満期保険金を据え置いた場合の税金に注意|一時所得の計算と確定申告のポイントを税理士が解説
- 安田 亮
- 14 分前
- 読了時間: 11分
こんばんは!代表の安田です。
生命保険が満期を迎えると、満期保険金や満期返戻金が支払われることがあります。
まとまった金額が入金されるため、老後資金や住宅資金、教育資金などに充てる方も多いでしょう。
一方で、満期保険金を受け取った場合には、所得税や住民税の課税関係に注意が必要です。
特に見落としやすいのが、満期保険金の一部を保険会社に据え置いた場合です。
「実際に口座に入金された金額だけを申告すればよい」と考えていると、申告漏れになる可能性があります。
本日は、生命保険の満期保険金を受け取った場合の税金、据置金がある場合の一時所得の考え方、支払明細書で確認すべきポイントについて、税理士の視点からわかりやすく解説します。
満期保険金は税金がかかることがある
生命保険契約が満期を迎え、満期保険金を受け取った場合、その課税関係は「誰が保険料を負担したか」と「誰が保険金を受け取ったか」によって変わります。
保険料を負担した人と満期保険金の受取人が同じ場合には、所得税の対象になります。
一方、保険料を負担した人と満期保険金の受取人が異なる場合には、贈与税の対象になることがあります。
国税庁も、生命保険契約の満期や解約により保険金を受け取った場合、保険料の負担者と保険金受取人が誰であるかにより、所得税または贈与税のいずれかの課税対象になると説明しています。
たとえば、自分で保険料を支払い、自分が満期保険金を受け取った場合には、所得税の問題になります。夫が保険料を支払い、妻が満期保険金を受け取ったような場合には、贈与税の問題になる可能性があります。
この記事では、保険料の負担者と受取人が同じで、所得税の対象になるケースを中心に解説します。
一時金で受け取ると「一時所得」になる
満期保険金を一時金で受け取った場合、原則として「一時所得」として扱われます。
一時所得とは、継続的な事業や労務の対価ではなく、一時的・偶発的に得られる所得です。
国税庁は、保険料の負担者本人が満期保険金を一度に受領した場合、原則として一時所得になると説明しています。
一時所得の金額は、次のように計算します。
一時所得の金額= 満期保険金等の総額 - 払込保険料等 - 特別控除額50万円
そして、実際に課税対象となる金額は、一時所得の金額の2分の1です。
つまり、次のようなイメージです。
課税対象となる金額= 一時所得の金額 × 1/2
満期保険金は、受け取った金額の全額に税金がかかるわけではありません。
これまで払い込んだ保険料を差し引き、さらに50万円の特別控除を差し引いたうえで、その2分の1が課税対象になります。
計算例:満期保険金1,100万円、払込保険料500万円の場合
たとえば、次のようなケースを考えてみます。
満期保険金の総額が1,100万円
これまで払い込んだ保険料が500万円
他に一時所得がない
この場合、一時所得の金額は次のように計算します。
1,100万円 - 500万円 - 50万円 = 550万円
課税対象となる金額は、その2分の1です。
550万円 × 1/2 = 275万円
つまり、このケースでは275万円が他の所得と合算され、所得税・住民税の計算対象になります。
給与所得や不動産所得などがある方の場合、この275万円が総所得金額に加算されるため、税率によっては大きな税負担になることがあります。
添付資料の事例では、不動産所得がある方が満期保険金を受け取り、税率が高い状態であったため、満期保険金の申告漏れがあると追加税額も大きくなる可能性があるケースとして紹介されていました。
「入金額」だけを見て判断してはいけない
満期保険金の申告で特に注意したいのが、保険会社から実際に振り込まれた金額だけを見て判断しないことです。
たとえば、満期保険金の総額は1,100万円であるものの、そのうち600万円を保険会社に据え置き、実際に銀行口座へ入金された金額は500万円だったとします。
この場合、通帳だけを見ると「500万円の入金があった」と見えます。
しかし、税務上の収入金額は、実際に口座へ振り込まれた500万円だけとは限りません。
