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増資・減資をした場合の資本金はいつ変わる?中小企業向け税制の判定時期を税理士が解説

  • 執筆者の写真: 安田 亮
    安田 亮
  • 5 日前
  • 読了時間: 11分

こんにちは!代表の安田です。


近年、業績悪化への対応や税制上のメリットを見据えて、資本金を1億円以下に減資する企業が話題になることがあります。


法人税では、資本金が1億円以下かどうかによって、中小法人向けの優遇措置を受けられるかが変わる場面があります。


たとえば、法人税の軽減税率、貸倒引当金制度、一定の投資税制、賃上げ促進税制などでは、資本金の額が重要な判定要素になります。


では、事業年度末の直前に増資や減資を行った場合、税務上の資本金はいつの時点で変わるのでしょうか。

「登記が完了した日」でしょうか。それとも「株主総会で決議した日」でしょうか。


本日は、増資・減資をした場合の法人税上の資本金の判定時期、事業年度末の資本金を見る際の注意点、中小企業向け税制を適用する場合の実務ポイントについて解説します。


資本金1億円以下の法人には中小企業向け税制がある

法人税では、資本金1億円以下の法人について、一定の中小企業向け優遇措置が設けられています。代表的なものとして、次のような制度があります。

  • 法人税の軽減税率

  • 貸倒引当金制度

  • 中小企業投資促進税制

  • 中小企業経営強化税制

  • 賃上げ促進税制の中小企業向け措置

  • 交際費等の損金算入特例

  • 欠損金の繰戻し還付

  • 欠損金の損金算入制限の不適用


一時期、新型コロナによる業績悪化等の影響で減資を行なう企業が増加しました。

ただし、資本金が1億円以下であれば、必ずすべての制度が使えるわけではありません。制度ごとに対象法人の範囲や除外要件が定められています。


国税庁も、措置法上の中小法人・中小企業者の範囲について、資本金1億円以下の普通法人であっても、一定の大法人に支配される法人や適用除外事業者、通算法人などは対象から除かれる場合があると案内しています。


中小企業向け税制の資本金は「事業年度終了時」で判定することが多い

中小企業向け税制では、資本金が1億円以下かどうかを「事業年度終了時」で判定する制度が多くあります。


たとえば、法人税率の特例では、一定の普通法人について、各事業年度終了の時における資本金の額または出資金の額が1億円以下であるかどうかが判定要素になります。


ここで実務上問題になるのが、事業年度末の直前に増資や減資をした場合です。

たとえば、3月決算法人が3月25日に減資の効力発生日を迎え、4月5日に変更登記をした場合、3月31日時点の資本金はどう考えるのでしょうか。


登記簿上では、3月31日時点でまだ変更登記が完了していないかもしれません。しかし、法人税上は、必ずしも商業登記上の変更日だけで判断するわけではありません。


法人税上の資本金は登記日ではなく会計上の額で判断する

優遇措置の適用対象法人となるかどうかの基準となる資本金は、事業年度終了時の額で判断するが、増資や減資で資本金に変動があった場合、法人税法上は商業登記上の額ではなく、会計上の額で判断します。


つまり、登記がいつ完了したかだけでなく、会社法上の払込期日や効力発生日に基づき、会計上いつ資本金が増減したかを確認する必要があります。

ここはかなり大事です。

税務上の資本金判定
 → 登記簿の変更日だけで判断しない
 → 会計上、資本金が増減した日を確認する

したがって、決算日直前に増資・減資を行う場合には、登記完了日だけでなく、払込期日や減資の効力発生日を必ず確認しましょう。


増資の場合は原則として「払込期日」に資本金が増加する

増資を行なう場合、通常は募集株式の発行などの手続きにより、株主総会決議等で払込期日を定めます。会社法では、募集株式の引受人は、払込期日または払込期間内に出資の履行をすることとされています。


増資の場合、通常は株主総会の決議で決定した払込期日に、会計上、増資の仕訳を行ないます。変更登記は払込期日から2週間以内に行なうため、事業年度末に登記上の資本金がまだ変更されていないことがありますが、法人税法上は原則として払込期日に資本金が増加するものとして取り扱うとされています。たとえば、3月決算法人が次のように増資したとします。

払込期日:3月25日
変更登記日:4月5日
決算日:3月31日

この場合、登記が4月5日であっても、会計上は3月25日に増資が行なわれています。

そのため、法人税上の事業年度末資本金は、原則として増資後の金額で判定することになります。


減資の場合は「効力発生日」に資本金が減少する

減資の場合も、登記日ではなく効力発生日が重要です。


減資を行なうには、株主総会決議に加え、債権者保護手続などが必要になります。そのうえで、株主総会で定めた効力発生日に減資の効力が発生します。


減資の場合、株主総会決議や債権者保護手続等を経て、総会で決定した効力発生日に会計上、減資の仕訳を行ない、効力発生日から2週間以内に変更登記を行なうとされています。


