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青色申告特別控除65万円を受けるには?e-Taxと優良な電子帳簿の違いを税理士が解説

  • 執筆者の写真: 安田 亮
    安田 亮
  • 6 日前
  • 読了時間: 10分

こんにちは!代表の安田です。


個人事業主やフリーランス、不動産賃貸業を営む方にとって、青色申告特別控除は所得税の節税に大きく関わる制度です。


青色申告特別控除には、主に10万円、55万円、65万円の控除があります。

このうち、最も控除額が大きい65万円控除を受けるためには、単に青色申告をしているだけでは足りません。複式簿記による記帳や貸借対照表・損益計算書の提出に加えて、e-Taxによる電子申告または優良な電子帳簿の保存のいずれかを満たす必要があります。


本日は、青色申告特別控除65万円を受けるための要件、e-Tax申告と優良な電子帳簿の違い、優良な電子帳簿を利用する場合の届出書、実務上の注意点について解説します。


青色申告特別控除とは

青色申告特別控除とは、青色申告者が一定の要件を満たした場合に、事業所得、不動産所得または山林所得の金額から一定額を控除できる制度です。


特に、事業所得や不動産所得を生ずべき事業を営む方が、正規の簿記の原則、一般的には複式簿記により記帳し、貸借対照表と損益計算書を添付して期限内申告を行う場合には、原則として最高55万円の控除を受けることができます。


さらに、国税庁は、55万円控除の要件に加えて、e-Taxによる電子申告または優良な電子帳簿の保存の要件を満たす方は、最高65万円の青色申告特別控除を受けられると案内しています。


つまり、65万円控除を受けるには、まず55万円控除の土台となる要件を満たし、そのうえで電子申告または電子帳簿の追加要件を満たす必要があります。


65万円控除を受けるための基本要件

65万円の青色申告特別控除を受けるためには、まず次のような基本要件を満たす必要があります。

1. 青色申告の承認を受けていること
2. 事業所得または事業的規模の不動産所得があること
3. 正規の簿記の原則、一般的には複式簿記で記帳していること
4. 貸借対照表と損益計算書を添付していること
5. 確定申告書を期限内に提出していること
6. e-Taxによる電子申告または優良な電子帳簿の保存を行っていること

なお、簡易な帳簿による記帳の場合でも、一定の要件を満たせば10万円の青色申告特別控除を受けることはできます。


一方、現金主義による所得計算の特例を選択している場合には、55万円控除や65万円控除は受けられず、10万円控除の対象となります。国税庁のリーフレットでも、現金主義による所得計算の特例を受けている場合は、55万円および65万円控除を受けることはできないとされています。


令和4年分以後は「優良な電子帳簿」がポイント

令和3年度改正により、65万円の青色申告特別控除の適用要件の一つである電子帳簿保存について、令和4年分以後は「優良な電子帳簿」の要件を満たす必要があるとなっています。

令和3年分までは、一定の電子帳簿保存を行なうことで65万円控除の要件を満たすことができました。しかし、令和4年1月1日施行の改正電子帳簿保存法により、電子帳簿は大きく次の2つに区分されました。

1. 優良な電子帳簿
2. その他の電子帳簿

優良な電子帳簿とは、訂正・削除履歴の確保、相互関連性の確保、検索機能の確保など、一定の要件を満たした電子帳簿をいいます。


65万円控除の要件として電子帳簿保存を選ぶ場合には、単に会計ソフトで帳簿を作成しているだけでは足りず、仕訳帳と総勘定元帳について優良な電子帳簿の要件を満たして保存する必要があります。


65万円控除はe-Taxによる電子申告でも受けられる

ここで重要なのは、65万円控除を受ける方法は「優良な電子帳簿」だけではないという点です。


令和4年分以後も、e-Taxにより確定申告書、貸借対照表、損益計算書等を提出する場合には、優良な電子帳簿の要件を満たしていなくても65万円控除を受けることができます。


国税庁のリーフレットでも、65万円控除を受けるには、55万円控除の要件に加えて、e-Taxによる申告または優良な電子帳簿の保存のいずれかが必要と案内されています。


