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関連当事者との取引とは?通常の取引過程から外れた重要な取引の注意点を公認会計士が解説

  • 執筆者の写真: 安田亮
    安田亮
  • 18 時間前
  • 読了時間: 13分

こんばんは!代表の安田です。


会社と役員、主要株主、親会社、子会社、関連会社などとの取引は、一般の第三者との取引とは異なる注意が必要です。


なぜなら、関連当事者との取引は、必ずしも対等な立場で行われるとは限らないからです。

たとえば、役員が関係する会社との取引、親会社や子会社との資金取引、主要株主との資産売買、役員からの会社買収、無償または低廉なサービス提供などは、取引条件が通常の市場条件と異なる可能性があります。


このような取引は、会社の財政状態や経営成績に重要な影響を与えることがあります。そのため、会計上も開示上も、そして監査上も慎重な検討が求められます。


特に注意すべきなのが、「通常の取引過程から外れた関連当事者との重要な取引」です。


本日は、関連当事者との取引とは何か、通常の取引過程から外れた重要な取引の具体例、事業上の合理性の検討、取締役会承認、開示項目、個人名開示の注意点について、公認会計士の視点からわかりやすく解説します。


関連当事者との取引とは

関連当事者との取引とは、会社と、その会社に重要な影響を及ぼす可能性のある者や会社との取引をいいます。代表的な関連当事者としては、次のようなものがあります。

  • 親会社

  • 子会社

  • 関連会社

  • 主要株主

  • 役員、役員の近親者

  • 重要な子会社の役員

  • 役員や主要株主が支配する会社


関連当事者との取引自体が禁止されているわけではありません。

グループ会社間の取引、役員からの借入、子会社への経営指導、親会社との資金取引などは、実務上よく見られます。


しかし、関連当事者との取引は、通常の第三者取引とは異なり、会社と相手方が完全に独立した立場にないことがあります。


そのため、取引条件が公正か、会社に不利益がないか、財務諸表利用者に必要な情報が開示されているかを確認する必要があります。


なぜ関連当事者取引は慎重な検討が必要なのか

関連当事者取引が慎重に扱われる理由は、会社の財務諸表に重要な影響を及ぼす可能性があるためです。


通常の第三者取引であれば、価格や条件は市場原理に基づいて決まりやすいといえます。買い手と売り手が独立した立場にあれば、双方が自社にとって不利にならないよう交渉するからです。


一方、関連当事者との取引では、必ずしもそのような牽制が働くとは限りません。

たとえば、役員が関係する会社に有利な条件で資産を売却したり、親会社の都合で子会社が不利な契約を締結したり、主要株主の関係会社から市場価格より高く資産を購入したりする可能性があります。


また、関連当事者を利用すれば、売上の前倒し、利益の調整、資産流用の隠蔽、不自然な資金移動などが行われるリスクもあります。


そのため、関連当事者との通常の取引過程から外れた重要な取引については、監査上も不正リスクの観点から慎重に検討されます。


通常の取引過程から外れた重要な取引とは

通常の取引過程から外れた重要な取引とは、会社が日常的・反復的に行なっている通常の営業取引とは異なる性質を持つ、重要な関連当事者取引をいいます。

具体例としては、次のような取引が挙げられます。

  • 複雑な株式や持分の取引

  • リストラクチャリングや買収

  • 無償または低廉なリース取引

  • 無償または低廉な経営指導

  • 通常ではない多額の値引や返品を伴う販売

  • 買戻し義務を伴う循環取引

  • 契約条件が期限前に変更された取引

  • 第三者を形式的に経由した関連当事者との取引


これらの取引は、取引内容が複雑であったり、市場条件と異なっていたり、経営者の判断が強く関与していたりすることがあります。


そのため、取引の目的、背景、経済的合理性、承認プロセス、会計処理、開示内容を丁寧に確認する必要があります。


事業上の合理性を説明できるか

通常の取引過程から外れた関連当事者取引で最も重要なのが、事業上の合理性です。


事業上の合理性とは、その取引を行う経済的・事業的な理由があるかということです。

たとえば、会社が関連当事者から資産を購入する場合、なぜその資産が必要なのか、なぜその相手方から購入するのか、価格は妥当なのか、第三者から購入する場合と比べて不利でないのかを説明できる必要があります。


