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税効果会計とは?繰延税金資産・繰延税金負債・繰越欠損金を税理士がわかりやすく解説

  • 執筆者の写真: 安田 亮
    安田 亮
  • 8月3日
  • 読了時間: 21分

こんばんは!代表の安田です。


税効果会計という言葉を聞くと、「難しそう」「会計士向けの話ではないか」「中小企業には関係ないのでは」と感じる方も多いと思います。


確かに税効果会計は会計基準の中でも理解しにくい分野です。しかし、基本的な考え方はそれほど複雑ではありません。


税効果会計をひとことで言えば、会計と法人税の一時的なズレを調整するための会計処理です。会社の決算書で表示される利益と、法人税の申告書で計算する所得は、必ずしも一致しません。


会計では費用として処理しているのに、法人税ではまだ損金として認められないものがあります。反対に、会計ではまだ収益として処理していないのに、法人税では益金として認めるものもあります。


このようなズレが一時的なもので、将来解消される場合に、税金費用を会計上適切に表示するために使うのが税効果会計です。


本日は、税効果会計の目的、会計と法人税の違い、一時差異と永久差異、繰延税金資産・繰延税金負債の計算方法と仕訳、繰越欠損金に係る税効果について、公認会計士・税理士の視点からわかりやすく解説します。


税効果会計とは

税効果会計とは、会計上の利益と法人税法上の所得のズレのうち、将来解消される一時的なズレについて、税金費用を期間配分する会計処理です。


少し難しく聞こえるかもしれません。もっと簡単に言うと、会計上の利益に見合った税金費用を決算書に表示するための仕組みです。


会計の目的は、会社の経営成績や財政状態を投資家、金融機関、取引先などに適切に示すことです。そのため、会計では、発生主義や見積りを使って、当期に発生した費用や損失をできるだけ適切に反映します。


一方、法人税の目的は、課税の公平性を確保することです。

法人税では、会社ごとの見積りにより税額が大きく変わりすぎないよう、損金として認める時期や範囲を慎重に定めています。


この目的の違いにより、会計上の利益と法人税上の所得にズレが生じます。

税効果会計は、そのズレのうち、将来解消されるものを調整する会計処理です。


会計と法人税では目的が違う

税効果会計を理解するためには、まず会計と法人税の目的の違いを押さえる必要があります。


会計は、会社がどれだけ利益を稼いだか、どのような資産や負債を持っているかを、投資家や債権者などに示すための仕組みです。


たとえば、資産の価値が下がった場合、会計では減損損失を計上して、資産の金額を引き下げることがあります。これは、会社が持っている資産の稼ぐ力を財務諸表に反映しようとする考え方です。


一方、法人税は、会社の所得に対して税金を課すためのルールです。

税額は公平でなければならないため、法人税では、会社ごとの見積りに左右されやすい費用や損失をすぐには認めないことがあります。


たとえば、会計上は賞与引当金や減損損失を計上していても、法人税ではその時点で損金として認めないことがあります。


このように、会計は企業の実態を表すことを重視し、法人税は課税の公平性や確実性を重視します。この違いが、税効果会計の出発点です。


会計上の利益と法人税上の所得

会計では、収益から費用を差し引いて利益を計算します。

一方、法人税では、益金から損金を差し引いて所得を計算します。


収益と益金、費用と損金は似ていますが、完全に同じではありません。

会計上は費用でも、法人税では損金にならないものがあります。

会計上は収益でも、法人税では益金にならないものもあります。


法人税の所得計算では、会計上の利益を出発点にして、法人税独自の加算・減算を行ないます。たとえば、会計上費用にしたものの法人税では損金にしない場合、利益に加算します。