つまり、実務上は次のように整理できます。

申告・保存方法

65万円控除の可否

複式簿記+期限内申告+e-Tax申告

65万円控除可

複式簿記+期限内申告+優良な電子帳簿保存

65万円控除可

複式簿記+紙で申告+優良な電子帳簿なし

原則55万円控除

簡易帳簿による記帳

原則10万円控除

個人事業主の方にとっては、e-Taxによる電子申告を利用するのが最も取り組みやすい方法といえます。


e-Taxによる電子申告で65万円控除を受ける場合

e-Taxによる電子申告で65万円控除を受ける場合は、確定申告書だけでなく、青色申告決算書、つまり貸借対照表や損益計算書もe-Taxで提出する必要があります。


国税庁の65万円控除のチェック表でも、e-Taxで申告する場合には、e-Taxで青色申告決算書を提出しているかが確認項目になっています。


したがって、確定申告書だけを電子送信し、決算書を別途紙で提出するような方法では、65万円控除の要件を満たさない可能性があります。


会計ソフトや確定申告書等作成コーナーを利用する場合でも、提出データに青色申告決算書が含まれているかを確認しておきましょう。


優良な電子帳簿で65万円控除を受ける場合

e-Taxではなく、優良な電子帳簿の保存により65万円控除を受ける場合には、仕訳帳と総勘定元帳について、優良な電子帳簿の要件を満たして保存する必要があります。


国税庁の手続案内でも、青色申告の承認を受けている方が、仕訳帳および総勘定元帳について一定の要件に従って保存等を行い、65万円の青色申告特別控除の適用を受けようとする場合が、届出手続の対象とされています。


優良な電子帳簿で65万円控除を受ける場合には、会計ソフトが電子帳簿保存法の優良な電子帳簿の要件に対応しているかを確認する必要があります。

単にパソコンで帳簿を作っている、PDFで保存している、クラウド会計を使っている、というだけでは要件を満たすとは限りません。


事前承認は不要だが、届出書の提出が必要

令和4年1月1日以後、電子帳簿保存を行なうための税務署長の事前承認制度は廃止されています。ただし、優良な電子帳簿の保存により65万円控除を受ける場合には、届出書の提出が必要です。


国税庁の手続案内では、65万円の青色申告特別控除の適用を受けようとする場合、適用を受けようとする年の翌年3月15日、つまりその年分に係る法定申告期限までに、所轄税務署長へ届出書を提出する必要があるとされています。


なお、過去に改正前の電子帳簿保存に係る承認を受け、65万円控除を適用していた方が、引き続き要件を満たして仕訳帳等の備付け・保存を行なっている場合には、適用届出書の提出は不要とされています。


実務上はe-Tax申告がシンプル

優良な電子帳簿の保存は、帳簿の信頼性を高める意味では有効です。

しかし、65万円の青色申告特別控除を受けるという目的だけで考えると、多くの個人事業主にとってはe-Tax申告の方がシンプルです。


理由は、e-Tax申告であれば、優良な電子帳簿の要件を満たす必要がないからです。

添付資料でも、令和4年分以後も、e-Tax申告による場合には、優良な電子帳簿の要件を満たす必要はなく65万円控除を適用できると明記されています。


そのため、65万円控除を確実に受けたい方は、まず次の点を確認しましょう。

1. 青色申告の承認を受けているか
2. 複式簿記で記帳しているか
3. 貸借対照表を作成しているか
4. 期限内申告できるか
5. e-Taxで申告書と青色申告決算書を送信できるか

この5つを満たせば、優良な電子帳簿を導入しなくても、65万円控除を受けられる可能性があります。


紙提出の場合は55万円控除になることが多い

複式簿記で帳簿を作成し、貸借対照表と損益計算書を添付して期限内に申告していても、申告書を紙で提出し、優良な電子帳簿の保存もしていない場合には、65万円控除ではなく55万円控除になります。


これは、令和2年分以後の青色申告特別控除の見直しにより、65万円控除を受けるために電子申告等の要件が追加されたためです。


そのため、これまで紙で申告していた方が65万円控除を受け続けたい場合には、e-Taxによる電子申告へ切り替えるか、優良な電子帳簿保存の要件を満たす必要があります。


特に、税理士に依頼せず自分で申告している個人事業主の方は、申告方法の違いだけで控除額が10万円変わるため注意が必要です。


10万円控除・55万円控除・65万円控除の違い

青色申告特別控除は、控除額によって要件が異なります。

控除額

主な要件

10万円

青色申告者で簡易帳簿などにより記帳している場合など

55万円

事業所得または事業的規模の不動産所得について、複式簿記で記帳し、貸借対照表・損益計算書を添付して期限内申告

65万円

55万円控除の要件に加え、e-Tax申告または優良な電子帳簿保存

ここで注意したいのは、不動産所得の場合です。


不動産所得で55万円・65万円控除を受けるには、原則として事業的規模であることが必要です。規模が小さい不動産貸付けの場合には、65万円控除ではなく10万円控除にとどまることがあります。


