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金商法改正法案の「特定暗号資産」と税法上の「特定暗号資産」は別物?分離課税・開示規制の違いを公認会計士が解説

  • 執筆者の写真: 安田 亮
    安田 亮
  • 6 時間前
  • 読了時間: 4分

おはようございます!代表の安田です。


2026年4月、政府は金融商品取引法の改正法案を国会に提出し、暗号資産の一部を「特定暗号資産」として定義したうえで、その他の暗号資産と異なる規制を課す方向を示しました。一方、税制面でも、2028年1月1日開始を想定して、一定の暗号資産について総合課税から一律20%の分離課税へ見直す方向が示されています。


ここで実務上、非常に誤解しやすいのが、金商法改正法案の「特定暗号資産」と、租税特別措置法上の「特定暗号資産」は、同じ意味ではないという点です。


本日は、公認会計士の立場から、この「名前は同じでも範囲が違う」論点を中心に、会計・税務・開示実務で押さえておきたいポイントを整理します。


1. まず結論:金商法と税法で「特定暗号資産」の範囲は異なる

今回の金商法改正法案で定義される「特定暗号資産」と、税法上の「特定暗号資産」は異なる範囲である点に注意が必要です。


金商法改正法案では、発行者がいる暗号資産を「特定暗号資産」と定義し、それ以外の暗号資産と区別して規制するとされています。


これに対し、税法上の「特定暗号資産」は、金商法改正法案第2条第49項の「暗号資産」のうち、金融商品取引業者登録簿に登録されているなど一定のものとされており、金商法改正法案第2条第50項の「特定暗号資産」をそのまま引用していません。


つまり、「金商法で特定暗号資産だから税法でも同じ扱い」とは限らないということです。


2. 金商法改正法案のポイント:暗号資産を「発行者の有無」で区別

今回の金商法改正法案では、暗号資産について、発行者がいるかどうかで規制を分けています。


<金商法上の「特定暗号資産」>

特定の者のみが発行権限を有する暗号資産が該当します。代表例として、IEOトークンが挙げられており、資料ではFCRコインやニッポンアイドルトークンが例示されています。


<「特定暗号資産」以外の暗号資産>

ビットコインやイーサリアムなど、発行者がいないタイプの暗号資産は、金商法改正法案上の「特定暗号資産」には該当しないとされています。


3. 金商法改正法案で何が変わる?主に「発行者」と「取引業者」の規制強化

今回の金商法改正法案は、主に発行者と暗号資産取引業者の規制を強化するもので、保有者には大きく影響しない見通しとされています。次のような違いがあります。


<特定暗号資産(発行者あり)>

  • 発行者に情報の作成・公表義務

  • 取引業者に、発行者が作成した情報の公表義務

公表内容としては、発行者の商号、経理の状況、暗号資産に関連する業務の状況、暗号資産の性質・機能、供給量、基盤技術等が想定されています。


<それ以外の暗号資産(ビットコイン等)>

  • 取引業者が情報の作成・公表義務を負う


つまり、発行者が存在する暗号資産では、発行者自身に一定の説明責任を課す設計になっています。


4. 税制面のポイント:2028年から「一律20%の分離課税」へ見直し方向

租税特別措置法では、金商法改正法案の成立を前提に、特定暗号資産の譲渡等に係る個人の譲渡所得等について、最大55%の所得税率が課される総合課税から、一律20%の分離課税へ見直されたと説明されています。


この見直しは、暗号資産市場の参加者にとって大きなインパクトがありますが、注意すべきは、ここでいう「特定暗号資産」は税法独自の定義である点です。したがって、どの暗号資産が分離課税の対象になるのかは、金商法の用語だけでは判断できません。


5. 実務で間違えやすいポイント

(1)「特定暗号資産」という名称だけで判断しない

金商法と税法で同じ名前が使われていても、定義・対象範囲が違います。


(2)保有者よりも、まず発行者・取引業者の規制強化を理解する

今回の金商法改正法案は、主に発行者・取引業者への規制強化であり、保有者への直接影響は大きくない見通しです。


(3)税務判断は、最終的に税法上の定義で確認する

分離課税の対象判定では、租税特別措置法上の定義に立ち返る必要があります。金商法上の分類だけでは足りません。


6. 企業・投資家が今から確認したいチェックポイント

  • 自社が関与する暗号資産が、発行者あり(IEO型)か、発行者なし(ビットコイン型)か

  • 金商法上の情報公表義務の対象が、発行者か取引業者か

  • 税務上、将来の分離課税対象となり得るかを、税法の定義で別途確認しているか

  • 社内資料や顧客向け説明で、「金商法上の特定暗号資産」と「税法上の特定暗号資産」を混同していないか


まとめ:同じ「特定暗号資産」でも、金商法と税法は別ルールで動く

今回の金商法改正法案では、発行者の有無に応じて暗号資産を区分し、「特定暗号資産」について発行者・取引業者の情報提供規制を強化する方向が示されています。


一方、税法上は、分離課税の対象となる「特定暗号資産」が別の定義で設計されているため、名称が同じでも範囲は一致しません。実務では、規制対応は金商法、課税判断は税法と、ルールを切り分けて確認することが重要です。


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