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青色申告特別控除が最大75万円に!65万円・10万円の適用要件とe-Tax必須化を税理士が解説

執筆者の写真: 安田亮
安田亮
4 分前
読了時間: 15分

おはようございます!代表の安田です。


令和8年度税制改正により、個人事業主や不動産賃貸業者が利用する青色申告特別控除が2027年分(令和9年分)の所得税から大きく変わります。


これまでの青色申告特別控除は、10万円・55万円・65万円の3段階でしたが、改正後は10万円・65万円・75万円の3段階になります。


最大控除額が65万円から75万円に引き上げられる一方で、注意すべき点もあります。

例えば、改正後は65万円控除を受けるために、確定申告期限内のe-Taxによる電子申告が必須となります。


また、75万円控除を受けるには、電子申告だけでなく、優良な電子帳簿の保存またはデジタルシームレス保存などの追加要件を満たす必要があります。


さらに、10万円控除についても、簡易簿記で記帳する事業者には一定の収入金額要件が追加されます。


本記事では、2027年分からの青色申告特別控除について、改正前後の比較、控除額別の適用要件、届出手続、不動産所得の事業的規模の判定などを解説します。


1.2027年分から青色申告特別控除はどう変わる?

まず、今回の改正内容を整理しましょう。

改正前後の比較

項目

2026年分まで

2027年分以後

最大控除額

65万円

75万円

中間の控除額

55万円

65万円

基本的な控除額

10万円

10万円

65万円以上の控除

e-Taxまたは優良な電子帳簿保存等

e-Tax必須

75万円控除

制度なし

新設

簡易簿記の10万円控除

原則として収入金額による制限なし

前々年の収入金額1,000万円以下等の要件

今回の改正では、控除額の引上げと同時に、電子申告・電子帳簿保存を促進する制度設計が行われています。


特に重要なのは、これまで55万円控除を受けていた人も、今後は65万円控除を受けるためにe-Taxへの対応が必要になる点です。


65万円控除を受けるための要件

2027年分以後の65万円の青色申告特別控除については、次の要件を満たす必要があります。

要件

内容

① 所得の種類

不動産所得または事業所得を生ずべき事業を営んでいる

② 記帳方法

複式簿記によって記帳している

③ 決算書

貸借対照表・損益計算書等を確定申告書に添付する

④ 申告方法

e-Taxによる電子申告

⑤ 申告期限

法定申告期限内に申告する

このうち、改正で特に大きく変わるのが電子申告の要件です。


これまでの55万円控除は65万円に引上げ

2026年分までは、複式簿記による記帳や貸借対照表等の添付、期限内申告などの要件を満たすことで55万円控除を受けられました。


2027年分以後は、これらの要件に加えてe-Taxによる電子申告が必要となり、控除額が65万円へ引き上げられます。


つまり、改正後は、単に複式簿記で記帳しているだけでは65万円控除を受けられません。

確定申告書と必要な決算書を期限内に電子申告することが必要です。


紙で確定申告すると65万円控除は受けられない

今回の改正で注意したいのは、書面申告を続けている個人事業主です。


従来は、複式簿記によって適切に記帳し、貸借対照表・損益計算書等を添付して期限内に紙で確定申告した場合、55万円控除を受けることができました。


しかし、2027年分以後は、紙による確定申告では65万円控除を受けることができません。

そのため、適用可能性があるのは10万円控除となります。


<具体例>

次の個人事業主を想定します。

  • 事業所得を生ずべき事業を営んでいる

  • 複式簿記で記帳している

  • 貸借対照表・損益計算書を作成している

  • 毎年、期限内に紙で確定申告している


この場合、控除額は次のように変わる可能性があります。

申告方法

2026年分

2027年分

書面申告

55万円

10万円

期限内のe-Tax申告

65万円

65万円

※その他の適用要件を満たす場合です。


電子申告に対応するかどうかによって、控除額に大きな差が生じます。

そのため、現在書面申告を行っている個人事業主は、2027年分の確定申告に向けてe-Taxの導入を検討した方がよいでしょう。


75万円控除を受けるための要件

今回新設される最大75万円の青色申告特別控除は、65万円控除の要件を満たすことが前提となります。


そのうえで、次のいずれかの要件を満たす必要があります。

① 優良な電子帳簿として仕訳帳・総勘定元帳を保存する

または、

② デジタルシームレス保存の要件を満たす

というものです。


<75万円控除の要件>

要件

内容

65万円控除の要件

すべて満たすこと

追加要件①

仕訳帳・総勘定元帳を優良な電子帳簿として保存

追加要件②

デジタルシームレス保存の要件を満たす

①と②の関係

いずれか一方でよい

届出

適用方法に応じた届出書が必要

つまり、e-Taxで確定申告しているだけでは75万円控除にはなりません。

一方で、優良な電子帳簿を保存していても、e-Taxで期限内申告していなければ75万円控除を受けることはできません。


「優良な電子帳簿」とは?

