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特例有限会社の事前確定届出給与|職務執行開始日は定時株主総会開催日でよい?

  • 執筆者の写真: 安田 亮
    安田 亮
  • 4 時間前
  • 読了時間: 14分

おはようございます!代表の安田です。


役員へ賞与を支給したい場合、法人税でよく問題になるのが事前確定届出給与です。


役員給与は、従業員給与と異なり、原則として自由に損金算入できるものではありません。特に、役員賞与のように毎月同額ではない給与を損金算入するためには、事前に税務署へ届出を提出する必要があります。


この届出をいつまでに提出するかを判断するうえで重要になるのが、「職務の執行の開始の日」です。


通常の株式会社であれば、定時株主総会で役員を選任・再任し、その日に就任した場合、その定時株主総会の開催日が職務執行開始日とされます。


では、旧有限会社から移行した特例有限会社ではどう考えればよいのでしょうか。

特例有限会社には、会社法上、株式会社のような取締役の任期に関する定めが適用されません。そのため、事前確定届出給与の届出期限を計算する際、職務執行開始日をいつと見るのかが問題になります。


本日は、特例有限会社における事前確定届出給与の職務執行開始日の考え方について、国税庁への確認内容を踏まえて整理します。


事前確定届出給与とは?

事前確定届出給与とは、役員に対して所定の時期に、確定した金額を支給する給与のうち、一定の期限までに税務署へ届出を行ったものをいいます。


たとえば、役員に対して夏と冬に賞与を支給する場合、通常の従業員賞与と同じ感覚で支給すると、法人税上は損金算入できない可能性があります。


役員賞与を損金算入するには、原則として、支給時期・支給額を事前に確定し、期限までに事前確定届出給与に関する届出書を提出する必要があります。


この届出が遅れたり、届出内容と実際の支給額・支給時期が異なったりすると、損金算入が認められないおそれがあります。


届出期限は「職務の執行の開始の日」から1か月が基本

事前確定届出給与の届出期限は、原則として、次のいずれか早い日です。

  • 株主総会等の決議をした日から1か月を経過する日

  • 職務の執行の開始の日から1か月を経過する日

  • 会計期間開始の日から4か月を経過する日


実務上、特に重要になるのが、職務の執行の開始の日です。

法人税基本通達では、定時株主総会で役員に選任され、その日に就任した者や、定時株主総会で再任された者については、その定時株主総会の開催日が職務執行開始日とされています。


通常の株式会社では、取締役に任期があり、定時株主総会で選任・再任されることが一般的です。そのため、定時株主総会の開催日を起点に届出期限を管理しやすいといえます。


特例有限会社とは?

特例有限会社とは、平成18年の会社法施行前に存在していた旧有限会社が、会社法施行後も存続している会社をいいます。


会社法施行により、有限会社制度は新設できなくなりました。ただし、既存の有限会社は、会社法上は株式会社として存続することになりました。


この旧有限会社から移行した会社が、一般に特例有限会社と呼ばれます。

特例有限会社は、株式会社として扱われる一方で、通常の株式会社とは異なる特例的な取扱いも残っています。


その一つが、取締役の任期に関する取扱いです。


特例有限会社には取締役の任期規定が適用されない

通常の株式会社では、会社法上、取締役の任期に関する定めがあります。


一方、特例有限会社については、会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律により、取締役の任期に関する定めが適用されません。


つまり、特例有限会社の取締役は、通常の株式会社のように、一定期間ごとに任期満了により改選される仕組みではありません。


ここで問題になるのが、事前確定届出給与の届出期限です。

任期がないのであれば、「職務の執行の開始の日はいつなのか」「毎年の定時株主総会開催日を起算日にしてよいのか」「定款で任期を定めなければならないのか」といった疑問が生じます。


定款で任期を定めないと事前確定届出給与は使えないのか

特例有限会社については、取締役の任期がないため、役員給与がいつからいつまでの職務執行の対価なのかを明確にするために、定款等を変更して任期を定める方法も考えられます。

たとえば、定款に取締役の任期を定め、毎年または一定期間ごとに役員の職務執行期間を明確にする方法です。


しかし、特例有限会社においては、必ずしも定款等で役員の任期を定めることは求められないことが国税庁に確認されています。


つまり、事前確定届出給与として損金算入するために、特例有限会社が必ず定款を変更して取締役の任期を設けなければならない、というわけではありません。


定時株主総会開催日を職務執行開始日とすることも可能

国税庁への確認によれば、特例有限会社においても、定時株主総会の開催日を「職務の執行の開始の日」として取り扱うことが可能とされています。


なぜなら、特例有限会社は、取締役の任期に関する規定は適用されないものの、基本的には株式会社として会社法の規定が適用されるためです。


株式会社は、毎事業年度終了後の一定の時期に、定時株主総会を開催する義務があります。

特例有限会社も、会社法上は株式会社として存続しているため、同様に、毎事業年度終了後の一定の時期に定時株主総会を開催する必要があると考えられます。


また、役員の選任や役員報酬の決定は、株主総会の決議により行なわれます。

このような点から、一般的には、特例有限会社の役員給与は、定時株主総会から次の定時株主総会までの職務執行の対価と見ることができます。


そのため、特例有限会社でも、定時株主総会の開催日を職務執行開始日として取り扱うことが認められると考えられます。


現に役員である者も対象になる

通常の株式会社では、定時株主総会で新たに選任された役員だけでなく、再任された役員についても、その定時株主総会の開催日が職務執行開始日とされます。


特例有限会社では任期満了による再任という概念が通常の株式会社とは異なります。

しかし、国税庁への確認内容では、特例有限会社の定時株主総会において役員に選任され、その日に職務に就いた者だけでなく、その定時株主総会の日に現に役員である者についても、一般的には、その定時株主総会の開催日を職務執行開始日と考えることができるとされています。


