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KAMに画像を使える?監査報告書の見やすさとEDINET開示上の注意点を公認会計士が解説

  • 執筆者の写真: 安田 亮
    安田 亮
  • 6 時間前
  • 読了時間: 10分

こんにちは!代表の安田です。


上場会社の有価証券報告書を読むと、監査報告書の中に「監査上の主要な検討事項」という項目が記載されています。


この「監査上の主要な検討事項」は、英語ではKey Audit Mattersと呼ばれ、一般に「KAM」と略されます。KAMは、監査人が当年度の監査で特に重要と判断した事項について、なぜ重要と考えたのか、監査上どのように対応したのかを説明するものです。


近年、KAMは投資家や金融機関、経理担当者にとって、会社の重要な会計上の見積りや監査上の論点を理解するための情報として注目されています。


そして、EDINETのシステム更改により、KAMの記載に画像を使用できるようになりました。これにより、文章だけでは伝わりにくいリスクの位置づけや、監査上の検討プロセスを、図表やイメージで補足できる可能性があります。


ただし、KAMに画像を使えるといっても、自由に何でも掲載できるわけではありません。画像はあくまで監査報告書本文を補足するためのものであり、使用目的やデータとしての取扱いには注意が必要です。


本日は、KAMの基本的な意味、KAMに画像を使うことのメリット、EDINET開示上の注意点、実務で意識すべきポイントについて、公認会計士の視点からわかりやすく解説します。


KAMとは何か

KAMとは、監査上の主要な検討事項のことです。


監査人は、財務諸表監査を行なう中で、会社の事業内容、会計処理、内部統制、重要な見積り、開示内容などを検討します。その中でも、特に監査上重要であった事項について、監査報告書に記載するものがKAMです。


たとえば、次のような項目がKAMとして記載されることがあります。

  • のれんや固定資産の減損

  • 繰延税金資産の回収可能性

  • 収益認識

  • 棚卸資産の評価

  • 貸倒引当金の見積り

  • 工事契約や受注制作に関する売上計上

  • 企業結合に伴う会計処理

  • 継続企業の前提に関する検討


これらの項目は、経営者の判断や見積りが大きく関係することが多く、監査人にとっても慎重な検討が必要になります。


KAMは、監査人がどのような点を重点的に監査したのかを、財務諸表の利用者に伝える役割を持っています。監査報告書の情報価値を高める制度といえるでしょう。


なぜKAMに画像を使うのか

従来、監査報告書は文章中心の書類でした。KAMについても、監査上の主要な検討事項の内容や監査上の対応は、基本的に文章で説明されます。


しかし、会計上の見積りや監査上のリスクは、文章だけでは理解しづらいことがあります。

たとえば、複数の事業セグメントごとに減損リスクが異なる場合、文章だけで説明するよりも、リスクの高低を図表で示した方が直感的に理解しやすいことがあります。また、重要な仮定や見積り要素の関係を図で整理することで、利用者がKAMの内容を把握しやすくなる可能性もあります。


画像の活用例としては、次のようなものが考えられます。

  • リスクマップ

  • 会計上の見積りの構造図

  • 監査上の検討プロセスの概要図

  • セグメント別のリスク整理

  • 収益認識に関する取引フロー図

  • 減損判定における判断ポイントの図解

  • 重要な仮定の関係を示す概念図


KAMに画像を使うことで、文章だけでは伝わりにくい情報を補足し、監査報告書の読みやすさを高めることが期待されます。


KAMに画像を入れられる箇所

KAMへの画像挿入は、監査報告書のKAMに関する複数の箇所で可能とされています。


具体的には、KAMの冒頭部分、監査上の主要な検討事項の内容及び決定理由、監査上の対応といった区分に画像を挿入することができます。


たとえば、KAMの冒頭で全体像を示す図を入れたり、特定のKAMの説明箇所でリスクマップを掲載したり、監査上の対応を説明する箇所で手続の流れを図示したりすることが考えられます。


