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新入社員に支給するパソコンの事業供用日はいつ?入社日前に自宅へ届いた場合の減価償却の考え方を税理士が解説

  • 執筆者の写真: 安田 亮
    安田 亮
  • 1 日前
  • 読了時間: 13分

おはようございます!代表の安田です。


在宅勤務やリモートワークが一般化したことで、新入社員に対して入社日前にパソコンを貸与する会社も増えています。


たとえば、4月1日入社予定の新入社員に対して、3月中に会社用パソコンを自宅へ配送し、入社前から研修案内、社内システムの設定、事前課題の連絡などを行うケースです。

このとき、経理上・税務上で問題になるのが、そのパソコンをいつから事業の用に供したと考えるのかという点です。


減価償却資産は、取得しただけでは減価償却を開始できません。

法人税では、資産を「事業の用に供した日」から減価償却の対象にします。


では、新入社員の入社日前にパソコンを自宅へ届けた場合、事業供用日は「入社日」になるのでしょうか。それとも「パソコンが新入社員の自宅に到着した日」になるのでしょうか。


結論からいうと、入社日前であっても、そのパソコンを使って入社後のスケジュール連絡、研修案内、事前課題のやり取りなど、会社業務に関連する使用が開始されている実態があれば、新入社員の自宅にパソコンが到着した日を事業供用日として扱うことも可能と考えられます。


本日は、新入社員に支給するパソコンの事業供用日の考え方、入社日前に貸与した場合の実務上の注意点、減価償却・少額資産処理・証拠資料の残し方について解説します。


減価償却は「取得日」ではなく「事業供用日」から始まる

法人がパソコン、機械、車両、備品などの減価償却資産を取得した場合、その資産の取得価額は、原則として耐用年数に応じて減価償却により費用化します。

ここで重要なのは、減価償却は単に資産を購入した日から始まるわけではないという点です。


法人税上、減価償却資産とは、事業の用に供したものをいいます。

つまり、会社がパソコンを購入していても、まだ箱に入ったまま倉庫に保管されているだけであれば、原則として事業の用に供したとはいえません。


減価償却を開始するには、その資産が実際に事業で使用できる状態になり、事業活動に使われている、または使える状態になっている必要があります。


たとえば、次のようなケースでは、取得日と事業供用日が異なることがあります。

・3月にパソコンを購入したが、設定完了は4月だった
・機械を取得したが、据付工事や試運転が翌月だった
・ソフトウェアを購入したが、運用開始は翌期だった
・車両を購入したが、納車や業務利用開始が後日だった

決算直前に資産を購入した場合には、特に注意が必要です。

請求書や領収書の日付だけで損金処理や減価償却を判断すると、税務調査で事業供用日を確認されることがあります。


新入社員用パソコンの事業供用日は原則どう考えるか

新入社員に支給するパソコンの場合、一般的には、その新入社員が実際に業務を開始する日、つまり入社日を事業供用日と考えるのが自然です。


たとえば、4月1日入社の社員に対して、会社が3月中にパソコンを購入し、会社内で保管していた場合を考えます。


この場合、3月中はまだ新入社員が業務に使用しておらず、パソコンも事業に使われていないため、通常は4月1日以後が事業供用日と考えられます。


しかし、在宅勤務やリモートワークが普及した現在では、入社日前からパソコンを新入社員の自宅へ届け、会社との連絡や研修準備に使用するケースがあります。


この場合、単に「入社日前だから事業供用していない」とは限りません。

事業供用日は、形式的な入社日だけでなく、そのパソコンの使用目的や実際の使用状況を総合的に見て判断します。


入社日前に自宅へ届いた日を事業供用日とできるケース

新入社員に入社日前にパソコンを貸与し、そのパソコンを使って会社業務に関連するやり取りを行なっている場合には、自宅にパソコンが到着した日を事業供用日として扱うことも可能です。


