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繰延税金資産の回収可能性とは?会社分類と検討表の作り方を税理士がわかりやすく解説

  • 執筆者の写真: 安田 亮
    安田 亮
  • 8月4日
  • 読了時間: 21分

こんばんは!代表の安田です。


税効果会計で最もつまずきやすい論点の一つが、繰延税金資産の回収可能性です。

「繰延税金資産は将来の税金を減らす効果」と説明されますが、実務ではそれだけでは足りません。

  • 将来本当に税金を減らせるのか

  • どの年度で税金を減らせるのか

  • 将来加算一時差異と相殺できるのか

  • 将来の課税所得で回収できるのか

  • 会社分類はどれに該当するのか

  • 評価性引当額はいくら必要なのか


このような検討を行なわなければ、貸借対照表に計上できる繰延税金資産の金額は決まりません。特に、赤字がある会社、業績が不安定な会社、多額の減損損失や引当金を計上している会社、繰越欠損金を有する会社では、繰延税金資産の回収可能性の判断が決算上の重要論点になります。


本日は、繰延税金資産の回収可能性とは何か、会社分類1〜5の判定の考え方、回収可能性検討表の作り方、実務上の注意点を、会計事務所を運営する税理士の視点からわかりやすく解説します。


繰延税金資産とは

繰延税金資産とは、将来の税金を減らす効果を資産として貸借対照表に計上したものです。

たとえば、会計上は当期に費用として処理したものの、法人税ではまだ損金として認められない項目があります。


この場合、当期は会計上の利益に比べて法人税上の所得が大きくなり、税金も多くなります。しかし、その費用が将来法人税上の損金として認められると、その将来年度の所得が減り、税金も減ります。


この「将来税金が減る効果」を表すのが繰延税金資産です。

ただし、ここで重要なのは、税金が減る効果は無条件に発生するものではないという点です。将来十分な課税所得がなければ、損金として認められる項目があっても、実際に税金を減らす効果は発生しません。


そのため、繰延税金資産を計上するには、回収可能性を検討する必要があります。


繰延税金資産の回収可能性とは

繰延税金資産の回収可能性とは、将来の税金を減らす効果が実際に見込まれることをいいます。


たとえば、将来減算一時差異が500あり、税率が30%であれば、単純計算では繰延税金資産は150です。しかし、その差異が解消する年度に課税所得がまったく発生しないのであれば、所得を減らす余地がありません。


所得がなければ法人税も発生しません。法人税が発生しない年度では、減算差異が解消しても税金を減らす効果はありません。この場合、繰延税金資産150をそのまま計上することはできません。


つまり、繰延税金資産は「条件付きの前払い」のようなものです。

将来、税金を減らすだけの課税所得が発生する見込みがあって初めて、資産として計上できます。


単に「一時差異×税率」では足りない

税効果会計の初歩では、繰延税金資産は次の式で説明されることがあります。

将来減算一時差異 × 法定実効税率

これは基本的な考え方としては正しいです。


しかし、実務ではこれだけで貸借対照表に計上できる金額は決まりません。

なぜなら、将来減算一時差異が解消する年度に、それを受け止められる課税所得があるかを検討しなければならないからです。


たとえば、将来減算一時差異が500、税率30%の場合、理論上の繰延税金資産は150です。

しかし、解消年度の課税所得が300しか見込めない場合、実際に税金を減らせるのは300に対応する90までです。


解消年度の課税所得が0であれば、回収可能な繰延税金資産は0です。

このように、繰延税金資産は、差異の金額だけでなく、将来の課税所得の見込みによって計上可能額が変わります。


回収可能性の判定で重要な2つの視点

繰延税金資産の回収可能性を判定するうえで、特に重要な視点は2つです。


1つ目は、スケジューリングです。

スケジューリングとは、一時差異がいつ損金または益金として認められるのかを見積もる作業です。たとえば、未払費用であれば翌期に解消することが多いでしょう。

一方、投資有価証券評価損のように、売却や処分の意思決定がなければいつ解消するか見通せないものもあります。


2つ目は、事業年度ごとの判定です。

法人税は事業年度ごとに計算されます。

そのため、減算差異が解消する年度に、加算差異や課税所得と相殺できるかを年度ごとに確認する必要があります。「将来いつか利益が出るだろう」という大まかな見込みだけでは不十分です。