ただし、画像を入れられるからといって、文章による説明を省略してよいわけではありません。画像はあくまで本文を補足するものです。


監査報告書として必要な説明は、文章で適切に記載する必要があります。画像は、その理解を助けるために使うという位置づけで考えるべきです。


画像は「補足」のために使う

KAMに画像を使う場合、最も重要なポイントは、画像の目的です。


画像は、監査報告書本文に記載された内容を補足するために使うことが想定されています。つまり、本文の代わりに画像を使うのではなく、本文の理解を助けるために使うものです。

たとえば、減損リスクの説明において、複数の資産グループのリスク水準を視覚的に示す図を掲載することは、本文の理解を助ける可能性があります。


一方で、監査法人のロゴ、監査人のサイン、装飾的な画像などは、KAM本文を補足する目的とはいえません。そのため、このような画像の使用は認められていません。


KAMに画像を使う場合には、「この画像は本文のどの説明を補足しているのか」「財務諸表利用者の理解に役立つのか」を確認することが大切です。

見た目をよくするためだけの画像や、情報としての意味が乏しい画像は避けるべきでしょう。


画像内の文字や数値はデータとして扱われない

KAMに画像を使う際に、実務上特に注意したいのが、画像内の文字や数値の取扱いです。画像ファイルに含まれる文字、数値、表などは、通常のテキストデータとして抽出できません。


たとえば、リスクマップの中に数値を記載した場合、その数値は見た目としては読めます。しかし、EDINET上のデータとしては、画像の一部にすぎません。XBRLデータとして検索・抽出・分析できるテキスト情報とは異なります。


これは、投資家、アナリスト、データベンダー、金融機関などが開示情報を機械的に利用する際に重要なポイントです。


有価証券報告書では、記述情報の充実が進む一方で、データとしての利用可能性も重要になっています。画像だけで重要な情報を伝えてしまうと、利用者が情報を検索・比較・分析しにくくなる可能性があります。


そのため、重要な数値や判断内容は、画像の中だけでなく、本文のテキストにも記載することが望ましいといえます。


画像を使うメリット

KAMに画像を使うメリットは、何といってもわかりやすさです。

監査報告書は専門的な内容を含むため、一般の投資家や経理に詳しくない利用者にとっては読みにくいことがあります。特にKAMでは、監査上のリスク、経営者の見積り、会計上の判断、監査手続などが説明されるため、文章だけでは理解が難しい場合があります。

画像を活用することで、次のような効果が期待できます。

  • 複雑な情報を直感的に理解しやすくなる

  • 監査上のリスクの位置づけが伝わりやすくなる

  • 複数の要素の関係を整理しやすくなる

  • 文章量が多い監査報告書の読みやすさが向上する

  • 会社ごとのKAMの特徴を把握しやすくなる


特に、リスクマップやフローチャートは、KAMとの相性がよいと考えられます。文章で説明すると長くなる内容でも、図を併用することで利用者の理解を助けることができます。


画像を使う場合のデメリット・注意点

一方で、KAMへの画像使用には注意点もあります。


まず、画像に頼りすぎると、本文の説明が不十分になるおそれがあります。KAMは監査報告書の一部であり、監査人が重要と判断した事項や監査上の対応を明確に説明する必要があります。画像だけで説明を済ませることは適切ではありません。


次に、画像内の情報はデータとして扱いにくいという問題があります。テキストとして抽出できないため、検索性や比較可能性が低下する可能性があります。


また、画像の内容が不明確であったり、過度に簡略化されていたりすると、かえって誤解を招くことがあります。特に、リスクの高低を図示する場合には、評価基準や前提条件が不明確にならないよう注意が必要です。


さらに、画像の作成・確認にも手間がかかります。監査報告書に掲載する以上、画像の内容についても、本文と整合しているか、誤解を招かないか、不要な情報が含まれていないかを慎重に確認する必要があります。


企業側が意識すべきポイント

KAMは監査人が記載するものですが、企業側にも無関係ではありません。


KAMは、監査人が監査役等と協議した事項の中から選ばれます。そのため、企業側は、重要な会計上の見積りや監査上の論点について、監査人や監査役等と十分にコミュニケーションを取る必要があります。