保険会社に据え置いた600万円についても、満期により支払を受けるべき権利が確定しているのであれば、満期保険金の総額に含めて一時所得を計算する必要があります。
このように、通帳の入金額だけでは、満期保険金の全体像を把握できないことがあります。
据え置いた満期保険金も一時所得に含まれることがある
満期保険金をすぐに全額受け取らず、一部を保険会社に据え置くことがあります。
まだ引き出していないから収入ではない
据置金は後日受け取るものだから、その時に申告すればよい
このように考えたくなりますが、税務上は注意が必要です。
所得税基本通達では、生命保険契約等に基づく一時金について、支払を受けるべき事実が生じた日に収入すべき時期を認識する考え方が示されています。
つまり、実際に現金として引き出した日ではなく、満期により支払を受けるべき権利が発生した時点で、一時所得として認識すべき場合があります。
したがって、保険会社に据え置いた部分がある場合でも、その据置部分を含めた満期保険金の総額を確認する必要があります。
これはかなり実務的な落とし穴です。
確定申告の資料として通帳コピーだけを預かった場合、入金額だけを見て一時所得を計算してしまうと、据置金額を見落とす可能性があります。
支払明細書は必ず確認する
満期保険金を受け取った場合には、保険会社から発行される支払明細書や支払調書、満期保険金支払通知書などを必ず確認しましょう。
支払明細書には、通常、次のような情報が記載されています。
満期保険金の総額
今回払い出された金額
据置金額
既払込保険料
契約者、被保険者、受取人
支払日または満期日
源泉徴収の有無
支払明細書を見ることで、通帳の入金額だけではわからない情報を確認できます。
特に、据置金額や既払込保険料は、一時所得の計算に大きく関係します。
もし支払明細書を紛失している場合には、保険会社に再発行を依頼することをおすすめします。
確定申告の時期になってから慌てるより、満期保険金を受け取った時点で資料を保管しておく方が安全です。
満期保険金は確定申告が必要?
満期保険金を受け取った場合、必ず確定申告が必要になるわけではありません。
一時所得の計算をした結果、課税対象となる金額が生じない場合には、所得税の申告が不要となることもあります。
また、給与所得者の場合、給与所得および退職所得以外の所得金額が20万円以下であれば、所得税の確定申告が不要となる場合があります。
国税庁は、1か所から給与等の支払を受け、給与収入が2,000万円以下の給与所得者について、満期保険金の受領などの一時所得のみである場合には、一時所得の金額を2分の1にした課税対象額が20万円を超えるかどうかで確定申告の要否を判断すると説明しています。
ただし、この20万円以下の申告不要制度は、所得税の取扱いです。
住民税については別途申告が必要になる場合があります。
また、不動産所得や事業所得があり、もともと確定申告をする方については、一時所得も含めて申告する必要があります。
「20万円以下だから何もしなくてよい」と単純に判断しないようにしましょう。
不動産所得がある方は特に注意
不動産所得がある方は、毎年確定申告をしていることが多いため、満期保険金がある年は、その一時所得も確定申告書に含める必要があります。
不動産所得の申告書は、家賃収入、必要経費、減価償却費、借入金利息などに意識が向きがちです。
そのため、通帳に一時的な入金があっても、
保険金だから税金は関係ないのでは
昔から払っていた保険が戻ってきただけでは
入金額だけ確認すればよいのでは
と考えてしまうことがあります。
しかし、満期保険金は一時所得として課税される可能性があります。
特に、所得が高い方は、一時所得の申告漏れにより追加の税負担が大きくなることがあります。
申告漏れになるとどうなるか
満期保険金の一時所得を申告しなかった場合、税務署から後日指摘を受ける可能性があります。
保険会社から税務署へ支払調書等が提出されている場合、税務署側でも満期保険金の支払情報を把握していることがあります。
もし申告漏れがあった場合、本来納めるべき所得税だけでなく、過少申告加算税や延滞税が発生する可能性があります。