たとえば、4月1日入社予定の新入社員に、3月1日に会社用パソコンが自宅へ届いたとします。その後、会社がそのパソコンを使って、次のような対応を行なっていた場合です。

・入社後のスケジュール連絡
・新人研修の案内
・研修資料の配布
・事前課題の提出
・社内システムやメールアカウントの設定
・オンライン研修への参加準備
・入社手続きに関する会社との連絡

このような実態がある場合、そのパソコンはすでに会社の業務目的で使用されていると考えられます。


したがって、入社日である4月1日ではなく、パソコンが自宅に到着した3月1日を事業供用日として扱うことも考えられます。特に、会社が在宅勤務やリモート研修を前提としており、入社前からパソコンを通じて業務関連の準備を行わせている場合には、実態を重視して判断することになります。


「届けただけ」では事業供用とはいえない可能性がある

一方で、新入社員の自宅にパソコンを配送しただけで、実際には何も使用していない場合には注意が必要です。たとえば、3月中にパソコンを自宅に届けたものの、次のような状態だった場合です。

・開封せず保管しているだけ
・会社アカウントの設定が終わっていない
・入社前の連絡や研修に使用していない
・業務関連の利用実績がない
・使用開始が入社日以後である

このような場合、単にパソコンが自宅へ届いたというだけでは、事業の用に供したといえない可能性があります。

重要なのは、「会社が購入したパソコンが物理的に届いたか」ではなく、「そのパソコンが会社の事業活動に実際に使われる状態になっていたか」です。

事業供用日は、到着日、設定日、使用開始日、入社日などのうち、実態に即して判断する必要があります。


事業供用日が重要になる理由

新入社員用パソコンの事業供用日は、単なる管理上の日付ではありません。

法人税の計算に影響します。


  • 減価償却費の計上時期に影響する

減価償却資産は、事業の用に供した事業年度から減価償却を開始します。

そのため、3月決算法人が3月中に新入社員用パソコンを事業供用したと判断できる場合、その事業年度で減価償却費を計上できる可能性があります。

一方、事業供用日が4月1日であれば、翌事業年度からの減価償却になります。


  • 少額資産の損金算入時期に影響する

取得価額10万円未満の少額減価償却資産、20万円未満の一括償却資産、30万円未満の中小企業者等の少額減価償却資産特例などを適用する場合も、事業の用に供した時期が重要です。決算日前に購入していても、事業供用が翌期であれば、当期の損金算入はできない可能性があります。


  • 税務調査で確認されることがある

決算直前に購入したパソコンや備品については、税務調査で「本当に期末までに事業供用されていたのか」を確認されることがあります。

特に、新入社員用パソコンを入社日前に購入・配送している場合、事業供用日を説明できる資料が必要です。


決算月と入社月が近い会社は注意

新入社員の入社日は4月1日であることが多いため、3月決算法人では特にこの論点が出やすくなります。たとえば、3月決算法人が3月中に新入社員用パソコンを購入し、自宅へ配送した場合です。


このパソコンについて、3月中に事業供用していると判断できれば、当期の減価償却や少額資産処理の対象になる可能性があります。


しかし、実際の使用開始が4月1日以後であれば、翌期の処理になります。

ここで、3月中に事業供用していたと説明するには、単に納品書の日付が3月であるだけでは不十分です。次のような実態が必要になります。

・3月中に新入社員の自宅へ到着している
・会社用アカウントやシステム設定が完了している
・3月中に会社との業務関連連絡に使用している
・3月中に新人研修の事前課題等で使用している
・3月中の使用履歴やメール履歴が確認できる

事業供用日を3月にしたい場合には、3月中の使用実態を示せるようにしておきましょう。


事業供用日の証拠として残しておきたい資料

新入社員用パソコンの事業供用日を説明するためには、証拠資料を残しておくことが重要です。たとえば、次のような資料です。

・パソコンの納品書
・配送伝票、到着確認メール
・貸与品受領書
・PC貸与管理台帳
・会社アカウントの発行日
・初回ログイン履歴
・初期設定完了日
・入社前研修の案内メール
・事前課題の配布・提出履歴
・オンライン研修システムの利用履歴
・新入社員との業務連絡メール
・社内チャットの利用履歴