つまり、特例有限会社において、毎年の定時株主総会で役員給与や事前確定届出給与を決議する場合には、その定時株主総会開催日を起点として届出期限を検討できるということです。


具体例で確認

たとえば、3月決算の特例有限会社が、令和8年6月20日に定時株主総会を開催したとします。


この定時株主総会で、役員に対して令和8年12月20日に100万円、令和9年6月20日に100万円の事前確定届出給与を支給することを決議したとします。


この場合、定時株主総会開催日である令和8年6月20日を「職務の執行の開始の日」として取り扱えるのであれば、その日から1か月を経過する日が届出期限の一つになります。


したがって、事前確定届出給与に関する届出書の提出期限を管理する際には、定時株主総会開催日を正確に把握し、遅れないように提出する必要があります。


もちろん、実際の届出期限は、決議日から1か月、職務執行開始日から1か月、会計期間開始日から4か月などの関係を踏まえて確認する必要があります。


定時株主総会を実際に開催していることが重要

特例有限会社でも定時株主総会開催日を職務執行開始日として取り扱えるからといって、形式だけ整えればよいわけではありません。


実際に、毎事業年度終了後の一定の時期に定時株主総会を開催し、計算書類の承認や役員給与の決定を行なっていることが重要です。


中小企業では、株主が少数であることから、定時株主総会の開催や議事録作成が形式的になりがちです。

しかし、事前確定届出給与の届出期限を判断するうえで、定時株主総会開催日は重要な基準になります。


したがって、特例有限会社で役員賞与を損金算入したい場合には、定時株主総会を適切に開催し、議事録を作成・保存しておくことが大切です。


議事録に残すべき内容

特例有限会社が事前確定届出給与を支給する場合、定時株主総会議事録には、少なくとも次のような内容を明確に残しておきましょう。

  • 定時株主総会の開催日

  • 出席株主

  • 決議事項

  • 役員給与の決定内容

  • 事前確定届出給与の支給対象者

  • 支給時期

  • 支給金額

  • 職務執行期間との関係

  • 決議日と支給内容の確定


特に、支給時期と支給金額は、届出書の記載内容と一致している必要があります。

議事録と届出書の内容がずれていると、税務調査で問題になる可能性があります。


届出内容と実際の支給を一致させる

事前確定届出給与では、届出期限だけでなく、届出内容どおりに支給することも非常に重要です。


届出書に「12月20日に100万円」と記載していたにもかかわらず、実際には12月25日に100万円を支給した場合や、12月20日に90万円を支給した場合には、届出どおりに支給したとはいえません。


その結果、事前確定届出給与として損金算入が認められない可能性があります。


特例有限会社であっても、この点は通常の株式会社と同じです。

事前確定届出給与を利用する場合には、定時株主総会議事録、届出書、実際の支給日・支給額を厳密に一致させる必要があります。


特例有限会社でよくあるミス

特例有限会社で事前確定届出給与を利用する場合、次のようなミスが起こりやすいです。


  • 定時株主総会を開催していない

特例有限会社では、実務上、株主総会を明確に開催していない会社もあります。

しかし、定時株主総会開催日を職務執行開始日とするのであれば、その開催事実と議事録が重要になります。


  • 議事録に事前確定届出給与の内容が書かれていない

役員報酬総額だけを決議し、役員賞与の支給時期・支給額が明確でない場合、事前確定届出給与としての根拠が弱くなります。


  • 届出期限を誤る

特例有限会社には任期がないため、職務執行開始日を曖昧にしたまま届出期限を判断すると、提出遅れが生じる可能性があります。


  • 届出書と実際の支給がずれる

支給日や支給額が届出内容と異なると、損金算入できないリスクがあります。


  • 定款変更が必須だと誤解する

今回の確認内容によれば、特例有限会社で事前確定届出給与を利用するために、必ずしも定款等で役員任期を定める必要はありません。


定款で任期を定める方法も否定されない

今回のポイントは、特例有限会社で事前確定届出給与を利用するために、必ずしも定款等で役員任期を定める必要はないという点です。


一方で、定款等を変更して役員の任期や職務執行期間を明確にする方法が否定されるわけではありません。


会社の実情によっては、定款に役員任期を定めることで、職務執行期間や役員給与の対価関係をより明確にできる場合もあります。


ただし、定款変更には株主総会決議などの手続が必要です。

実務上は、定款変更を行うかどうかよりも、毎年の定時株主総会で役員給与を適切に決議し、議事録と届出書を整合させることが重要です。


合同会社の場合はどうなるか

合同会社には、株式会社のように株主総会で役員報酬を決定する制度や、株主総会で計算書類の承認を受ける制度はありません。


そのため、業務執行社員の職務執行開始日がいつなのかが分かりにくいという問題があります。この点については、東京国税局の文書回答事例で、定時社員総会の開催日を業務執行社員の職務執行開始日としている合同会社について、その開催日を職務執行開始日として差し支えないことが示されています。