反対に、過去に損金として認められなかったものが当期に損金として認められる場合、利益から減算します。


このような加算・減算のうち、一時的なズレが税効果会計の対象になります。


一時差異とは

一時差異とは、会計と法人税で収益や費用などを認めるタイミングが異なることにより発生するズレです。


一時差異は、将来どこかのタイミングで解消されます。たとえば、会計で未払費用を計上したものの、法人税では確定債務ではないため損金に認められないケースがあります。

この場合、当期は会計上費用になりますが、法人税では損金になりません。


しかし、将来その費用が確定して支払われれば、法人税でも損金として認められます。

つまり、当期はズレていますが、将来解消されるズレです。

これが一時差異です。税効果会計は、この一時差異を対象にします。


永久差異とは

永久差異とは、会計と法人税でそもそも収益や費用として認めるかどうかの考え方が異なるために発生するズレです。永久差異は、将来解消されません。


たとえば、法人税で損金不算入となる役員給与や交際費の一部は、会計上は費用であっても、法人税上は永久に損金として認められません。


また、受取配当金についても、会計上は収益ですが、法人税では二重課税を避けるために一部または全部が益金不算入になることがあります。


このようなズレは、将来解消するタイミングがありません。したがって、税効果会計の対象にはなりません。


税効果会計で重要なのは、一時差異と永久差異を区別することです。

将来解消するズレは一時差異、解消しないズレは永久差異と考えると理解しやすくなります。


将来減算一時差異とは

将来減算一時差異とは、将来の課税所得を減らす効果を持つ一時差異です。


簡単にいうと、将来、法人税の所得計算で減算されるズレです。

たとえば、会計上は当期に費用処理したものの、法人税ではまだ損金として認められない項目があります。


この場合、当期の法人税計算では、その費用を否認して利益に加算します。

しかし、将来その費用が法人税上損金として認められるときには、所得から減算されます。

つまり、将来の税金を減らす効果があります。


このような将来減算一時差異がある場合、原則として繰延税金資産の発生原因になります。

未払費用、未払事業税、賞与引当金、減損損失、貸倒引当金などは、将来減算一時差異になり得る代表例です。


将来加算一時差異とは

将来加算一時差異とは、将来の課税所得を増やす効果を持つ一時差異です。


簡単にいうと、将来、法人税の所得計算で加算されるズレです。

たとえば、会計上はまだ収益としていないものを、法人税では先に益金として認める場合があります。


また、会計と法人税で資産や負債の評価が異なることにより、将来課税所得を増やす効果が生じることもあります。

将来加算一時差異がある場合、原則として繰延税金負債の発生原因になります。

繰延税金負債は、将来支払う税金が増える見込みを表す負債です。


繰延税金資産とは

繰延税金資産とは、将来の税金を減らす効果を貸借対照表に資産として表示したものです。

よく「税金の前払い」と説明されます。


たとえば、会計上は当期に費用を計上しているのに、法人税ではまだ損金として認められない場合、当期の税金は会計上の利益に見合う税金よりも多くなります。


しかし、その費用は将来損金として認められる見込みです。将来損金になれば、その分だけ将来の税金が減ります。この将来税金が減る効果を、繰延税金資産として計上します。


ただし、繰延税金資産は、将来税金を減らす効果があると見込まれる場合に限って計上します。将来十分な課税所得が見込めない場合には、繰延税金資産を計上できない、または一部しか計上できないことがあります。これを回収可能性の検討といいます。


繰延税金負債とは

繰延税金負債とは、将来の税金を増やす効果を貸借対照表に負債として表示したものです。

たとえば、当期は法人税上の所得が会計上の利益より少なくなっているものの、将来そのズレが解消するときに課税所得が増える場合があります。


この場合、現在は税金の支払いが少なくなっていますが、将来税金が増える見込みです。

その将来税金が増える効果を、繰延税金負債として計上します。

繰延税金資産が「将来の税金を減らす効果」であるのに対し、繰延税金負債は「将来の税金を増やす効果」です。


繰延税金資産の計算方法

繰延税金資産は、基本的には次の式で計算します。

将来減算一時差異 × 解消見込時期の法定実効税率

たとえば、将来減算一時差異が200あり、解消見込時期の税率が30%であれば、繰延税金資産は60です。


重要なのは、現在の税率ではなく、差異が解消すると見込まれる時期の税率を使うことです。税制改正により将来の税率が変わる場合には、その変更を反映して繰延税金資産を再計算します。