優良な電子帳簿とは、電子帳簿保存法で定められた一定の要件を満たす電子帳簿です。

単にパソコンで帳簿を作成しているだけでは足りません。


例えば、帳簿の訂正や削除を行なった場合に、その履歴が確認できる機能などが必要になります。

75万円控除では、事業に係る次の2つの帳簿を優良な電子帳簿として保存する必要があります。

  • 仕訳帳

  • 総勘定元帳


<一般的な電子帳簿との違い>

項目

一般的な電子帳簿

優良な電子帳簿

パソコンで作成

可能

可能

電子データ保存

可能

必要

訂正・削除履歴の確保

一律には求められない

一定の要件あり

電子帳簿保存法上の追加要件

保存区分による

満たす必要あり

なお、公益社団法人日本文書情報マネジメント協会(JIIMA)では、電子帳簿保存法上の機能要件を満たすソフトウェアの認証を行っています。


優良な電子帳簿への対応を検討する際には、利用中の会計ソフトが認証を受けているか確認することも一つの方法です。


ただし、認証ソフトを使用しているだけで自動的に75万円控除のすべての要件を満たすわけではありません。


実際の帳簿の保存方法や届出手続についても確認が必要です。


優良な電子帳簿による75万円控除には届出書が必要

優良な電子帳簿の保存によって75万円控除を受ける場合、所定の届出書を税務署長に提出する必要があります。


対象となる届出書は、主に次の2つです。

  1. 国税関係帳簿の電磁的記録等による保存等に係る65万円の青色申告特別控除・過少申告加算税の特例の適用を受ける旨の届出書

  2. 国税関係帳簿の電磁的記録等による保存等に係る過少申告加算税の特例の適用を受ける旨の届出書


これらのいずれかを、75万円控除の適用を受ける年分の確定申告期限までに提出する必要があります。


なお、1の届出書については、2027年3月頃に名称中の「65万円」が「75万円」に変更される予定です。


すでに届出書を提出している場合

過去に65万円控除の適用を受けるため、旧名称の届出書を提出済みの場合には、75万円控除の適用に当たり、改めて新しい届出書を提出する必要はありません。


これは実務上重要なポイントです。

ただし、届出書を提出済みであっても、2027年分以後の75万円控除には、期限内のe-Tax申告など改正後の要件を満たす必要があります。


「デジタルシームレス保存」とは?

75万円控除を受けるもう一つの方法が、デジタルシームレス保存です。


デジタルシームレス保存とは、一定の機能を備えたソフトウェアを利用して、電子取引データの送受信・保存等を行なう仕組みです。


令和7年度税制改正では、一定の要件を満たす電子取引データについて、重加算税の加重措置を適用しない制度が設けられました。


75万円控除では、この制度の対象となる要件を満たした電子取引データの送受信・保存等を行う方法が認められます。


<優良な電子帳簿との違い>

項目

優良な電子帳簿

デジタルシームレス保存

主な対象

仕訳帳・総勘定元帳

電子取引データ

重要な機能

訂正削除履歴等の確保

一定の要件を満たす送受信・保存等

関連制度

電子帳簿保存法の優良な電子帳簿

電子取引データに係る重加算税の加重措置の適用除外

75万円控除

要件を満たせば対象

要件を満たせば対象

デジタルシームレス保存についても、JIIMAによるソフトウェア認証制度が設けられています。


そのため、電子取引の処理を自動化している事業者は、利用しているシステムの対応状況を確認するとよいでしょう。


ただし、電子請求書を受け取ってPDFで保存しているだけで、自動的にデジタルシームレス保存の要件を満たすわけではありません。


デジタルシームレス保存による75万円控除の届出

デジタルシームレス保存によって75万円控除を受ける場合も、届出が必要です。


提出するのは、

「電子取引の取引情報に係る電磁的記録に係る重加算税の加重措置の不適用の特例及び75万円の青色申告特別控除(個人事業者)の適用を受ける旨の届出書」

です。


提出期限は、適用を受ける年分の確定申告期限までです。

なお、すでに旧名称である「65万円」の届出書を提出している場合には、変更後の「75万円」の届出書を改めて提出する必要はありません。


2027年分から75万円控除を受けたい場合には、次の2つを確認しましょう。

  • 利用するソフトウェアと保存方法が要件を満たしているか

  • 必要な届出書を提出しているか


不動産所得では「5棟10室基準」に注意

ここまで紹介した65万円控除・75万円控除については、すべての不動産所得者が利用できるわけではありません。


不動産所得でこれらの控除を受けるには、不動産の貸付けが事業的規模である必要があります。その判定基準として、一般的に利用されるのが、いわゆる「5棟10室基準」です。


