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外貨建取引の会計処理とは?換算レート・為替差損益・決算時の注意点を税理士が解説

  • 執筆者の写真: 安田亮
    安田亮
  • 23 時間前
  • 読了時間: 10分

こんばんは!代表の安田です。


海外企業との取引や、外国通貨による仕入れ・売上が増えると、経理担当者が迷いやすいのが「外貨をいつ、どのレートで円換算するのか」という問題です。


たとえば、海外の仕入先に米ドルで前払いをしたものの、商品が納品されるのは翌月というケースがあります。この場合、送金時と納品時で為替レートが異なることも珍しくありません。


また、決算日に外貨建ての売掛金や買掛金が残っている場合には、決算時の為替レートによる換算が必要になることがあります。


本日は、法人が行う外貨建取引について、取引発生時の換算レート、前渡金の処理、決算時の換算方法、為替差損益の計上など、実務上のポイントを分かりやすく解説します。


外貨建取引とは

税務上の外貨建取引とは、原則として、その取引に係る支払いまたは受け取りが外国通貨で行われることとされている取引をいいます。


代表的なものとして、次のような取引があります。

  • 米ドル建てで商品を仕入れ、米ドルで代金を支払う

  • ユーロ建てで商品を販売し、ユーロで代金を受け取る

  • 外貨建てで資金を借り入れる

  • 外貨預金を保有する

  • 外貨建ての売掛金や買掛金が発生する


一方、契約金額が外国通貨で表示されていても、実際の支払いを日本円で行なうことが契約上決まっている取引は、法人税法上の外貨建取引には原則として該当しません。


したがって、外貨で金額が表示されているかだけでなく、実際にどの通貨で決済する契約になっているかを確認することが重要です。


外貨建取引は日本円に換算して記帳する

日本法人が作成する帳簿や法人税申告書は、日本円を基準として作成します。


そのため、ドルやユーロなどで取引を行った場合であっても、取引金額を日本円に換算して会計帳簿へ記録しなければなりません。


外貨建取引では、一般的に次の場面で円換算が問題になります。

  1. 売上や仕入れなどの取引が発生したとき

  2. 外貨建債権・債務を決済したとき

  3. 決算日に外貨建資産・負債が残っているとき


それぞれの時点で為替レートが異なる場合には、その差額が「為替差益」または「為替差損」として計上されます。


取引発生時は原則としてTTMで換算する

法人税の取扱いでは、外貨建取引の取引発生時における円換算は、原則として取引日のTTMを使用します。


TTMとは、銀行が公表する次の2つのレートの仲値です。

  • TTS:銀行が顧客に外貨を売る場合のレート

  • TTB:銀行が顧客から外貨を買う場合のレート

  • TTM:TTSとTTBの仲値


一般的には、次の計算式で求められます。

TTM=(TTS+TTB)÷2

原則は取引日のTTMですが、継続して適用することを条件に、次のような換算方法も認められています。

  • 売上、売掛金などの収益・資産にはTTBを使用する

  • 仕入れ、買掛金などの費用・負債にはTTSを使用する

  • 前月末や当月初のレートを使用する

  • 前月または一定期間の平均レートを使用する


ただし、都合のよいレートを取引ごとに使い分けることは適切ではありません。同じ種類の取引について、合理的な方法を継続して使用することが必要です。


社内レートを使用するときの注意点

取引件数が多い企業では、すべての取引について毎日の為替レートを確認するのは大きな負担になります。そのため、たとえば次のような社内ルールを設けることが考えられます。

  • 毎月、前月末のTTMを使用する

  • 毎月、前月平均のTTMを使用する

  • 売上にはTTB、仕入れにはTTSを使用する


重要なのは、採用した方法が合理的であり、毎期・毎月継続して適用されていることです。使用する金融機関やレートの取得元も、社内規程や経理マニュアルに記載しておくとよいでしょう。


