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副業収入は事業所得?雑所得?300万円基準と帳簿保存のポイントを税理士が解説

  • 執筆者の写真: 安田 亮
    安田 亮
  • 1 日前
  • 読了時間: 14分

こんにちは!代表の安田です。


会社員の副業が一般的になり、確定申告の場面で「副業収入は事業所得になるのか、それとも雑所得になるのか」という相談が増えています。


副業の内容はさまざまです。

Webライター、動画編集、デザイン、プログラミング、コンサルティング、講師業、せどり、ハンドメイド販売、SNS運用、アフィリエイト、配達業務など、会社の給与とは別に収入を得る方は珍しくありません。


ここで問題になるのが、所得区分です。

副業収入が事業所得になるのか、業務に係る雑所得になるのかによって、青色申告の可否、損益通算の可否、帳簿書類の保存義務などが変わります。


特に、赤字の副業を事業所得として申告し、給与所得と損益通算するようなケースでは、税務上の判断が重要になります。


本日は、副業収入の所得区分について、国税庁の改正所得税基本通達を踏まえながら、事業所得と雑所得の違い、300万円基準、帳簿書類の保存、赤字副業の注意点を解説します。


副業収入の所得区分が重要な理由

所得税では、収入の性質に応じて所得区分が分かれています。

副業収入で問題になりやすいのは、主に次の2つです。

  • 事業所得

  • 雑所得(特に業務に係る雑所得)


事業所得とは、農業、漁業、製造業、卸売業、小売業、サービス業その他の事業から生じる所得をいいます。


一方、雑所得は、利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得、譲渡所得、一時所得のいずれにも該当しない所得です。


副業が事業として行なわれていると認められれば事業所得になります。

しかし、事業といえるほどの規模や実態がない場合には、業務に係る雑所得として扱われることがあります。


所得区分を誤ると、税額だけでなく、申告書の内容、帳簿保存、税務調査での説明にも影響します。


事業所得と雑所得の大きな違い

副業収入が事業所得になるか雑所得になるかで、実務上大きく違うのが損益通算です。


事業所得で赤字が出た場合、その赤字は、原則として給与所得など他の所得と損益通算できます。

たとえば、会社員の給与所得があり、副業の事業所得が赤字であれば、その赤字を給与所得と通算し、所得税の負担が減ることがあります。


一方、業務に係る雑所得の赤字は、給与所得など他の所得と損益通算できません。


つまり、副業収入が雑所得に該当する場合、副業で赤字が出ても、給与所得から差し引くことはできないのです。

このため、副業を赤字の事業所得として申告し、給与所得と損益通算する節税スキームが問題視されてきました。


今回の通達改正は、こうした申告実務にも大きく関係します。


「副業収入300万円以下は雑所得」という案は削除された

令和4年に国税庁が示した当初の改正案では、副業収入について「その所得が主たる所得でなく、かつ、その所得に係る収入金額が300万円を超えない場合には、特に反証がない限り、雑所得に該当する」という内容が示されていました。


この案は大きな反響を呼びました。

  • 副業収入300万円以下なら一律に雑所得になるのか

  • 主たる所得とは何を指すのか

  • 反証とはどのような資料なのか


このような疑問が多く寄せられ、意見募集では7,000件を超える意見が集まったとされています。


その後、公表された改正通達では、「副業収入300万円以下は原則雑所得」という内容は削除されました。したがって、現在は、単に収入金額が300万円以下であることだけを理由に、一律で雑所得と判断するわけではありません。


原則は社会通念で判定する

副業収入が事業所得に該当するかどうかは、その所得を得るための活動が、社会通念上、事業と称するに至る程度で行われているかどうかで判定します。


これは、金額だけで決まるものではありません。

社会通念上、事業といえるかどうかは、次のような事情を総合的に見て判断します。

  • 営利性や有償性があるか

  • 継続性や反復性があるか

  • 自己の危険と計算で企画遂行しているか

  • その活動にどの程度の労力をかけているか

  • 人的設備や物的設備があるか・取引の目的は何か

  • 本人の職歴、社会的地位、生活状況との関係


たとえば、継続的に顧客を獲得し、売上を伸ばすために営業活動を行ない、帳簿を付け、必要な設備や時間を投下している場合には、事業所得に近いと考えられます。


一方、趣味の延長でたまに収入があるだけ、赤字を解消する努力がない、帳簿も保存していない、といった場合には、事業所得とは認められにくくなります。


帳簿書類の保存がある場合は概ね事業所得

改正通達では、事業所得への該当性は社会通念で判定することを原則としつつ、その所得に係る取引を記録した帳簿書類の保存がある場合には、概ね事業所得に該当することが示されています。


