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大法人の法人事業税所得割はどう変わった?軽減税率廃止と外形標準課税への影響を公認会計士が解説

  • 執筆者の写真: 安田 亮
    安田 亮
  • 4 時間前
  • 読了時間: 10分

こんにちは!代表の安田です。


資本金1億円超の法人では、法人税だけでなく、法人事業税や法人住民税を含めた地方税の負担も重要な論点になります。


特に、外形標準課税の対象となる大法人では、所得に応じて課税される「所得割」だけでなく、付加価値割や資本割も含めて税額を計算する必要があります。


令和4年度税制改正では、この外形標準課税対象法人に関して、法人事業税所得割の軽減税率が見直されました。具体的には、一定の所得区分に応じて適用されていた軽減税率が廃止され、標準税率が1.0%に一本化されています。


この改正による税負担の増加額は、1社あたりで見ると大きな金額になりにくいとされています。しかし、外形標準課税の対象法人にとっては、法人事業税の計算方法や法定実効税率、税効果会計への影響を確認しておくことが重要です。


本日は、大法人の法人事業税所得割の見直しについて、外形標準課税の基本、軽減税率廃止の内容、税負担への影響、決算実務で確認すべきポイントを公認会計士の視点からわかりやすく解説します。


外形標準課税とは

外形標準課税とは、法人事業税の一部として、所得だけでなく、企業の事業規模などに着目して課税する制度です。


通常、法人に対する税金は、利益が出た場合にその所得を基礎として計算されるイメージがあります。しかし、外形標準課税では、所得の有無だけでなく、付加価値額や資本金等の額も課税標準となります。


外形標準課税の対象となる法人では、法人事業税は主に次の3つで構成されます。

  • 所得割

    法人の所得に対して課される税金です。利益が大きいほど税額も大きくなります。

  • 付加価値割

    報酬給与額、純支払利子、純支払賃借料、単年度損益などを基礎として計算されます。企業が生み出した付加価値に着目する税金です。

  • 資本割

    資本金等の額を基礎として計算されます。会社の資本規模に着目する税金


このように、外形標準課税は、所得だけでなく企業規模にも課税する仕組みです。そのため、赤字法人であっても、付加価値割や資本割が発生する場合があります。


外形標準課税の対象法人

外形標準課税の対象となるのは、原則として、資本金の額または出資金の額が1億円を超える普通法人です。


中小企業の多くは資本金1億円以下であるため、外形標準課税の対象外となるケースが一般的です。一方で、上場会社や大規模な非上場会社、一定規模以上のグループ会社などでは、外形標準課税の対象になることがあります。


外形標準課税の対象法人では、法人事業税の計算が複雑になります。所得割だけでなく、付加価値割や資本割の計算も必要になるため、決算時の税金計算や税効果会計にも影響します。


また、資本金が1億円を少し超えるかどうかで、税務上の取扱いが大きく変わる場合があります。そのため、増資、減資、資本政策、グループ再編を行う会社では、外形標準課税の適用有無を事前に確認しておくことが重要です。


改正前の法人事業税所得割の軽減税率

令和4年度税制改正前は、外形標準課税対象法人であっても、一定の場合には法人事業税所得割について軽減税率が適用される余地がありました。


具体的には、所得のうち年400万円以下の部分には0.4%、年400万円超800万円以下の部分には0.7%、年800万円超の部分には1.0%というように、所得区分に応じた税率が設定されていました。


ただし、この軽減税率はすべての大法人に適用されるわけではありませんでした。

3以上の都道府県に事務所または事業所を設けている法人で、資本金または出資金の額が1,000万円以上の場合には、軽減税率の対象外とされていました。


一方で、事務所等を設けている都道府県が2以下である場合には、資本金1億円超の外形標準課税対象法人であっても、所得800万円以下の部分について軽減税率を適用できるケースがありました。


