期中会計基準と防衛特別法人税に対応した財規等改正とは?経理・開示担当者が押さえるポイント
- 安田 亮
- 8月4日
- 読了時間: 12分
おはようございます!代表の安田です。
2026年3月31日、金融庁は「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則」や「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」などの一部を改正する内閣府令等を公布・施行しました。
今回の改正は、主に次の2つの会計基準・実務対応報告に対応するものです。
企業会計基準第37号「期中財務諸表に関する会計基準」
実務対応報告第48号「防衛特別法人税の会計処理及び開示に関する当面の取扱い」
上場会社の経理・開示実務では、期中会計基準の適用により、中間財務諸表や四半期財務情報の会計処理が整理されます。また、防衛特別法人税については、貸借対照表や損益計算書上の表示にも関係します。
本日は、公認会計士の視点から、今回の財規等改正の背景、期中会計基準への対応、防衛特別法人税の会計処理・表示、適用時期、企業が確認すべき実務ポイントを解説します。
今回の財規等改正の概要
今回改正された主な規則・ガイドライン・告示は、以下のとおりです。
<規則>
財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則
連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則
<ガイドライン>
財務諸表等規則ガイドライン
連結財務諸表規則ガイドライン
<告示>
金融庁長官が定める企業会計の基準を指定する件
連結財務諸表に係る基準指定告示
改正の中心は、期中会計基準等の公表に伴う規則整備と、防衛特別法人税に関する会計処理・表示への対応です。
企業にとっては、単なる条文改正ではなく、中間財務諸表の注記、税金費用の表示、未払法人税等の範囲、開示チェックリストの更新などに関係するため、実務上も確認が必要です。
期中会計基準が公表された背景
期中会計基準は、従来の「四半期財務諸表に関する会計基準」と「中間財務諸表に関する会計基準」を統合する形で公表された会計基準です。
背景には、金融商品取引法上の四半期開示制度の見直しがあります。
2022年12月に公表された金融審議会ディスクロージャーワーキング・グループ報告では、第1・第3四半期について、金商法上の四半期開示義務を廃止し、取引所規則に基づく四半期決算短信へ一本化する考え方が示されました。
一方、第2四半期については、半期報告書の提出が義務付けられることとなりました。
その後、制度改正により、上場会社等の半期報告書に含まれる第一種中間財務諸表は、中間会計基準等に基づいて作成されることになりました。
しかし、上場会社や財務諸表利用者からは、「中間決算と四半期決算は本来同じ会計基準に基づいて行なうべきではないか」という意見もありました。
こうした流れを受け、ASBJは四半期会計基準等と中間会計基準等を統合した期中会計基準を開発し、2025年10月16日に公表しました。
期中会計基準の基本的な考え方
期中会計基準は、基本的には従来の四半期会計基準等と中間会計基準等の考え方を引き継いでいます。
そのうえで重要な考え方として、企業の報告頻度によって年次の経営成績の測定が左右されてはならないという原則が採用されています。
これは、企業が年次・半期・四半期のどの頻度で報告するかによって、年間の利益や損失の測定結果が変わってしまうことは望ましくない、という考え方です。
この考え方が特に影響する項目として、次の4つが挙げられています。
有価証券の減損処理に係る切放し法
棚卸資産の簿価切下げに係る切放し法
一般債権の貸倒見積高の算定における簡便的な会計処理
未実現損益の消去における簡便的な会計処理
このうち、今回の財規等改正で特に実務上重要なのが、有価証券の減損処理と棚卸資産の簿価切下げにおける切放し法の注記です。
有価証券の減損処理・棚卸資産の簿価切下げは「洗替え法」が原則に
期中会計基準では、有価証券の減損処理と棚卸資産の簿価切下げについて、洗替え法が原則とされています。
従来は、期中決算において切放し法と洗替え法を選択適用できる場面がありました。
切放し法とは、期中にいったん計上した評価損や簿価切下げを、その後の期中会計期間で戻し入れない方法です。
一方、洗替え法とは、期中会計期間ごとに評価損や簿価切下げの状況を見直し、その時点の状況に応じて処理を洗い替える方法です。
期中会計基準では、報告頻度によって年次の経営成績が左右されないようにする観点から、洗替え法が原則とされました。
