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完全子法人株式等の配当は源泉徴収不要|3分の1超保有の配当との違いを税理士が解説

  • 執筆者の写真: 安田 亮
    安田 亮
  • 50 分前
  • 読了時間: 11分

こんにちは!代表の安田です。


法人が他の内国法人から配当を受け取る場合、従来は、配当の支払時に所得税等が源泉徴収されるのが一般的でした。


一方で、法人税では、一定の配当について受取配当等の益金不算入制度があります。

特に、完全子法人株式等や関連法人株式等に係る配当は、法人税上、益金不算入となる金額が大きくなります。


その結果、配当の支払時には源泉徴収されるものの、法人税申告で所得税額控除を行なうことで、還付金が発生するケースがありました。


こうした事務負担や還付手続の状況を踏まえ、令和4年度税制改正により、一定の内国法人が受け取る配当等について、源泉徴収を不要とする見直しが行われました。


この改正は、令和5年10月1日以後に支払を受けるべき配当等について適用されています。

添付資料でも、令和4年度税制改正により、企業グループ内の配当等に係る源泉徴収制度を不要とする見直しが盛り込まれ、完全子法人株式等と、発行済株式等の3分の1超を保有する株式等に係る配当等が対象とされています。


この記事では、完全子法人株式等に係る配当の源泉徴収不要制度、3分の1超保有株式等に係る配当との違い、受取配当等の益金不算入制度との関係、みなし配当の取扱い、実務で確認すべきポイントを税理士の視点から解説します。


法人が受け取る配当と源泉徴収の基本

内国法人が配当を支払う場合、原則として、その配当について所得税等の源泉徴収が必要です。

国税庁の源泉徴収事務の資料でも、居住者または内国法人に支払う配当等については、剰余金の配当やみなし配当の支払者が、その支払の際に所得税および復興特別所得税を徴収して納付する事務であると説明されています。


上場株式等の配当等であれば、原則として所得税および復興特別所得税15.315%が源泉徴収されます。上場株式等以外の配当等であれば、原則として所得税および復興特別所得税20.42%が源泉徴収されます。


ただし、一定の内国法人に支払う配当等のうち、一定の完全子法人株式等に係る配当等や、3分の1超保有株式等に係る配当等については、源泉徴収をする必要がありません。


なぜ源泉徴収不要の制度が設けられたのか

法人が受け取る配当には、法人税上、受取配当等の益金不算入制度があります。

この制度により、一定の配当については、持株割合などに応じて、配当の全部または一部が益金不算入となります。


一方、配当支払時に源泉徴収された所得税等については、法人税申告で所得税額控除を行ないます。その結果、配当を受け取った法人に還付金が発生することがあります。


特に完全子法人株式等や関連法人株式等については益金不算入額が多額であるため、所得税額控除により還付金が生じる可能性が高く、会計検査院が現行制度について、配当等の源泉徴収制度の在り方を検討することが肝要であると指摘していたと説明されています。


つまり、最終的には還付される税額をいったん源泉徴収し、その後に申告・還付するという事務が生じていたため、一定の企業グループ内配当等について、源泉徴収を不要とする見直しが行なわれたという流れです。


源泉徴収が不要となる配当等

令和4年度改正により、一定の内国法人が支払を受ける配当等のうち、次の配当等については源泉徴収が不要となりました。

1. 完全子法人株式等に該当する株式等に係る配当等
2. 配当等の基準日において、内国法人が直接に保有する他の内国法人の発行済株式等の総数等に占める割合が3分の1超である場合の、その株式等に係る配当等

源泉徴収が不要となる配当等として、完全子法人株式等に該当する株式等に係る配当等と、配当等の支払に係る基準日において内国法人が直接保有する他の内国法人の発行済株式等の総数等に占める割合が3分の1超である場合の配当等が挙げられています。