<事業的規模の判定>

不動産の種類

原則として事業的規模とされる目安

独立家屋の貸付け

おおむね5棟以上

アパート・マンション等

おおむね10室以上

今回の改正でも、この判定基準自体に変更はありません。


例えば、アパートを3室だけ貸している個人が、複式簿記で記帳し、e-Taxで申告し、優良な電子帳簿を保存していたとしても、不動産の貸付けが事業的規模でなければ75万円控除は適用できません。


65万円控除についても同様です。

なお、5棟10室基準は事業的規模を判断するための原則的な目安であり、個別の貸付状況等によって判断が必要となる場合があります。


10万円控除にも新たな「収入1,000万円基準」

今回の改正では、65万円・75万円控除だけでなく、10万円控除の要件も見直されました。


2027年分以後、簡易簿記によって記帳している場合には、原則として次のいずれかに該当することが必要です。

  • 前々年の事業所得・不動産所得に係る収入金額が1,000万円以下である

  • 不動産の貸付けが事業的規模に満たない


一方、複式簿記で記帳しているものの、65万円控除の要件を満たさない青色申告者については、10万円控除の適用可能性があります。


<記帳方法別の取扱い>

記帳方法・状況

10万円控除

複式簿記だが65万円控除の要件を満たさない

適用可能性あり

簡易簿記・前々年収入1,000万円以下

適用可能性あり

簡易簿記・前々年収入1,000万円超・事業的規模の事業

原則対象外

簡易簿記・事業的規模に満たない不動産貸付け

適用可能性あり

※その他の青色申告特別控除の要件も満たす必要があります。

ここで注意したいのは、収入1,000万円という金額が、所得金額ではなく収入金額を基準としている点です。


また、2027年分の判定であれば、原則として前々年に当たる2025年分の収入金額を確認することになります。


具体例で控除額を判定

今回の改正後の取扱いを具体例で確認しましょう。


<ケース①:事業所得・複式簿記・e-Tax申告>

個人事業主が複式簿記で記帳し、貸借対照表・損益計算書を添付して期限内にe-Tax申告を行ないました。


優良な電子帳簿やデジタルシームレス保存の追加要件は満たしていません。

この場合、65万円控除となります。


<ケース②:事業所得・e-Tax申告・優良な電子帳簿保存>

ケース①に加えて、仕訳帳・総勘定元帳を優良な電子帳簿として保存し、必要な届出も行なっています。


この場合、その他の要件も満たしていれば、75万円控除となります。


<ケース③:事業所得・簡易簿記・前々年収入1,200万円>

事業所得を生ずべき事業を営んでいる個人が、簡易簿記で記帳しています。

前々年の事業所得に係る収入金額は1,200万円です。


この場合、改正後の10万円控除に係る収入金額要件を満たさないため、原則として10万円控除は適用できません。


<ケース④:不動産所得・アパート4室・e-Tax申告>

アパート4室を賃貸している個人が、複式簿記で記帳し、e-Taxで申告しています。

ただし、不動産の貸付けが事業的規模ではありません。


この場合、65万円・75万円控除は適用できず、10万円控除の適用を検討することになります。


2027年分からいくら節税できる?

