インボイス制度で免税事業者に支払う交際費はどう処理する?飲食費1万円基準との関係も解説
- 安田 亮
- 8月6日
- 読了時間: 12分
おはようございます!代表の安田です。
インボイス制度が始まってから、経理処理で悩みやすくなったものの一つに「免税事業者等に支払った交際費」があります。
たとえば、取引先との会食で利用した飲食店がインボイス登録をしていない場合、会社はその飲食代について、消費税の仕入税額控除を一部または全部受けられないことがあります。
このとき問題になるのが、法人税の交際費等の計算です。
インボイスがない飲食代は、交際費の金額をいくらで判定すればよいのか
税抜経理をしている場合、控除できない消費税相当額はどう扱うのか
1人当たり1万円以下の飲食費の判定にも影響するのか
このような疑問を持つ会社も多いのではないでしょうか。
本日は、インボイス制度のもとで免税事業者等に交際費を支払った場合の法人税・消費税の取扱いと、飲食費の1万円基準への影響について解説します。
交際費等とは
法人税における交際費等とは、得意先、仕入先、その他事業に関係のある者などに対する接待、供応、慰安、贈答などのために支出する費用をいいます。
代表的なものとしては、次のような支出があります。
取引先との会食費
接待のための飲食代
得意先への贈答品代
取引先を招いたイベント費用
接待ゴルフに関連する費用
交際費等は、会社の営業活動や取引関係の維持のために必要となることもありますが、法人税では一定の損金算入制限が設けられています。
中小法人の場合、年800万円までの定額控除限度額を使う方法や、接待飲食費の50%相当額を損金算入する方法など、一定の特例があります。
一方、交際費等から除外されるものもあります。その代表例が、一定金額以下の飲食費です。
飲食費の基準は「1人当たり1万円以下」に
従来、交際費等から除外される飲食費の基準は、1人当たり5,000円以下でした。
しかし、令和6年4月1日以後に支出する飲食費については、この基準が1人当たり10,000円以下に引き上げられています。
つまり、取引先との飲食費であっても、一定の書類保存要件を満たし、1人当たりの金額が10,000円以下であれば、法人税上の交際費等から除外される可能性があります。
ただし、注意したいのは、この1万円基準の判定は、会社が採用している消費税の経理方式によって計算金額が変わるという点です。
税込経理を採用している会社であれば税込金額を基に判定し、税抜経理を採用している会社であれば、原則として税抜金額を基に判定します。
税抜経理では消費税等を除いて交際費を計算するのが原則
会社が税抜経理を採用している場合、消費税の仕入税額控除の対象となる消費税等は、原則として交際費等の額に含めません。
たとえば、インボイス登録事業者である飲食店に対して、税抜9,500円、消費税950円、税込10,450円の飲食代を支払ったとします。
この場合、会社が税抜経理を採用しており、消費税950円について仕入税額控除を受けられるのであれば、法人税上の飲食費の額は原則として税抜9,500円で考えます。
そのため、1人当たりの飲食費が10,000円以下かどうかを判定する際にも、税抜経理の場合は税抜金額を基に判定するのが基本です。
免税事業者等への支払いでは控除できない消費税相当額に注意
インボイス制度では、適格請求書発行事業者ではない免税事業者等からの課税仕入れについて、原則として仕入税額控除を受けることができません。
飲食店がインボイス登録をしていない場合、会社がその飲食代を支払っても、通常のインボイスを受け取ることができません。
この場合、税抜経理を採用している会社であっても、仕入税額控除の対象とならない消費税相当額は、単純に仮払消費税として処理できないことになります。
その結果、仕入税額控除できない部分の消費税相当額は、法人税上の飲食費・交際費等の額に含めて考える必要があります。
ここが、インボイス制度後の交際費計算で特に注意すべきポイントです。
免税事業者等からの仕入れには経過措置がある
インボイス制度開始後、免税事業者等からの仕入れについては、いきなり全額が仕入税額控除不可になるのではなく、一定期間の経過措置が設けられています。
現在の経過措置は、おおむね次のように段階的に縮小されます。
令和5年10月1日から令和8年9月30日まで:仕入税額相当額の80%を控除可能
令和8年10月1日から令和10年9月30日まで:仕入税額相当額の70%を控除可能
令和10年10月1日から令和12年9月30日まで:仕入税額相当額の50%を控除可能
令和12年10月1日から令和13年9月30日まで:仕入税額相当額の30%を控除可能
令和13年10月1日以後:原則として控除なし