繰延税金資産は、将来の税額を減らす見込みを表すものです。

したがって、将来実際に適用されると見込まれる税率を使う必要があります。


繰延税金負債の計算方法

繰延税金負債も、基本的には次の式で計算します。

将来加算一時差異 × 解消見込時期の法定実効税率

たとえば、将来加算一時差異が300あり、解消見込時期の税率が30%であれば、繰延税金負債は90です。


繰延税金資産と同じく、解消見込時期の税率を使います。

税効果会計では、単に一時差異に税率を掛けるだけでなく、その一時差異がいつ解消するのか、その時点でどの税率が適用されるのかを確認する必要があります。


繰延税金資産の仕訳

繰延税金資産の仕訳は、発生原因によって相手勘定が異なります。


大きく分けると、損益を原因とする一時差異と、損益ではない評価差額を原因とする一時差異があります。

損益を原因とする将来減算一時差異の場合、基本的な仕訳は次のようになります。

 借方:繰延税金資産 / 貸方:法人税等調整額


たとえば、会計上の費用を法人税でまだ損金に認めないことにより、繰延税金資産60が発生した場合、繰延税金資産を借方に計上し、法人税等調整額を貸方に計上します。

法人税等調整額は、会計上の税金費用を調整するための勘定です。

この仕訳により、税引前利益と税金費用の対応関係を整えます。


評価差額を原因とする場合の仕訳

一時差異の発生原因が損益ではない場合には、法人税等調整額を使うと、かえって利益と税金費用の対応関係が崩れてしまいます。


たとえば、その他有価証券評価差額金のように、損益計算書を通らず純資産に直接計上される評価差額があります。


このような評価差額を原因として繰延税金資産が発生する場合、仕訳の相手勘定は法人税等調整額ではなく、評価差額になります。


基本的な仕訳は次のようになります。

借方:繰延税金資産 / 貸方:評価差額

反対に、評価差額を原因として繰延税金負債が発生する場合には、評価差額を借方に、繰延税金負債を貸方に計上します。ポイントは、税効果が発生した原因に応じて、損益計算書で処理するのか、純資産で処理するのかを分けることです。


法人税等調整額とは

法人税等調整額とは、会計上の税金費用を調整するための勘定科目です。


会計上は、税引前当期純利益に税率を掛けた金額が税金費用として表示されるのが理想です。しかし、法人税等の実際の金額は、法人税申告書で計算する所得に基づいて決まります。


会計上の利益と法人税上の所得に一時的なズレがあると、税引前利益に見合う税金費用と、実際の法人税等に差が生じます。この差を調整するのが法人税等調整額です。

法人税等調整額を使うことで、損益計算書上の利益と税金費用の対応関係を整えることができます。


減算差異を見つける方法

繰延税金資産を計算するには、まず将来減算一時差異を見つける必要があります。


実務では、会計上の見積費用や見積損失を探すと見つけやすくなります。

法人税は、確定していない費用や損失を損金として認めることに慎重です。

そのため、会計では費用・損失として処理しているものの、法人税ではまだ損金にならない項目が、将来減算一時差異になりやすいのです。

代表的な項目は次のとおりです。

  • 未払費用

  • 未払事業税

  • 賞与引当金

  • 退職給付引当金

  • 貸倒引当金

  • 減損損失

  • 投資有価証券評価損

  • 棚卸資産評価損


これらの項目について、会計処理と法人税処理の違いを確認し、一時差異を把握します。


未払費用と税効果会計

未払費用は、税効果会計でよく出てくる将来減算一時差異の一つです。


たとえば、電気代や通信費のように、継続的に発生している費用について、会計上は当期に発生した分を見積もって未払費用として計上することがあります。


しかし、法人税では、その費用が確定債務になっていない場合、損金として認められません。この場合、会計では費用になっているのに、法人税では損金になっていないため、将来減算一時差異が発生します。


将来その費用が確定し、法人税上損金として認められると、ズレは解消されます。

実務では、未払費用の勘定明細を確認し、その中に確定債務として法人税上損金になるものが含まれていないかを確認する必要があります。


明細の合計額を機械的に拾うだけでは、税効果の計算を誤ることがあります。


未払事業税と税効果会計

未払事業税も、将来減算一時差異になりやすい項目です。


法人税や住民税は損金になりませんが、事業税や特別法人事業税は法人税上損金になります。会計では、期末決算で税額を計算し、未払事業税を計上します。


一方、法人税では、事業税は申告納付のタイミングで損金として認められます。

そのため、会計と法人税で費用・損金を認めるタイミングにズレが発生します。

このズレが将来減算一時差異になります。


注意したいのは、未払事業税は別表五(一)に載っていない点です。

多くの一時差異は別表五(一)で確認できますが、未払事業税は別表五(一)だけを見ていると見落とす可能性があります。決算時の税額試算資料や納税一覧を確認して把握しましょう。