青色申告特別控除額が65万円から75万円へ増えると、所得金額が最大10万円減少します。

例えば、所得税の限界税率が20%の人であれば、単純計算で、10万円×20%=2万円の所得税負担が軽減される計算になります。


さらに、復興特別所得税や住民税への影響も考えられます。

ただし、これは控除額10万円の増加がそのまま課税所得の減少につながる場合の概算です。


実際の節税額は、所得金額、他の所得控除、税率などによって異なります。

一方、これまで55万円控除を受けていた人が電子申告へ変更しない場合には、10万円控除となり、控除額が45万円減少する可能性があります。


したがって、今回の改正では、75万円控除による節税効果だけでなく、電子申告へ対応しない場合の不利益にも注意が必要です。


2027年分に向けて準備しておきたいこと

2027年分からの改正に対応するため、個人事業主や不動産所得者は、次の内容を確認しておくとよいでしょう。

確認事項

内容

現在の控除額

10万円・55万円・65万円のどれか

記帳方法

複式簿記か簡易簿記か

e-Tax

期限内の電子申告に対応できるか

決算書

貸借対照表・損益計算書を提出できるか

優良な電子帳簿

仕訳帳・総勘定元帳が要件を満たすか

デジタルシームレス保存

対応ソフトを利用しているか

届出

所定の届出書を提出済みか

不動産所得

事業的規模に該当するか

10万円控除

前々年の収入金額を確認したか

特に、現在書面申告を行なっている人はe-Taxへの移行を優先して検討したいところです。


また、75万円控除を目指す場合には、2027年の記帳・保存段階から要件に対応できるよう準備する必要があります。


よくある質問

Q.2027年分から青色申告特別控除は全員75万円になりますか?

A. いいえ。改正後は10万円・65万円・75万円の3区分となり、適用要件によって控除額が異なります。75万円控除には、65万円控除の要件を満たしたうえで、優良な電子帳簿の保存またはデジタルシームレス保存などの要件が必要です。


Q. e-Taxで申告するだけで75万円控除になりますか?

A. なりません。e-Taxによる期限内申告は65万円控除の要件の一つです。75万円控除には、さらに電子帳簿保存等の追加要件が必要です。


Q. 2027年分を紙で確定申告した場合、55万円控除は受けられますか?

A. 受けられません。2027年分から55万円控除の区分はなくなります。また、65万円控除にはe-Taxによる期限内申告が必要です。書面申告の場合、適用できる可能性があるのは10万円控除です。


Q. 不動産所得があれば75万円控除を受けられますか?

A. 不動産所得があるだけでは受けられません。不動産の貸付けが事業的規模であることなど、所定の要件を満たす必要があります。事業的規模の判定では、原則として5棟10室基準が参考になります。


Q. すでに65万円控除の電子帳簿に関する届出書を提出しています。再提出が必要ですか?

A. 所定の旧届出書を提出済みの場合、名称が75万円へ変更されたことだけを理由に再提出する必要はありません。ただし、改正後の75万円控除の実体要件は満たす必要があります。


Q. 10万円控除にも収入制限ができるのですか?

A. 簡易簿記で記帳している場合には、前々年の収入金額1,000万円以下などの要件が追加されます。ただし、事業的規模に満たない不動産の貸付けについては別の取扱いがあるため、一律に収入1,000万円超で10万円控除が受けられなくなるわけではありません。


まとめ

令和8年度税制改正により、2027年分(令和9年分)から青色申告特別控除が大きく見直されます。


重要なポイントを整理すると、次のとおりです。

  • 青色申告特別控除の区分は10万円・65万円・75万円へ変更

  • これまでの55万円控除は65万円控除へ引上げ

  • 65万円控除には期限内のe-Tax申告が必須

  • 75万円控除には、優良な電子帳簿の保存またはデジタルシームレス保存が必要

  • 75万円控除の適用には、保存方法に応じた届出が必要

  • 所定の旧65万円控除に関する届出書を提出済みの場合は、原則として再提出不要

  • 不動産所得の65万円・75万円控除では事業的規模の要件に注意

  • 簡易簿記による10万円控除には、前々年の収入金額1,000万円以下等の新要件


特に注意したいのは、「複式簿記で記帳しているだけでは65万円控除を受けられなくなること」と「電子申告だけでは75万円控除にならないこと」です。


2027年分の確定申告は2028年に行いますが、電子帳簿の保存などは2027年中からの対応が重要になります。


現在の記帳方法・申告方法を確認し、改正後の控除要件に対応できるよう早めに準備しておくとよいでしょう。



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【この記事の執筆者】

安田 亮(公認会計士・税理士)

安田亮公認会計士・税理士事務所 代表

京都大学経済学部在学中に公認会計士試験に合格。有限責任 あずさ監査法人、株式会社神戸製鋼所での実務経験を経て、2018年に神戸市で独立。

現在は、中小企業から上場企業に対する税務顧問、決算支援、税効果会計、連結決算、新リース会計基準への対応、組織再編、補助金・助成金に関する支援などを行なっています。また、金融機関や大手企業が運営する税務・会計・経営分野のWebメディアにおいて、記事の執筆・監修にも携わっています。

事務所ブログでは、税制改正や会計基準、経営実務に関する情報を、専門用語をできるだけかみ砕き、経営者や経理担当者の方に役立つ形で解説しています。


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