KAMに画像が使用される場合、企業側としても、その画像が会社の事業実態や開示内容と整合しているかを確認することが重要です。


たとえば、リスクマップを用いる場合には、リスクの分類や表現が財務諸表注記、事業等のリスク、経営者による財政状態・経営成績の分析などの開示と矛盾していないか確認する必要があります。


また、画像によって重要な情報が過度に単純化されていないか、投資家に誤った印象を与えないかも検討すべきです。KAMは監査報告書の項目ですが、有価証券報告書全体の情報と整合していることが大切です。


投資家・金融機関が読む際のポイント

KAMに画像が使われている場合、投資家や金融機関は、画像だけを見て判断するのではなく、本文とあわせて読むことが重要です。


画像は、あくまで本文を補足するものです。リスクマップや図表が掲載されている場合でも、なぜその事項がKAMに選ばれたのか、監査人がどのような対応を行ったのかは、本文で確認する必要があります。


また、画像内の数値や文字は、データとして抽出できない場合があります。そのため、重要な数値情報については、財務諸表、注記、その他の開示書類に記載されているテキスト情報も確認することが望ましいでしょう。


KAMに画像があるから読みやすい、画像がないから情報が不足している、という単純な話ではありません。大切なのは、KAM全体として、監査上の重要論点がどの程度具体的に説明されているかです。


実務で画像を使う場合のチェックポイント

KAMに画像を使う場合には、次のような点を確認するとよいでしょう。

  • 画像は本文を補足する目的になっているか

  • 本文で必要な説明がきちんと記載されているか

  • 画像だけを見ても誤解を招かないか

  • 画像内の重要な数値や判断内容が本文にも記載されているか

  • 監査法人のロゴや監査人のサインなど、使用できない画像を含んでいないか

  • 財務諸表注記や有価証券報告書の他の記載と整合しているか

  • 画像の解像度や表示形式に問題がないか

  • データ利用者にとって検索・比較しにくい情報になっていないか


画像の活用は、監査報告書をわかりやすくする可能性があります。一方で、情報の正確性やデータとしての利用可能性を損なわないようにする配慮も必要です。


まとめ

KAMとは、監査人が当年度の監査で特に重要と判断した事項を監査報告書に記載する制度です。上場会社の監査報告書では、重要な会計上の見積りや監査上のリスクを理解するための情報として活用されています。


EDINETのシステム更改により、KAMの記載に画像を使用できるようになりました。画像を使うことで、リスクマップやフローチャートなどを通じて、文章だけでは伝わりにくい情報を補足できる可能性があります。


ただし、KAMにおける画像は、本文内容を補足するために使うものです。監査法人のロゴや監査人のサインのような画像を掲載することはできません。


また、画像内の文字、数値、表などは、通常のテキストデータとして抽出できない点にも注意が必要です。重要な情報を画像の中だけに記載してしまうと、検索性や比較可能性が低下する可能性があります。


KAMに画像を使う場合には、わかりやすさを高める一方で、本文との整合性、データ利用可能性、誤解を招かない表現を意識することが重要です。


監査報告書や有価証券報告書は、投資家や金融機関など多くの利用者が確認する重要な開示書類です。画像の活用は有効な手段になり得ますが、あくまで本文を補足するものとして、適切に利用することが求められます。


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【この記事の執筆者】

安田 亮(公認会計士・税理士)

安田亮公認会計士・税理士事務所 代表

京都大学経済学部在学中に公認会計士試験に合格。有限責任 あずさ監査法人、株式会社神戸製鋼所での実務経験を経て、2018年に神戸市で独立。

現在は、中小企業から上場企業に対する税務顧問、決算支援、税効果会計、連結決算、新リース会計基準への対応、組織再編、補助金・助成金に関する支援などを行なっています。また、金融機関や大手企業が運営する税務・会計・経営分野のWebメディアにおいて、記事の執筆・監修にも携わっています。

事務所ブログでは、税制改正や会計基準、経営実務に関する情報を、専門用語をできるだけかみ砕き、経営者や経理担当者の方に役立つ形で解説しています。

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