減損損失と税効果会計

会計では、資産の収益性が低下した場合、減損損失を計上して帳簿価額を引き下げることがあります。


一方、法人税では、減損損失は見積損失であるため、原則としてその時点では損金として認められません。実際に資産を売却したり、除却したりして損失が明らかになったときに、法人税上の損金になります。


そのため、会計で減損損失を計上した時点では、将来減算一時差異が発生します。

土地の場合、減価償却を行なわないため、売却するまで一時差異は解消しません。


一方、建物や機械装置などの償却資産の場合、法人税では減損前の簿価をもとに減価償却を続けるため、会計上の簿価との差額が毎期少しずつ解消していきます。


減損損失の税効果を計算する際は、土地か償却資産かで解消パターンが異なる点に注意が必要です。


賞与引当金と税効果会計

会計では、将来支給する賞与について、当期に対応する部分を賞与引当金として費用計上することがあります。


しかし、法人税では、賞与引当金は原則として損金になりません。

実際に賞与を支給し、法人税上の要件を満たした時点で損金になります。

そのため、会計上は当期に費用、法人税上は将来損金というタイミングのズレが生じます。

このズレが将来減算一時差異になります。


実務では、賞与引当金の増減明細を確認し、期末残高のうち法人税上損金として認められていない金額を把握します。


貸倒引当金と税効果会計

貸倒引当金も、会計と法人税で取扱いが異なりやすい項目です。


会計では、債権を一般債権、貸倒懸念債権、破産更生債権等に区分し、過去の貸倒実績や債務者の財政状態などを踏まえて貸倒見積高を計算します。


一方、法人税では、一括評価金銭債権や個別評価金銭債権など、法人税独自の区分と計算方法があります。


会計上の貸倒引当金と法人税上の貸倒引当金が一致しない場合、差額が一時差異になります。貸倒引当金の税効果を計算するには、会計上の貸倒引当金計算資料と法人税上の貸倒引当金計算資料を比較する必要があります。