スケジューリング可能差異とスケジューリング不能差異

将来減算一時差異は、大きく2つに分かれます。


スケジューリング可能な一時差異と、スケジューリング不能な一時差異です。

スケジューリング可能な一時差異とは、解消する時期や金額を合理的に見積もることができる一時差異です。


未払費用、未払事業税、賞与引当金などは、比較的スケジューリングしやすい項目です。

一方、スケジューリング不能な一時差異とは、損金算入時期が見通せない一時差異です。

たとえば、売却の予定がない投資有価証券評価損などは、いつ損金になるか見通せないことがあります。


スケジューリング不能差異については、会社分類によって繰延税金資産を計上できるかどうかの判断が大きく変わります。


回収可能性判定の基本手順

繰延税金資産の回収可能性は、概ね次の流れで検討します。


  1. 当期末に存在する将来減算一時差異と将来加算一時差異を把

  2. それぞれの一時差異について、解消見込年度ごとにスケジューリング

  3. 解消見込年度ごとの一時差異等加減算前課税所得を見積もる

  4. 将来減算一時差異を、まず将来加算一時差異と相殺

  5. 将来加算一時差異と相殺しきれない部分は、一時差異等加減算前課税所得と相殺

  6. それでも相殺できない部分は、原則として回収可能性がないものとして評価性引当額の対象とする


実務では、この一連の検討を回収可能性検討表にまとめます。


一時差異等加減算前課税所得とは

回収可能性の判定では、一時差異等加減算前課税所得という考え方が出てきます。


これは、税効果会計特有の概念です。簡単にいうと、当期末に存在する一時差異の解消による影響を除いた課税所得の見積額です。


なぜこのような所得を使うのでしょうか。

理由は、減算差異が本当に所得を減らす効果を持つかを判定するためです。


もし、減算差異が解消した後の所得をそのまま使ってしまうと、減算差異がどれだけ税金を減らしたのかが分からなくなります。また、加算差異の影響を所得に含めたままにすると、同じ加算差異を二重に使って回収可能性を判定してしまうおそれがあります。


そのため、回収可能性の判定では、一時差異等加減算前課税所得を使います。


会社分類とは

繰延税金資産の回収可能性を判断するうえで重要になるのが会社分類です。


会社分類とは、会社の過去の課税所得や欠損金の発生状況、当期の状況、将来の見込みなどをもとに、会社をいくつかのパターンに分類する考え方です。


なぜ会社分類が必要なのでしょうか。

繰延税金資産は、将来の所得を根拠に計上されます。しかし、将来の所得はあくまで見積りです。その見積りの信頼性を判断するためには、過去の実績や当期の状況を見る必要があります。


これまで安定して利益を出してきた会社であれば、将来も利益が出る可能性は高いと考えられます。一方、過去に重要な欠損金が発生している会社では、将来の利益見込みを慎重に見る必要があります。


このように、会社の状況に応じて繰延税金資産をどこまで計上できるかを判断するために、会社分類を使います。


会社分類の判定で使う情報

会社分類の判定で主に使う情報は、過去3年および当期の課税所得と欠損金の実績です。

また、将来減算一時差異との比較も重要です。

会社分類の判定では、次のような情報を集めます。

  • 過去3年および当期の課税所得

  • 過去3年および当期の重要な欠損金の発生状況

  • 当期末の将来減算一時差異

  • 当期末の将来加算一時差異

  • スケジューリング可能差異と不能差異

  • 経営環境の著しい変化の有無

  • 将来の事業計画

  • 一時差異等加減算前課税所得の見積り


これらを確認したうえで、会社分類1から順番に該当可能性を検討します。


会社分類1の考え方

会社分類1は、最も回収可能性が高い会社です。


過去3年および当期のすべての事業年度で、課税所得が常に将来減算一時差異を十分に上回っており、近い将来に経営環境の著しい変化が見込まれないような会社が想定されます。

会社分類1に該当する場合、すべての繰延税金資産について回収可能性があると判断されます。


ただし、実務上、会社分類1に該当するハードルは高いといえます。

単に所得が減算差異を少し上回っているだけでは足りません。

「十分に上回っている」ことが必要です。

将来多少業績が下振れしても、減算差異を上回る所得が見込まれるような安定した会社が想定されます。


会社分類2の考え方

会社分類2は、安定して課税所得が発生している会社です。


会社分類1ほどではないものの、過去3年および当期で安定的に所得が発生しており、近い将来に経営環境の著しい変化が見込まれず、重要な欠損金が発生していない会社が想定されます。