逆に、事業上の合理性が乏しい取引は、不正な財務報告や資産流用を隠蔽する目的で行なわれた可能性を疑われることがあります。特に、次のような取引は注意が必要です。

  • 取引が非常に複雑である

  • 契約条件が通常と異なる

  • 価格、金利、保証、返済条件が市場条件と異なる

  • 事業上の必要性が不明確である

  • 従来識別されていない関連当事者が関与している

  • 通常とは異なるスキームで処理されている

  • 会計上の処理ありきで取引が組まれている


このような場合には、監査人から詳細な説明を求められる可能性があります。


自社だけでなく相手方にとっての合理性も重要

関連当事者取引では、自社にとっての合理性だけでなく、関連当事者側から見た合理性も重要です。


通常、取引は双方にとって何らかの経済的合理性があるはずです。

もし自社にとっては有利だが、相手方にとって著しく不利な取引であれば、なぜ相手方がその条件を受け入れたのかを説明する必要があります。


反対に、相手方にとって有利だが、自社にとって不利な取引であれば、会社財産の流出や利益相反が疑われることがあります。


たとえば、役員が支配する会社から高額で資産を購入した場合、相手方にとっては利益がありますが、自社にとって合理的かどうかが問題になります。


関連当事者取引では、取引当事者双方の視点から、価格、条件、目的、背景を整理しておくことが重要です。


経営者の説明と契約条件が整合しているか

監査上、経営者の説明と契約条件が整合しているかも重要な検討ポイントです。


たとえば、経営者が「通常の市場価格で取引している」と説明しているにもかかわらず、契約書を見ると支払条件や保証条件が通常と大きく異なる場合、説明の信頼性に疑問が生じます。


また、「短期的な資金繰り支援」と説明されているにもかかわらず、契約上は長期間返済不要になっている場合や、「一時的な販売促進」と説明されているにもかかわらず、継続的に多額の値引が行われている場合も注意が必要です。


経営者の説明が取引条件と著しく矛盾する場合、その取引だけでなく、他の重要な説明の信頼性も疑われる可能性があります。


そのため、関連当事者取引については、契約書、取締役会議事録、稟議書、価格算定資料、第三者評価書、メールや交渉記録などを整理し、説明と証拠が整合している状態にしておくことが大切です。


取締役会で適切に承認されているか

関連当事者との通常の取引過程から外れた重要な取引では、取引に関する権限付与と承認も重要です。


特に、会社と役員との利益相反が疑われる取引では、会社法上の利益相反取引として、取締役会の承認や事後報告が必要になる場合があります。


たとえば、会社が役員から資産を購入する場合や、役員が関係する会社と取引する場合には、会社と役員の利益が相反する可能性があります。


このような取引について、取締役会で十分に検討されず、形式的な承認だけで進められている場合、ガバナンス上の問題が生じます。


監査上も、適切な階層で承認されているか、取締役会や監査役等と協議されているかが確認されます。関連当事者取引では、後から「知らなかった」「通常取引だと思っていた」とならないよう、事前に承認プロセスを整理することが重要です。


