飲食料品の消費税率が2年間1%に?令和9年4月からの議長案と実務への影響を税理士が解説
- 安田 亮
- 2 日前
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おはようございます!代表の安田です。
物価高が続く中、家計負担を軽減するための施策として、飲食料品に係る消費税率の引下げが議論されています。
現在、飲食料品には軽減税率として8%が適用されています。これに対し、社会保障国民会議の実務者会議では、給付付き税額控除の本格導入までのつなぎとして、令和9年4月1日から2年間、飲食料品に係る消費税率を1%に引き下げる案が示されました。
消費者にとっては、日々の食料品購入に関わる大きなニュースです。一方で、食品小売業、飲食料品を扱う卸売業、食品メーカー、飲食料品の通信販売事業者、会計・経理担当者にとっては、税率変更に伴うシステム改修、インボイス対応、レジ設定、返品処理など、実務面で大きな影響が見込まれます。
本日は、飲食料品の消費税率1%案の概要と、事業者が今後確認しておきたいポイントを、税理士の視点から整理します。
飲食料品の消費税率1%案とは?
今回示された案は、飲食料品に係る消費税率を、一定期間に限って1%に引き下げるというものです。対象期間として示されているのは、令和9年4月1日から令和11年3月31日までの2年間です。
現在、飲食料品には軽減税率8%が適用されています。この税率を2年間だけ1%に引き下げることで、物価高の影響を受ける家計を支援する狙いがあります。
ただし、この時点ではあくまで社会保障国民会議の実務者会議で示された議長案であり、今後の制度設計や法令改正の内容を確認する必要があります。
給付付き税額控除までのつなぎとして位置付け
今回の1%案は、単独の消費税減税策というより、将来的な給付付き税額控除の本格導入までのつなぎとして位置付けられています。
議長案では、「所得に連動したきめ細かな給付」を行なう新たな制度を、令和11年度に本格導入する方向性が示されています。
この制度は、所得に応じて必要な人にきめ細かく給付を行う仕組みを想定したものです。ただし、制度を実施するためには、配偶者の所得情報や、子育て世帯に関する情報など、追加的な情報把握の仕組みが必要になります。
そのため、本格導入までには一定の準備期間が必要とされ、その間の物価高対策として、飲食料品の消費税率を1%に引き下げる案が示されたわけです。
令和9年度には先行給付も予定
議長案では、飲食料品の消費税率を1%に引き下げるだけでなく、令和9年度に先行的な給付を行なう方向性も示されています。
具体的には、飲食料品に係る消費税1%相当分の範囲内で、現時点で公的機関が保有する所得情報を活用し、「所得に連動したきめ細かな給付」を令和9年度に先行導入するという内容です。令和9年秋頃に先行給付を行ない、その後、令和10年秋頃に2回目の給付、令和11年秋頃に本格導入という流れが示されています。
つまり、令和9年4月から飲食料品の税率を1%に引き下げ、令和9年秋頃から給付も組み合わせることで、全体として飲食料品に係る消費税の実質ゼロ化を目指す構想です。
令和11年度に本格導入される給付制度とは?