これは、帳簿を作成し、請求書や領収書などの書類を保存している場合、その活動について営利性、継続性、企画遂行性などがあると考えられることが多いためです。


ただし、ここで注意したいのは、「帳簿書類を保存していれば必ず事業所得になる」という意味ではない点です。


帳簿書類の保存は重要な判断要素ですが、最終的には社会通念で判断されます。

たとえば、形式的に帳簿を作っていても、実態として営利性がない場合や、収入規模が僅少な場合には、雑所得と判断されることがあります。


帳簿書類の保存がない場合は雑所得になりやすい

改正後の所得税基本通達では、その所得に係る取引を記録した帳簿書類の保存がない場合には、原則として業務に係る雑所得に該当することが示されています。


ただし、収入金額が300万円を超え、かつ、事業所得と認められる事実がある場合は別です。つまり、帳簿書類を保存していない副業については、事業所得として申告するハードルが高くなります。


副業を事業所得として申告したい場合、最低限、次のような資料を整備しておく必要があります。

  • 売上帳

  • 経費帳

  • 預金通帳

  • 請求書

  • 領収書

  • 契約書

  • 業務委託契約書

  • 入金明細

  • クレジットカード明細

  • 取引先とのメールや発注書


帳簿書類の保存は、単なる形式ではありません。

その副業が事業として行われていることを説明するための基礎資料になります。


収入300万円以下でも事業所得になることはある

副業収入が300万円以下であっても、直ちに雑所得になるわけではありません。


帳簿書類を保存しており、営利性、継続性、反復性、企画遂行性などから見て、社会通念上事業といえる場合には、事業所得と判断される可能性があります。

たとえば、次のようなケースです。

  • 継続的に取引先と契約している

  • 毎月売上が発生している

  • 広告宣伝や営業活動を行なっている

  • 事業用のWebサイトや名刺を用意している

  • 業務に必要な設備やソフトウェアを用意している

  • 売上、経費、入出金を帳簿で管理している

  • 黒字化に向けた具体的な取組をしている


このような実態があれば、収入が300万円以下であっても、事業所得として認められる余地があります。


一方で、収入が300万円を少し超えていても、帳簿がなく、事業実態も乏しければ、事業所得と認められるとは限りません。


収入300万円以下で主たる収入の10%未満なら注意

国税庁の解説では、帳簿書類の保存があっても、一定の場合には自動的に事業所得に区分されるわけではなく、個別に判断するとされています。


その一つが、収入金額が僅少と認められる場合です。

具体的には、その所得の収入金額が例年、概ね3年程度、300万円以下で、主たる収入に対する割合が10%未満の場合には、僅少と認められる場合に該当すると考えられます。


