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外部講師への講師料は源泉徴収が必要?旅費・材料費・消費税の取扱いを税理士が解説

執筆者の写真: 安田亮
安田亮
7 分前
読了時間: 10分

こんにちは!代表の安田です。


企業では、従業員研修や福利厚生の一環として、外部の専門家を招いて講習会やセミナーを開催することがあります。


例えば、

  • 健康増進のための運動講習

  • 社員向け英会話研修

  • パソコンやITの実技講習

  • 料理・着付け等の講座

  • 資格取得のための研修

などです。


外部の個人講師へ謝礼を支払う際に注意したいのが、所得税の源泉徴収です。

結論からいうと、個人の講師へ支払う一定の講師料・指導料は、所得税法上の「報酬・料金」に該当し、会社側で源泉徴収が必要になります。


さらに注意したいのが旅費や材料費です。

講師本人へ講師料とは別に「実費の交通費」「教材費」「用具代」などを支払ったとしても、原則としてこれらも報酬・料金に含めて源泉徴収します。


一方、交通費や宿泊費を会社から交通機関やホテルへ直接支払う場合には、一定の条件のもとで源泉徴収の対象から外すことができます。


本日は、外部講師へ支払う講師料、旅費、材料費、消費税について、源泉徴収の実務を税理士が解説します。


外部講師への講師料は源泉徴収の対象

所得税法では、一定の報酬・料金を個人へ支払う場合、支払者が所得税を源泉徴収することとされています。


対象には、原稿料や講演料だけでなく、技芸、スポーツその他これらに類するものの教授・指導や、知識の教授に対する報酬も含まれます。


例えば次のような指導・講習が挙げられます。

講習・指導の例

源泉徴収

スポーツの実技指導

原則必要

ダンス

原則必要

料理

原則必要

着付け

原則必要

語学

原則必要

カラオケ・民謡

原則必要

資格取得講座

原則必要

その他の技芸・知識の教授

内容に応じて判定


したがって、「講演会」だけが源泉徴収の対象になるわけではありません。

会社が外部の個人インストラクターを招いて、従業員へ運動指導をしてもらうようなケースも対象となります。


講師が個人の場合と法人の場合を区別する

源泉徴収を検討するときには、まず支払先が個人か法人かを確認することが重要です。


一般的には、個人へ対象となる報酬・料金を支払う場合に所得税の源泉徴収を検討します。


そのため、請求書を受け取ったら、

  1. 講師本人の個人名義なのか

  2. 講師が経営する法人名義なのか

  3. どのような内容の役務提供なのか

を確認しましょう。


講師料が「給与」になる場合との違い

講師へ支払う金銭であっても、実態によっては「報酬・料金」ではなく「給与」に該当する可能性があります。


給与とは一般に、雇用契約等に基づき、使用者の指揮命令を受けて提供した労務の対価とされています。


たとえば、

  • 会社が講習時間と会場を設定する

  • ただし講習内容は講師へ全面的に任せる

  • 会社の具体的な指揮命令を受けて指導しているわけではない

という状況では、給与ではなく、講師への「報酬・料金」に該当すると整理されています。


<判定イメージ>

状況

考えられる所得区分

独立した講師として講習内容を決める

報酬・料金

講師自身の専門性に基づいて指導する

報酬・料金

会社の細かな指揮命令下で勤務する

給与となる可能性

雇用契約に基づき定期勤務する

給与となる可能性

名称が「謝礼」「講師料」だから自動的に報酬になるのではなく、実際の契約関係で判断します。


講師料の源泉徴収税率

個人講師へ支払う対象報酬について、添付資料では、復興特別所得税を含めた源泉徴収税率は次のように整理されています。 

1回の支払額

源泉徴収税額

100万円以下

支払額 × 10.21%

100万円超

100万円×10.21% + 100万円超の部分×20.42%

通常の社内研修や実技講習では、1回の支払額が100万円以下となることが多いため、実務上は10.21%を使用するケースが多いでしょう。


講師本人へ支払う交通費も原則として源泉徴収

実務上、特に間違いやすいのが交通費です。


例えば、

講師料 30,000円交通費実費 5,000円

と請求された場合、「交通費5,000円は実費なので、30,000円だけ源泉徴収すればよい」と考えてしまうことがあります。


しかし、原則としてこの処理は適切ではありません。

講師本人へ旅費を支払う場合、その旅費についても報酬・料金に含めて源泉徴収の対象とします。


給与所得者に認められている一定の旅費の非課税規定は外部講師にはそのまま適用されず、車賃・材料費などの名目で支払っても報酬・料金の性質を有するものは源泉徴収対象になると説明されています。


