決算期変更で事業年度が短くなったら要注意|法人税・地方税・交際費・少額減価償却資産の月数按分を税理士が解説
更新日:8月30日
こんばんは!代表の安田です。
会社が決算期を変更すると、事業年度が12か月に満たない「短期事業年度」が生じることがあります。
たとえば、6月決算の子会社を親会社の12月決算に合わせるため、決算期を変更するケースです。
この場合、変更初年度は「7月1日から12月31日まで」の6か月決算になることがあります。
ここで注意したいのが、法人税や地方税、交際費、少額減価償却資産などの計算です。
「1年あたり800万円まで」「年300万円まで」「年400万円以下の所得」といった制度は、事業年度が12か月であることを前提にしているものが少なくありません。
事業年度が12か月未満の場合には、月数に応じた按分計算が必要になることがあります。
本日は、決算期変更により事業年度が短くなった場合に確認すべき税務上のポイントを、税理士の視点からわかりやすく解説します。
決算期変更をすると短期事業年度が生じることがある
決算期変更とは、会社の事業年度の終了日を変更することです。
たとえば、もともと6月決算だった会社が、親会社に合わせて12月決算へ変更する場合、変更初年度は通常より短い事業年度になることがあります。
例として、次のようなケースを考えてみます。
もともとの決算期:6月30日
変更後の決算期:12月31日
変更初年度の事業年度:7月1日から12月31日まで
この場合、変更初年度の事業年度は6か月です。
会計上は、6か月分の売上・費用で決算を行います。
しかし、税務では、単に「6か月分の利益に税率をかける」だけでは済みません。
法人税、法人事業税、住民税、交際費、寄附金、少額減価償却資産、減価償却など、月数に応じた調整が必要な項目が複数あります。
法人税の軽減税率は800万円を月数按分する
中小法人等については、年800万円以下の所得金額に対して軽減税率が適用されます。
ただし、事業年度が1年に満たない場合には、この「年800万円」をそのまま使うことはできません。
国税庁の法人税基本通達でも、事業年度が1年に満たない法人について、年800万円以下の所得金額に対する軽減税率を適用する場合には、「800万円を12で除し、これに事業年度の月数を乗じて計算した金額」を使うことが示されています。
たとえば、事業年度が6か月の場合、軽減税率の対象となる所得金額は次のようになります。
800万円 × 6か月 ÷ 12か月 = 400万円
つまり、6か月決算の場合、所得800万円まで軽減税率が使えるわけではありません。
所得400万円までが軽減税率の対象となり、それを超える部分には通常の税率が適用されます。
ここはかなり見落としやすいポイントです。
決算期変更後の申告書を作成する際には、法人税別表の税率区分が正しく月数按分されているか確認しましょう。
大法人の100%子会社などは軽減税率の対象外にも注意
法人税の軽減税率は、すべての資本金1億円以下の法人に使えるわけではありません。
たとえば、資本金5億円以上の大法人による完全支配関係がある法人などは、中小法人向けの軽減税率の対象外になる場合があります。
添付資料の事例でも、子会社の資本金は4億9,000万円であり、さらに親会社が100%保有しているケースが紹介されていました。
このような場合、単に「資本金が5億円未満だから軽減税率が使える」と判断するのではなく、親会社の資本金や完全支配関係を確認する必要があります。
つまり、短期事業年度では、
まず軽減税率の対象法人かどうかを確認する
対象法人であれば、年800万円を月数按分する
という順番で確認することが大切です。
法人事業税の軽減税率も月数按分が必要
地方税でも、事業年度の月数に応じた調整が必要になります。
法人事業税では、所得金額に応じて税率区分が分かれることがあります。
たとえば、多くの都道府県では、普通法人について、年400万円以下、年400万円超800万円以下、年800万円超といった区分で税率が分かれています。
多くの都道府県では、法人事業税の所得割について、事業年度が1年に満たない法人は、適用区分欄中の400万円または800万円を「400万円(または800万円)×事業年度の月数/12」と読み替えるとされています。
たとえば、6か月決算の場合には、次のように考えます。
年400万円以下の区分→ 400万円 × 6か月 ÷ 12か月 = 200万円以下
年400万円超800万円以下の区分→ 200万円超400万円以下
年800万円超の区分→ 400万円超
法人税の申告書では注意していても、地方税の申告書で月数按分を忘れるケースがあります。