ただし、従前から切放し法を適用していた企業については、洗替え法への変更に追加的な負担が生じる可能性があるため、例外的に切放し法の継続適用が認められています。
切放し法を適用する場合は注記が必要
今回の財規等改正では、第一種中間財務諸表・第一種中間連結財務諸表について、切放し法を適用する場合の注記規定が新設されました。
さらに、第二種中間財務諸表・第二種中間連結財務諸表についても、同様の注記規定が新設されています。
これは、中間会計期間に切放し法を適用した場合、その後に有価証券の時価や棚卸資産の収益性が回復すると、年度の経営成績の測定結果が異なる可能性があるためです。
財務諸表利用者が企業の経営成績を正しく理解するためには、企業が中間会計期間に切放し法を適用しているかどうかは重要な情報になります。
ここで注意したいのは、切放し法を会計方針として継続適用している場合、実際に評価損や棚卸資産の切下げ額を計上していなかったとしても、注記が必要になる点です。
つまり、「当期は評価損が発生していないから注記不要」とはならない可能性があります。会計方針として切放し法を適用しているかどうかを確認する必要があります。
「期中切放し法」ではなく「切放し法」と表記される理由
期中会計基準では、期中における切放し法を「期中切放し法」と表現しています。
一方、今回の財規等改正では、中間財務諸表に係る注記規定であるため、「期中切放し法」という用語ではなく、「切放し法」という用語が使われています。
これは、「期中切放し法」という用語には、中間会計期間だけでなく四半期会計期間も含まれるため、中間財務諸表に係る規則上の表現としては「切放し法」の方が馴染むという整理です。
ただし、条文上は「当中間会計期間に係る」または「当中間連結会計期間に係る」といった記載があるため、年度決算における切放し法ではなく、中間会計期間における会計方針であることは明確にされています。
実務上は、用語の違いに惑わされず、期中会計基準に基づく切放し法の継続適用と注記の要否を確認することが重要です。
基準指定告示の改正
今回の改正では、基準指定告示および連結基準指定告示の改正も行われています。
ASBJが2025年10月16日に公表した期中会計基準を含む4基準が、一般に公正妥当と認められる企業会計の基準として指定されました。
これに伴い、中間会計基準は削除されています。
また、関連する財務諸表等規則ガイドラインや連結財務諸表規則ガイドラインも改正されています。
これにより、制度上も、期中会計基準を前提とした中間財務諸表の作成体制へ移行することになります。
防衛特別法人税とは
今回の改正のもう一つの柱が、防衛特別法人税への対応です。
2025年3月31日に成立した所得税法等の一部改正により、防衛力強化の財源確保を目的とする特別措置法が改正され、防衛特別法人税が創設されました。
防衛特別法人税は、2026年4月1日以後に開始する事業年度から課されることとされています。
新たな税金が創設されると、会計上、その税金をどの会計基準の対象として扱うのか、損益計算書や貸借対照表でどの科目に表示するのかが問題になります。
本来であれば、法人税等会計基準の改正により対応することが考えられます。しかし、防衛特別法人税が課される事業年度と会計基準改正の適用時期との間にタイムラグが生じるため、ASBJは短期的な対応として、実務対応報告第48号を公表しました。
防衛特別法人税の会計処理・表示
実務対応報告第48号を踏まえ、今回の財規等改正では、防衛特別法人税の表示について整理されています。
具体的には、財規、財務諸表等規則ガイドライン、連結財規、連結財務諸表規則ガイドラインにおいて、次の取扱いが定められました。
貸借対照表上の「未払法人税等」に防衛特別法人税が含まれる
損益計算書上の「法人税、住民税及び事業税」に防衛特別法人税が含まれる
つまり、防衛特別法人税は、会計上、法人税等に含めて表示する方向で整理されています。
企業実務では、税金計算シート、税効果計算、未払法人税等の内訳、損益計算書の税金費用表示、連結パッケージなどに影響する可能性があります。
適用時期
今回の改正の適用時期は、内容によって異なります。
<期中会計基準等を踏まえた改正>
期中会計基準等を踏まえた財規・連結財規の改正は、2026年4月1日以後に開始する中間会計期間または中間連結会計期間に係る中間財務諸表・中間連結財務諸表から適用されます。
3月決算会社であれば、2027年3月期の中間財務諸表から適用されるイメージです。
<防衛特別法人税を踏まえた改正>
防衛特別法人税を踏まえた財規・連結財規の改正は、2026年4月1日以後に開始する事業年度または連結会計年度に係る財務諸表・連結財務諸表から適用されます。
中間財務諸表についても同様に適用されます。
企業が確認すべき実務ポイント