優良な電子帳簿は過少申告加算税の軽減にも関係する

優良な電子帳簿は、65万円控除だけでなく、過少申告加算税の軽減措置にも関係します。

国税庁の届出手続案内でも、65万円の青色申告特別控除に加えて、優良な電子帳簿に関する過少申告加算税の特例を受けようとする場合の手続が案内されています。


つまり、優良な電子帳簿は、単なる控除額アップのためだけの制度ではなく、税務調査等で申告漏れがあった場合の加算税軽減にも関係する制度です。


ただし、その分、帳簿保存の要件は一般の電子帳簿より厳しくなります。導入する場合には、会計ソフトの対応状況、訂正・削除履歴、検索機能、運用ルールを確認しておきましょう。


よくある誤解

  • 会計ソフトを使っていれば65万円控除が受けられる

会計ソフトで帳簿を作成しているだけでは、65万円控除の要件を満たすとは限りません。

65万円控除には、複式簿記等の基本要件に加えて、e-Tax申告または優良な電子帳簿保存が必要です。


  • 電子帳簿保存をしていないと65万円控除は受けられない

電子帳簿保存をしていなくても、e-Taxで確定申告書、貸借対照表、損益計算書等を提出すれば、65万円控除を受けることができます。


  • e-Taxで申告書だけ送ればよい

65万円控除を受けるためには、申告書だけでなく、青色申告決算書もe-Taxで提出する必要があります。


  • 優良な電子帳簿の届出はいつでもよい

優良な電子帳簿保存により65万円控除を受ける場合、適用を受けようとする年分の法定申告期限までに届出書を提出する必要があります。国税庁の手続案内でも、提出時期は適用を受けようとする年の翌年3月15日までとされています。


実務上のチェックポイント

青色申告特別控除65万円を受けたい方は、次の点を確認しましょう。


1. 青色申告承認申請書を提出しているか

新たに青色申告を始める場合には、原則としてその年の3月15日までに青色申告承認申請書を提出する必要があります。新規開業の場合は、開業日から2か月以内など別の期限になります。


2. 複式簿記で記帳しているか

65万円控除には、正規の簿記の原則による記帳が必要です。現金出納帳だけの簡易帳簿では、65万円控除は受けられません。


3. 貸借対照表を作成しているか

65万円控除・55万円控除では、損益計算書だけでなく貸借対照表の作成が必要です。


4. 期限内に申告できるか

期限後申告になると、55万円・65万円控除は受けられず、10万円控除になる可能性があります。


5. e-Taxで電子申告するか

最も実務的なのは、e-Taxで確定申告書と青色申告決算書を提出する方法です。


6. 優良な電子帳簿を使う場合は届出書を提出しているか

優良な電子帳簿保存で65万円控除を受ける場合は、法定申告期限までに届出書を提出する必要があります。


7. 会計ソフトが優良な電子帳簿に対応しているか

優良な電子帳簿での保存を選択する場合には、使用している会計ソフトが要件を満たしているか確認しましょう。


まとめ

青色申告特別控除65万円を受けるためには、青色申告の承認を受け、複式簿記で記帳し、貸借対照表と損益計算書を添付して期限内申告を行うことが基本です。

そのうえで、65万円控除を受けるには、e-Taxによる電子申告または優良な電子帳簿の保存のいずれかが必要です。


令和4年分以後、電子帳簿保存により65万円控除を受ける場合には、単なる電子帳簿ではなく「優良な電子帳簿」の要件を満たす必要があります。また、優良な電子帳簿による65万円控除を受ける場合には、原則として法定申告期限までに届出書の提出が必要です。


一方、e-Tax申告による場合には、優良な電子帳簿の要件を満たす必要はありません。多くの個人事業主・フリーランス・不動産オーナーにとっては、65万円控除を受けるためには、まずe-Taxで申告できる体制を整えるのが現実的です。


青色申告特別控除は、申告方法や帳簿保存の違いで控除額が変わります。申告直前に慌てないよう、年の途中から記帳方法、会計ソフト、e-Tax利用環境、届出書の要否を確認しておきましょう。

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