このような場合、納税資金をあらかじめ準備できる点も重要です。
振替納税を利用している方であれば、申告後すぐに現金納付するのではなく、振替日に口座から引き落とされます。
そのため、満期保険金による税負担が見込まれる場合には、振替日までに納税資金を確保しておくことが大切です。
一時所得は他の一時所得と合算する
一時所得の特別控除50万円は、満期保険金ごとに使えるわけではありません。
その年の一時所得全体で最大50万円です。
たとえば、同じ年に次のような収入がある場合には、合算して一時所得を計算します。
生命保険の満期保険金
損害保険の満期返戻金
懸賞や福引の賞金品
競馬や競輪などの払戻金のうち一定のもの
法人から贈与された金品
これらの一時所得を合算し、収入を得るために支出した金額を差し引き、さらに特別控除50万円を差し引いたうえで、2分の1を課税対象にします。
国税庁の質疑応答事例でも、一時所得内の内部通算は可能であるとされています。
そのため、満期保険金だけで判断せず、その年に他の一時所得がないかも確認しましょう。
満期保険金を受け取ったときのチェックポイント
満期保険金を受け取った場合には、次の点を確認しておくと安心です。
保険料を負担した人は誰か
満期保険金の受取人は誰か
一時金で受け取ったのか、年金形式で受け取るのか
満期保険金の総額はいくらか
実際に口座へ入金された金額はいくらか
保険会社に据え置いた金額はないか
既払込保険料はいくらか
支払明細書や支払通知書を保管しているか
他に一時所得がないか
確定申告が必要か
住民税申告が必要か
特に重要なのは、支払明細書の確認です。
通帳の入金額だけでは、据置金額や既払込保険料がわかりません。
満期保険金の申告では、保険会社の資料を必ず確認しましょう。
まとめ:満期保険金は「実際の入金額」だけで判断しない
生命保険の満期保険金を受け取った場合、保険料の負担者と受取人が同じであれば、原則として所得税の対象になります。
一時金で受け取った場合には、一時所得として、満期保険金等の総額から、既払込保険料等を差し引き、さらに特別控除50万円を差し引き、その2分の1を課税対象として計算します。
ここで注意したいのが、満期保険金の一部を保険会社に据え置いた場合です。
実際に口座へ入金された金額だけを見て申告すると、据置金額を含めた満期保険金の総額を見落とす可能性があります。
満期保険金の一時所得は、実際に現金化した金額ではなく、支払を受けるべき満期保険金の総額を基に判断する必要があります。
そのため、満期保険金を受け取ったら、通帳だけでなく、保険会社の支払明細書や満期保険金支払通知書を必ず確認しましょう。
申告漏れがあると、後日、所得税、住民税、過少申告加算税、延滞税が発生する可能性があります。
特に、不動産所得や事業所得があり毎年確定申告をしている方、高額の満期保険金を受け取った方、保険金の一部を据え置いた方は注意が必要です。
満期保険金は、長年積み立ててきたお金が戻ってきたように感じるため、税金の対象になるという意識が薄くなりがちです。
しかし、税務上は一時所得として申告が必要になることがあります。
確定申告の時期に慌てないよう、保険会社から届く資料を保管し、早めに税理士へ相談することをおすすめします。
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【この記事の執筆者】
安田 亮(公認会計士・税理士)
安田亮公認会計士・税理士事務所 代表
京都大学経済学部在学中に公認会計士試験に合格。有限責任 あずさ監査法人、株式会社神戸製鋼所での実務経験を経て、2018年に神戸市で独立。
現在は、中小企業から上場企業に対する税務顧問、決算支援、税効果会計、連結決算、新リース会計基準への対応、組織再編、補助金・助成金に関する支援などを行なっています。また、金融機関や大手企業が運営する税務・会計・経営分野のWebメディアにおいて、記事の執筆・監修にも携わっています。
事務所ブログでは、税制改正や会計基準、経営実務に関する情報を、専門用語をできるだけかみ砕き、経営者や経理担当者の方に役立つ形で解説しています。