たとえば、給与収入が800万円あり、副業収入が50万円程度で、これが数年続いている場合を考えます。


副業収入は300万円以下であり、給与収入に対する割合も10%未満です。

このような場合、帳簿を保存していたとしても、その副業が社会通念上事業といえるかどうかを個別に判断する必要があります。


つまり、300万円基準は一律の線引きではありませんが、雑所得と判断されやすい目安として意識すべき基準です。


例年赤字で営利性がない場合も注意

もう一つ注意したいのが、営利性が認められない場合です。


国税庁の解説では、その所得が例年赤字であり、かつ、赤字を解消するための取組を実施していない場合には、営利性が認められない場合に該当すると考えられます。


たとえば、毎年、副業の売上は少額で、経費ばかりが多く、赤字が続いているとします。

さらに、売上を増やすための営業活動や、経費を見直して黒字化する取組も行っていない場合には、事業としての営利性が疑われます。


このような場合、帳簿書類を保存していても、事業所得ではなく雑所得と判断される可能性があります。


赤字であること自体が直ちに問題になるわけではありません。

開業初期や設備投資のタイミングでは赤字になることもあります。

重要なのは、黒字化を目指して事業として取り組んでいる実態があるかどうかです。


赤字副業と給与所得の損益通算には要注意

副業が事業所得であれば、原則として赤字を給与所得などと損益通算できます。


しかし、雑所得に該当する場合には、赤字を給与所得と通算することはできません。

そのため、実態として事業といえない副業を赤字の事業所得として申告し、給与所得と損益通算することはリスクがあります。たとえば、次のようなケースは注意が必要です。

  • 副業収入がほとんどない

  • 毎年赤字が続いている

  • 高額な経費を計上している

  • 売上を増やす努力が見られない

  • 帳簿や証憑が不十分

  • 趣味や自己消費に近い支出が多い

  • 給与所得の節税目的が強い


税務調査で雑所得と判断されると、損益通算が否認され、追徴税額が発生する可能性があります。副業を事業所得として申告する場合は、収入規模、継続性、営利性、帳簿書類の保存をしっかり確認しましょう。


業務に係る雑所得でも経費は引ける

副業収入が雑所得に該当すると聞くと、「経費が一切認められない」と誤解されることがあります。


しかし、業務に係る雑所得であっても、その収入を得るために直接必要な経費は、必要経費として差し引くことができます。


たとえば、Webライターであれば、取材費、通信費、業務用ソフトの利用料、資料代などが考えられます。


動画編集であれば、編集ソフト、素材購入費、業務用機材の一部などが経費になることがあります。


ただし、雑所得の赤字は、給与所得など他の所得とは損益通算できません。

つまり、雑所得でも経費は差し引けますが、結果として赤字になった場合、その赤字を給与所得から差し引くことはできないということです。


青色申告を使えるのは事業所得

副業が事業所得に該当する場合、一定の手続きを行なえば青色申告を選択できます。

青色申告には、次のようなメリットがあります。

  • 青色申告特別控除

  • 青色事業専従者給与

  • 純損失の繰越控除

  • 貸倒引当金など一定の特典


一方、業務に係る雑所得については、青色申告の対象になりません。

そのため、青色申告承認申請書を提出していても、その副業収入が雑所得と判断されれば、青色申告の特典は使えません。


「青色申告の承認を受けたから事業所得になる」というわけではない点に注意が必要です。

先に事業所得に該当する実態があり、そのうえで青色申告を適用できる、という順番で考える必要があります。


帳簿書類の保存で整えておきたいもの

副業を事業所得として申告したい場合には、帳簿書類の保存が非常に重要です。

最低限、次のような資料を整えておきましょう。

  • 売上の記録

  • 経費の記録

  • 入出金明細

  • 請求書

  • 領収書

  • 契約書

  • 見積書

  • 納品書

  • 取引先とのメール

  • 業務用口座の通帳

  • クレジットカード明細

  • 棚卸表(物販の場合)

  • 固定資産台帳(機材等を購入した場合)