令和11年度に本格導入が予定される制度は、所得に応じて給付額を調整する仕組みとされています。
議長案では、配偶者の所得を把握することや、子育て世帯への支援の観点から16歳から18歳の被扶養者の情報を把握することなど、追加的な情報確保の必要性が示されています。
令和11年秋頃の本格導入時には、配偶者の所得勘案による一定の例外措置があり、子育て世帯への配慮は18歳以下までを対象とする方向性が示されています。
一方、令和9年秋頃の先行導入では、配偶者の所得勘案による一定の例外措置はなく、子育て世帯への配慮は15歳以下とされています。
このように、令和9年度の先行給付と令和11年度の本格給付では、対象や設計に違いが出る可能性があります。
飲食料品の税率1%で何が変わるのか
飲食料品の消費税率が現行8%から1%に引き下げられた場合、消費者にとっては食料品購入時の負担が軽くなります。
たとえば、税抜1万円の飲食料品を購入する場合、現在の軽減税率8%では消費税は800円です。税率が1%になれば、消費税は100円になります。
この差額は家計にとって分かりやすい負担軽減になります。
一方で、事業者側では、単に税率を変更するだけでは済みません。商品ごとの税率設定、レジ・POSシステム、販売管理システム、請求書・領収書・インボイス、会計処理、返品・値引き処理など、多くの実務対応が必要になります。
対象は「飲食料品」
今回の案で税率引下げの対象とされているのは、飲食料品に係る消費税です。
現行の軽減税率制度では、酒類・外食など一部を除く飲食料品が軽減税率8%の対象とされています。今後、1%案が具体化される場合には、現行の軽減税率対象品目をそのまま引き下げるのか、対象範囲に変更があるのかが重要になります。
事業者としては、最終的な制度内容が明らかになった段階で、対象商品と対象外商品の区分を確認する必要があります。
特に、食品と日用品を同時に扱うスーパーやドラッグストア、コンビニエンスストア、EC事業者では、商品マスタの税率区分を正確に管理することが重要です。
事業者のレジ・POS対応が必要に
飲食料品の消費税率が1%になる場合、食品を扱う事業者は、レジやPOSシステムの設定変更が必要になります。
現在、多くの事業者は、標準税率10%と軽減税率8%を区分して処理しています。これに1%の税率が加わる、または8%区分が一時的に1%へ変更されることになります。
そのため、次のような対応が必要になる可能性があります。
商品マスタの税率変更
レジ・POSの税率設定
レシート表示の変更
請求書・納品書・領収書の税率表示変更
インボイスの税率別記載への対応
売上データの税率別集計
会計ソフトへの連携確認
返品・値引き処理の税率確認
店舗スタッフ向けマニュアルの更新
税率変更は、現場のオペレーションに直接影響します。正式決定後に慌てないよう、システム会社やレジメーカーに、1%税率への対応可否を早めに確認しておくとよいでしょう。
インボイス制度への影響
飲食料品の税率が1%になる場合、インボイス制度への対応も重要です。
適格請求書では、税率ごとに区分した対価の額や消費税額等を記載する必要があります。
そのため、飲食料品に1%が適用され、他の商品に10%が適用される場合には、請求書やレシート上で、1%対象取引と10%対象取引を区分して表示する必要があります。
特に、事業者向けに食品と食品以外の商品を同時に販売する場合には、インボイスの記載が正確でないと、購入側の仕入税額控除にも影響する可能性があります。
販売側はもちろん、購入側も、受け取ったインボイスに1%対象取引と10%対象取引が正しく記載されているかを確認する必要があります。
返品・値引き処理に注意
税率変更時に実務で問題になりやすいのが、返品や値引きの処理です。
たとえば、令和9年3月に8%で販売した飲食料品が、令和9年4月以後に返品された場合、その返品処理を1%で行なってよいのか、販売時の8%で処理するのかという問題が生じます。
原則として、返品・値引き・売上戻りは、元の販売取引に対応する税率で処理する必要があります。そのため、税率変更前後をまたぐ返品については、販売時の税率を確認できる仕組みが必要です。
レジやPOSシステムが自動で対応できない場合には、手入力や別管理が必要になることもあります。
価格表示にも影響
消費税率が変更されると、価格表示にも影響します。
税込価格を表示している店舗では、税率変更により税込価格を見直すのか、税抜価格を維持して税込価格を下げるのか、あるいは総額表示の方法をどうするのかを検討する必要があります。