今回の改正を踏まえ、企業の経理・開示担当者は、次の点を確認しておく必要があります。
(1)期中会計基準への移行対応
まず、従来の四半期会計基準・中間会計基準から、期中会計基準への移行により、自社の会計処理や開示に影響があるかを確認します。
特に、有価証券の減損処理と棚卸資産の簿価切下げについて、切放し法を継続適用しているかどうかを確認する必要があります。
(2)切放し法の注記要否
切放し法を会計方針として継続適用している場合には、評価損や切下げ額の計上がなくても注記が必要になる可能性があります。
中間財務諸表の注記チェックリストに、切放し法に関する確認項目を追加しておくことが望まれます。
(3)防衛特別法人税の表示
防衛特別法人税は、貸借対照表上は未払法人税等に含まれ、損益計算書上は法人税、住民税及び事業税に含まれることになります。
会計システムや税金計算資料で、防衛特別法人税をどの勘定科目・表示科目に集計するかを整理しておく必要があります。
(4)税効果会計への影響
防衛特別法人税が法人税等に含まれる場合、税効果会計上の法定実効税率や繰延税金資産・負債の計算にも影響する可能性があります。
適用時期や税率、対象となる課税所得の範囲を踏まえて、税効果計算への反映方法を確認する必要があります。
(5)連結パッケージ・開示テンプレートの更新
連結財務諸表を作成している会社では、子会社から提出される連結パッケージにも影響します。
防衛特別法人税を未払法人税等や法人税等に含めるためには、グループ各社の入力ルールや勘定科目マッピングを見直す必要があります。
また、中間財務諸表の注記テンプレートも、切放し法の注記に対応できるよう更新しておくべきです。
実務チェックリスト
今回の財規等改正を踏まえ、企業は次の点を確認しましょう。
期中会計基準の適用時期を確認しているか
中間財務諸表・中間連結財務諸表の作成基準を見直しているか
有価証券の減損処理について切放し法を適用しているか
棚卸資産の簿価切下げについて切放し法を適用しているか
切放し法を継続適用する場合の注記文案を準備しているか
評価損・切下げ額がない場合でも注記が必要となる可能性を確認しているか
防衛特別法人税を未払法人税等に含める処理を整理しているか
防衛特別法人税を法人税、住民税及び事業税に含める表示を確認しているか
税効果会計への影響を確認しているか
連結パッケージや会計システムの勘定科目設定を更新しているか
開示チェックリストを改正後の財規等に合わせて更新しているか
監査人と表示・注記方針を協議しているか
まとめ
2026年3月31日に公布・施行された財規等の改正は、主に期中会計基準等と実務対応報告第48号への対応を目的とするものです。
期中会計基準については、従来の四半期会計基準と中間会計基準が統合され、報告頻度によって年次の経営成績が左右されないという考え方が採用されました。その結果、有価証券の減損処理と棚卸資産の簿価切下げについては、洗替え法が原則とされ、従前から切放し法を適用している企業がこれを継続する場合には、その旨の注記が必要になります。特に、評価損や切下げ額の計上がない場合でも、会計方針として切放し法を適用していれば注記が必要となる点に注意が必要です。
また、防衛特別法人税については、貸借対照表上の未払法人税等と、損益計算書上の法人税、住民税及び事業税に含めることが整理されました。2026年4月1日以後開始事業年度から適用されるため、税金計算、税効果会計、連結パッケージ、開示テンプレートへの反映が必要になります。
経理・開示担当者は、今回の財規等改正を踏まえ、期中会計基準への対応、防衛特別法人税の表示、注記文案、開示チェックリスト、監査人との協議を早めに進めることが重要です。
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【この記事の執筆者】
安田 亮(公認会計士・税理士)
安田亮公認会計士・税理士事務所 代表
京都大学経済学部在学中に公認会計士試験に合格。有限責任 あずさ監査法人、株式会社神戸製鋼所での実務経験を経て、2018年に神戸市で独立。
現在は、中小企業から上場企業に対する税務顧問、決算支援、税効果会計、連結決算、新リース会計基準への対応、組織再編、補助金・助成金に関する支援などを行なっています。また、金融機関や大手企業が運営する税務・会計・経営分野のWebメディアにおいて、記事の執筆・監修にも携わっています。
事務所ブログでは、税制改正や会計基準、経営実務に関する情報を、専門用語をできるだけかみ砕き、経営者や経理担当者の方に役立つ形で解説しています。






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