重要な子会社の役員との取引にも注意

関連当事者の範囲には、重要な子会社の役員も含まれる場合があります。


ここで注意したいのは、「重要な子会社の役員」という表現の「重要な」が、子会社ではなく役員にかかるという点です。


つまり、単に子会社が重要かどうかだけではなく、会社グループの事業運営に強い影響力を持つ役員かどうかが問題になります。


たとえば、グループの中核事業を子会社が担っており、その子会社の役員が重要な業務を指示・統制している場合、その役員は関連当事者に該当する可能性があります。


したがって、親会社の役員や主要株主だけでなく、子会社の役員との取引についても、関連当事者取引として検討が必要になることがあります。


グループ会社が多い企業では、関連当事者の範囲を正確に把握する体制が重要です。


第三者を形式的に経由した取引

関連当事者取引では、形式上は第三者との取引に見えても、実質的には関連当事者との取引と判断される場合があります。


たとえば、会社が第三者からある会社を買収したとします。

しかし、その直前に、その第三者が会社の役員から当該会社を取得していた場合、形式上は第三者との取引でも、実質的には役員からの取得取引とみられる可能性があります。


また、第三者が取引資金を関連当事者から借りている場合や、関連当事者の指示に基づいて第三者が介在している場合も注意が必要です。


このように、名目的に第三者を経由していても、実質上の相手方が関連当事者であることが明確な場合には、関連当事者との取引として開示対象に含める必要があります。


形式だけで判断せず、資金の流れ、取引の背景、所有権の移転時期、関係者の意思決定を確認することが重要です。


関連当事者取引の開示項目

関連当事者との取引については、一定の事項を財務諸表に注記する必要があります。

主な開示項目は、次のとおりです。

  • 関連当事者の概要

  • 会社と関連当事者との関係

  • 取引の内容

  • 取引の種類ごとの取引金額

  • 取引条件および取引条件の決定方針

  • 取引により発生した債権債務の主な科目別期末残高

  • 取引条件の変更があった場合の内容と影響

  • 貸倒懸念債権や破産更生債権等に関する情報


重要なのは、単に取引金額を記載するだけではないという点です。

財務諸表利用者が、その取引の性質、条件、公正性、会社への影響を理解できるように記載する必要があります。


特に、通常の取引過程から外れた関連当事者取引では、取引条件の決定方針や事業上の合理性が重要になります。


個人の関連当事者は氏名開示が必要

関連当事者が個人である場合、関連当事者の概要として、氏名、職業、財務諸表作成会社の議決権に対する所有割合などの記載が求められます。


実務上、「役員の氏名は個人情報なので開示しないことはできないか」という疑問が生じることがあります。


しかし、関連当事者取引の注記において、関連当事者が個人である場合に氏名を記載しないことは認められません。


金融商品取引法上の開示規定に基づいて個人名の開示が求められているため、個人情報であることを理由に氏名の開示を省略することはできないとされています。


したがって、役員や主要株主など個人の関連当事者との取引がある場合には、開示されることを前提として、取引の必要性、条件、承認プロセスを十分に整理しておく必要があります。


関連当事者取引は内部統制も重要

関連当事者取引を適切に把握・開示するためには、内部統制が重要です。

関連当事者取引は、通常の販売・購買システムだけでは十分に把握できないことがあります。


たとえば、役員の親族が経営する会社、主要株主の関係会社、子会社役員が関与する取引などは、担当部門が関連当事者取引であると認識していない可能性があります。


そのため、会社は定期的に役員や主要株主から関連当事者情報を収集し、取引先マスタ、契約書、稟議書、支払先情報と照合する仕組みを整える必要があります。


また、通常と異なる価格や条件の取引、高額な資産売買、資金貸付、債務保証、無償取引などについては、関連当事者の関与がないかを確認することが望ましいです。


関連当事者取引は、発見できなければ開示も検討もできません。まずは網羅的に把握する体制が重要です。


IPO準備会社・中小企業が注意すべき点

関連当事者取引は、上場会社だけの問題ではありません。

IPO準備会社や中小企業でも、役員、株主、親族、グループ会社との取引は頻繁に発生します。


たとえば、社長個人からの借入、役員所有不動産の賃借、親族会社への外注、関連会社への資金貸付、オーナー関係会社との売買などです。


中小企業では、これらの取引が長年の慣行で行われており、契約書や承認手続が十分に整備されていないことがあります。


しかし、IPO準備やM&A、金融機関対応の場面では、関連当事者取引の公正性や開示が重要になります。


特に上場審査では、関連当事者取引の必要性、取引条件の妥当性、解消可能性、承認手続、利益相反の有無が確認されます。早い段階から、関連当事者取引を洗い出し、契約書、価格算定根拠、取締役会承認、開示方針を整備しておくことが大切です。