「実費だから源泉徴収不要」ではない

ポイントは、講師が実際に交通費を5,000円使ったかどうかではありません。


講師の事業所得・雑所得については、原則として、講師が受け取った金額をいったん収入に計上し、実際に支払った旅費などを講師側で必要経費にするという考え方が示されています。


そのため、支払会社側では、実費相当額かどうかを個別に確認して源泉徴収から除外するのではなく、本人へ支払う旅費等を講師料と合計して源泉徴収することになります。


例えば

支払内容

金額

講師料

30,000円

交通費

5,000円

源泉徴収対象額

35,000円

この場合、原則として35,000円を基礎として源泉所得税を計算します。


会社が交通機関やホテルへ直接支払えば例外あり

一方、旅費を必ず源泉徴収対象に含めなければならないわけではありません。


講師が講習を行うために必要な交通費や宿泊費について、

  • 講師本人へ現金等を渡さず

  • 会社が交通機関・ホテル・旅館等へ直接支払い

  • 金額が通常必要と認められる範囲

であれば、源泉徴収を要しない取扱いがあります。


<交通費の取扱いを比較>

支払方法

原則的な取扱い

講師へ「交通費5,000円」を支払う

源泉徴収対象

講師へ実費精算として振り込む

原則として源泉徴収対象

会社が新幹線代を直接支払う

一定の場合は対象外

会社がホテル代を直接支払う

一定の場合は対象外

したがって、外部講師の交通費を源泉徴収対象から外したい場合には、会社側で切符やホテルを手配する方法も検討できます。


タクシー代を領収書と引換えに精算する場合

近隣駅から会社までのタクシー料金について考えてみましょう。


講師からタクシーの領収書を受け取り、会社がその領収書と引換えに同額を支給する場合には、社員が会社玄関でタクシー運転手へ直接料金を支払う場合との差異などから、会社の直接払いとして扱える可能性が示されています。


ただし、資料でも、それ以外の一般的な旅費まで同じ考え方を広げることには慎重な整理がされています。


講師から購入する教材・用具代も注意

さらに注意したいのが、講師から教材や用具も購入するケースです。


例えば、運動講習の講師から、

  • トレーニング用品

  • 教材

  • 講習用の器具

などを購入し、講師本人へ代金を支払う場合です。


この事例では、講師へ支払う用具代についても、講師への報酬・料金に含めて源泉徴収する必要があるとされています。


つまり、請求書の名称だけを見て、「これは商品代だから源泉徴収不要」と機械的に判断しない方がよいでしょう。講師料と一体として支払う費用なのか、契約や取引内容を確認することが重要です。


消費税は明確に区分すれば源泉徴収対象から外せる

講師が消費税を請求している場合にも注意が必要です。

原則として、源泉徴収対象となる報酬に消費税が含まれていれば、税込金額を基礎に源泉徴収します。


ただし、請求書等に、

  • 報酬本体

  • 消費税等

が明確に区分されている場合には、消費税等を除いた報酬本体だけを源泉徴収対象額とすることができます。

 

<請求書の違い>

請求書の記載

源泉徴収の基礎

「講師料33,000円(税込)」のみ

原則33,000円

「講師料30,000円・消費税3,000円」

原則30,000円

請求書上で消費税を明確に区分してもらうことには、源泉徴収計算を分かりやすくするメリットがあります。


講師料・交通費・消費税の計算例

例えば、個人講師から次の請求を受けたとします。

内容

金額

講師料

30,000円

消費税

3,000円

交通費(講師本人へ支払う)

