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青色申告特別控除10万円はどう変わる?現金主義の特例は2027年分以後も適用可能

執筆者の写真: 安田亮
安田亮
16 時間前
読了時間: 8分

こんにちは!代表の安田です。


令和8年度税制改正では、青色申告特別控除の適用要件が見直されます。


特に注意したいのが、10万円の青色申告特別控除です。

2027年分(令和9年分)以後の所得税では、簡易簿記によって不動産所得・事業所得を記帳している人について、一定の収入規模を超えると10万円控除を利用できなくなります。


一方で、所得税法上の「現金主義による所得計算の特例」を利用している青色申告者については、この新しい収入金額要件の対象から除外されます。


つまり、

  • 簡易簿記の人→ 前々年の総収入金額が1,000万円を超えると10万円控除不可

  • 現金主義の特例を利用している人→ 従来どおり一定の要件を満たせば10万円控除可能

という違いがあります。


本記事では、令和8年度税制改正後の10万円の青色申告特別控除と、現金主義の特例との関係を解説します。


青色申告特別控除の「10万円控除」とは?

青色申告を行っている個人事業主や不動産所得者は、一定の要件を満たすことで青色申告特別控除を受けることができます。


今回のテーマは、そのうち10万円控除です。


改正前は、10万円控除の対象には大きく、

  • 簡易な簿記方法で記帳する人

  • 現金主義の特例を利用する人

が含まれていました。


令和8年度税制改正では、このうち「簡易簿記」の人について新しい制限が設けられます。


2027年分から簡易簿記には「1,000万円基準」

2027年分以後、不動産所得または事業所得を生ずべき事業を営み、簡易な簿記方法で記帳している人については、


その年の前々年分の不動産所得または事業所得に係る総収入金額が1,000万円を超える場合

10万円の青色申告特別控除を利用できなくなります。


<改正後のイメージ>

記帳方法等

前々年の総収入金額

10万円控除

簡易簿記

1,000万円以下

要件を満たせば適用可

簡易簿記

1,000万円超

適用不可

現金主義の特例

1,000万円超でも一定要件を満たす

適用可

今回最も重要なのは、1,000万円基準が現金主義の特例利用者にはそのまま適用されないことです。


現金主義の特例とは?

現金主義の特例とは、一定の小規模な青色申告者について、収入や必要経費を原則として実際に現金を受け取った時・支払った時を基準として計算できる制度です。


現金主義の特例について、前々年分の事業所得および不動産所得の金額の合計額が300万円以下であることなど一定の要件を満たし、「現金主義による所得計算の特例を受けることの届出書」を所轄税務署長へ提出することで利用できます。