完全子法人株式等とは

完全子法人株式等とは、配当等の計算期間を通じて、配当を受ける内国法人と配当を支払う他の内国法人との間に完全支配関係がある場合の、その子法人株式等をいいます。

実務的には、親会社が子会社株式を100%保有しているようなケースです。


ただし、単に配当基準日時点で100%保有していればよいわけではありません。

受取配当等の益金不算入制度における完全子法人株式等と同じく、配当等の計算期間の初日から末日まで、継続して完全支配関係があることがポイントです。


完全子法人株式等は法人税の益金不算入制度と一致する

完全子法人株式等に係る配当については、源泉徴収不要制度と受取配当等の益金不算入制度の考え方が基本的に一致します。


つまり、完全子法人株式等に該当する場合、配当を受け取る法人側では、法人税上、受取配当等の益金不算入の対象となり、配当支払時には源泉徴収も不要になります。


このため、100%グループ内の配当では、改正前に比べて、源泉所得税の納付・所得税額控除・還付手続といった事務負担が軽くなっています。


3分の1超保有株式等に係る配当も源泉徴収不要

源泉徴収不要となる配当等は、完全子法人株式等に係る配当だけではありません。

配当等の基準日において、内国法人が他の内国法人の株式等を発行済株式等の3分の1超直接保有している場合、その株式等に係る配当等についても源泉徴収が不要となります。


ここで重要なのは、3分の1超の判定が、配当等の基準日で行なわれ、保有期間についての定めはないという点です。


この点は、受取配当等の益金不算入制度における関連法人株式等の判定と異なります。


関連法人株式等との違い

法人税の受取配当等の益金不算入制度には、関連法人株式等という区分があります。

関連法人株式等は、配当等の計算期間を通じて、他の内国法人の発行済株式等の3分の1超を継続して保有している場合の株式等です。


一方、源泉徴収不要制度における3分の1超保有株式等は、基準日において3分の1超を直接保有していればよく、保有期間の定めはありません。

したがって、次のような違いがあります。

・受取配当等の益金不算入制度の関連法人株式等→ 配当等の計算期間を通じて、3分の1超を継続保有していることが必要源泉徴収不要となる

・3分の1超保有株式等→ 配当等の基準日に、3分の1超を直接保有していればよい

この違いにより、法人税上は関連法人株式等ではなく「その他株式等」に分類される配当であっても、源泉徴収は不要となるケースがあります。


なぜ保有期間要件がないのか

3分の1超保有株式等について、源泉徴収不要制度では保有期間要件が設けられていません。これは、配当を支払う側、つまり源泉徴収義務者が、株主である法人の保有期間を正確に把握することが難しいためです。


配当支払者にとって、基準日時点の株主名簿等に基づいて保有割合を確認することは比較的可能です。しかし、配当等の計算期間を通じて3分の1超を継続保有していたかどうかまで確認するのは、実務上負担が大きくなります。


つまり、法人税の益金不算入制度とは目的や確認主体が異なるため、源泉徴収不要制度では、より実務的に確認しやすい基準日判定が採用されています。


「直接保有」に注意

3分の1超保有株式等については、基準日において、内国法人が他の内国法人の株式等を直接に保有していることがポイントです。


グループ内の他法人が保有する株式を合算して3分の1超になる場合でも、配当を受ける法人自身が直接保有していない株式は、この源泉徴収不要判定では基本的に含めません。

国税庁の資料でも、源泉徴収不要となる株式等は、その内国法人が自己の名義をもって有するものに限るとされています。


この点も、受取配当等の益金不算入制度における判定と混同しやすいところです。

令和2年度改正により、受取配当等の益金不算入制度では、関連法人株式等などの判定について、完全支配関係がある他の法人が有する株式等を含めて判定することになっています。添付資料でも、この点に触れられています。


しかし、源泉徴収不要の3分の1超判定では、あくまで配当を受ける法人が直接保有する割合を確認します。


みなし配当も対象になる

源泉徴収不要制度の対象となる配当等には、通常の剰余金の配当だけでなく、みなし配当も含まれます。みなし配当とは、自己株式の取得、資本の払戻し、合併、分割など一定の資本取引に伴い、税務上、配当とみなされる金額をいいます。


したがって、グループ内で自己株式取得や資本の払戻しを行なう場合にも、源泉徴収不要の対象になるかを確認する必要があります。


配当支払者側の実務対応

配当を支払う法人は、配当の源泉徴収が必要かどうかを支払時に判断する必要があります。

源泉徴収不要となるかを確認するため、次の情報を整理しましょう。

・配当を受ける法人が一定の内国法人に該当するか
・配当対象株式が完全子法人株式等に該当するか
・配当等の計算期間を通じて完全支配関係があるか
・基準日における直接保有割合が3分の1超か
・株主名簿上の名義は誰か
・配当等の支払を受けるべき日はいつか
・通常配当か、みなし配当か

特に、3分の1超判定では、基準日時点の株主名簿や議決権・発行済株式総数の確認が重要です。また、完全子法人株式等については、計算期間を通じた完全支配関係を確認できる資料が必要です。


