今回、国税庁は令和8年5月7日、インボイス制度に関するQ&Aである「消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A」を改訂しました。
今回の改訂では、令和8年度税制改正で創設された特定金属くず特例について、その適用時期が明確化されています。具体的には、特定金属くず特例の対象となる特定金属くずの購入は、令和8年9月1日以後に行なわれるものに限る旨が、既存の5問に反映されました。
今回は、このインボイスQ&A改訂の内容と、特定金属くず特例の実務上のポイントを整理して解説します。
特定金属くず特例とは何か
特定金属くず特例とは、一定の要件を満たす場合に、適格請求書発行事業者でない者から特定金属くずを買い受けた場合でも、帳簿のみの保存により仕入税額控除を認める制度です。
令和8年度税制改正では、盗難特定金属製物品の処分の防止等に関する法律、いわゆる金属盗対策法に規定する特定金属くずについて、従来の古物商特例や再生資源等特例の対象から除外されました。
そのうえで、新たに、金属盗対策法上の特定金属くず買受業の届出を行なっている事業者が、適格請求書発行事業者でない者から棚卸資産として買い受ける特定金属くずについて、帳簿のみ保存で仕入税額控除を認める特例の対象に追加されたとされています。
つまり、金属くずの買取実務に対応するため、従来のインボイス制度上の特例を整理し直したものといえます。
なぜ新しい特例が設けられたのか
金属くず取引では、個人や小規模事業者など、インボイス発行事業者ではない者から買い取る場面があります。一方で、金属盗対策法の整備により、盗難品の流通防止や本人確認の強化が求められるようになりました。
そのため、税務上も、古物商特例や再生資源等特例の中にそのまま含めておくのではなく、特定金属くずに関する独自の取扱いとして整理されたものと考えられます。
特定金属くず買受業の届出を行なっている事業者に限って、一定の帳簿記載を前提に仕入税額控除を認めることで、制度上の透明性を確保しようとしているわけです。
適用開始は令和8年9月1日以後の課税仕入れから
今回のQ&A改訂で最も重要なのが、適用開始時期です。
特定金属くず特例は、金属盗対策法の施行日から起算して3か月を経過する日の翌日以後に行なう課税仕入れに適用されます。そして、金属盗対策法の施行期日を定める政令が令和8年5月7日に公布され、同法の施行期日が令和8年6月1日とされたため、特定金属くず特例は令和8年9月1日以後に行なう課税仕入れから適用されることになりました。
つまり、特定金属くずを買い受ける事業者は、令和8年9月1日を境に、インボイス制度上の仕入税額控除の取扱いを確認する必要があります。
改訂されたインボイスQ&Aは5問
今回のインボイスQ&A改訂により、計5問が見直されました。改訂対象となった問は次のとおりです。
問1:適格請求書等保存方式の概要
問84:仕入税額控除の要件
問104:帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められる場合
問106:古物商等の古物の買取り等
問110:帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められる場合の帳簿への一定の記載事項
これらのQ&Aでは、従来「金属盗対策法の施行の日から起算して3月を経過する日の翌日以後」とされていた表現が、「令和8年9月1日以後」という具体的な日付に置き換えられています。
実務では、抽象的な施行日基準よりも、具体的な日付で管理できるようになった点が大きいといえます。
帳簿のみ保存で仕入税額控除を受けるためのポイント
特定金属くず特例は、インボイスが不要になるという意味では便利に見えます。
しかし、何も保存しなくてよいわけではありません。資料によると、この特例の適用を受ける場合、帳簿には次の事項の記載が必要です。
特定金属くず特例の対象となる旨
課税仕入れの相手方の住所又は所在地
つまり、通常の帳簿記載に加えて、特例の対象取引であることが分かるようにしておく必要があります。
相手方の住所・所在地の記載が不要となる場合もある
もっとも、相手方の住所や所在地については、すべてのケースで記載が必要というわけではありません。金属盗対策法により、本人特定事項として住居等の確認を行なうこととされているもの以外については、帳簿に「課税仕入れの相手方の住所又は所在地」を記載する必要はないとされています。
この点は、金属盗対策法上の本人確認義務とインボイス制度上の帳簿記載要件が関係する部分です。実務では、単に消費税法だけを見るのではなく、金属盗対策法に基づく確認事項とあわせて整理する必要があります。
古物商特例・再生資源等特例との違いに注意
今回の改正では、特定金属くずが古物商特例や再生資源等特例の対象から除外された点も重要です。
これまでの感覚で、金属くず取引を古物商特例や再生資源等特例の延長で処理していると、令和8年9月以後の取引で誤りが生じる可能性があります。今後は、特定金属くずに該当する取引かどうか、そして特定金属くず買受業の届出を行っている事業者かどうかを確認したうえで、特定金属くず特例の適用可否を判断する必要があります。
事業者が確認しておきたい実務対応
特定金属くずを取り扱う事業者は、令和8年9月1日以後の取引に備えて、次の点を確認しておきたいところです。
まず、自社が金属盗対策法上の特定金属くず買受業の届出を行っているかを確認することです。この届出が前提となるため、制度対象者に当たるかどうかを早めに整理しておく必要があります。
次に、買い受けるものが特定金属くずに該当するかを確認します。すべての金属くずが同じ扱いになるわけではないため、対象物の区分が重要です。
さらに、帳簿記載のルールを社内で統一しておく必要があります。特定金属くず特例の対象となる旨や、必要に応じた相手方の住所・所在地を記載できるよう、会計システムや買取台帳の項目を見直しておくと安心です。
税理士として顧問先に伝えたいこと
この改正は、すべての事業者に広く影響するものではありません。
しかし、金属くずの買取業、リサイクル業、再生資源関連事業者などにとっては、インボイス制度上の仕入税額控除に直結する重要な改正です。
顧問先に該当する事業者がいる場合には、次の点をお伝えしたいところです。
特定金属くずについては、従来の古物商特例・再生資源等特例とは別枠で考える必要がある
特定金属くず特例は令和8年9月1日以後の課税仕入れから適用される
帳簿のみ保存で仕入税額控除を受けるには、帳簿記載事項を満たす必要がある
金属盗対策法上の届出や本人確認ルールもあわせて確認する必要がある
制度開始直後は、現場の買取担当者と経理担当者の間で認識がずれやすいため、早めに社内フローを整備しておくことが大切です。
まとめ
国税庁は令和8年5月7日、インボイス制度に関するQ&Aを改訂し、令和8年度税制改正で創設された特定金属くず特例の適用時期を反映しました。
特定金属くず特例とは、金属盗対策法上の特定金属くず買受業の届出を行なっている事業者が、適格請求書発行事業者でない者から棚卸資産として買い受ける特定金属くずについて、一定事項を記載した帳簿のみの保存により仕入税額控除を認める制度です。
今回、金属盗対策法の施行期日が令和8年6月1日とされたことを受け、特例の適用開始日は令和8年9月1日以後に行う課税仕入れと明確化されました。また、帳簿には「特定金属くず特例の対象となる旨」や、一定の場合に「課税仕入れの相手方の住所又は所在地」を記載する必要があります。
特定金属くずを扱う事業者は、インボイス制度だけでなく、金属盗対策法上の届出・本人確認ルールも含めて対応が必要です。令和8年9月1日以後の取引に備え、帳簿記載や社内処理のルールを早めに見直しておきましょう。




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