ここで重要なのは、300万円基準は「総収入金額」ではなく「所得金額」という点です。


「売上1,000万円超」と「所得300万円以下」は両立する

この2つを混同しやすいため注意が必要です。


例えば、

  • 前々年の不動産所得に係る総収入金額:1,200万円

  • 前々年の事業所得・不動産所得の所得金額合計:250万円

というケースを考えます。


総収入金額は1,000万円を超えています。

そのため、簡易簿記による10万円控除であれば、改正後は対象外です。


一方、所得金額の合計は250万円であり、300万円以下です。

現金主義の特例についてその他の要件も満たして適用しているのであれば、総収入金額が1,000万円を超えていても10万円控除を利用できます。


具体例で比較

前々年の数字が次のとおりだったとします。

項目

金額

不動産所得の総収入金額

1,200万円

必要経費等控除後の所得金額

250万円


<簡易簿記の場合>

総収入金額が、1,200万円 > 1,000万円です。

したがって、令和9年分以後は10万円の青色申告特別控除を適用できません。


<現金主義の特例の場合>

所得金額が、250万円 ≦ 300万円です。

その他の要件も満たして現金主義の特例を適用していれば、10万円控除を引き続き利用できます。


なぜ「現金主義も対象外?」という疑問が生じたのか

令和8年度税制改正大綱では、簡易簿記による10万円控除について、前々年の総収入金額が1,000万円を超える場合には適用対象外とする内容が示されました。


ところが、大綱段階では現金主義の特例利用者について明確な記載がありませんでした。

そのため、「現金主義の特例利用者も、収入1,000万円超なら10万円控除が使えなくなるのでは?」という疑問が実務家の間で生じていました。


改正法では現金主義を明確に除外

最終的な改正では、この点が明確になっています。


10万円控除の新しい除外規定について、所得税法67条1項の現金主義の特例を適用している人を除くこととされました。


したがって、現金主義の特例利用者には、簡易簿記に対して設けられた「前々年総収入金額1,000万円超」という除外基準は適用されません。


以下のように整理できます。

前々年の総収入金額が1,000万円超

10万円控除

簡易簿記で不動産所得等が生じる事業者

適用不可

現金主義の特例を適用する事業者

改正前と変わらず適用可

「収入1,000万円超なら青色申告10万円控除が全部ダメ」ではない

今回の改正について、「売上や家賃収入が1,000万円を超えたら、10万円控除は使えない」とだけ理解すると正確ではありません。


判定にはまず、

  • 簡易簿記で10万円控除を受けているのか

  • 現金主義の特例を適用しているのか

を区別する必要があります。


<判定イメージ>

  • 簡易簿記

→ 前々年の事業所得・不動産所得に係る総収入金額を確認

→ 1,000万円超なら10万円控除不可


  • 現金主義の特例

→ 現金主義の特例そのものの適用要件を確認

→ 適用できていれば10万円控除も可能


という流れです。


不動産賃貸業をしている人は特に注意

不動産所得の例を考えてみましょう。


例えば不動産賃貸業では、

  • 家賃収入は1,000万円を超える

  • 借入金利息

  • 減価償却費

  • 修繕費

  • 固定資産税

などの必要経費が大きく、所得金額自体は300万円以下というケースも考えられます。


その場合、「収入1,000万円超」という理由だけで現金主義の特例・10万円控除の適用可否を判断しないことが重要です。


2027年分以後に確認したいポイント

青色申告者は、自分がどの区分に該当するかを確認しておくとよいでしょう。

チェック項目

確認内容

青色申告

青色申告承認を受けているか

現在の控除

10万円控除を利用しているか

記帳方法

簡易簿記か現金主義か

前々年総収入

1,000万円超か

前々年所得

事業所得+不動産所得が300万円以下か

現金主義

届出・その他の適用要件を満たすか

適用年

2027年分以後か

特にこれまで簡易簿記で10万円控除を利用してきた事業者は、前々年の総収入金額を確認する必要があります。


2027年分なら「2025年分」を確認

改正は令和9年分(2027年分)以後の所得税から適用されます。

判定基準は「その年の前々年」ですので、2027年分については原則として、2025年分の事業所得・不動産所得の総収入金額等を確認することになります。


したがって、改正後の初年度については、過去の確定申告書や収支内訳を確認しておくとよいでしょう。


よくある疑問

Q. 前々年の売上が1,000万円を超えると10万円控除は使えませんか?

A. 簡易簿記の場合には、令和9年分以後、前々年の不動産所得または事業所得に係る総収入金額が1,000万円を超えると、10万円控除を利用できません。ただし、現金主義の特例利用者はこの除外規定の対象外です。


Q. 現金主義なら収入1,000万円超でも10万円控除を使えますか?

A. 現金主義の特例そのものの要件を満たして適用している場合には、総収入金額が1,000万円を超えていても、引き続き10万円控除を利用できます。


Q. 現金主義の300万円基準は売上ですか?

A. 前々年分の事業所得および不動産所得の「所得金額」の合計額が300万円以下とされています。総収入金額ではありません。


Q. いつから改正されますか?

A. 簡易簿記に対する総収入金額1,000万円基準は、令和9年分(2027年分)以後の所得税から適用されます。


まとめ

令和8年度税制改正では、10万円の青色申告特別控除について新しい適用要件が設けられました。


簡易簿記で事業所得・不動産所得を記帳している場合、前々年の総収入金額が1,000万円を超えると、2027年分以後は10万円控除を利用できません。


一方で、現金主義の特例を適用している人については、この1,000万円基準の対象から明確に除外されています。


したがって、

  • 簡易簿記と現金主義では取扱いが異なる

  • 現金主義は従来どおり一定要件を満たせば10万円控除可能

  • 総収入金額1,000万円超でも直ちに現金主義の10万円控除が否定されるわけではない

  • 現金主義の特例では前々年の事業所得・不動産所得の「所得金額」合計300万円以下などの要件を確認する

  • 2027年分から改正が適用される

という点が重要です。


特に不動産賃貸業など、収入金額は大きい一方で必要経費も多く、所得金額は300万円以下となるケースでは、簡易簿記と現金主義の違いを正確に確認する必要があります。



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【この記事の執筆者】

安田 亮(公認会計士・税理士)

安田亮公認会計士・税理士事務所 代表

京都大学経済学部在学中に公認会計士試験に合格。有限責任 あずさ監査法人、株式会社神戸製鋼所での実務経験を経て、2018年に神戸市で独立。

現在は、中小企業から上場企業に対する税務顧問、決算支援、税効果会計、連結決算、新リース会計基準への対応、組織再編、補助金・助成金に関する支援などを行なっています。また、金融機関や大手企業が運営する税務・会計・経営分野のWebメディアにおいて、記事の執筆・監修にも携わっています。

事務所ブログでは、税制改正や会計基準、経営実務に関する情報を、専門用語をできるだけかみ砕き、経営者や経理担当者の方に役立つ形で解説しています。


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