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就活生に自社製品を配布した場合の勘定科目は? 交際費ではなく広告宣伝費となる考え方を税理士が解説

  • 執筆者の写真: 安田 亮
    安田 亮
  • 2 日前
  • 読了時間: 6分

おはようございます!代表の安田です。


採用活動の場面では、会社説明会やインターンシップ、採用イベントなどで、就活生に対して自社製品を配布するケースがあります。また、選考後に不採用となった学生に対し、お礼や企業PRの意味を込めて自社製品を送るような対応を検討する企業もあるかもしれません。


このようなとき、経理処理で迷いやすいのが、その費用を「交際費等」として処理すべきか、それとも「広告宣伝費」として処理できるのかという点です。


物品を贈与している以上、「相手に何かを渡しているのだから交際費ではないか」と考えたくなる場面もあります。しかし、税務上は、誰に対して、どのような目的で支出しているかによって判断が分かれます。


今回は、就活生に対する自社製品の配布や送付にかかる費用の税務上の考え方について、実務目線で整理します。


1.就活生への自社製品の贈与は、原則として広告宣伝費

会社説明会場などで就活生に自社製品を配布したり、不採用となった学生にメッセージを添えて自社製品を送付したりするケースについて、これらに要した費用は「交際費等」には該当せず、「広告宣伝費」となるとされています。


これは、採用活動の一環として行なう製品配布が、単なる贈答や接待ではなく、企業や製品の認知向上、イメージ形成、将来の購買につなげる広報活動の性格を持つと考えられるためです。


特にB to C企業であれば、就活生も将来の顧客になり得る存在です。そのため、採用活動の場面であっても、製品を知ってもらうための配布であれば、広告宣伝費としての性格が強いといえます。


2.交際費等との違いは「相手」と「目的」にある

交際費等は、得意先や仕入先等に対する接待、供応等のために支出する費用とされています。一方で、広告宣伝費は、販売促進や企業の知名度向上などを目的とする広報活動費用であり、不特定多数の者に対して広告宣伝効果を意図して支出する費用とされています。


つまり、区分のポイントは主に次の2つです。

  • 相手が得意先等かどうか

  • 支出の目的が接待・供応なのか、広告宣伝なのか


就活生に対する自社製品の配布は、通常、得意先や仕入先に対する接待ではありません。また、目的も歓待や便宜供与ではなく、会社や製品を知ってもらうことにあります。この点が、交際費等ではなく広告宣伝費と考える根拠になります。


3.会社説明会での配布は、工場見学者への試飲・試食と近い考え方

今回のケースについては、一般の工場見学者等に製品の試飲や試食をさせる費用と同様に考えられるます。


この考え方は実務上とてもわかりやすいです。

会社説明会で自社製品を配布する行為は、就活生に対して「会社の良さ」や「製品の魅力」を知ってもらうためのものであり、単に個人的な関係づくりのための贈答ではありません。その意味で、企業PRや販売促進の一環として行なうサンプリングに近い支出と整理できます。


就活生への自社製品の贈与は、企業の認知向上や今後の購買につなげる広報的な行為として扱う趣旨が読み取れます。


4.不採用となった学生への送付も、直ちに交際費とはならない

実務上、少し迷いやすいのがここです。採用選考後、不採用となった学生に対して「今後ともよろしくお願いします」といったメッセージを添え、自社製品を送るケースでは、個別に送付しているため交際費的に見えるかもしれません。


しかし、このような場合でも、不採用となった学生は、不特定多数の者の中から結果的に選定されたにすぎず、不特定者であることに変わりはないと考えられると説明されています。


つまり、相手がたまたま選考を受けた学生であっても、企業側から見れば、その人たちは基本的に一般消費者であり、将来の顧客となり得る存在です。そのため、個別送付であっても、広告宣伝効果を意図したものであれば広告宣伝費として整理しやすいということになります。


5.「不特定多数の者」と考えられる理由

資料では、自社にエントリーした学生や不採用となった学生が「不特定多数の者」といえるかについて、就活生であっても一般消費者であることに変わりはなく、企業側から見れば不特定多数の者となると整理されています。


ここで重要なのは、税務上の「不特定多数」は、必ずしも街頭で誰にでも無差別配布する場合だけを指すわけではないという点です。一定の属性を持つ層、たとえば就活生や工場見学者のような集団に対する配布であっても、特定の取引先や親密な関係者を歓待する趣旨ではなければ、広告宣伝費として扱える余地があるという理解が実務では重要です。


6.実務で広告宣伝費としやすいケース

資料の考え方を踏まえると、次のようなケースは広告宣伝費として整理しやすいと考えられます。

  • 会社説明会で参加者に自社商品サンプルを配布する

  • 採用イベントでブランド理解を深めてもらうために自社製品を配る

  • 選考参加者へ広報目的でノベルティや自社商品を送る

  • 企業認知向上や将来の購買促進を意図して商品を提供する

ポイントは、あくまで会社や製品の周知、ブランドイメージ形成、販売促進につながる目的が明確かどうかです。


7.逆に注意したいケース

一方で、すべての贈答が自動的に広告宣伝費になるわけではありません。たとえば、次のような場合は慎重な判断が必要です。


  • 特定の大学関係者や紹介者だけに特別な高額品を渡す

  • 採用協力者や取引先に対する謝礼的な贈答になっている

  • 製品PRよりも便宜供与や関係維持の色彩が強い

  • 自社製品ではなく、高額な一般商品を個別に贈る


このような場合は、相手や目的によっては交際費等、あるいは別の科目を検討する必要が出てきます。したがって、誰に、何を、なぜ渡したのかを説明できる状態にしておくことが大切です。


8.経理処理で残しておきたい資料

採用活動に伴う自社製品配布を広告宣伝費として処理する場合は、後から説明できるよう、次のような資料を残しておくと安心です。

  • 会社説明会や採用イベントの案内資料

  • 配布した自社製品の内容や数量が分かる資料

  • 配布目的がわかる社内企画書や稟議書

  • メッセージ文面や送付趣旨が確認できる記録

  • 請求書、納品書、発送記録


特に、不採用者への送付のように個別性が高く見える場合は、接待や私的贈答ではなく、企業PRとして実施したことが分かる資料を残しておくと実務上有効です。


まとめ

就活生に対して自社製品を配布したり、不採用となった学生にメッセージ付きで自社製品を送付したりする場合、その費用は、原則として交際費等ではなく広告宣伝費として整理できると考えられます。


その理由は、

  • 相手が得意先や仕入先等ではないこと

  • 接待、供応の目的ではないこと

  • 会社や製品を知ってもらい、今後の購買や企業イメージ向上につなげる広告宣伝効果を意図していること

にあります。


また、エントリーした学生や不採用となった学生も、企業側から見れば一般消費者としての性格を持つため、不特定多数の者に対する広報活動として捉えられる点が重要です。


採用活動は人材確保の場であると同時に、企業やブランドを知ってもらう広報の場でもあります。だからこそ、採用関連の支出についても、目的や相手に応じて、交際費ではなく広告宣伝費として整理できるかを丁寧に確認することが大切です。

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