特に、都道府県民税・事業税の申告書を会計ソフトで作成している場合でも、決算期変更後の月数設定が正しく反映されているか確認しましょう。
法人住民税の均等割も月割になる
法人住民税の均等割も、事業年度が短い場合には月割計算が必要です。
事務所・事業所を有していた期間が1年に満たない場合、均等割は月割計算するとされています。
市町村民税の均等割についても、事務所等を有していた月数に応じて計算します。
たとえば、京都市の案内では、事務所等を有していた月数は暦に従って計算し、1か月未満の端数は切り捨て、所在期間が1か月に満たない場合は1か月とされています。
決算期変更で6か月決算になった場合には、法人住民税の均等割も原則として6か月分になるため、年額をそのまま入力しないよう注意が必要です。
一括償却資産は36か月ではなく、事業年度の月数に応じて損金算入
一括償却資産とは、取得価額が20万円未満の減価償却資産について、通常の耐用年数ではなく、3年間で均等に損金算入する制度です。
通常は、取得価額の3分の1ずつを各事業年度で損金算入するイメージです。
しかし、事業年度が12か月未満の場合には、損金算入額の計算に注意が必要です。
一括償却資産の損金算入額は、次のような考え方になります。
一括償却資産の取得価額の合計額 × その事業年度の月数 ÷ 36
国税庁の別表十六(八)の記載要領でも、一括償却資産について「当期の月数」を記載し、これは事業の用に供した日以後の月数ではないとされています。
たとえば、事業年度が6か月で、一括償却資産の取得価額の合計額が90万円の場合、その期の損金算入限度額は次のようになります。
90万円 × 6か月 ÷ 36か月 = 15万円
通常の12か月決算であれば30万円ですが、6か月決算では15万円になります。
「3年均等だから毎年3分の1」とだけ覚えていると、短期事業年度で誤りやすい項目です。
少額減価償却資産の300万円枠も月数按分する
中小企業者等が取得価額30万円未満の減価償却資産を取得した場合、一定の要件を満たせば、取得価額相当額を損金算入できる少額減価償却資産の特例があります。
ただし、この制度には年間300万円までの限度額があります。
そして、事業年度が1年に満たない場合には、この300万円も月数按分されます。
国税庁は、少額減価償却資産の取得価額の合計額が300万円を超える場合、その300万円は、事業年度が1年に満たない場合には「300万円を12で除し、これにその事業年度の月数を掛けた金額」とし、1か月未満の端数は1か月とすると説明しています。
たとえば、6か月決算の場合、少額減価償却資産の限度額は次のとおりです。
300万円 × 6か月 ÷ 12か月 = 150万円
つまり、6か月決算では、30万円未満の資産を合計300万円まで即時損金算入できるわけではありません。150万円までが限度になります。
また、この特例は令和8年3月31日までの間に取得等して事業の用に供した資産が対象とされており、青色申告書の提出や明細書添付などの要件もあります。
交際費の800万円枠も月数按分する
中小法人の交際費については、年間800万円までの定額控除限度額があります。
ただし、これも事業年度が12か月であることを前提にした金額です。
国税庁は、中小法人の交際費等について、定額控除限度額を「800万円にその事業年度の月数を乗じ、これを12で除して計算した金額」と説明しています。
たとえば、6か月決算の場合は次のとおりです。
800万円 × 6か月 ÷ 12か月 = 400万円
この場合、交際費等の800万円枠は400万円になります。
営業活動が活発な会社では、6か月決算でも交際費が多額になることがあります。
「中小法人だから800万円までは損金算入できる」と思い込むと、限度額超過部分を見落とす可能性があります。
また、令和6年4月1日以後に支出する飲食費については、一定の要件を満たす1人当たり1万円以下の飲食費は交際費等から除外されます。国税庁は、この1万円基準の適用には、飲食等の年月日、参加者の氏名・名称、参加者数、飲食店名・所在地などを記載した書類の保存が必要と説明しています。
短期事業年度で交際費の枠が減る場合には、1人当たり1万円以下飲食費の記録をきちんと残し、交際費等から除外できるものを正しく区分することも重要です。
寄附金の損金算入限度額にも影響する
寄附金の損金算入限度額も、事業年度の月数に応じて計算される部分があります。
一般寄附金の損金算入限度額では、資本金等の額や所得金額を基礎として計算しますが、事業年度が12か月未満の場合には、月数按分が関係する計算があります。
また、地方公共団体や特定公益増進法人等への寄附金など、寄附先によって取扱いが異なるため、決算期変更がある期は寄附金の別表も慎重に確認する必要があります。