配当受領法人側の実務対応

配当を受け取る法人側でも、源泉徴収の有無を確認する必要があります。

源泉徴収されなかったからといって、その配当が必ず受取配当等の全額益金不算入になるとは限りません。

特に3分の1超保有株式等については、源泉徴収不要判定と、受取配当等の益金不算入制度における関連法人株式等の判定が異なるためです。


基準日に3分の1超を保有していたため源泉徴収不要で配当を受けたとしても、配当計算期間を通じて継続保有していなければ、法人税上は関連法人株式等ではなく、その他株式等に分類される可能性があります。


この場合、源泉徴収は不要でも、受取配当等の益金不算入割合は関連法人株式等と異なる可能性があります。

つまり、配当受領法人側では次の2つを別々に確認する必要があります。

・配当支払時の源泉徴収が不要かどうか
・法人税申告上、受取配当等の益金不算入でどの区分に該当するか

実務で誤りやすいポイント

この制度では、次のような誤りが起こりやすいです。


1. 完全子法人株式等を基準日だけで判定している

完全子法人株式等は、受取配当等の益金不算入制度と同じく、配当等の計算期間を通じた完全支配関係がポイントです。

基準日時点で100%保有しているだけでは足りない場合があります。


2. 3分の1超保有株式等に保有期間要件があると思っている

源泉徴収不要制度の3分の1超保有株式等は、基準日判定です。

関連法人株式等のような継続保有要件はありません。


3. 源泉徴収不要なら法人税でも関連法人株式等になると思っている

源泉徴収不要の判定と、受取配当等の益金不算入制度の区分判定は一致しない場合があります。

源泉徴収不要でも、法人税上はその他株式等に該当することがあります。


4. グループ会社保有分を合算して3分の1超と判断している

源泉徴収不要の3分の1超判定では、配当を受ける法人が直接保有する割合が重要です。

自己の名義で保有する株式等に限られる点に注意しましょう。


5. みなし配当を対象外と考えている

源泉徴収不要制度の対象となる配当等には、みなし配当も含まれます。

自己株式取得や資本の払戻しなどでも確認が必要です。


チェックリスト:配当の源泉徴収不要判定

配当を支払う前に、次の点を確認しましょう。

□ 配当の支払を受ける者は一定の内国法人か
□ 配当対象株式は完全子法人株式等に該当するか
□ 完全子法人株式等について、計算期間を通じて完全支配関係があるか
□ 基準日における直接保有割合が3分の1超か
□ 株主名簿上、配当受領法人の自己名義で保有されているか
□ グループ会社保有分を誤って合算していないか
□ 受取配当等の益金不算入制度の区分も別途確認したか
□ 配当決議書、株主名簿、保有割合の計算資料を保存しているか

まとめ:源泉徴収不要と益金不算入の判定は分けて考える

令和4年度税制改正により、一定の内国法人が受け取る配当等のうち、完全子法人株式等に係る配当等や、基準日において直接3分の1超を保有する株式等に係る配当等については、源泉徴収が不要になりました。


この改正は、令和5年10月1日以後に支払を受けるべき配当等に適用されています。

完全子法人株式等については、受取配当等の益金不算入制度と同様に、配当等の計算期間を通じて完全支配関係があることがポイントです。


一方、3分の1超保有株式等については、源泉徴収不要の判定では、配当の基準日において直接3分の1超を保有していればよく、継続保有要件はありません。


そのため、源泉徴収不要となる3分の1超保有株式等の範囲は、受取配当等の益金不算入制度における関連法人株式等よりも広くなることがあります。

ポイントを整理すると、次のとおりです。

・完全子法人株式等に係る配当等は、一定要件のもと源泉徴収不要
・3分の1超直接保有株式等に係る配当等も、一定要件のもと源泉徴収不要
・完全子法人株式等の範囲は、受取配当等の益金不算入制度と基本的に一致する
・3分の1超保有株式等は、基準日における直接保有割合で判定する
・3分の1超保有株式等には、関連法人株式等のような継続保有要件はない
・源泉徴収不要でも、法人税申告上の受取配当等の区分は別途確認する
・みなし配当も対象になる

グループ会社間で配当を行なう場合、改正後は源泉徴収不要となるケースが増えています。

ただし、完全子法人株式等と3分の1超保有株式等では判定方法が異なり、法人税の受取配当等の益金不算入制度とも一致しない場合があります。


配当を支払う側・受け取る側の双方で、株主名簿、保有割合、基準日、配当計算期間、配当決議日を確認し、源泉徴収と法人税申告の処理を分けて整理しておきましょう。

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