つまり、合同会社でも、定時社員総会を設け、その日を職務執行開始日として整理している場合には、その日を起点に事前確定届出給与の届出期限を判断できる可能性があります。


会社形態ごとに職務執行開始日を確認する

事前確定届出給与では、会社形態によって職務執行開始日の考え方が変わる場合があります。


通常の株式会社では、定時株主総会で選任・再任された役員について、その定時株主総会開催日が職務執行開始日となるのが一般的です。


特例有限会社では、取締役の任期規定が適用されないものの、定時株主総会開催日を職務執行開始日として取り扱うことが認められると考えられます。


合同会社では、株式会社のような制度がないため、定時社員総会を開催し、その日を業務執行社員の職務執行開始日としているかどうかが重要になります。


このように、同じ事前確定届出給与でも、会社形態や社内手続に応じて届出期限の起算日を確認する必要があります。


実務で確認したいチェックリスト

特例有限会社が事前確定届出給与を利用する場合、次の点を確認しましょう。

  • 定時株主総会を開催しているか

  • 定時株主総会の開催日が明確か

  • 役員給与の決議を行っているか

  • 事前確定届出給与の支給時期・支給額を決議しているか

  • 定時株主総会議事録を作成・保存しているか

  • 職務執行開始日を定時株主総会開催日として整理しているか

  • 届出期限を正しく計算しているか

  • 事前確定届出給与に関する届出書を期限内に提出しているか

  • 届出書の内容と議事録の内容が一致しているか

  • 実際の支給日・支給額が届出内容と一致しているか

  • 定款変更が必要かどうか検討しているか

  • 過去の運用と整合しているか


特に、支給日と支給額のズレは損金算入否認につながりやすいため、実際の支給時には再確認が必要です。


まとめ

事前確定届出給与を損金算入するためには、支給額や支給時期を記載した届出書を、一定の期限までに所轄税務署長へ提出する必要があります。


この届出期限を判断するうえで重要なのが、職務の執行の開始の日です。

通常の株式会社では、定時株主総会で役員に選任され、その日に就任した者や、再任された役員について、その定時株主総会の開催日が職務執行開始日とされています。


一方、特例有限会社については、会社法上、取締役の任期に関する定めが適用されません。そのため、職務執行開始日を明らかにするため、定款等を変更して役員の任期を定める必要があるのではないかという問題がありました。


この点について、国税庁への確認により、特例有限会社においては、必ずしも定款等で役員任期を定めることは求められず、定時株主総会の開催日を「職務の執行の開始の日」として取り扱えることが確認されています。


特例有限会社は、旧有限会社が会社法上の株式会社として存続しているものであり、取締役の任期規定は適用されないものの、基本的には株式会社として会社法の規定が適用されます。そのため、毎事業年度終了後の一定の時期に定時株主総会を開催する義務があると考えられます。


また、特例有限会社でも、役員の選任や職務執行の対価の決定は株主総会決議により行われ、取締役は計算書類を毎事業年度の定時株主総会に提出し、その承認を受けることになります。このため、一般的には、特例有限会社の役員給与は、定時株主総会から次の定時株主総会までの間の職務執行の対価と見ることができます。


したがって、特例有限会社の定時株主総会において役員に選任され、その日に職務に就いた者や、その定時株主総会の日に現に役員である者については、一般的に、その定時株主総会開催日を職務執行開始日と考えることができます。


特例有限会社で事前確定届出給与を利用する場合には、定時株主総会の開催日、役員給与の決議内容、支給時期・支給額、届出書の提出期限を正確に管理しましょう。また、届出内容どおりに支給しなければ損金算入が認められないリスクがあるため、議事録・届出書・実際の支給内容を必ず一致させることが重要です。


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【この記事の執筆者】

安田 亮(公認会計士・税理士)

安田亮公認会計士・税理士事務所 代表

京都大学経済学部在学中に公認会計士試験に合格。有限責任 あずさ監査法人、株式会社神戸製鋼所での実務経験を経て、2018年に神戸市で独立。

現在は、中小企業から上場企業に対する税務顧問、決算支援、税効果会計、連結決算、新リース会計基準への対応、組織再編、補助金・助成金に関する支援などを行なっています。また、金融機関や大手企業が運営する税務・会計・経営分野のWebメディアにおいて、記事の執筆・監修にも携わっています。

事務所ブログでは、税制改正や会計基準、経営実務に関する情報を、専門用語をできるだけかみ砕き、経営者や経理担当者の方に役立つ形で解説しています。

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