簡易課税制度選択届出書の提出期限が弾力化|2割特例・3割特例後の実務対応を解説
- 安田 亮
- 18 時間前
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こんにちは!代表の安田です。
インボイス制度の開始以降、個人事業主や小規模法人にとって、消費税の申告方式をどう選ぶかは非常に重要なテーマになっています。特に、2割特例や令和8年度改正で創設された3割特例を利用した後に、翌課税期間から簡易課税制度へ移行するかどうかは、実務上よく相談される論点です。
通常、簡易課税制度を適用するには、原則として適用を受けようとする課税期間の初日の前日までに、所轄税務署長へ簡易課税制度選択届出書を提出する必要があります。
ところが、令和8年度税制改正では、2割特例や3割特例の適用後に簡易課税制度へ移行する場合について、届出期限の弾力化が行なわれました。添付資料によると、一定の場合には、簡易課税制度の適用を受けようとする課税期間の申告期限までに選択届出書を提出すればよいこととされています。
今回は、この改正内容について、実務で押さえておきたいポイントを整理して解説します。
簡易課税制度とは?
簡易課税制度とは、課税売上に係る消費税額をもとに、業種ごとのみなし仕入率を使って仕入税額控除額を計算する制度です。実際の仕入や経費に係る消費税額を細かく集計しなくてもよいため、小規模事業者にとっては事務負担を軽減しやすい制度です。
一方で、簡易課税制度は有利・不利が事業内容によって分かれます。そのため、原則として、課税期間が始まる前に「簡易課税を選ぶ」と届け出る事前選択制が採られています。
簡易課税制度の適用を受けるためには、原則として、適用を受けようとする課税期間の初日の前日までに選択届出書を提出する必要があると説明されています。
2割特例後の簡易課税移行にはすでに配慮措置があった
令和5年度税制改正では、インボイス制度への対応として、2割特例を利用した小規模事業者が、その後スムーズに簡易課税制度へ移行できるようにする措置が設けられていました。
2割特例の適用を受けた翌課税期間中に簡易課税制度選択届出書を提出した場合には、その課税期間の初日の前日に提出したものとみなす措置が設けられていました。
つまり、本来は課税期間開始前に届出が必要なところ、2割特例後の移行に限って、一定の柔軟な取扱いが認められていたわけです。
令和8年度改正で何が変わったのか
今回の令和8年度改正では、この措置がさらに弾力化されました。
2割特例や3割特例の適用を受けた翌課税期間に簡易課税制度の適用を受けようとする場合には、適用を受けようとする課税期間の申告期限までに簡易課税制度選択届出書を提出すればよいこととされています。
これは、実務上かなり大きな変更です。なぜなら、申告書を作成する段階になって初めて、簡易課税制度選択届出書の提出漏れに気づくケースがあるからです。申告時に届出漏れが判明するケースを想定し、混乱防止の観点から期限が延長されたと説明されています。
対象となるのはどのような事業者か
今回の弾力措置の対象は、誰でも使えるわけではありません。対象となるのは、2割特例または3割特例の適用を受けた翌課税期間に、簡易課税制度を選択しようとする事業者です。
つまり、通常の課税事業者が単に「簡易課税にしたかったが届出を忘れていた」という場合に、いつでも申告期限までの提出が認められるわけではありません。
この点は、制度を誤解しやすいところです。今回の措置は、あくまでインボイス制度に伴う特例を利用した小規模事業者等が、翌期に簡易課税へ移行しやすくするための限定的な配慮と理解しておくべきです。
いつから適用されるのか
改正後の措置は、翌課税期間が令和8年10月1日以後に終了するケースについて適用されます。
そのため、実務では、単に「令和8年度改正で変わった」と見るのではなく、対象となる翌課税期間の終了日がいつかを確認する必要があります。
個人事業主であれば課税期間は通常1月1日から12月31日までですが、法人の場合は決算期によって適用関係が変わるため、課税期間の終了日を基準に確認することが大切です。
「申告期限まで」とはいつまでか
今回の改正でいう「申告期限まで」とは、消費税に係る確定申告書の提出期限を指します。その日が土日祝日等に当たる場合には、国税通則法の取扱いにより翌日が期限になるとされています。
また、申告期限の延長の特例を受けている法人等については、延長後の期限までに選択届出書を提出すればよいとされています。
この点は法人実務で重要です。法人税や消費税の申告期限延長を受けている法人では、届出期限も実際の延長後の申告期限に合わせて判断できるため、通常期限だけで早合点しないよう注意が必要です。
事前選択の原則は変わらない
今回の改正について、実務家からは驚きの声がありました。その理由は、簡易課税制度がもともと事前提出・事前選択を大原則としてきた制度だからです。
ただし、今回の弾力化をもって、簡易課税制度全般について事後選択が認められるようになったわけではありません。2割特例適用者等に限らず、簡易課税を選択する事業者全般に申告期限までの届出を認めることには慎重な見方が示されています。広く事後選択を認めると、一般課税との有利選択が可能となり、制度趣旨にそぐわない状況が生じかねないためです。
つまり、事前選択が原則、今回の措置は例外という整理が重要です。
実務で起こりやすい誤解
今回の改正で起こりやすい誤解は、次のようなものです。
1. 簡易課税制度は申告期限までに選べるようになった、という誤解
今回認められたのは、2割特例・3割特例の適用を受けた翌課税期間に関する限定的な措置です。通常の簡易課税選択については、引き続き課税期間開始前の届出が原則です。
2. 届出を出さなくても申告書で簡易課税にできる、という誤解
弾力化されたとはいえ、簡易課税制度選択届出書の提出は必要です。申告期限までに届出書を提出すればよいのであって、届出自体が不要になるわけではありません。
3. すべての課税期間で使える、という誤解
改正後の措置は、対象となる翌課税期間が令和8年10月1日以後に終了するケースに適用されます。そのため、法人の場合は決算期ごとに適用関係を確認する必要があります。
顧問先に伝えたいポイント
この改正は、インボイス制度対応で課税事業者になった小規模事業者にとって、かなり実務的な救済措置です。特に、2割特例や3割特例を使った後、翌期から簡易課税制度へ移行したいと考えている事業者には、早めに案内しておきたい内容です。
ただし、制度の説明では、次の点をセットで伝えることが大切です。
2割特例・3割特例後の簡易課税選択について、一定の場合は申告期限まで届出可能
ただし、届出書の提出自体は必要
通常の簡易課税制度では、事前届出の原則は変わらない
法人は課税期間の終了日や申告期限延長の有無を確認する必要がある
まとめ
令和8年度税制改正により、2割特例または3割特例の適用を受けた翌課税期間に簡易課税制度を選択する場合、一定のケースでは、適用を受けようとする課税期間の申告期限までに簡易課税制度選択届出書を提出すればよいこととされました。
この弾力措置は、申告時に届出漏れに気づくケースも想定し、混乱防止の観点から設けられたものです。対象となるのは、翌課税期間が令和8年10月1日以後に終了するケースであり、「申告期限まで」とは消費税の確定申告書の提出期限を指します。
土日祝日等に当たる場合は翌日が期限となり、申告期限延長の特例を受けている法人等は、延長後の期限までに提出すればよいとされています。
もっとも、今回の改正は簡易課税制度全般について事後選択を認めるものではありません。簡易課税制度は事前選択が原則であり、今回の措置は2割特例・3割特例後の移行に限った例外と理解して、届出期限を誤らないよう注意しましょう。




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