この点が、制度上の不整合として問題視されていました。


令和4年度税制改正による見直し

令和4年度税制改正では、外形標準課税対象法人に対する法人事業税所得割の軽減税率が廃止されました。これにより、外形標準課税対象法人については、所得割の標準税率が1.0%に一本化されています。


改正前は、所得800万円以下の部分について0.4%または0.7%の軽減税率が適用される場合がありました。しかし、改正後は、外形標準課税対象法人であれば、所得区分にかかわらず標準税率1.0%が適用されることになります。


この改正は、資本金1億円超の大法人でありながら、事務所等を置く都道府県数によって軽減税率の適用有無が異なるという状況を見直すものです。


大法人である以上、外形標準課税の対象として一定の税負担を求めるという考え方に沿った改正といえます。


税負担はどの程度増えるのか

軽減税率が廃止されると、当然ながら該当法人の税負担は増加します。


もっとも、増加額は非常に大きいものではありません。

改正前の軽減税率では、年400万円以下の所得に対して0.4%、年400万円超800万円以下の所得に対して0.7%が適用されていました。改正後は、これらの部分にも1.0%が適用されます。


そのため、法人事業税所得割そのものの増加額は、最大でも次のように計算されます。

年400万円以下部分:400万円 × 0.6% = 24,000円年400万円超800万円以下部分:400万円 × 0.3% = 12,000円


合計すると、法人事業税所得割の増加額は36,000円です。


さらに、法人事業税所得割の増加に伴い、特別法人事業税にも影響が生じます。特別法人事業税の増加分を含めても、1社あたり年間約13万円程度の負担増とされています。


大法人にとっては、金額的なインパクトは限定的といえるでしょう。


法定実効税率への影響

法人事業税所得割の税率が変わると、法定実効税率への影響も気になるところです。


法定実効税率とは、法人税、地方法人税、法人住民税、法人事業税などを考慮した、企業の税負担率を示す指標です。税効果会計において、繰延税金資産や繰延税金負債を計算する際にも重要になります。


今回の改正では、法人事業税所得割の軽減税率が廃止され、標準税率1.0%に一本化されました。ただし、資本金1億円超の法人において、法定実効税率を計算する際に所得800万円以下の軽減税率を重要な前提として考慮しているケースは多くないと考えられます。


そのため、今回の改正が法定実効税率や税効果会計に与える影響は、実務上は限定的と考えられます。もっとも、税効果会計を行っている会社では、適用税率の変更がないか、自治体の超過税率を含めた実効税率が正しく設定されているかを確認する必要があります。


適用時期

この改正は、2022年4月1日以後に開始する事業年度から適用されています。


たとえば、3月決算会社であれば、2023年3月期から適用対象となります。

一方、12月決算会社であれば、2023年12月期から適用対象となります。会社の決算期によって適用開始事業年度が異なるため、実務では自社の事業年度開始日を確認することが重要です。


また、改正前後をまたぐ決算期では、適用時期を誤らないよう注意が必要です。

特に、税金計算システムや申告書作成ソフトを利用している場合でも、設定されている事業年度や税率が正しいかを確認しておくことをおすすめします。


超過税率を採用する自治体に注意

法人事業税では、自治体によって標準税率ではなく超過税率が適用されることがあります。


超過税率とは、地方自治体が条例により、標準税率を超えて定める税率です。

今回の改正では、標準税率が1.0%に一本化されることがポイントですが、実際の申告では、事務所等を置く自治体の条例に基づく税率を確認する必要があります。


東京都や大阪府など、法人が多く所在する自治体では、超過税率が問題になることがあります。そのため、外形標準課税対象法人では、単に国の税制改正だけを見るのではなく、各都道府県の法人事業税率も確認する必要があります。


特に、複数の都道府県に事務所や事業所を持つ会社では、分割基準に基づく地方税計算も必要になります。税率、課税標準、分割基準を誤ると、申告税額に影響するため注意が必要です。