短期事業年度では、交際費や少額減価償却資産に目が向きやすいですが、寄附金も忘れないようにしましょう。
減価償却は月割計算が基本
減価償却費についても、事業年度の月数が重要です。
通常の減価償却では、事業年度中に取得して事業の用に供した資産について、使用月数に応じて償却費を計算します。
決算期変更で事業年度が短くなった場合、期首から所有している資産であっても、その事業年度の月数に応じた償却費になります。
たとえば、12か月決算であれば1年分の償却費を計上できますが、6か月決算であれば原則として6か月分の償却費になります。
会計ソフトで自動計算している場合でも、決算期変更後の事業年度月数が正しく設定されていないと、減価償却費が過大または過少になる可能性があります。
特に、固定資産台帳だけ別システムで管理している場合には、会計ソフトと固定資産台帳の事業年度設定が一致しているか確認しましょう。
決算期変更時に確認すべき項目
決算期変更により事業年度が12か月未満になった場合には、少なくとも次の項目を確認しておきましょう。
法人税の軽減税率の800万円枠
法人事業税の400万円・800万円の税率区分
法人住民税の均等割
一括償却資産の損金算入額
少額減価償却資産の300万円枠
交際費等の800万円定額控除限度額
寄附金の損金算入限度額
減価償却費の計算月数
中間申告の要否
申告期限の延長申請の有無
会計ソフト・税務ソフトの事業年度設定
決算期変更は、会社法上の手続きだけでなく、税務申告書の計算にも広く影響します。
「決算期間が短いだけ」と軽く考えず、月数按分が必要な項目を洗い出しておくことが大切です。
会計ソフトに依存しすぎない
近年は、会計ソフトや税務申告ソフトが高機能になっており、決算期変更後の月数計算にも自動で対応してくれることが増えています。
しかし、ソフトに入力された事業年度が誤っていれば、当然、計算結果も誤ります。
大切なのは、ソフトの計算結果をそのまま信じるのではなく、税理士や経理担当者が「どの項目に月数按分が必要か」を理解して確認することです。
特に次のような場合は要注意です。
決算期変更をした初年度
合併・分割・解散などで事業年度が短くなった場合
新設法人の初年度
親会社に決算期を合わせた子会社
会計ソフトと税務ソフトで事業年度設定が異なる場合
固定資産台帳を別管理している場合
月数計算のミスは、1つ1つは小さく見えても、複数項目に波及すると税額への影響が大きくなることがあります。
まとめ:短期事業年度では「年額」をそのまま使わない
決算期変更により事業年度が12か月未満になった場合、税務申告では月数按分が必要な項目が多くあります。
特に注意したいのは、次の項目です。
法人税の軽減税率における年800万円以下の所得金額
法人事業税の年400万円・年800万円の税率区分
中小法人の交際費800万円定額控除
少額減価償却資産の300万円限度額
一括償却資産の損金算入額
法人住民税の均等割
減価償却費
これらは「年800万円」「年300万円」「年400万円」といった表現がされていても、事業年度が12か月未満であれば、そのまま使えるとは限りません。
6か月決算であれば、おおむね半分の金額に調整する必要がある項目もあります。
決算期変更は、親会社との決算統一、グループ管理、上場準備、事業再編などで行われることがあります。
しかし、税務申告では短期事業年度特有の落とし穴があります。
会計ソフトや税務ソフトに任せきりにせず、事業年度の月数、月数按分が必要な項目、地方税の計算、固定資産台帳の設定を必ず確認しましょう。
決算期変更を行なう場合には、変更前の段階から、税務申告にどのような影響が出るかを税理士に相談しておくことをおすすめします。
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【この記事の執筆者】
安田 亮(公認会計士・税理士)
安田亮公認会計士・税理士事務所 代表
京都大学経済学部在学中に公認会計士試験に合格。有限責任 あずさ監査法人、株式会社神戸製鋼所での実務経験を経て、2018年に神戸市で独立。
現在は、中小企業から上場企業に対する税務顧問、決算支援、税効果会計、連結決算、新リース会計基準への対応、組織再編、補助金・助成金に関する支援などを行なっています。また、金融機関や大手企業が運営する税務・会計・経営分野のWebメディアにおいて、記事の執筆・監修にも携わっています。
事務所ブログでは、税制改正や会計基準、経営実務に関する情報を、専門用語をできるだけかみ砕き、経営者や経理担当者の方に役立つ形で解説しています。






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