この経過措置を適用する場合、仕入税額控除の対象となる部分は消費税等として処理し、控除できない部分を飲食費・交際費等の額に含めて計算します。
つまり、税抜経理を採用している会社でも、免税事業者等への支払いについては、通常のインボイス登録事業者への支払いとは異なる計算が必要になります。
飲食費の1万円基準にも影響する
免税事業者等に支払った飲食費について、控除できない消費税相当額を交際費等の額に含めるという考え方は、飲食費の1万円基準の判定にも影響します。
たとえば、税抜経理を採用している会社が、インボイス未登録の飲食店に対して接待飲食費を支払ったとします。
この場合、単純な税抜価額だけで1人当たり10,000円以下かどうかを判定するのではなく、経過措置により仕入税額控除できない消費税相当額を加算した金額で判定する必要があります。
つまり、インボイス登録事業者の店舗であれば1万円基準を満たす金額でも、免税事業者等の店舗では、控除できない消費税相当額を加えた結果、1万円を超える可能性があります。
飲食費の金額が基準額ぎりぎりの場合には、特に注意が必要です。
計算例:免税事業者の飲食店で1人当たり10,780円を支払った場合
ここでは、税抜経理を採用している会社が、インボイス登録をしていない飲食店に対して、1人当たり税込10,780円の飲食費を支払ったケースを考えてみます。
消費税率を10%とすると、税込10,780円の内訳は、税抜9,800円、消費税相当額980円です。
令和5年10月1日から令和8年9月30日までの期間であれば、免税事業者等からの仕入れについて、仕入税額相当額の80%を控除できる経過措置があります。
この場合、消費税相当額980円のうち、80%にあたる784円は仕入税額控除の対象になります。一方、残り20%にあたる196円は仕入税額控除できないため、飲食費の額に含めます。
したがって、法人税上の飲食費の額は、税抜9,800円に196円を加えた9,996円となります。
この金額は1人当たり10,000円以下であるため、必要な書類保存要件を満たしていれば、交際費等から除外される飲食費として取り扱える可能性があります。
経過措置の割合が変わると判定結果も変わる
上記の例は、仕入税額相当額の80%を控除できる期間を前提にしています。
しかし、経過措置の割合は段階的に縮小されます。
同じ税込10,780円の飲食費であっても、経過措置の割合が70%、50%、30%と下がるにつれて、仕入税額控除できない部分が増えます。
たとえば、消費税相当額980円について、控除できない割合が30%であれば294円、50%であれば490円、70%であれば686円が飲食費の額に含まれます。
そのため、同じ税込支払額であっても、支出時期によって1万円基準を満たすかどうかが変わる可能性があります。
令和8年10月以後、令和10年10月以後、令和12年10月以後は、経過措置の割合が変わるため、基準額に近い接待飲食費については、より慎重な確認が必要です。
インボイス登録事業者への支払いとの違い
インボイス登録事業者である飲食店に支払った場合と、免税事業者等である飲食店に支払った場合では、税抜経理における交際費等の金額が異なることがあります。
インボイス登録事業者に対する支払いであれば、原則として消費税等は仕入税額控除の対象となるため、税抜経理では税抜金額を基に交際費等の額を計算します。
一方、免税事業者等への支払いでは、仕入税額控除できない部分を飲食費・交際費等の額に含めます。
そのため、経理処理上は次のような確認が必要です。
支払先がインボイス登録事業者か
登録番号が請求書や領収書に記載されているか
免税事業者等からの仕入れに係る経過措置を適用するか
仕入税額控除できない部分を交際費等に含めているか
飲食費の1万円基準の判定金額が正しいか
特に、会計ソフトに自動連携している場合や、経費精算システムで申請される場合には、支払先の登録番号や税区分の設定が重要になります。
税込経理の場合の考え方
ここまで主に税抜経理を前提に説明しましたが、税込経理を採用している会社では考え方が異なります。
税込経理の場合、消費税等を含めた金額で交際費等の額を計算します。
そのため、飲食費の1万円基準も、税込金額を基に判定します。
インボイス登録事業者への支払いであっても、免税事業者等への支払いであっても、税込経理では税込金額を基に判定することになります。
ただし、税込経理を採用している場合でも、消費税申告上、免税事業者等からの仕入れについて経過措置を適用するかどうかは別途確認が必要です。
法人税の交際費計算と消費税の仕入税額控除は関連しますが、完全に同じ論点ではありません。自社の経理方式を前提に処理を整理しておきましょう。
書類保存要件にも注意
飲食費を交際費等から除外するためには、金額基準を満たすだけでは足りません。
