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会社設立後の増資はいつ行なうべき?資本金1,000万円と消費税の注意点を税理士が解説

  • 執筆者の写真: 安田 亮
    安田 亮
  • 8月4日
  • 読了時間: 10分

こんにちは!代表の安田です。


会社を設立するときや、設立後に事業拡大を考えるときに悩みやすいのが「資本金をいくらにするか」「増資をいつ行うか」という点です。


特に、資本金が1,000万円以上になるかどうかは、消費税の納税義務に大きく関係します。

  • 資本金は多い方が信用力がありそう

  • 銀行融資や取引先への見栄えを考えると増資したい

  • でも、消費税の負担が増えるのは避けたい


このように考える経営者の方は少なくありません。

結論からいうと、会社設立後すぐの増資には注意が必要です。タイミングを誤ると、本来であれば免税事業者でいられた期間についても、消費税の申告・納税が必要になることがあります。


本日は、会社設立後の増資と消費税の関係について、独立税理士の視点からわかりやすく解説します。


会社設立後2年間は消費税が免除される、とは限らない

よく「会社を設立してから2年間は消費税が免除される」と言われます。


これは大まかな理解としては間違いではありませんが、正確には注意が必要です。

消費税では、原則として「基準期間」の課税売上高が1,000万円以下であれば、その課税期間の納税義務が免除されます。法人の場合、基準期間とは通常、その事業年度の前々事業年度をいいます。設立1期目や2期目は、そもそも前々事業年度がないため、原則として免税事業者になります。


ただし、例外があります。代表的な例外が、次のようなケースです。


1つ目は、事業年度開始の日における資本金または出資金の額が1,000万円以上である場合です。この場合、新設法人に対する消費税の納税義務の免除の特例により、設立1期目または2期目であっても課税事業者になります。


2つ目は、設立2期目について、特定期間における課税売上高や給与等支払額が1,000万円を超える場合です。法人の特定期間は、原則として前事業年度開始の日以後6か月間であり、この期間の課税売上高が1,000万円を超える場合には、基準期間がなくても消費税の納税義務が免除されないことがあります。なお、この判定では課税売上高に代えて給与等支払額で判定することもできます。


3つ目は、インボイス登録をしている場合です。適格請求書発行事業者、いわゆるインボイス発行事業者になっている場合には、基準期間の課税売上高や新設法人の特例にかかわらず、消費税の納税義務は免除されません。


つまり、設立後2年間は必ず消費税が免除される、というわけではありません。


資本金1,000万円以上で設立すると1期目から課税事業者になる

会社設立時に特に注意したいのが、資本金を1,000万円以上にするかどうかです。

設立時の資本金が1,000万円以上である法人は、設立1期目から消費税の課税事業者になります。


たとえば、資本金1,000万円で株式会社を設立した場合、設立1期目から消費税の申告と納税が必要です。一方、資本金999万円で設立した場合には、他の例外に該当しない限り、設立1期目は免税事業者となります。


この差は、実務上かなり大きいです。

たとえば、売上が大きく、かつ人件費中心の事業で仕入税額控除があまり取れない会社の場合、消費税の納税額が資金繰りに与える影響は小さくありません。

そのため、特別な理由がなければ、設立時の資本金を1,000万円未満にするケースは多く見られます。


ただし、取引先との関係、許認可、金融機関の評価、補助金・入札要件などで一定以上の資本金が必要になる場合もあります。消費税だけで資本金を決めるのではなく、事業上の必要性と税負担の両方を見て判断することが大切です。


設立後に増資する場合は「期首の資本金」に注意

設立時は資本金1,000万円未満にしたものの、その後、資金需要や信用力向上のために増資を検討することがあります。


この場合に重要なのは、消費税の新設法人の特例では、原則として「その事業年度開始の日における資本金または出資金の額」を見て判定するという点です。


たとえば、3月決算の会社が、設立時の資本金を500万円としてスタートしたとします。

設立1期目の途中で増資し、資本金が1,000万円以上になった場合、その増資をした期については、期首時点では資本金1,000万円未満です。そのため、新設法人の特例だけを理由に、その期が課税事業者になるわけではありません。


しかし、翌期の期首には資本金が1,000万円以上になっています。

この場合、設立2期目の期首時点で資本金が1,000万円以上であれば、設立2期目は課税事業者になります。国税庁も、資本金1,000万円未満で設立した後、設立1期目の途中で増資して資本金が1,000万円以上となった場合には、設立2期目は課税事業者になると説明しています。


ここが実務上の落とし穴です。

「1期目の途中で増資したから、2期目もまだ免税だろう」と考えていると、消費税の申告漏れにつながるおそれがあります。


増資のタイミングによって消費税負担が変わることがある

会社設立後に資本金を1,000万円以上に増資する場合、いつ増資するかによって消費税の取扱いが変わることがあります。


たとえば、設立1期目の途中で資本金を1,000万円以上に増資すると、設立2期目の期首時点で資本金1,000万円以上となるため、2期目は課税事業者になります。


一方、設立2期目に入ってから増資した場合、設立2期目の期首時点では資本金1,000万円未満です。そのため、新設法人の特例だけで2期目が課税事業者になるわけではありません。


ただし、この場合でも、特定期間の課税売上高や給与等支払額が1,000万円を超えている場合、インボイス登録をしている場合、その他の特例に該当する場合には、課税事業者になる可能性があります。

つまり、「増資を2期目にすれば必ず消費税が免除される」という単純な話ではありません。


それでも、設立直後に大きな増資を予定している場合には、1期目に行うのか、2期目に行うのか、あるいは設立時から資本金1,000万円以上にするのかによって、消費税の納税時期が変わる可能性があります。