会社分類2では、スケジューリング可能な将来減算一時差異に係る繰延税金資産について、回収可能性があると判断されます。


会社分類1との違いは、所得が将来減算一時差異を十分に上回っていることまでは求められない点です。ただし、安定的に所得が出ていることが必要です。

一時的な利益や臨時的な要因による所得だけで会社分類2と判断するのは慎重に考えるべきです。


会社分類3の考え方

会社分類3は、課税所得が大きく増減している会社です。


過去3年および当期で所得は発生しているものの、その金額が不安定で大きく変動している会社が想定されます。


会社分類3では、将来の合理的な見積可能期間内の一時差異等加減算前課税所得に基づいて、繰延税金資産の回収可能性を判断します。


つまり、会社分類1や2よりも、将来の所得見積りに対して慎重な制限がかかります。

業績が変動しやすい会社では、長期の利益計画をそのまま繰延税金資産の計上根拠にすることは難しくなります。


会社分類3では、将来どの年度まで所得を見込めるのか、その見積りに客観性があるのかを慎重に確認する必要があります。


会社分類4の考え方

会社分類4は、重要な欠損金が発生している会社です。


過去または当期に重要な税務上の欠損金が発生している場合には、会社分類4に該当する可能性があります。会社分類4に該当する会社では、将来の課税所得の見積りに対して、より厳しい制限がかかります。


一般的には、翌期の一時差異等加減算前課税所得の範囲内で回収可能性を判断することになります。ただし、一定の要件を満たす場合には、会社分類2や会社分類3に近い取扱いが認められることがあります。


たとえば、重要な欠損金が発生した原因が臨時的なものであり、今後は安定して所得が見込まれる場合には、形式だけで機械的に厳しく判断するのではなく、例外的な取扱いの検討が必要です。


会社分類5の考え方

会社分類5は、継続的に重要な欠損金が発生している会社など、最も慎重な判断が必要な会社です。


将来の課税所得を見込むことが難しい会社が想定されます。

会社分類5では、原則として繰延税金資産の回収可能性は認められません。

したがって、将来減算一時差異があっても、繰延税金資産を計上できない可能性が高くなります。


ただし、個別の事情により、加算差異との相殺などで回収可能性が認められる部分がある場合もあります。重要なのは、赤字会社だからといって一律にすべての繰延税金資産がゼロになるわけではなく、会社分類と相殺可能性を丁寧に検討することです。


会社分類は分類1から順番に検討する

会社分類は、分類1から分類5へ進むほど、会社の状況が厳しくなるイメージです。


実務では、まず会社分類1に該当するかを検討します。

該当しなければ会社分類2を検討します。

会社分類2にも該当しなければ会社分類3を検討します。

会社分類4と5は、重要な欠損金の発生が関係するため、セットで検討します。


このように順番に確認することで、判定の漏れや飛躍を防ぐことができます。

いきなり分類3や分類4から判断するのではなく、過去の所得、減算差異との比較、欠損金の有無、経営環境の変化を整理して、順番に当てはめていくことが大切です。


回収可能性検討表とは

回収可能性検討表とは、貸借対照表に計上できる繰延税金資産を計算するための資料です。


検討表では、将来減算一時差異、将来加算一時差異、繰越欠損金、解消見込年度、一時差異等加減算前課税所得、相殺済、相殺残、繰延税金資産、評価性引当額などを一覧化します。