外貨で前払いした場合の会計処理

海外の仕入先に商品代金を先払いするケースでは、支払時に「前渡金」を計上します。

たとえば、1米ドル=150円のときに1万米ドルを送金した場合、仕訳は次のようになります。

前渡金 1,500,000円/普通預金 1,500,000円

その後、商品が納品され、仕入れを計上するときには、前渡金の帳簿価額を仕入れへ振り替えます。

仕入高 1,500,000円/前渡金 1,500,000円

前渡金は、将来受け取る商品やサービスの代金として先に支払ったものであり、通常の外貨建売掛金・買掛金とは性質が異なります。


法人税基本通達でも、資産の売買代金に充てられる前渡金や前受金は、外貨建債権債務には含まれないとされています。したがって、原則として決算時に改めて為替換算する対象にはなりません。


また、前渡金に対応する商品などを取得した際には、前渡金の帳簿価額を用いて費用または資産へ振り替え、納品日のレートで再換算しない処理も認められています。


前払いが一部だけの場合

商品代金の一部だけを前払いしている場合には、処理を分けて考えます。

  • 前払いした部分:前渡金の帳簿価額で仕入れへ振り替える

  • 未払いの部分:商品納品日などの取引日のレートで買掛金を計上する


この区分をせずに代金全額を納品日のレートで計上すると、前払い部分について不要な為替差損益が生じる可能性があります。


決済時には為替差損益が発生する

外貨建ての売掛金や買掛金は、取引発生時の為替レートで計上します。


その後、実際に代金を受け取ったり支払ったりした際のレートが異なれば、帳簿価額と決済額との差額を為替差損益として処理します。


<買掛金を支払う場合の例>

1万米ドルの商品を、1米ドル=150円のときに仕入れたとします。

仕入高 1,500,000円/買掛金 1,500,000円

その後、支払時のレートが1米ドル=153円になり、153万円を支払った場合には、次のように処理します。

買掛金  1,500,000円/普通預金 1,530,000円      
為替差損   30,000円                 

円安になったことで、仕入計上時より支払額が3万円増えたため、為替差損が発生します。

反対に、支払時に円高となり、実際の支払額が帳簿上の買掛金より少なくなった場合には、為替差益を計上します。


決算時に残っている外貨建債権・債務の換算

決算日に外貨建ての売掛金、買掛金、貸付金、借入金などが残っている場合には、期末換算が必要かどうかを確認します。


外貨建債権・債務は、その支払期限などに応じて「短期」と「長期」に区分されます。


<短期外貨建債権債務>

原則として、決算日の翌日から1年以内に支払期限が到来するものです。

届出をしていない場合の法定換算方法は、原則として期末時換算法です。

期末時換算法では、決算日の為替レートを使って円換算し、帳簿価額との差額を当期の為替差損益として計上します。


<長期外貨建債権債務>

支払期限が決算日の翌日から1年を超えて到来するものなどが該当します。

届出をしていない場合の法定換算方法は、原則として発生時換算法です。


発生時換算法では、原則として取引発生時の円換算額を維持し、決算日のレートによる換算替えを行ないません。


なお、期限を過ぎて支払いが延滞している外貨建債権は、短期外貨建債権として扱われない点にも注意が必要です。


期末時換算法で使用するレート

期末時換算法を採用する場合は、原則として事業年度終了日のTTMを使用します。


ただし、継続適用を条件として、通貨ごとに次の方法を採用することもできます。

  • 外貨建資産:決算日のTTB

  • 外貨建負債:決算日のTTS


また、継続適用を条件に、決算日を含む1か月以内の一定期間の平均レートを使用することも認められています。


実務では、決算日の銀行公表レートを保存し、どの金融機関のどのレートを使用したかを説明できるようにしておくことが大切です。


換算方法を選択する場合は届出が必要

法人は、外貨建資産等の区分ごとに、一定の範囲で期末換算方法を選択できます。


法定換算方法とは異なる方法を採用する場合には、原則として「外貨建資産等の期末換算方法等の届出書」を税務署へ提出しなければなりません。


届出期限は、原則として、対象となる外貨建資産等が初めて発生した事業年度の確定申告書の提出期限までです。


一度選択した換算方法は継続して適用する必要があります。変更する場合には変更承認申請が必要となり、採用後3年を経過していない変更は、合併などの特別な事情がなければ認められにくい取扱いとなっています。