食品小売業では、棚札、値札、チラシ、ECサイト、アプリ、メニュー表示など、多くの価格表示媒体があります。
2年間の時限措置であることを踏まえると、令和9年4月の開始時と、令和11年4月の終了時の両方で価格表示対応が必要になる可能性があります。
2年間の時限措置である点に注意
今回の案では、飲食料品の消費税率1%は、令和9年4月1日から令和11年3月31日までの2年間とされています。つまり、恒久的な税率変更ではなく、期限付きの措置です。
事業者にとっては、開始時に8%から1%へ変更し、終了時に再び税率を戻す可能性があります。このような時限的な税率変更では、システム改修や店舗対応が二度発生します。
そのため、単に令和9年4月への対応だけでなく、令和11年4月以後の復元対応も見据えて準備する必要があります。
給付と減税を組み合わせる構想
議長案では、飲食料品の消費税率を1%に引き下げるだけでなく、所得に連動した給付も組み合わせることで、全体として飲食料品に係る消費税の実質ゼロ化を実現するとされています。
これは、消費税減税だけでは所得の低い世帯に十分な支援が届きにくいという課題に対応するためと考えられます。
税率を1%まで引き下げることで幅広く負担軽減を行い、さらに所得情報を活用した給付により、中低所得の現役勤労者や子育て世帯に手厚く対応する構想です。
今後は、誰が給付対象になるのか、どの所得情報を使うのか、申請が必要なのか、マイナンバー制度とどう連携するのかなど、具体的な制度設計が注目されます。
企業実務で想定される影響
飲食料品を扱う事業者では、次のような実務対応が必要になる可能性があります。
まず、販売する商品のうち、1%対象となる飲食料品を洗い出す必要があります。
次に、商品マスタ、レジ、POS、販売管理、会計システム、請求書発行システムが1%税率に対応できるかを確認します。
さらに、令和9年4月1日前後の売上、返品、値引き、請求締め、納品日、検収日などをどのように処理するか、社内ルールを整える必要があります。
特に、月末締め請求や複数税率の商品をまとめて販売する事業者では、税率適用日を誤らないよう注意が必要です。
経理担当者が確認したいチェックポイント
飲食料品の消費税率1%案が具体化した場合、経理担当者は次の点を確認しておきたいところです。
1%対象となる商品範囲
現行の軽減税率8%対象品目との違い
レジ・POSの1%税率対応
商品マスタの変更方法
インボイスの税率別記載対応
会計ソフトの税区分設定
税率変更前後の返品・値引き処理
令和9年4月1日前後の売上計上ルール
取引先から受け取る請求書の確認方法
令和11年4月以後の税率復元対応
制度が正式に決まってから対応を始めると、システム改修や社内周知が間に合わない可能性があります。飲食料品を扱う事業者は、早い段階でシステム会社や税理士に相談しておくと安心です。
まとめ
社会保障国民会議の実務者会議では、給付付き税額控除や飲食料品の消費税減税に関するこれまでの議論を踏まえ、とりまとめの方向性として、令和9年4月1日から2年間、飲食料品に係る消費税率を1%に引き下げる議長案が示されました。
この案は、令和11年度に本格導入を目指す「所得に連動したきめ細かな給付」までのつなぎとして位置付けられています。令和9年度には、飲食料品に係る消費税1%相当分の範囲内で、公的機関が保有する所得情報を活用した先行給付を行なう方向性も示されています。
令和9年秋頃に先行給付、令和10年秋頃に2回目の給付、令和11年秋頃に本格導入という流れが示されています。また、令和9年4月1日から令和11年3月31日まで、飲食料品に係る消費税率を1%に引き下げることが示されています。
消費者にとっては家計負担軽減が期待される一方、事業者にとっては、レジ・POS、商品マスタ、インボイス、会計ソフト、返品・値引き処理、価格表示など、多くの実務対応が必要になる可能性があります。
特に、飲食料品と食品以外の商品を同時に扱う事業者では、1%対象取引と10%対象取引を正しく区分し、インボイスにも適切に反映する必要があります。
現時点では議長案の段階であり、今後の法令改正や制度設計を確認する必要があります。しかし、飲食料品を扱う事業者は、正式決定後に慌てないよう、1%税率へのシステム対応、商品マスタの見直し、価格表示、税率変更前後の返品処理について、早めに準備を始めておくことが大切です。



