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海外AIツールの利用料に消費税はかかる?外貨建て請求・インボイスとの税額差を税理士が解説

執筆者の写真: 安田亮
安田亮
12 分前
読了時間: 10分

こんばんは!代表の安田です。


ChatGPTをはじめ、海外事業者が提供する生成AIやクラウド型AIサービスを業務で利用する企業が増えています。

海外のAIツールでは、利用料金が米ドルなどの外貨建てで請求されることも珍しくありません。


このような場合、経理担当者からよく出る疑問が、

  • 海外AIツールの利用料に日本の消費税はかかるのか」

  • インボイスに記載された消費税額と、会計ソフトで計算した仮払消費税額が違っていてもよいのか

という点です。


国外事業者が提供するAIツールを日本で利用する場合、日本の消費税の課税対象となります。また、外貨建ての利用料については円換算して消費税額を計算しますが、国外事業者側と利用者側で採用する為替相場のタイミングが異なれば、インボイス記載の消費税額と帳簿上の仮払消費税額が一致しないことがあります。


適切な方法によって税額計算しているのであれば、この差異自体は制度上問題ありません。


本日は、海外AIツールの利用料に係る消費税、外貨建て取引の円換算方法、仕入税額の計算方法、インボイスとの税額差について税理士が解説します。


海外AIツールの利用料にも日本の消費税が関係する

AIツールの提供会社が海外企業であっても、日本国内でサービスを利用する場合には、日本の消費税の課税対象となります。

例えば、海外事業者が提供するAIサービスについて、

  • 毎月20ドル

  • 毎月100ドル

  • 年間1,000ドル

といった形で利用料を支払うケースです。

経理上は、「海外企業への支払いだから消費税は関係ない」と単純に判断しないことが重要です。


海外AIツールを外貨で支払った場合の円換算

米ドルなどの外貨建てで支払った利用料金は、消費税を計算するために円換算する必要があります。


原則として使用するのは、取引日の電信売買相場の仲値(TTM)です。

ただし、継続して同じ方法を適用することを前提として、取引日の属する月の月末のTTMなど、合理的と認められる為替相場を使用することも認められています。

円換算方法の整理

項目

取扱い

原則

取引日のTTMで円換算

例外

継続適用を条件に合理的な為替相場を使用可能

例

取引日の属する月の月末TTMなど

注意点

月ごと・取引ごとに都合のよいレートを恣意的に使い分けない

外貨取引が多い会社では、社内の経理ルールとして使用する為替レートを統一しておくことが重要です。


仕入税額の計算方法は3つ

消費税の仕入税額を計算する方法として、資料では次の3つが示されています。

計算方法

概要

① 請求書等積上げ計算

インボイス等に記載された消費税額等を積み上げる

② 帳簿積上げ計算

帳簿上、課税仕入れごとに消費税額を計算して積み上げる

③ 割戻し計算

課税仕入れに係る支払対価の合計額から税額を割り戻して計算する

海外AIツールの外貨建て利用料では、特に②の帳簿積上げ計算を利用している場合に、インボイス記載額との違いが生じることがあります。


帳簿積上げ計算ではどうやって消費税を計算する?

帳簿積上げ計算では、外貨建ての利用料金について主に2つの計算方法があります。


<方法1:税込利用料を円換算してから消費税を計算>

例えば、税込20ドルのAI利用料で、使用する為替レートが1ドル=163円の場合です。

まず円換算します。

20ドル × 163円 = 3,260円

その後、消費税相当額を計算します。

3,260円 × 10/110 = 296円※端数切捨て


<方法2:外貨のまま消費税相当額を計算してから円換算>

先にドル建ての消費税相当額を計算します。

20ドル × 10/110

その金額を1ドル=163円で円換算します。

資料では、いずれの方法によっても仮払消費税額を計算できるとされています。


インボイスの消費税額と仮払消費税額が違ってもよい?