外貨建取引が初めて発生した年度は、確定申告前に次の点を必ず確認しましょう。

  • どの通貨の取引が発生したか

  • 外貨建資産・負債の種類は何か

  • 短期か長期か

  • 法定換算方法をそのまま採用するか

  • 別の換算方法を選択するか

  • 届出書の提出が必要か


外貨建取引で起こりやすい経理ミス

外貨建取引では、次のようなミスが起こりやすいため注意が必要です。


1.送金日のレートだけで全額を処理している

前渡金部分は送金時の帳簿価額を使用できますが、未払部分まで同じレートを使用できるとは限りません。前払い部分と未払い部分を分けて処理しましょう。


2.前渡金を決算日のレートで換算している

商品代金に充てられる前渡金は、原則として外貨建債権債務に該当しません。売掛金や買掛金と同じように期末換算しないよう注意が必要です。


3.短期と長期の区分を確認していない

支払期限によって法定換算方法が異なることがあります。契約書や請求書から支払期日を確認しましょう。


4.届出をせずに任意の換算方法を使用している

社内で採用している方法が税務上の法定換算方法と異なる場合、届出の有無を確認する必要があります。


5.為替レートの証拠を残していない

決算時や税務調査時に説明できるよう、銀行の公表レートや社内レートの計算資料を保存しておきましょう。


外貨建取引の決算チェックリスト

決算時には、少なくとも次の項目を確認することをおすすめします。

  • 外貨建ての売掛金・買掛金・貸付金・借入金がないか

  • 外貨預金や外国通貨を保有していないか

  • 前渡金・前受金と債権債務を正しく区分しているか

  • 支払期限から短期・長期を正しく判定しているか

  • 税務上の換算方法と会計処理が一致しているか

  • 換算方法の届出書を提出しているか

  • 届出どおりの方法を継続適用しているか

  • 使用した為替レートの資料を保存しているか

  • 為替差損益が正しく計上されているか


まとめ

外貨建取引では、単に外国通貨の金額を日本円へ置き換えればよいわけではありません。

取引発生時、前払い時、商品納品時、決済時、決算時のそれぞれで、適用すべき為替レートや会計処理が異なります。


特に注意したいポイントは、次のとおりです。

  • 取引発生時は原則として取引日のTTMで換算する

  • 合理的な社内レートを継続して使用することもできる

  • 商品代金に充てられる前渡金は、通常の外貨建債権債務とは扱いが異なる

  • 決済時の差額は為替差損益として処理する

  • 決算時は短期・長期の区分と換算方法を確認する

  • 法定換算方法以外を選択するときは届出が必要になることがある


外貨建取引は、取引件数が少ない会社ほど決算時に見落とされやすい項目です。海外取引を開始した場合や、決算日に外貨建ての残高がある場合には、早めに税理士へ相談することをおすすめします。


神戸での起業や開業に関するご相談、確定申告にお困りの方、顧問税理士をお探しの方は安田亮公認会計士・税理士事務所までお問い合わせください



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【この記事の執筆者】

安田 亮(公認会計士・税理士)

安田亮公認会計士・税理士事務所 代表

京都大学経済学部在学中に公認会計士試験に合格。有限責任 あずさ監査法人、株式会社神戸製鋼所での実務経験を経て、2018年に神戸市で独立。

現在は、中小企業から上場企業に対する税務顧問、決算支援、税効果会計、連結決算、新リース会計基準への対応、組織再編、補助金・助成金に関する支援などを行なっています。また、金融機関や大手企業が運営する税務・会計・経営分野のWebメディアにおいて、記事の執筆・監修にも携わっています。

事務所ブログでは、税制改正や会計基準、経営実務に関する情報を、専門用語をできるだけかみ砕き、経営者や経理担当者の方に役立つ形で解説しています。

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