特に、パソコンが新入社員の自宅に到着した日を事業供用日とする場合には、「到着したこと」と「業務関連で使用したこと」の両方が分かる資料があると説明しやすくなります。

パソコンの管理台帳には、次の項目を記録しておくとよいでしょう。

・資産番号
・購入日
・納品日
・配送日
・到着日
・貸与対象者
・入社予定日
・初期設定日
・使用開始日
・事業供用日
・利用目的

税務上の説明だけでなく、情報セキュリティや貸与品管理の観点からも有用です。


パソコンの取得価額別の税務処理

新入社員に支給するパソコンは、取得価額によって税務処理が変わります。


  • 10万円未満の場合

取得価額が10万円未満のパソコンは、少額減価償却資産として、事業の用に供した事業年度に損金算入できる可能性があります。ただし、事業供用が翌期であれば、当期の損金にはできません。


  • 10万円以上20万円未満の場合

取得価額が20万円未満のパソコンは、一括償却資産として3年間で均等償却する方法を選択できる場合があります。この場合も、事業の用に供した事業年度から処理します。


  • 40万円未満の場合

青色申告法人である中小企業者等に該当する場合、取得価額40万円未満のパソコンについて、中小企業者等の少額減価償却資産特例を適用できる可能性があります。

この特例を使えば、年間300万円を限度として、取得価額を全額損金算入できます。

ただし、通算法人や一定の大規模法人の子会社などは対象外となる場合があります。

また、令和4年度改正後は、貸付けの用に供した資産についても注意が必要です。


  • 40万円以上の場合

取得価額が40万円以上のパソコンについては、原則として通常の減価償却を行います。

耐用年数に応じて毎期減価償却費を計上することになります。


事業供用日と少額資産特例の関係

少額資産特例を適用する場合でも、資産を取得しただけでは足りません。

その資産を事業の用に供している必要があります。


たとえば、3月決算法人が3月25日に新入社員用パソコンを購入したものの、新入社員の自宅への到着が4月2日だった場合、3月中に事業供用していたとはいえません。


この場合、当期に少額資産特例を適用して損金算入することは難しいでしょう。

一方、3月1日に自宅へ到着し、3月中に入社前研修や事前課題のやり取りに使用していた場合には、3月中に事業供用していたと判断できる可能性があります。

少額資産特例を使う場合は、取得価額だけでなく、事業供用日を必ず確認しましょう。


入社日前の使用が「研修」か「業務」か

入社日前に新入社員へパソコンを貸与する場合、会社が何をさせているかも重要です。

入社前の事前課題や研修案内、入社手続き、社内システムへのログイン確認などは、会社の業務準備としての性格を持ちます。これらを会社貸与パソコンで行なっている場合、会社の事業活動に関連した使用と説明しやすくなります。


一方で、単に私的にインターネット閲覧をしているだけ、会社とのやり取りに使っていない、入社前に使用していないという場合は、事業供用とはいえません。

事業供用日の判断では、パソコンが「誰の手元にあるか」だけでなく、「何に使われていたか」が重要です。


情報セキュリティ面の管理も忘れずに

新入社員に入社日前からパソコンを貸与する場合、税務だけでなく情報セキュリティ面の管理も必要です。

特に、入社前はまだ正式な社員ではないため、社内情報へのアクセス範囲やアカウント権限を慎重に設定する必要があります。実務上は、次のような管理が考えられます。

・入社前に利用できるシステムを限定する
・研修用アカウントを発行する
・秘密保持誓約書を取得する
・貸与品受領書を取得する
・紛失時の連絡ルールを定める
・退職・入社辞退時の返却ルールを定める