決算実務で確認すべきポイント

今回の改正は、税額のインパクトが比較的小さいとはいえ、決算実務では確認すべきポイントがあります。


まず、自社が外形標準課税対象法人に該当するかを確認します。資本金または出資金の額が1億円を超える普通法人であれば、原則として対象になります。


次に、事業年度開始日を確認します。2022年4月1日以後に開始する事業年度から改正後の取扱いが適用されます。


また、法人事業税所得割の税率設定を確認します。所得800万円以下の部分に軽減税率を適用していないか、税務申告ソフトや税金計算シートの設定を見直す必要があります。


さらに、特別法人事業税への影響も確認します。法人事業税所得割が増加することで、特別法人事業税の計算にも影響が出るためです。


最後に、税効果会計への影響を確認します。法定実効税率の計算に重要な影響がないか、繰延税金資産・負債の測定税率が適切かを確認しておきましょう。


中小企業への影響はあるのか

今回の改正は、外形標準課税対象法人に関するものです。そのため、資本金1億円以下の中小企業には、直接的な影響は基本的にありません。


中小企業では、法人事業税所得割について、所得区分に応じた軽減税率が引き続き問題になる場合があります。


ただし、中小企業であっても、資本金が1億円に近い会社や、将来的に増資を検討している会社は注意が必要です。資本金が1億円を超えると、外形標準課税の対象となる可能性があり、税負担や申告実務が大きく変わります。


また、グループ会社がある場合には、資本金だけでなく、税制改正により大法人判定や外形標準課税の対象範囲が見直されることがあります。資本政策を行う際には、法人税、地方税、外形標準課税への影響を事前に確認することが重要です。


なぜこの改正が行なわれたのか

今回の改正の背景には、外形標準課税対象法人であるにもかかわらず、事務所等を置く都道府県数によって軽減税率の適用有無が異なるという問題がありました。


3以上の都道府県に事務所等を持つ一定の法人には軽減税率が適用されない一方で、2以下の都道府県にしか事務所等を持たない場合には、資本金1億円超の大法人であっても軽減税率を適用できるケースがありました。


これにより、同じ外形標準課税対象法人であっても、事業展開の地域数によって所得割の税負担が異なることになります。


制度の公平性や簡素化の観点から、外形標準課税対象法人については軽減税率を廃止し、標準税率を一本化することになったと考えられます。


実務上の影響は小さいが、見落としは避けたい

今回の改正による税負担増は、最大でも1社あたり年間約13万円程度とされています。

大法人の税額全体から見れば、決算や経営判断に大きな影響を与える金額ではないことが多いでしょう。


しかし、税務申告の正確性という観点では、見落としてよい改正ではありません。

特に、過去から使っている税金計算シートや申告書作成手順に、旧税率が残っている場合には注意が必要です。金額が小さい改正ほど、確認が後回しになり、誤りが残りやすいことがあります。


また、監査対象会社では、税金計算や税効果会計に関する内部統制の観点からも、税率変更への対応を確認しておくことが望ましいです。


まとめ

令和4年度税制改正により、外形標準課税対象法人に対する法人事業税所得割の軽減税率は廃止され、標準税率1.0%に一本化されました。


改正前は、所得のうち年400万円以下の部分に0.4%、年400万円超800万円以下の部分に0.7%の軽減税率が適用される場合がありました。しかし、改正後は、外形標準課税対象法人について、所得区分にかかわらず1.0%の標準税率が適用されます。


この改正は、2022年4月1日以後に開始する事業年度から適用されています。

税負担の増加額は、特別法人事業税への影響を含めても、最大で1社あたり年間約13万円程度とされています。そのため、決算や法定実効税率への影響は限定的と考えられます。


もっとも、外形標準課税対象法人では、法人事業税所得割の税率設定、特別法人事業税の計算、自治体の超過税率、税効果会計への影響を確認する必要があります。


資本金1億円超の法人や、今後増資・資本政策を検討している会社では、法人事業税や外形標準課税の取扱いを早めに確認し、税務申告や決算処理に誤りがないよう注意しましょう。


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