検討表の役割は、計算過程を見える化することです。

繰延税金資産の回収可能性は、頭の中だけで判断するには複雑すぎます。

一時差異の種類、解消年度、相殺関係、会社分類ごとの限度額を表で整理することで、どこまで回収可能で、どこから評価性引当額が必要なのかが分かります。

監査対応や税務・会計レビューでも、検討表があると説明しやすくなります。


検討表の基本構成

回収可能性検討表では、まず当期末残高を記載します。


次に、X1期、X2期、X3期など、解消見込年度ごとに金額を割り振ります。

さらに、長期解消欄やスケジューリング不能欄を設けます。

代表的な行項目としては、次のようなものがあります。

  • スケジューリング可能な減算差異

  • 長期差異

  • スケジューリング不能な減算差異

  • 繰越欠損金

  • 減算差異小計

  • 加算差異

  • 一時差異等加減算前課税所得

  • 相殺済

  • 相殺残

  • 税率

  • 繰延税金資産

  • 評価性引当額


このような表にすることで、どの差異が、どの年度で、何と相殺され、いくら回収可能と判断されたのかを明確にできます。


相殺済と相殺残

検討表で特に重要なのが、相殺済と相殺残です。


相殺済とは、減算差異小計のうち、将来加算一時差異または一時差異等加減算前課税所得と相殺できた金額です。この相殺済の金額が、回収可能性のある繰延税金資産の計算根拠になります。


相殺残とは、減算差異小計のうち、将来加算一時差異や一時差異等加減算前課税所得と相殺できなかった金額です。相殺残は、原則として評価性引当額の計算根拠になります。

つまり、検討表では、将来減算一時差異を「回収できる部分」と「回収できない部分」に分けることが重要です。


繰延税金資産と評価性引当額

回収可能性のある繰延税金資産は、相殺済の金額に法定実効税率を掛けて計算します。


一方、回収可能性がない部分については、評価性引当額を計上します。

評価性引当額とは、繰延税金資産のうち回収が見込めない部分を控除するための金額です。

たとえば、将来減算一時差異が1,000あり、税率30%で理論上の繰延税金資産が300だとします。


このうち、回収可能性があると判断できる部分が700であれば、繰延税金資産は210です。

残り300に対応する90は評価性引当額の対象になります。

検討表では、この繰延税金資産と評価性引当額の金額が分かるように整理します。


検討表作成のステップ1:一時差異を把握する

検討表作成の最初のステップは、一時差異の把握です。

期末決算で作成する勘定明細、引当金明細、税金計算資料、法人税申告書ドラフトなどをもとに、将来減算一時差異と将来加算一時差異を集計します。


将来減算一時差異としては、未払費用、未払事業税、賞与引当金、退職給付引当金、減損損失、投資有価証券評価損、繰越欠損金などがあります。


将来加算一時差異としては、圧縮積立金、特別償却準備金などが代表例です。

ここで漏れがあると、後のスケジューリングや回収可能性判定がすべてずれてしまいます。

まずは一時差異の網羅性を確保することが重要です。


検討表作成のステップ2:スケジューリングする

次に、一時差異を解消見込年度ごとにスケジューリングします。


未払費用のように翌期に解消するものは、翌期の欄に記載します。

減価償却超過額のように複数年度にわたって解消するものは、各年度に分けて記載します。

長期差異に該当するものは、長期解消欄に記載します。


スケジューリング不能差異は、スケジューリング不能欄に記載します。

このとき、減算差異をまとめて1行で記載するよりも、できるだけ項目ごとに記載する方が望ましいです。


後から見直したときに、どの項目がどの年度で解消するのかを追跡しやすいからです。


検討表作成のステップ3:加算差異をスケジューリングする

将来減算一時差異だけでなく、将来加算一時差異もスケジューリングします。


将来加算一時差異は、解消時に課税所得を増やす効果があります。

そのため、将来減算一時差異と相殺できる可能性があります。


たとえば、ある年度に将来加算一時差異150が解消し、同じ年度に将来減算一時差異200が解消する場合、150部分については加算差異と相殺できるため、回収可能性があると判断しやすくなります。