入社辞退があった場合には、貸与したパソコンを速やかに回収する必要があります。

その場合の返却手続きやデータ消去手順も、事前に決めておきましょう。


税務調査で確認されやすいポイント

新入社員用パソコンの事業供用日は、特に決算直前に大量購入している場合、税務調査で確認される可能性があります。調査では、次のような点が見られます。

・購入日と納品日
・新入社員への貸与日
・自宅到着日
・初期設定日
・実際の使用開始日
・入社日
・研修や事前課題での使用実態
・固定資産台帳や少額資産明細との整合性
・少額資産特例の適用要件

特に、3月決算法人が3月中に大量の新入社員用パソコンを購入し、当期損金として処理している場合には、「本当に3月中に事業の用に供していたのか」が確認される可能性があります。実態に即した処理と、説明資料の保存が大切です。


実務上のチェックポイント

新入社員に入社日前からパソコンを支給する場合は、次の点を確認しましょう。


1. パソコンの取得日を確認する

請求書、納品書、発注書などで取得日を確認します。


2. 自宅への到着日を確認する

配送記録や受領確認メールを保存しておきます。


3. 初期設定日を確認する

会社用アカウント、セキュリティ設定、業務用ソフトの設定日を記録します。


4. 入社日前の使用実態を確認する

研修案内、事前課題、社内連絡などに使用しているかを確認します。


5. 事業供用日を固定資産台帳に記録する

取得日、事業供用日、使用者、設置場所を明確にします。


6. 少額資産処理の要件を確認する

10万円未満、20万円未満、40万円未満特例のどれを使うのか、法人の要件も含めて確認します。


7. 証拠資料を保存する

税務調査で説明できるよう、配送記録、貸与台帳、入社前研修の連絡履歴などを保存します。


よくある誤解

  • パソコンを購入した日が事業供用日になる

必ずしもそうではありません。購入しただけでは事業供用とはいえず、実際に事業に使える状態になり、事業活動に使用されているかを確認する必要があります。


  • 新入社員の入社日前は絶対に事業供用できない

入社日前でも、会社貸与パソコンを使って入社後のスケジュール連絡、研修案内、事前課題のやり取りなどを行っていれば、自宅到着日を事業供用日とできる可能性があります。


  • 自宅に届けば必ず事業供用日になる

単に届いただけでは不十分です。会社業務に関連する使用実態があるかどうかが重要です。

3月中に買えば3月決算で損金にできる

購入日だけでは判断できません。3月中に事業の用に供している必要があります。


  • 少額資産特例なら事業供用日は関係ない

少額資産特例でも、事業の用に供した事業年度で処理する必要があります。取得しただけで使用していない資産は対象になりません。


まとめ

新入社員に支給するパソコンの事業供用日は、入社日だけで機械的に判断するものではありません。法人税上、減価償却資産は、事業の用に供した日から減価償却や少額資産処理の対象になります。


通常、新入社員用パソコンは入社日以後に業務で使用されるため、入社日を事業供用日と考えることが多いでしょう。

しかし、在宅勤務やリモートワークを前提に、入社日前から会社用パソコンを新入社員の自宅へ届け、そのパソコンを使って入社後のスケジュール連絡、新人研修の案内、事前課題のやり取りなどを行っている場合には、自宅にパソコンが到着した日を事業供用日として扱うことも可能です。


一方、パソコンが自宅に届いただけで、実際には使用されていない場合や、会社業務に関連する利用実態がない場合には、到着日を事業供用日とするのは難しいと考えられます。

特に3月決算法人では、4月入社の新入社員用パソコンを3月中に購入・配送するケースが多く、事業供用日によって当期の損金算入や減価償却の可否が変わることがあります。


事業供用日を説明できるよう、配送記録、貸与品受領書、PC管理台帳、初期設定日、入社前研修の案内、事前課題のやり取りなどの資料を保存しておきましょう。

新入社員用パソコンの税務処理では、「購入日」「納品日」「入社日」だけでなく、実際の使用状況を確認することが大切です。


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