インボイスは複数書類の組み合わせでもOK?納品書+請求書と端数処理を解説
おはようございます!代表の安田です。
インボイス制度では、適格請求書に登録番号や取引内容、消費税額など一定の事項を記載する必要があります。
そこで経理担当者からよく出るのが、「必要事項を全部1枚の請求書に記載しなければならないのか?」という疑問です。
結論からいうと、インボイスは1枚の書類だけで必要事項をすべて満たす必要はありません。
例えば、
納品書に取引内容を記載する
請求書に登録番号や税率、消費税額等を記載する
というように、複数の書類を組み合わせ、全体として必要事項を確認できればインボイスとして取り扱うことができます。
本日は、複数の書類を組み合わせてインボイス要件を満たす方法、納品書と請求書の具体例、書類相互の関連性、消費税額の端数処理について解説します。
インボイスに必要な6つの記載事項
適格請求書には、主に次の事項を記載する必要があります。
項目 | 主な内容 |
① | 適格請求書発行事業者の氏名・名称と登録番号 |
② | 取引年月日 |
③ | 取引内容 |
④ | 税率ごとに区分した対価の額と適用税率 |
⑤ | 税率ごとに区分した消費税額等 |
⑥ | 書類を受け取る事業者の氏名・名称 |
一般的には1枚の請求書へすべて記載する方法が分かりやすいでしょう。
しかし、実際の商取引では、
納品のたびに納品書を発行する
月末にまとめて請求書を発行する
という運用も多くあります。
このような会社まで、必ず請求書に取引内容をすべて再入力しなければならないわけではありません。
インボイスは1枚で完結しなくてもよい
インボイスの記載事項について、複数の書類を組み合わせて全体として満たすことができると説明されています。
代表的なのが、「納品書+請求書」という組み合わせです。
例えば、
<納品書>
取引年月日
商品名
数量
金額
<請求書>
登録番号
月間請求額
税率
消費税額
取引先名
という形で情報を分けても構いません。
<納品書+請求書のイメージ>
インボイス記載事項 | 納品書 | 請求書 |
登録番号 | - | ○ |
取引年月日 | ○ | - |
取引内容 | ○ | - |
税率別の対価の額 | - | ○ |
税率別の消費税額 | - | ○ |
買手の名称 | ○(または請求書) | ○ |
このように、単独では要件を満たさなくても、
2つの書類を合わせれば必要情報を確認できるのであれば、インボイスとして取り扱える場合があります。
書類同士の「関連性」が重要
複数書類を組み合わせる場合に重要なのが、どの納品書とどの請求書が対応しているのか明確にすることです。
例えば、月末請求書に、
納品書No.0011
納品書No.0012
納品書No.0013
などの番号を記載し、それぞれの納品書と請求書を対応させる方法があります。
<適切なイメージ>
納品書No.0011
↓
請求書に「No.0011」と記載
納品書No.0012
↓
請求書に「No.0012」と記載
これなら、請求書に記載された請求額が、どの納品取引に対応するのか確認できます。
単に同じ取引先の書類を保存するだけでは不十分
例えば、
6月分の納品書が20枚
6月分の請求書が1枚
あるものの、請求書からどの納品書に対応しているのか確認できない場合は注意が必要です。
複数書類による方法では、書類相互の関連が明確であることが重要だからです。
したがって、請求書番号・納品書番号・取引期間などを利用して、第三者が見ても対応関係を確認できる形にしておくとよいでしょう。
紙と電子データの組み合わせでもよい
複数書類によるインボイスは、すべて紙である必要もありません。
複数の紙書類
書類+電子データ
の組み合わせでも認められると説明されています。
例えば、
情報 | 保存形式 |
納品書 | |
月次請求書 | 紙 |
取引明細 | システム上の電子データ |
という運用も考えられます。
重要なのは媒体そのものではなく、全体として取引内容・税率・消費税額等を確認できるかどうかです。
既存システムを大幅改修しなくても対応できる場合がある
複数書類を利用できるメリットの一つが、システム改修を抑えられることです。
例えば、従来から、
納品書に商品明細を記載
請求書には納品書番号だけ記載
というシステムを利用している会社では、請求書へ商品明細をすべて再表示するために大幅なシステム改修を行う必要がない場合があります。
もちろん1枚の請求書に全部記載してもよい
複数書類方式が必須というわけではありません。
請求書1枚に、
取引日
商品名
登録番号
税率
消費税額
などをすべて記載する方法でも問題ありません。
<2つの方法>
方法 | 特徴 |
1枚の請求書で完結 | 分かりやすく管理しやすい |
複数書類を組み合わせる | 既存システムを活用しやすい |
会社の販売管理システムや事務負担に応じて、どちらを採用するか検討するとよいでしょう。
複数書類の場合は「消費税額の端数処理」に注意
複数書類方式で特に注意したいのが、消費税額の端数処理です。
インボイスでは、「税率ごとに区分した消費税額等」について1円未満の端数が生じる場合、1つのインボイスにつき、税率ごとに1回端数処理を行ないます。
端数処理の方法については、
切捨て
切上げ
四捨五入
のいずれを採用するかは事業者が選択できます。
複数書類の場合、どの書類で端数処理する?