帳簿は、会計ソフトを使って作成しても構いません。

大切なのは、取引内容、日付、相手先、金額、内容が分かるように記録し、その根拠資料を保存しておくことです。


また、事業用口座や事業用クレジットカードを分けると、プライベート支出との区別がしやすくなります。


事業所得として説明しやすい実態づくり

副業を事業所得として申告するのであれば、帳簿を作るだけでなく、事業としての実態も整えることが大切です。たとえば、次のような点を意識しましょう。

  • 継続的に売上を得るための営業活動を行なう

  • 取引先を増やす努力をする

  • 業務用のWebサイトやポートフォリオを整える

  • 価格表やサービス内容を明確にする

  • 契約書や発注書を残す

  • 収支計画を作る

  • 赤字の場合は改善策を実施する

  • 業務時間や作業内容を記録する

  • 事業用資産や設備を管理する


税務上は、名前だけ「副業」かどうかではなく、実態が重要です。

会社員であっても、本気で継続的に事業として取り組んでいれば、事業所得と認められる可能性があります。


逆に、屋号を付けていても、実態が趣味や単発収入に近ければ、雑所得と判断される可能性があります。


暗号資産の所得区分にも注意

副業収入の取扱いに加えて、改正通達で「その他雑所得」の例示に、譲渡所得の基因とならない資産の譲渡から生ずる所得が追加されています。


譲渡所得の基因とならない資産の例としては、暗号資産などが挙げられます。

暗号資産の売却益は、通常、譲渡所得ではなく雑所得に該当します。

ただし、営利を目的として継続的に暗号資産の譲渡を行なっている場合には、業務に係る雑所得に該当する可能性があります。


副業として暗号資産取引をしている場合も、所得区分や損益通算の可否には注意が必要です。暗号資産の損失は、原則として給与所得などと損益通算できません。


副業収入を申告するときのチェックポイント

副業収入がある場合は、確定申告前に次の点を確認しましょう。

  • 副業の内容は何か

  • 継続的、反復的に行なっているか

  • 営利目的で行なっているか

  • 自己の危険と計算で行なっているか

  • 帳簿書類を作成・保存しているか

  • 収入金額はいくらか

  • 主たる収入に対する割合はどの程度か

  • 例年赤字になっていないか

  • 赤字を解消する取組をしているか

  • 青色申告を適用できる実態があるか

  • 雑所得の場合、赤字を給与所得と通算していないか

  • 必要経費とプライベート支出を区分しているか


特に、給与所得者が副業赤字を事業所得として申告する場合には、慎重な判断が必要です。

「帳簿があるから大丈夫」と安易に考えず、事業としての実態を総合的に確認しましょう。


よくある誤解

副業収入の所得区分について、実務上よくある誤解を整理します。


  • 副業収入が300万円以下なら必ず雑所得

現在の取扱いでは、300万円以下というだけで一律に雑所得になるわけではありません。帳簿書類の保存や事業としての実態を踏まえて判断します。


  • 帳簿を付けていれば必ず事業所得

帳簿書類の保存がある場合は概ね事業所得とされますが、例年赤字で営利性がない場合や、収入規模が僅少な場合には、個別判断となります。


  • 青色申告の承認を受けていれば事業所得

青色申告は事業所得等に適用できる制度ですが、青色申告承認申請書を出しただけで、実態のない副業が事業所得になるわけではありません。


  • 雑所得なら経費は引けない

業務に係る雑所得でも必要経費は差し引けます。ただし、赤字になっても給与所得などとは損益通算できません。


まとめ

副業収入が事業所得になるか、業務に係る雑所得になるかは、所得税の申告で非常に重要な論点です。


令和4年の所得税基本通達の改正により、当初案にあった「副業収入300万円以下は原則雑所得」という取扱いは削除されました。


現在は、事業所得に該当するかどうかは、その所得を得るための活動が、社会通念上、事業と称するに至る程度で行なわれているかどうかで判定します。

そのうえで、その所得に係る取引を記録した帳簿書類を保存している場合には、概ね事業所得に該当するとされています。


ただし、帳簿書類を保存していれば必ず事業所得になるわけではありません。

例年、収入金額が300万円以下で、主たる収入に対する割合が10%未満のように収入が僅少な場合や、例年赤字で赤字を解消するための取組をしていない場合には、事業所得ではなく雑所得と判断される可能性があります。


また、帳簿書類の保存がない場合には、収入金額が300万円を超え、かつ事業所得と認められる事実がある場合を除き、原則として業務に係る雑所得に該当します。

副業が雑所得になる場合でも、必要経費は差し引けます。


しかし、雑所得の赤字は給与所得などと損益通算できません。

副業を事業所得として申告したい場合は、帳簿書類の保存だけでなく、営利性、継続性、反復性、企画遂行性、黒字化への取組など、事業としての実態を整えておくことが大切です。


副業収入の所得区分や確定申告で迷う場合は、早めに税理士へ相談することをおすすめします。


神戸での起業や開業に関するご相談、顧問税理士をお探しの方は安田亮公認会計士・税理士事務所までお問い合わせください!


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【この記事の執筆者】

安田 亮(公認会計士・税理士)

安田亮公認会計士・税理士事務所 代表

京都大学経済学部在学中に公認会計士試験に合格。有限責任 あずさ監査法人、株式会社神戸製鋼所での実務経験を経て、2018年に神戸市で独立。

現在は、中小企業から上場企業に対する税務顧問、決算支援、税効果会計、連結決算、新リース会計基準への対応、組織再編、補助金・助成金に関する支援などを行なっています。また、金融機関や大手企業が運営する税務・会計・経営分野のWebメディアにおいて、記事の執筆・監修にも携わっています。

事務所ブログでは、税制改正や会計基準、経営実務に関する情報を、専門用語をできるだけかみ砕き、経営者や経理担当者の方に役立つ形で解説しています。

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