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売上を伸ばす前に考えたい「やめる仕事」|中小企業の選択と集中

  • 執筆者の写真: 安田 亮
    安田 亮
  • 6 時間前
  • 読了時間: 9分

こんばんは!代表の安田です。


中小企業の経営者からは、よく「もっと売上を伸ばしたい」「新しい取引先を増やしたい」「新規事業に取り組みたい」といった相談を受けます。


もちろん、会社を成長させるために売上を伸ばすことは大切です。しかし、売上を伸ばす前に一度立ち止まって考えたいことがあります。


それは、「やめる仕事」を決めることです。

中小企業では、人材・時間・資金といった経営資源に限りがあります。限られた人員で多くの業務を抱え込んでいる状態のまま売上拡大を目指すと、現場が疲弊し、利益が残らず、結果として会社全体が苦しくなることがあります。


本日は、中小企業が売上を伸ばす前に考えたい「やめる仕事」の重要性と、選択と集中を進めるための具体的なポイントについて解説します。


売上が増えても会社が楽になるとは限らない

経営者にとって、売上の増加はわかりやすい目標です。売上が増えれば会社が成長しているように見えますし、金融機関や取引先に対しても良い印象を与えやすくなります。

しかし、売上が増えたからといって、必ずしも会社の状態が良くなるわけではありません。


たとえば、次のようなケースがあります。

  • 売上は増えたが、利益率の低い仕事ばかり増えている

  • 新規顧客対応に追われ、既存顧客への対応品質が落ちている

  • 社長や一部の社員に業務が集中し、残業や休日対応が増えている

  • 手間のかかる仕事が増え、社内の雰囲気が悪くなっている

  • 資金繰りが以前より苦しくなっている


このような状態では、売上が増えても会社は楽になりません。むしろ、忙しさだけが増え、利益や余裕が残らない「薄利多忙」の状態に陥ってしまいます。


中小企業にとって大切なのは、単に売上を増やすことではなく、利益が残り、社員が無理なく働けて、会社が継続的に成長できる状態をつくることです。


そのためには、「何を増やすか」だけでなく、「何をやめるか」を考える必要があります。


<中小企業が「やめる仕事」を決めるべき理由>

中小企業が「やめる仕事」を決めるべき理由は、大きく3つあります。


1. 経営資源には限りがあるから

中小企業では、人員や時間に余裕があるケースは多くありません。社長自身が営業、現場対応、採用、資金繰り、クレーム対応まで幅広く抱えている会社もあります。


そのような状態で新しい仕事を増やすと、既存の業務にさらに負荷がかかります。

本来であれば、利益率の高い仕事や将来性のある事業に集中すべきところ、目の前の細かい業務に追われてしまい、重要な仕事に時間を使えなくなってしまいます。


限られた経営資源を有効に使うためには、すべての仕事を同じように続けるのではなく、会社にとって重要な仕事に集中することが必要です。


2. 利益率の低い仕事が会社の体力を奪うから

売上はあるものの、利益がほとんど残らない仕事があります。


たとえば、単価が低いにもかかわらず手間がかかる仕事、値引きが前提になっている仕事、クレームや修正対応が多い仕事などです。


このような仕事は、売上には貢献しているように見えます。しかし、実際には社員の時間を多く使い、利益を圧迫し、会社の体力を奪っていることがあります。


特に中小企業では、社長や優秀な社員の時間が最も貴重な経営資源です。その時間を利益率の低い仕事に使い続けていると、本当に伸ばすべき事業や顧客対応に時間を使えなくなります。


3. 社長が本来やるべき仕事に集中できなくなるから

中小企業では、社長が現場に深く関わっていることも多いです。もちろん、創業期や小規模な会社では、社長が現場を支えることも重要です。


しかし、会社が一定の規模になっても社長が細かい業務に追われ続けていると、経営判断や将来の戦略に時間を使えません。


本来、社長が考えるべきことは、会社の方向性、採用・育成、資金計画、新規顧客の開拓、既存事業の改善などです。


「社長がやらなくてもよい仕事」を減らさなければ、会社の成長スピードは鈍くなります。売上を伸ばす前に、まずは社長の時間をどこに使うべきかを見直すことが大切です。


「やめる仕事」の具体例

では、どのような仕事を見直すべきなのでしょうか。代表的な例を紹介します。


<利益率が低い仕事>

まず見直したいのは、利益率が低い仕事です。

売上金額だけを見ると大きく見えても、原価や人件費、外注費、管理コストを差し引くと、ほとんど利益が残っていない仕事があります。

特に、長年の付き合いで価格を据え置いている取引や、値引きが当たり前になっている案件は注意が必要です。


もちろん、すべての低利益案件をすぐにやめる必要はありません。取引先との関係性や将来性も考慮する必要があります。しかし、利益が出ていない仕事を把握せずに続けることは危険です。


<手間がかかりすぎる仕事>

次に見直したいのは、手間がかかりすぎる仕事です。

たとえば、細かい修正依頼が多い、問い合わせが頻繁に発生する、納期がいつも厳しい、社内で特定の人しか対応できない、といった仕事です。

このような仕事は、売上や利益だけでは負担の大きさが見えにくいものです。しかし、社員の精神的な負担や時間のロスを考えると、会社全体に大きな影響を与えている場合があります。