実務で確認すべきチェックポイント

関連当事者との通常の取引過程から外れた重要な取引を検討する際には、次の点を確認しましょう。

  • 関連当事者の範囲を正確に把握しているか

  • 重要な子会社の役員も確認対象に含めているか

  • 取引が通常の取引過程から外れていないか

  • 取引が複雑または通常と異なるスキームになっていないか

  • 価格、金利、保証、返済条件などが市場条件と整合しているか

  • 事業上の合理性を説明できるか

  • 自社だけでなく相手方にとっての合理性も説明できるか

  • 経営者の説明と契約条件が整合しているか

  • 第三者を形式的に経由した関連当事者取引ではないか

  • 取締役会や監査役等と十分に協議しているか

  • 利益相反取引として承認や事後報告が必要ないか

  • 関連当事者取引として必要な開示項目を把握しているか

  • 個人の関連当事者について氏名開示が必要であることを理解しているか

  • 関連当事者取引を網羅的に把握する内部統制があるか


関連当事者取引は、後から問題化すると修正が難しい論点です。取引を実行する前に、会計・税務・法務・監査の観点から確認することが重要です。


まとめ

関連当事者との取引は、会社の財政状態や経営成績に重要な影響を与える可能性があるため、会計上も開示上も慎重な対応が求められます。


特に、通常の取引過程から外れた重要な関連当事者取引は、取引が複雑であったり、市場条件と異なる条件で行われたり、不正リスク要因を含んだりする可能性があります。


具体例としては、複雑な株式や持分の取引、リストラクチャリング、買収、無償または低廉なリースや経営指導、通常ではない多額の値引や返品、循環取引、期限前に条件変更された契約などが挙げられます。


このような取引では、事業上の合理性、契約条件、経営者の説明との整合性、取締役会等での承認、利益相反の有無を確認する必要があります。


また、形式上は第三者との取引であっても、実質的に関連当事者との取引である場合には、関連当事者取引として開示対象に含める必要があります。


関連当事者取引の注記では、関連当事者の概要、会社との関係、取引内容、取引金額、取引条件、期末残高などを開示します。関連当事者が個人である場合には、氏名の開示が求められ、個人情報であることを理由に省略することは認められません。


関連当事者取引は、経理部門だけでは把握しきれないことがあります。役員、主要株主、グループ会社、子会社役員、親族関係会社などを含めて、網羅的に把握する内部統制が重要です。


上場会社、IPO準備会社、M&Aを検討している会社、中小オーナー企業は、関連当事者取引を早めに洗い出し、取引条件の妥当性、承認プロセス、開示方針を整理しておくことをおすすめします。


神戸での起業や開業に関するご相談、確定申告にお困りの方、顧問税理士をお探しの方は安田亮公認会計士・税理士事務所までお問い合わせください




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【この記事の執筆者】

安田 亮(公認会計士・税理士)

安田亮公認会計士・税理士事務所 代表

京都大学経済学部在学中に公認会計士試験に合格。有限責任 あずさ監査法人、株式会社神戸製鋼所での実務経験を経て、2018年に神戸市で独立。

現在は、中小企業から上場企業に対する税務顧問、決算支援、税効果会計、連結決算、新リース会計基準への対応、組織再編、補助金・助成金に関する支援などを行なっています。また、金融機関や大手企業が運営する税務・会計・経営分野のWebメディアにおいて、記事の執筆・監修にも携わっています。

事務所ブログでは、税制改正や会計基準、経営実務に関する情報を、専門用語をできるだけかみ砕き、経営者や経理担当者の方に役立つ形で解説しています。

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