一定の事項を記載した書類を保存していることが必要です。
たとえば、次のような内容を記録しておく必要があります。
飲食等のあった年月日
参加した取引先等の氏名または名称
参加者と会社との関係
参加人数
飲食等に要した費用の額
飲食店等の名称と所在地
その他、飲食費であることを明らかにする事項
インボイス制度のもとでは、これらに加えて、インボイス登録番号の有無や、免税事業者等への支払いかどうかも確認しておくと実務上安心です。
経費精算書や会計ソフトの摘要欄に、参加者、人数、目的、支払先、登録番号の有無などを記録できるようにしておくと、後から確認しやすくなります。
実務上のチェックポイント
免税事業者等に対する交際費の処理では、次の点を確認しましょう。
会社が税抜経理か税込経理か
支払先がインボイス登録事業者か
登録番号が領収書等に記載されているか
免税事業者等からの仕入れに係る経過措置を適用するか
仕入税額控除できない消費税相当額を交際費等に含めているか
飲食費の1万円基準の判定金額が正しいか
参加者、人数、飲食日、支払先などの記録が保存されているか
会計ソフトや経費精算システムの税区分が正しく設定されているか
特に、接待飲食費が1人当たり10,000円前後になるケースでは、少しの計算差で交際費等から除外できるかどうかが変わります。
税抜経理だからといって、常に税抜価額だけで判定できるわけではない点に注意が必要です。
経費精算システムでの対応も重要
インボイス制度後は、交際費の経費精算についてもシステム対応が重要になります。
従業員が接待飲食費を立替払いし、経費精算システムに入力する場合、支払先がインボイス登録事業者かどうかを確認できる仕組みがあると便利です。
たとえば、次のような入力項目を設けておくとよいでしょう。
支払先名
登録番号
登録番号の有無
税率
税込金額
税抜金額
参加人数
1人当たり金額
免税事業者等への支払いかどうか
経過措置の対象かどうか
接待相手の氏名または名称
飲食の目的
こうした項目を整備しておくことで、交際費等の判定や消費税申告時の確認作業を効率化できます。
また、免税事業者等への支払いについて、会計ソフトの税区分を誤ると、仕入税額控除額や交際費等の金額が誤ってしまう可能性があります。
経理担当者だけでなく、経費を申請する従業員にも、領収書の登録番号を確認するルールを周知しておくことが大切です。
まとめ
インボイス制度のもとでは、免税事業者等に支払った交際費について、法人税と消費税の両面から注意が必要です。
税抜経理を採用している会社では、通常、仕入税額控除の対象となる消費税等は交際費等の額に含めません。
しかし、免税事業者等に対する支払いでは、仕入税額控除できない消費税相当額を、飲食費・交際費等の額に含めて計算する必要があります。
この考え方は、飲食費の1万円基準の判定にも影響します。
令和6年4月1日以後の支出については、交際費等から除外される飲食費の基準が1人当たり10,000円以下に引き上げられていますが、免税事業者等への支払いでは、控除できない消費税相当額を加算した金額で判定する点に注意しましょう。
また、免税事業者等からの仕入れに係る経過措置は段階的に縮小されるため、同じ税込支払額でも、支出時期によって判定結果が変わる可能性があります。
交際費の処理では、支払先のインボイス登録状況、会社の経理方式、経過措置の適用、1人当たり金額、書類保存要件を総合的に確認することが重要です。
インボイス制度後の交際費処理に不安がある場合は、早めに税理士へ相談することをおすすめします。
神戸での起業や開業に関するご相談、顧問税理士をお探しの方は安田亮公認会計士・税理士事務所までお問い合わせください!
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【この記事の執筆者】
安田 亮(公認会計士・税理士)
安田亮公認会計士・税理士事務所 代表
京都大学経済学部在学中に公認会計士試験に合格。有限責任 あずさ監査法人、株式会社神戸製鋼所での実務経験を経て、2018年に神戸市で独立。
現在は、中小企業から上場企業に対する税務顧問、決算支援、税効果会計、連結決算、新リース会計基準への対応、組織再編、補助金・助成金に関する支援などを行なっています。また、金融機関や大手企業が運営する税務・会計・経営分野のWebメディアにおいて、記事の執筆・監修にも携わっています。
事務所ブログでは、税制改正や会計基準、経営実務に関する情報を、専門用語をできるだけかみ砕き、経営者や経理担当者の方に役立つ形で解説しています。






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