ここが今回の最も重要なポイントです。

海外事業者から届いたインボイスに、日本の消費税相当額 292円と書かれているのに、会計ソフトで処理すると、仮払消費税額 296円となることがあります。

数字が違うと、「経理処理を間違えたのでは?」と思うかもしれません。


しかし、双方が適切な為替レートで計算しているのであれば、この差異は問題ありません。

理由は、国外事業者がインボイスを作成した時点と、日本企業が帳簿へ計上した時点で使用する為替レートが異なることがあるためです。


具体例:税込20ドルのAIツールの場合

資料の具体例を分かりやすく整理します。

AIツールの利用料金が税込20ドルだったとします。

<海外事業者側>

インボイス作成時の為替レート:1ドル=161円

この場合、20ドル × 161円 × 10/110により、日本の消費税相当額は、292円となります。


<日本の利用企業側>

一方、日本企業が帳簿積上げ計算を採用し、取引の円換算に、1ドル=163円を使用したとします。


この場合、20ドル × 163円 × 10/110により、仮払消費税額は、296円

となります。


比較すると

項目

海外事業者

日本企業

AI利用料

20ドル

20ドル

使用レート

1ドル=161円

1ドル=163円

消費税相当額

292円

296円

差額

4円

同じ20ドルの利用料なのに、為替レートの違いによって4円の差額が生じています。


なぜ消費税額が一致しなくても問題ないのか

海外企業と日本企業では、それぞれの税額計算に使用する為替相場が異なることがあります。したがって、

海外事業者
インボイス発行時のレート
        ↓
消費税額 292円

日本企業
自社の円換算ルールによるレート
        ↓
仮払消費税額 296円

という状況が生じても不自然ではありません。


重要なのは、インボイスの数字に会計帳簿を無理に合わせることではなく、自社が採用している適正な消費税計算方法と為替換算方法に従って処理することです。


インボイス記載額に無理に合わせる必要はない

経理処理では、「インボイスに292円と書いているから、会計ソフトの仮払消費税も292円に修正しなければならない」と考えてしまうことがあります。


しかし、帳簿積上げ計算を採用し、適正な為替相場によって296円と計算されているのであれば、単純にインボイスの292円へ修正する必要があるとは限りません。


<考え方>

状況

対応

為替レートの差による税額差

適正な計算なら問題なし

自社側の換算レートが誤っている

修正が必要

税率を誤っている

修正が必要

課税区分自体を誤っている

修正が必要

インボイスと数円違うだけ

原因がレート差か確認

「金額が違う」という結果だけを見るのではなく、なぜ差額が生じているのかを確認することが重要です。


海外AIツールの経理で確認したい項目

生成AIサービスを会社で利用する場合、経理担当者は次の事項を確認しておくとよいでしょう。

確認項目

内容

提供事業者

国内事業者か国外事業者か

請求通貨

円建てか外貨建てか

請求金額

税込・税抜のどちらか

消費税

日本の消費税の記載があるか

為替レート

自社でどのレートを使用するか

円換算日

取引日等を適切に把握しているか

計算方式

請求書積上げ・帳簿積上げ・割戻しのどれか

インボイス

必要な資料を保存しているか

会計ソフト

外貨建て取引の処理方法を確認したか


海外AIツールが増えると経理ルールの統一が重要

AIサービスは、少額の月額課金が多い一方で、社員ごとに個別契約しているケースもあります。例えば、

  • 営業部門がAI文章作成ツールを契約

  • 開発部門がAIコーディングツールを契約

  • デザイン部門が画像生成AIを契約

  • 経営者が個人カードでAIサービスを立替払い

といった状態です。


この場合、経理部門で使用する為替レートや証憑の保存方法が統一されていないと、同じ会社の中で処理方法がバラバラになる可能性があります。


<社内ルールとして決めておきたいこと>

  • 海外サービスの申請・承認方法

  • 法人カードを利用するか

  • 個人立替を認めるか

  • インボイス・領収書の保存場所

  • 外貨換算レート

  • 会計ソフトの税区分

  • 月額・年額契約の管理方法