繰越欠損金とは

繰越欠損金とは、過去の法人税上の赤字のうち、まだ使われずに繰り越されている金額をいいます。


法人税では、一定の要件を満たす過去の欠損金を、将来の所得と相殺することができます。

たとえば、過去に500の欠損金があり、当期に所得が300出た場合、その欠損金を使って当期の所得を減らすことができます。


所得が減れば、法人税等も減ります。

そのため、繰越欠損金には将来の税金を減らす効果があります。

この点で、繰越欠損金は将来減算一時差異と似た効果を持ちます。

そのため、税効果会計では、繰越欠損金についても繰延税金資産の対象になります。


繰越欠損金は当期の費用ではない

繰越欠損金は、通常の一時差異とは少し違います。


未払費用や賞与引当金のような一時差異は、会計と法人税で費用を認めるタイミングがズレているものです。


一方、繰越欠損金は過去の法人税上の赤字であり、当期の会計上の費用ではありません。

それでも、将来の所得と相殺することで税額を減らす効果があります。

税効果会計では、この将来税額を減らす効果に着目し、繰延税金資産として認識することがあります。


ただし、繰越欠損金については、使用限度額や繰越期限があるため、他の一時差異よりも慎重な検討が必要です。


繰越欠損金に係る繰延税金資産の計算方法

繰越欠損金に係る繰延税金資産は、基本的には次の式で計算します。

使う見込みの繰越欠損金 × 法定実効税率

たとえば、繰越欠損金が500あっても、そのうち将来使える見込みが200しかない場合、税率30%であれば、繰延税金資産は60です。


500全額に税率を掛けるわけではありません。

重要なのは、将来実際に使える見込みの金額に税率を掛けることです。

将来十分な所得が見込めない場合や、繰越期限までに使い切れない場合には、その部分について繰延税金資産を計上できません。


繰越欠損金の使用限度額

繰越欠損金には、所得から控除できる限度額があります。


大法人などでは、所得の一定割合までしか繰越欠損金を使用できません。基本パターンとして「所得の50%まで」という考え方が紹介されています。


たとえば、所得が100、繰越欠損金が200ある場合、当期に使える繰越欠損金が50に制限されることがあります。


この場合、残りの150は将来へ繰り越します。

繰越欠損金に係る繰延税金資産を計算する際は、単に欠損金残高を見るだけでは不十分です。将来の所得見込み、使用限度額、繰越期限を考慮して、いつ、いくら使えるのかを年度別に検討する必要があります。


なお、中小法人等については控除限度額の取扱いが異なるため、実務では自社に適用されるルールを確認することが必要です。


繰越欠損金の繰越期限

繰越欠損金には繰越期限があります。

現在は、一定の青色申告法人について、欠損金を原則として10年間繰り越すことができます。

ただし、発生年度や税制改正により取扱いが異なる場合があるため、実務では欠損金がいつ発生したものかを年度別に管理する必要があります。

繰越期限があるということは、期限内に使えない欠損金については、税額を減らす効果がありません。


したがって、繰延税金資産を計上することもできません。

繰越欠損金の税効果を検討する際は、古い欠損金から順番に使用する前提で、期限切れにならないかを確認することが重要です。


繰越欠損金と回収可能性

繰越欠損金に係る繰延税金資産を計上するには、回収可能性の検討が必要です。

回収可能性とは、簡単にいうと、その繰延税金資産が将来税金を減らす効果を本当に持っているかどうかです。


繰越欠損金の場合、将来の所得と相殺できる見込みがあるかがポイントになります。

将来所得が出なければ、繰越欠損金を使うことはできません。

また、所得が出ても、使用限度額や繰越期限により、全額を使えないことがあります。

したがって、繰越欠損金に係る繰延税金資産を計上するには、将来の課税所得見込み、欠損金の発生年度、使用限度額、繰越期限を踏まえて検討する必要があります。


繰越欠損金の仕訳

繰越欠損金に係る税効果の仕訳は、通常の将来減算一時差異と基本的に同じです。

繰越欠損金によって将来の税金を減らす効果がある場合、繰延税金資産を計上します。

基本的な仕訳は次のとおりです。

方:繰延税金資産 / 貸方:法人税等調整額

繰越欠損金は、その他有価証券評価差額金のような評価差額を原因とするものではありません。そのため、相手勘定は法人税等調整額になります。


ただし、回収可能性がない部分については、繰延税金資産を計上できません。


税効果会計を理解するコツ

税効果会計を理解するコツは、会計上の利益を基準に考えることです。


会計は、利益に税率を掛けた税金費用を損益計算書に表示したいと考えます。

しかし、実際の法人税等は、法人税法上の所得を基準に計算されます。

利益と所得が一時的にズレると、利益に見合う税金費用と実際の法人税等が一致しません。

そこで、法人税等調整額を使って税金費用を調整します。


この発想を持つと、繰延税金資産や繰延税金負債の意味が理解しやすくなります。

  • 繰延税金資産は、将来の税金を減らす効果

  • 繰延税金負債は、将来の税金を増やす効果


法人税等調整額は、利益と税金費用を対応させるための調整額。

この3つを押さえると、税効果会計の全体像が見えやすくなります。


中小企業でも税効果会計は関係するか

税効果会計は、主に上場会社や会社法上の大会社、会計監査を受ける会社で重要になります。


一方、多くの中小企業では、税務申告を重視した決算を行なっており、税効果会計を厳密に適用していないケースもあります。


しかし、金融機関への説明、M&A、事業承継、株価評価、外部監査、IPO準備などの場面では、税効果会計の理解が必要になることがあります。また、税効果会計を知らないと、決算書に表示されている繰延税金資産や法人税等調整額の意味を読み解くことができません。