圧縮積立金や特別償却準備金などの加算差異については、解消スケジュールを確認し、検討表に反映します。


検討表作成のステップ4:一時差異等加減算前課税所得を計算する

次に、解消見込年度ごとの一時差異等加減算前課税所得を計算します。


この計算では、中長期経営計画や予算資料など、会社の意思決定機関で承認された計画を基礎にすることが望ましいです。


ただし、単に会計上の税引前利益をそのまま使うのではありません。

税務上の加算・減算、臨時的要因、一時差異の解消影響などを調整し、回収可能性判定に使う所得を計算します。

将来の利益計画が楽観的すぎる場合、繰延税金資産の過大計上につながるおそれがあります。実現可能性のある計画に基づくことが重要です。


検討表作成のステップ5:相殺する

一時差異のスケジューリングと所得見積りができたら、相殺を行ないます。


まず、同じ解消見込年度の将来減算一時差異と将来加算一時差異を相殺します。

次に、相殺しきれなかった将来減算一時差異を、一時差異等加減算前課税所得と相殺します。


さらに、一定の場合には、繰越期間内の他の年度の所得や加算差異との相殺も検討します。

この相殺によって、どの減算差異に係る繰延税金資産に回収可能性があるかを判定します。

相殺できなかった部分は、原則として評価性引当額の対象になります。


検討表作成のステップ6:税率を掛ける

相殺済の金額が確定したら、その金額に法定実効税率を掛けて繰延税金資産を計算します。


ここで使う税率は、差異が解消すると見込まれる年度の税率です。

税率改正がある場合には、解消見込年度ごとの税率を正しく反映する必要があります。

同じ将来減算一時差異であっても、解消年度によって適用税率が異なれば、繰延税金資産の金額も変わります。


検討表では、年度ごとに税率欄を設けておくと分かりやすくなります。


検討表作成のステップ7:評価性引当額を計算する

回収可能性がないと判断された部分については、評価性引当額を計算します。


評価性引当額は、相殺残の金額に法定実効税率を掛けて算定します。

評価性引当額は、繰延税金資産の控除項目として表示されます。

実務上は、繰延税金資産の総額、評価性引当額、差引後の繰延税金資産を整理しておくと、決算書注記や監査対応にも役立ちます。


検討表作成でよくあるミス

繰延税金資産の回収可能性検討表では、いくつか典型的なミスがあります。


  • 一時差異の集計漏れです

未払費用、未払事業税、引当金、繰越欠損金などを漏らすと、検討表全体が誤ります。


  • スケジューリングの漏れ

期末残高と、各年度に割り振った金額の合計が一致していないことがあります。


  • スケジューリング不能差異を誤ってスケジューリング可能差異に含めてしまう

  • 加算差異を二重に使って回収可能性を判定してしまうこともあります。

一時差異等加減算前課税所得の計算で、加算差異を除外し忘れると、回収可能性を過大に見積もる可能性があります。


エクセルで検討表を作るときの工夫

実務では、回収可能性検討表をエクセルで作ることが多いでしょう。


その場合、検証用セルを設けることをおすすめします。

たとえば、期末残高とスケジューリングした各年度の合計が一致しているかをチェックするセルを作ります。


一致していればTRUE、不一致であればFALSEと表示されるようにしておけば、集計漏れに気づきやすくなります。


また、項目数が多い場合には、詳細行を非表示にして合計行だけを表示する方法も有効です。ただし、元データとのつながりが分からなくならないように、別シートで明細を管理し、検討表の合計額とリンクさせるとよいでしょう。


後日チェックする人が見ても分かるように、計算過程を残しておくことが重要です。


回収可能性を過大に見積もらないための注意点

繰延税金資産は、会社の純資産や当期純利益に影響します。


そのため、過大に計上すると、決算書の信頼性を損なう可能性があります。

特に注意したいのは、将来の利益計画です。


経営計画上は利益が出る予定でも、その計画が実現可能かどうかを慎重に確認する必要があります。過去に計画未達が続いている会社では、将来計画をそのまま使うのは危険です。

また、臨時的な利益や一過性のコスト削減を前提にしていないかも確認しましょう。

繰延税金資産は、将来の課税所得により回収されるものです。


将来所得の見積りには、客観性と合理性が必要です。


税務上の繰越欠損金がある場合

繰越欠損金がある場合、回収可能性の判断はさらに慎重になります。


繰越欠損金は、将来の所得と相殺することで税金を減らす効果があります。

しかし、繰越期限や使用限度額があります。


将来所得が見込まれても、期限内に使い切れなければ、税金を減らす効果はありません。

また、会社分類上、重要な繰越欠損金の発生は、会社分類4以下の判断に影響します。

繰越欠損金がある会社では、欠損金の発生年度、残高、繰越期限、使用見込み、控除限度額を年度別に整理する必要があります。


中小企業でも回収可能性の考え方は重要

多くの中小企業では、上場会社ほど厳密に税効果会計を適用していないこともあります。

しかし、金融機関提出用の決算書、M&A、事業承継、外部株主への説明、IPO準備、監査対応などでは、繰延税金資産の回収可能性が重要になります。


また、繰延税金資産が多額に計上されている会社では、その資産が本当に回収可能かを金融機関や買手企業が確認することがあります。中小企業であっても、繰延税金資産の意味と回収可能性の基本を理解しておくことは有益です。