増資は資金調達や信用力のために重要な手続きですが、税務上はタイミングの検討が欠かせません。


特定期間の判定にも注意が必要

資本金を1,000万円未満にしていても、設立2期目から消費税の課税事業者になることがあります。


代表的なのが、特定期間による判定です。

法人の場合、原則として前事業年度開始の日以後6か月間が特定期間となります。この期間の課税売上高が1,000万円を超える場合には、基準期間の課税売上高が1,000万円以下であっても、消費税の納税義務が免除されないことがあります。


ただし、この1,000万円の判定は、課税売上高に代えて給与等支払額の合計額で判定することができます。


たとえば、設立1期目の前半6か月で課税売上高が1,200万円あったとしても、給与等支払額が1,000万円以下であれば、給与等支払額による判定を使うことで、2期目も免税事業者となる余地があります。


この点は、創業初期に売上が急拡大する会社にとって非常に重要です。

特に、広告運用業、コンサルティング業、ITサービス業、建設業、卸売業など、設立初年度から売上が大きくなる可能性がある事業では、特定期間の判定を事前に確認しておく必要があります。


インボイス登録をすると免税事業者ではいられない

近年の実務で特に注意が必要なのが、インボイス制度です。


資本金が1,000万円未満で、基準期間や特定期間の判定でも免税事業者になれる会社であっても、適格請求書発行事業者として登録すると、消費税の課税事業者になります。


B to B取引が中心の会社では、取引先からインボイス登録を求められることがあります。

この場合、免税事業者のままでいることによる営業上の不利益と、課税事業者になることによる消費税負担を比較して判断する必要があります。


特に、設立初期の会社では、

  • 資本金を1,000万円未満にしたから消費税は免税

  • 売上がまだ少ないから消費税は関係ない

と考えてしまいがちです。


しかし、インボイス登録をしている場合には、免税事業者ではなくなります。創業時の資金繰りを考えるうえでも、インボイス登録の有無は必ず確認すべきポイントです。


資本金1,000万円以上の増資が必要なケースもある

ここまで読むと、「資本金1,000万円以上にしない方がよい」と感じるかもしれません。

しかし、必ずしもそうとは限りません。


たとえば、次のようなケースでは、資本金を増やすことに合理性があります。

金融機関からの融資を受けるために自己資本を厚く見せたい場合、取引先から一定以上の資本金を求められる場合、許認可や入札参加の条件として資本金要件がある場合、大きな設備投資を予定しており資金調達が必要な場合などです。


また、消費税の観点でも、必ずしも課税事業者になることが不利とは限りません。

たとえば、創業初期に大きな設備投資を行う場合、課税事業者になることで消費税の還付を受けられる可能性があります。ただし、この場合には課税事業者選択届出書、簡易課税制度、調整対象固定資産、高額特定資産など、複雑な論点が関係します。


消費税の還付を目的に課税事業者を選択する場合には、数年単位でのシミュレーションが必要です。


増資前に確認すべきチェックポイント

会社設立後に増資を検討する場合には、少なくとも次の点を確認しておきましょう。


まず、現在の資本金がいくらかを確認します。増資後に1,000万円以上になる場合には、消費税の取扱いが変わる可能性があります。


次に、増資を行なう時期を確認します。1期目の途中で増資するのか、2期目に入ってから増資するのかによって、翌期の消費税判定に影響することがあります。


また、特定期間の課税売上高と給与等支払額も確認が必要です。資本金が1,000万円未満であっても、特定期間の判定により2期目から課税事業者になることがあります。


さらに、インボイス登録の有無も重要です。インボイス登録をしている場合には、免税事業者ではいられません。


最後に、増資の目的を明確にしましょう。信用力向上、融資対策、許認可、設備投資、資金繰り改善など、増資にはさまざまな目的があります。税金だけでなく、事業上のメリットも含めて判断する必要があります。


まとめ:増資は「税金」と「事業上の必要性」の両方から判断する

会社設立後の増資は、単なる資本金の変更ではありません。

特に資本金が1,000万円以上になる場合には、消費税の納税義務に影響する可能性があります。


設立1期目・2期目は原則として基準期間がないため免税事業者になりやすいものの、期首資本金が1,000万円以上である場合、特定期間の課税売上高や給与等支払額が1,000万円を超える場合、インボイス登録をしている場合などには、消費税の申告・納税が必要になることがあります。


増資を検討する際は、

  • いつ増資するのか

  • 増資後の資本金はいくらになるのか

  • 特定期間の売上や給与はいくらか

  • インボイス登録をするのか」「事業上、増資が本当に必要なのか」

を事前に整理しておくことが大切です。


創業期の会社にとって、消費税の負担は資金繰りに大きな影響を与えます。一方で、事業拡大のためには増資が必要な場面もあります。


増資を行なう前には、税理士に相談し、消費税の影響をシミュレーションしたうえで判断することをおすすめします。


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【この記事の執筆者】

安田 亮(公認会計士・税理士)

安田亮公認会計士・税理士事務所 代表

京都大学経済学部在学中に公認会計士試験に合格。有限責任 あずさ監査法人、株式会社神戸製鋼所での実務経験を経て、2018年に神戸市で独立。

現在は、中小企業から上場企業に対する税務顧問、決算支援、税効果会計、連結決算、新リース会計基準への対応、組織再編、補助金・助成金に関する支援などを行なっています。また、金融機関や大手企業が運営する税務・会計・経営分野のWebメディアにおいて、記事の執筆・監修にも携わっています。

事務所ブログでは、税制改正や会計基準、経営実務に関する情報を、専門用語をできるだけかみ砕き、経営者や経理担当者の方に役立つ形で解説しています。

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