中小企業の経営者にとっても、基本的な考え方を知っておくメリットは大きいといえます。


税効果会計でよくある誤解

税効果会計について、実務上よくある誤解を整理します。


  • 繰延税金資産は必ず将来戻ってくるお金

繰延税金資産は、現金が戻ってくる権利ではありません。

将来税金を減らす効果を表す会計上の資産です。

将来課税所得が出なければ、その効果は実現しません。


  • 一時差異があれば必ず繰延税金資産を計上できる

将来減算一時差異があっても、回収可能性がなければ繰延税金資産は計上できません。

また、「永久差異にも税効果を認識する」という誤解もあります。

永久差異は将来解消しないため、税効果会計の対象外です。


  • 繰越欠損金の残高全額に税率を掛ければよい

繰越欠損金は、将来使える見込みの金額に税率を掛けて繰延税金資産を計算します。

使用限度額や繰越期限も考慮する必要があります。


実務上のチェックポイント

税効果会計を検討する際は、次の点を確認しましょう。

  • 会計上の利益と法人税上の所得にズレがあるか

  • そのズレは一時差異か永久差異か

  • 将来減算一時差異か、将来加算一時差異か

  • 一時差異の解消見込時期はいつか

  • 解消見込時期の法定実効税率はいくらか

  • 一時差異の発生原因は損益か評価差額か

  • 仕訳の相手勘定は法人税等調整額か評価差額か

  • 未払費用、未払事業税、引当金、減損損失などを漏れなく把握しているか

  • 繰越欠損金は年度別に管理しているか

  • 繰越欠損金の使用限度額を考慮しているか

  • 繰越期限までに使える見込みがあるか

  • 繰延税金資産の回収可能性を検討しているか


このチェックを行なうことで、税効果会計の基本的なミスを防ぎやすくなります。


まとめ

税効果会計とは、会計と法人税の一時的なズレを調整し、会計上の利益に見合った税金費用を表示するための会計処理です。


会計は会社の経営成績や財政状態を適切に示すことを重視し、法人税は課税の公平性を重視します。この目的の違いにより、会計上の利益と法人税上の所得にズレが生じます。


そのズレのうち、将来解消されるものが一時差異です。

一方、将来解消されないズレは永久差異であり、税効果会計の対象にはなりません。


将来減算一時差異は、将来の税金を減らす効果があるため、原則として繰延税金資産の発生原因になります。将来加算一時差異は、将来の税金を増やす効果があるため、原則として繰延税金負債の発生原因になります。


繰延税金資産・繰延税金負債は、一時差異に解消見込時期の法定実効税率を掛けて計算します。ただし、繰延税金資産については、将来税金を減らす効果が実現する見込み、つまり回収可能性の検討が必要です。


仕訳については、一時差異の発生原因が損益であれば、相手勘定は法人税等調整額になります。一方、発生原因が損益ではなく評価差額である場合には、法人税等調整額ではなく評価差額を相手勘定にします。


また、繰越欠損金は当期の費用ではありませんが、将来の所得と相殺して税額を減らす効果があるため、税効果会計では繰延税金資産の対象になります。

ただし、繰越欠損金には使用限度額や繰越期限があるため、将来使える見込みの金額に税率を掛けて計算する必要があります。


税効果会計は難しく見えますが、基本は「会計と法人税の一時的なズレを調整する」「将来税金が減るなら繰延税金資産、増えるなら繰延税金負債」「回収可能性がなければ繰延税金資産は計上できない」という考え方です。


決算書の繰延税金資産、繰延税金負債、法人税等調整額の意味を理解したい場合や、税効果会計の適用で迷う場合は、公認会計士へ相談することをおすすめします。


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【この記事の執筆者】

安田 亮(公認会計士・税理士)

安田亮公認会計士・税理士事務所 代表

京都大学経済学部在学中に公認会計士試験に合格。有限責任 あずさ監査法人、株式会社神戸製鋼所での実務経験を経て、2018年に神戸市で独立。

現在は、中小企業から上場企業に対する税務顧問、決算支援、税効果会計、連結決算、新リース会計基準への対応、組織再編、補助金・助成金に関する支援などを行なっています。また、金融機関や大手企業が運営する税務・会計・経営分野のWebメディアにおいて、記事の執筆・監修にも携わっています。

事務所ブログでは、税制改正や会計基準、経営実務に関する情報を、専門用語をできるだけかみ砕き、経営者や経理担当者の方に役立つ形で解説しています。

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