単価を上げる、対応範囲を明確にする、契約条件を見直すなどの対応が必要です。それでも改善が難しい場合は、段階的に縮小することも選択肢になります。


<社長が抱え込んでいる仕事>

社長自身が抱え込んでいる仕事も見直しの対象です。

たとえば、日々の事務作業、細かい確認作業、現場の調整、請求書の作成、採用応募者との日程調整などです。


これらの仕事は、社長がやった方が早いと感じるかもしれません。しかし、社長の時間を使うべき仕事かどうかは別問題です。


他の社員に任せる、外注する、システム化するなどの方法で、社長の時間を確保することが重要です。


<昔から続けているだけの仕事>

「昔からやっているから」という理由だけで続けている仕事もあります。

創業当初は必要だった業務でも、現在の会社の状況には合わなくなっていることがあります。以前は利益が出ていた商品やサービスでも、競争環境や顧客ニーズの変化によって、今では負担の方が大きくなっているかもしれません。


定期的に「この仕事は今も本当に必要か」を見直すことが大切です。


「やめる仕事」を決めるときの判断基準

仕事をやめるかどうかを判断する際には、感覚だけで決めるのではなく、いくつかの基準を持つことが重要です。

たとえば、次のような視点で整理するとよいでしょう。

  • 利益は十分に出ているか

  • 社内の負担は大きすぎないか

  • 今後も成長が見込めるか

  • 会社の強みを活かせる仕事か

  • 社長や社員の時間を使う価値があるか

  • 他の業務に悪影響を与えていないか


特に重要なのは、売上だけで判断しないことです。

売上が大きい仕事でも、利益が少なく、手間が多く、社員の負担が大きい場合には、会社にとって必ずしも良い仕事とはいえません。


反対に、売上規模は小さくても、利益率が高く、対応しやすく、将来の成長につながる仕事であれば、積極的に伸ばす価値があります。


いきなりやめるのではなく、段階的に見直す

「やめる仕事」を決めるといっても、いきなり取引を終了する必要はありません。急に仕事をやめると、売上や取引先との関係に影響が出ることもあります。

まずは、次のような段階的な見直しから始めるとよいでしょう。

  • 価格を見直す

  • 対応範囲を明確にする

  • 納期や条件を見直す

  • 一部業務を外注する

  • 対応方法を標準化する

  • 新規受付を停止する

  • 徐々に別の仕事へシフトする


大切なのは、「何となく続ける」のではなく、会社として方針を持つことです。

たとえば、利益率の低い仕事でも、価格改定によって改善できるかもしれません。手間のかかる仕事でも、対応ルールを決めることで負担を減らせるかもしれません。


やめるか続けるかの二択ではなく、まずは改善できる余地があるかを検討することが大切です。


選択と集中は中小企業ほど重要

大企業であれば、多くの事業や顧客に同時に対応する体力があります。しかし、中小企業では、すべてを同時に進めることは難しいのが現実です。


だからこそ、中小企業には「選択と集中」が必要です。

自社が得意な仕事、利益が出やすい仕事、良い顧客に貢献できる仕事に集中することで、会社の強みはより明確になります。


反対に、何でも引き受けていると、会社の特徴が見えにくくなります。社員も何を優先すべきかわからなくなり、現場の負担も増えてしまいます。

「やらないこと」を決めることは、単に仕事を減らすことではありません。会社の方向性を明確にし、限られた経営資源を本当に重要なことに使うための経営判断です。


まとめ

中小企業が成長するためには、売上を伸ばすことだけでなく、「やめる仕事」を決めることも重要です。


利益率が低い仕事、手間がかかりすぎる仕事、社長が抱え込んでいる仕事、昔から続けているだけの仕事を見直すことで、会社の時間と人材をより有効に使えるようになります。

売上を増やす前に、まずは現在の仕事を整理してみましょう。


どの仕事が会社に利益をもたらしているのか。どの仕事が社員の負担になっているのか。どの仕事に社長の時間を使うべきなのか。そして、今後どの仕事に集中すべきなのか。


これらを整理することで、会社の成長に向けた道筋が見えやすくなります。

中小企業にとって、選択と集中は大企業以上に重要です。限られた人材・時間・資金を有効に使うためにも、「増やす仕事」だけでなく、「やめる仕事」についても定期的に見直していきましょう。


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【この記事の執筆者】

安田 亮(公認会計士・税理士)

安田亮公認会計士・税理士事務所 代表

京都大学経済学部在学中に公認会計士試験に合格。有限責任 あずさ監査法人、株式会社神戸製鋼所での実務経験を経て、2018年に神戸市で独立。

現在は、中小企業から上場企業に対する税務顧問、決算支援、税効果会計、連結決算、新リース会計基準への対応、組織再編、補助金・助成金に関する支援などを行なっています。また、金融機関や大手企業が運営する税務・会計・経営分野のWebメディアにおいて、記事の執筆・監修にも携わっています。

事務所ブログでは、税制改正や会計基準、経営実務に関する情報を、専門用語をできるだけかみ砕き、経営者や経理担当者の方に役立つ形で解説しています。

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