5,000円

合計

38,000円

消費税が請求書上明確に区分され、交通費を講師本人へ支払う場合には、


源泉徴収対象額

30,000円 + 5,000円= 35,000円

となります。


源泉所得税は、

35,000円 × 10.21%

を基礎に計算します。


一方、会社が交通機関へ直接5,000円を支払うなど、源泉徴収対象外となる旅費の要件を満たすのであれば、源泉徴収対象額は講師料30,000円のみとなります。


経理担当者が確認すべきポイント

外部講師へ報酬を支払う場合には、支払い前に次の項目を確認しておくとよいでしょう。

チェック項目

確認内容

支払先

個人か法人か

役務内容

講演・実技指導・知識の教授等か

契約関係

給与ではなく独立した講師への報酬か

講師料

源泉徴収対象額を確認

交通費

本人への支払いか、会社の直接払いか

宿泊費

本人への支払いか、ホテルへの直接払いか

材料・用具代

報酬と一体として支払うものか

消費税

請求書で本体価格と明確に区分されているか

税率

1回100万円以下か超えるか

納付

所定の期限までに源泉所得税を納付する


よくある間違い

  • 講演ではなく実技なので源泉徴収不要

実技講習であっても、スポーツ、技芸、知識等の教授・指導に対する報酬は源泉徴収対象となる場合があります。

「講演料」という名称かどうかだけで判断しないことが重要です。


  • 旅費は会社の旅費規程どおりなので非課税

社員に支払う出張旅費の非課税ルールを、外部の個人講師へそのまま適用することはできません。講師本人へ支払えば、原則として報酬と合わせて源泉徴収します。


  • 領収書があるので交通費は源泉徴収しなくてよい

実費であるというだけでは、原則として源泉徴収対象から除外できません。

交通機関や宿泊施設への直接払いかどうかが重要です。


  • 消費税を含めずに必ず源泉徴収できる

請求書等で報酬本体と消費税等が明確に区分されていることがポイントです。


源泉徴収漏れは会社側の問題になる

源泉所得税は、報酬を受け取る講師側ではなく、支払者である会社が徴収して納付する義務を負います。


そのため、講師側が確定申告するので、会社では源泉徴収しなくてもよいということにはなりません。外部講師への謝礼、デザイナーへの報酬、士業への報酬など、源泉徴収が必要な支払いは経理段階で区分しておくことが重要です。


まとめ

会社が外部の個人講師へ講師料を支払う場合には、源泉徴収の要否を確認する必要があります。


今回のポイントは次のとおりです。

  • スポーツ、技芸、知識等の教授・指導に対する個人講師への報酬は源泉徴収の対象となり得る

  • 独立した外部講師への謝礼は、通常「給与」ではなく「報酬・料金」として判定する

  • 1回100万円以下の対象報酬は、復興特別所得税を含め10.21%で源泉徴収する

  • 講師本人へ支払う交通費は、実費であっても原則として源泉徴収対象

  • 教材費・用具代等についても、講師への報酬・料金と一体となる場合は注意が必要

  • 会社が交通機関やホテルへ直接支払う通常必要な旅費・宿泊費については、一定の場合に源泉徴収不要

  • 消費税等が請求書で明確に区分されていれば、消費税を除いた報酬額を源泉徴収対象とすることができる


特に間違いやすいのが、「講師料以外に請求された交通費は実費だから源泉徴収しなくてよい」という処理です。


外部講師への支払いでは、講師料だけを見るのではなく、交通費、宿泊費、材料費、消費税を含めた請求書全体を確認したうえで源泉徴収額を計算しましょう。



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【この記事の執筆者】

安田 亮(公認会計士・税理士)

安田亮公認会計士・税理士事務所 代表

京都大学経済学部在学中に公認会計士試験に合格。有限責任 あずさ監査法人、株式会社神戸製鋼所での実務経験を経て、2018年に神戸市で独立。

現在は、中小企業から上場企業に対する税務顧問、決算支援、税効果会計、連結決算、新リース会計基準への対応、組織再編、補助金・助成金に関する支援などを行なっています。また、金融機関や大手企業が運営する税務・会計・経営分野のWebメディアにおいて、記事の執筆・監修にも携わっています。

事務所ブログでは、税制改正や会計基準、経営実務に関する情報を、専門用語をできるだけかみ砕き、経営者や経理担当者の方に役立つ形で解説しています。


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