複数書類を組み合わせる場合には、「税率ごとに区分した消費税額等」を記載する書類ごとに、税率ごと1回端数処理をします。
ここは実務上重要です。
<ケース① 請求書に消費税額を記載する>
例えば、
納品書には商品名・金額のみ
月末請求書に消費税額をまとめて記載
する場合です。
この場合には、請求書上で、
10%対象分
8%対象分
それぞれについて1回ずつ端数処理をします。
<イメージ>
請求書 | 課税対象額 | 消費税額 |
10%対象 | 60,000円 | 6,000円 |
8%対象 | 40,000円 | 3,200円 |
端数が生じる場合も、この請求書上で税率ごとに1回処理します。
<ケース② 納品書ごとに消費税額を記載する>
一方、
各納品書に税率別の消費税額を記載
月末請求書には合計額だけ記載
という方法もあります。
この場合は、納品書1枚ごとに、税率ごと1回端数処理を行います。
<比較>
消費税額を記載する書類 | 端数処理 |
月末請求書 | 請求書単位で税率ごと1回 |
各納品書 | 納品書1枚ごとに税率ごと1回 |
同じ月間売上でも、どの書類をインボイス上の「消費税額を記載する書類」とするかによって、端数処理の単位が変わります。
複数書類方式を導入するときの注意点
実務では次の事項を事前に決めておくとよいでしょう。
確認事項 | 内容 |
基本書類 | 請求書・納品書のどちらに何を記載するか |
関連付け | 納品書番号等で紐付けできるか |
消費税額 | どの書類に記載するか |
端数処理 | 請求書単位か納品書単位か |
電子データ | 紙との関連性を確認できるか |
保存 | 必要書類を漏れなく保存できるか |
特に、販売管理システムと会計システムが別になっている会社では、どの書類を正式なインボイスとして構成するのか社内で統一しておくことが重要です。
よくある間違い
1.請求書だけがインボイスになる
インボイスは名称ではなく、必要事項を満たしているかで判断します。
「請求書」「納品書」「領収書」などの名称そのものが重要なのではありません。
2.関連性が分からない納品書と請求書を保存する
複数書類を利用するのであれば、相互の関連が明確である必要があります。
請求書番号や納品書番号を利用して紐付けるとよいでしょう。
3.納品書ごとに消費税額を丸め、さらに請求書でも丸める
消費税額の端数処理にはルールがあります。
どの書類に税率別の消費税額を記載するかを明確にし、その書類単位で処理することが重要です。
実務チェックリスト
チェック項目 |
6つの必要事項を確認できるか |
1枚でなく複数書類になっているか |
書類間の関連性が明確か |
納品書番号等で紐付けているか |
消費税額を記載する書類を決めているか |
税率ごとに1回の端数処理になっているか |
紙と電子データの関係を確認できるか |
必要書類を保存できているか |
よくある疑問
Q. インボイスの必要事項は全部請求書に書かなければいけませんか?
A. いいえ。1枚の書類にすべて記載する必要はなく、関連性が明確な複数書類を組み合わせて必要事項を満たすことができるとされています。
Q. 納品書と請求書を組み合わせてもよいですか?
A. 可能です。例えば納品書に取引内容、請求書に登録番号や消費税額等を記載し、納品書番号等で関連性を明確にする方法があります。
Q. 紙と電子データの組み合わせでも大丈夫ですか?
A. 複数の書類だけでなく、書類と電子データの組み合わせも可能とされています。
Q. 消費税額の端数はどこで処理しますか?
A. 複数書類を組み合わせる場合、税率ごとに区分した消費税額を記載する書類について、税率ごとに1回端数処理します。
まとめ
インボイス制度では一定の記載事項が必要ですが、1枚の請求書だけですべてを完結させる必要はありません。
例えば、「納品書+請求書」を組み合わせ、全体として必要事項を確認できればインボイスとして取り扱うことができます。
今回のポイントは次のとおりです。
インボイスの必要事項は1枚の書類にすべて記載する必要はない
納品書と請求書など複数書類を組み合わせることができる
書類同士の関連性を明確にする必要がある
納品書番号等による紐付けが有効
紙と電子データの組み合わせも可能
消費税額の端数処理は、消費税額を記載する書類について税率ごとに1回行う
既存システムを活用することでシステム改修を抑えられる場合もある
インボイス対応では、すべてを1枚の請求書へ詰め込もうとすると、既存システムの大規模改修が必要になることがあります。
現在の納品書・請求書の運用を確認し、複数書類を組み合わせた方が効率的なのか、それとも請求書1枚で完結させた方が管理しやすいのかを検討するとよいでしょう。
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【この記事の執筆者】
安田 亮(公認会計士・税理士)
安田亮公認会計士・税理士事務所 代表
京都大学経済学部在学中に公認会計士試験に合格。有限責任 あずさ監査法人、株式会社神戸製鋼所での実務経験を経て、2018年に神戸市で独立。
現在は、中小企業から上場企業に対する税務顧問、決算支援、税効果会計、連結決算、新リース会計基準への対応、組織再編、補助金・助成金に関する支援などを行なっています。また、金融機関や大手企業が運営する税務・会計・経営分野のWebメディアにおいて、記事の執筆・監修にも携わっています。
事務所ブログでは、税制改正や会計基準、経営実務に関する情報を、専門用語をできるだけかみ砕き、経営者や経理担当者の方に役立つ形で解説しています。






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