公認会計士・税理士に相談すべきケース

次のような場合は、公認会計士や税理士に相談することをおすすめします。

  • 多額の繰延税金資産を計上している

  • 過去に重要な欠損金が発生している

  • 繰越欠損金が多額にある

  • 業績が大きく変動している

  • 減損損失や投資有価証券評価損を計上している

  • 将来の利益計画に不確実性がある

  • 会社分類の判断に迷っている

  • 監査法人から回収可能性の説明を求められている

  • M&Aや事業承継で決算書の精査を受ける予定がある


繰延税金資産は、会計と税務の両方の知識が必要な分野です。

判断を誤ると、決算修正や監査上の指摘につながる可能性があります。

実務上のチェックポイント

繰延税金資産の回収可能性を検討する際は、次の点を確認しましょう。

  • 将来減算一時差異を漏れなく集計しているか

  • 将来加算一時差異を漏れなく集計しているか

  • 繰越欠損金の発生年度、残高、期限を把握しているか

  • 一時差異を解消見込年度ごとにスケジューリングしているか

  • スケジューリング可能差異と不能差異を区分しているか

  • 長期差異を正しく把握しているか

  • 期末残高とスケジューリング合計が一致しているか

  • 一時差異等加減算前課税所得を合理的に見積もっているか

  • 将来計画が会社の意思決定機関で承認されているか

  • 臨時的な損益を適切に除外しているか

  • 会社分類を正しく判定しているか。

  • 分類ごとの限度額を踏まえているか

  • 相殺済と相殺残を明確に区分しているか

  • 評価性引当額を適切に計算しているか


このチェックを行なうことで、繰延税金資産の過大計上や計算漏れを防ぎやすくなります。


まとめ

繰延税金資産の回収可能性とは、将来の所得を減らすことで税金を引き下げる効果が見込まれることをいいます。


繰延税金資産は、単に将来減算一時差異に税率を掛ければ計上できるものではありません。

減算差異が解消する年度に、将来加算一時差異や一時差異等加減算前課税所得と相殺できるかを確認する必要があります。


そのために重要なのが、スケジューリングと事業年度ごとの判定です。

また、会社分類も重要です。


過去3年および当期の課税所得、欠損金の発生状況、減算差異との比較、経営環境の変化などを確認し、会社分類1から順番に判定していきます。


会社分類によって、回収可能性が認められる繰延税金資産の範囲は変わります。

さらに、実務では回収可能性検討表を作成し、減算差異、加算差異、繰越欠損金、解消見込年度、一時差異等加減算前課税所得、相殺済、相殺残、繰延税金資産、評価性引当額を一覧化します。


検討表を作ることで、貸借対照表に計上できる繰延税金資産の金額と、評価性引当額の計算過程を明確にできます。


繰延税金資産は、会社の純資産や損益に大きな影響を与えることがあります。

特に、赤字がある会社、繰越欠損金がある会社、業績が不安定な会社、多額の引当金や減損損失を計上している会社では、慎重な判断が必要です。


繰延税金資産の回収可能性や会社分類、検討表の作成で迷う場合は、公認会計士や税理士へ相談することをおすすめします。


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【この記事の執筆者】

安田 亮(公認会計士・税理士)

安田亮公認会計士・税理士事務所 代表

京都大学経済学部在学中に公認会計士試験に合格。有限責任 あずさ監査法人、株式会社神戸製鋼所での実務経験を経て、2018年に神戸市で独立。

現在は、中小企業から上場企業に対する税務顧問、決算支援、税効果会計、連結決算、新リース会計基準への対応、組織再編、補助金・助成金に関する支援などを行なっています。また、金融機関や大手企業が運営する税務・会計・経営分野のWebメディアにおいて、記事の執筆・監修にも携わっています。

事務所ブログでは、税制改正や会計基準、経営実務に関する情報を、専門用語をできるだけかみ砕き、経営者や経理担当者の方に役立つ形で解説しています。

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