利用金額が小さくても、契約数が増えれば経理負担も大きくなります。


クレジットカード明細だけではなく請求書等も保存

海外AIツールでは、毎月クレジットカードから自動決済されるケースが多くあります。

そのため、「クレジットカード明細があるので請求書は不要」と考えないよう注意が必要です。


消費税の仕入税額控除や電子取引データの保存を考える場合には、サービス提供事業者から発行される請求書やインボイス等についても、適切に取得・保存することが重要です。


実際の処理では、利用しているサービスごとに確認する必要があります。


外貨換算ルールは継続して適用する

外貨建て取引については、月末TTMなど合理的な為替レートを使用することも可能ですが、「継続適用」が重要です。


例えば、

  • 円安の月は月末レート

  • 円高の月は取引日レート

というように、税額や損益が有利になるよう恣意的に使い分けることは適切ではありません。


会社として一定のルールを決め、継続して処理することが基本です。


海外AIツール利用時の実務チェックリスト

チェック項目

確認

国外事業者のAIサービスか

□

日本で利用するサービスか

□

外貨建て請求か

□

適切な為替レートで円換算しているか

□

為替換算方法を継続適用しているか

□

仕入税額の計算方法を統一しているか

□

インボイス記載額との差額理由を説明できるか

□

請求書・インボイスを保存しているか

□

クレジットカード明細と請求書を突合しているか

□

会計ソフトの消費税区分が適切か

□

よくある疑問

Q.インボイスの消費税額と会計ソフトの仮払消費税が4円違います。修正が必要ですか?

A. 為替換算のタイミングやレートの違いによる差額で、自社側が適切な税額計算方法を採用しているのであれば、差額が生じても制度上問題ないとされています。


Q.海外AIツールなので消費税は「対象外」でよいですか?

A. 今回の資料では、国外事業者が提供するAIツールを日本で利用する場合、日本の消費税の課税対象になるとされています。単純に「海外への支払いだから対象外」と処理しないよう注意が必要です。


Q.ドル建ての利用料はどのレートで円換算しますか?

A. 原則として取引日のTTMを使用します。継続適用を条件として、月末TTMなど合理的な為替相場を使用することも認められています。


まとめ

海外事業者が提供する生成AIツールを日本で利用する場合、日本の消費税の課税対象となります。


外貨建てで利用料金を支払った場合には、原則として取引日のTTMで円換算し、消費税額を計算します。継続適用を条件に、月末TTMなど合理的な為替相場を利用することも可能です。


また、仕入税額の計算には、

  • 請求書等積上げ計算

  • 帳簿積上げ計算

  • 割戻し計算

があります。


特に帳簿積上げ計算では、国外事業者がインボイス作成時に使用した為替レートと、日本企業が会計処理で使用する為替レートが異なることがあります。


その結果、インボイス記載の消費税額 ≠ 帳簿上の仮払消費税額となっても、適切な税額計算方法に基づく差額であれば問題ありません。


海外AIツールを複数利用している企業では、各サービスを個別に処理するだけではなく、外貨換算レート、消費税区分、証憑保存などについて、社内で統一した経理ルールを設けておくとよいでしょう。



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【この記事の執筆者】

安田 亮(公認会計士・税理士)

安田亮公認会計士・税理士事務所 代表

京都大学経済学部在学中に公認会計士試験に合格。有限責任 あずさ監査法人、株式会社神戸製鋼所での実務経験を経て、2018年に神戸市で独立。

現在は、中小企業から上場企業に対する税務顧問、決算支援、税効果会計、連結決算、新リース会計基準への対応、組織再編、補助金・助成金に関する支援などを行なっています。また、金融機関や大手企業が運営する税務・会計・経営分野のWebメディアにおいて、記事の執筆・監修にも携わっています。

事務所ブログでは、税制改正や会計基準、経営実務に関する情報を、専門用語をできるだけかみ砕き、経営者や経理担当者の方に役立つ形で解説しています。


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