そして、法人税法上の資本金が減少する日は、変更登記の日ではなく効力発生日です。たとえば、次のようなケースです。

3月決算法人減資前の資本金:1億5,000万円
減資後の資本金:7,000万円
減資の効力発生日:3月25日
変更登記日:4月5日決算日:3月31日

この場合、登記が4月5日であっても、3月25日に減資の効力が発生しています。

したがって、3月31日の事業年度末時点では、法人税上の資本金は7,000万円として判定されます。


決算日前に効力発生日を迎えるかが重要

増資・減資を行なう場合、中小企業向け税制の適用可否を考えるうえでは、事業年度末までに資本金の増減が会計上反映されているかが重要です。


特に減資の場合、決算日までに効力発生日を迎えているかどうかで、当期から中小企業向け税制を適用できるかが変わる可能性があります。


たとえば、3月決算法人が資本金1億5,000万円から7,000万円へ減資する場合でも、効力発生日が次のどちらかで結論が変わります。

ケース1:効力発生日が3月25日
 → 3月31日時点では資本金7,000万円
 → 当期末では1億円以下として判定

ケース2:効力発生日が4月1日
 → 3月31日時点では資本金1億5,000万円
 → 当期末では1億円超として判定

このように、同じ減資でも、効力発生日が1日違うだけで、その事業年度の税務上の判定が変わる可能性があります。


決算対策として減資を検討する場合には、会社法上の手続期間、債権者保護手続、公告期間、登記スケジュールを踏まえて、余裕をもって進める必要があります。


資本金1億円以下でも使えない制度がある

減資により資本金が1億円以下になっても、すべての中小企業向け制度が自動的に使えるわけではありません。


措置法上の優遇措置は、資本金が1億円以下であっても、大企業並みの所得を得ている「適用除外事業者」、つまり過去3年間の平均所得が15億円を超える法人は対象から除外されています。


また、国税庁の案内でも、措置法上の中小法人について、適用除外事業者または通算法人に該当するものは、中小企業者等の法人税率の特例の対象から除かれるとされています。

そのため、減資により形式上は資本金1億円以下になったとしても、次のような点を確認する必要があります。

  • 適用除外事業者に該当しないか

  • 資本金5億円以上の大法人による完全支配関係がないか

  • グループ通算制度の通算法人ではないか

  • 制度ごとの中小企業者要件を満たすか

  • 事業年度終了時点の資本金が本当に1億円以下か


法人税率の軽減にも注意

中小法人向け税制の代表例が、法人税率の軽減です。


国税庁の法人税率の案内によると、普通法人の基本税率は23.2%ですが、資本金1億円以下の普通法人など一定の法人については、年800万円以下の所得金額に対する税率について軽減措置があります。なお、令和7年4月1日以後開始事業年度では、所得金額が年10億円を超える事業年度について、年800万円以下の部分に適用される税率が17%となる旨も案内されています。


このように、法人税率は資本金だけでなく、所得金額や制度改正の影響も受けます。

「資本金を1億円以下にすれば、必ず15%になる」と単純に考えるのは危険です。適用除外事業者や大法人支配などの要件により、15%ではなく19%や23.2%になる場合もあります。


貸倒引当金制度への影響

資本金1億円以下になることで、貸倒引当金制度の適用を検討できる場合があります。


国税庁は、一括評価金銭債権に係る貸倒引当金について、期末一括評価金銭債権の帳簿価額に貸倒実績率を乗じて繰入限度額を計算する方法を示しています。


ただし、貸倒引当金制度についても、対象法人の範囲を確認する必要があります。資本金1億円以下であっても、大法人による完全支配関係がある場合などには制限を受けることがあります。


減資後に貸倒引当金の繰入れを検討する場合には、単に資本金だけでなく、法人税法上の対象法人に該当するかを確認しましょう。


減資は税務だけで判断しない

減資は税制上のメリットがある一方、会社法上・会計上・金融実務上の影響もあります。

たとえば、次のような点です。

  • 株主総会決議が必要

  • 債権者保護手続が必要

  • 官報公告や個別催告が必要になる場合がある

  • 登記手続が必要

  • 財務諸表の表示に影響する

  • 金融機関や取引先からの信用面に影響する可能性がある

  • 外形標準課税や地方税への影響を確認する必要がある

  • 中小企業向け税制の要件を制度ごとに確認する必要がある


特に、資本金を1億円以下にする減資は、税務メリットが注目されやすい一方で、外部から見た会社の信用力や資本政策にも関係します。


税務上の効果だけでなく、会社全体の経営判断として検討する必要があります。


実務上のチェックポイント

増資・減資を行なう場合には、次の点を確認しましょう。


1. 事業年度終了時点の資本金はいくらか

中小企業向け税制では、事業年度終了時点の資本金を基準にする制度が多いため、決算日時点の金額を確認します。


2. 増資の払込期日はいつか

増資の場合、登記日ではなく、原則として払込期日に資本金が増加します。決算日前に払込期日を迎えているかを確認しましょう。


3. 減資の効力発生日はいつか

減資の場合、登記日ではなく、効力発生日に資本金が減少します。決算日前に効力発生日を迎えているかが重要です。


4. 登記簿と会計上の資本金が一時的にズレていないか

払込期日や効力発生日から登記までにはタイムラグがあります。決算日付近では、登記簿上の資本金と会計上の資本金が一時的に異なることがあります。


5. 適用除外事業者に該当しないか

過去3年間の平均所得が15億円を超える法人は、措置法上の一部優遇措置から除外されます。


6. 大法人による完全支配関係がないか

資本金5億円以上の大法人に完全支配されている法人などは、中小企業向け特例が制限されます。


7. 制度ごとの要件を確認しているか

法人税率、貸倒引当金、投資税制、賃上げ促進税制など、制度ごとに対象法人の要件が異なります。


8. 会社法上の手続きに問題がないか

減資では債権者保護手続などが必要です。税務上の適用時期に間に合わせるためにも、スケジュールを早めに確認しましょう。


よくある誤解

  • 登記が完了しないと税務上の資本金は変わらない

誤りです。増資では原則として払込期日、減資では効力発生日に会計上の資本金が変動し、法人税上もその時点で判定します。登記日は必ずしも判定日ではありません。


  • 決算日前に減資決議をすれば当期から中小企業税制が使える

減資決議だけでは足りません。債権者保護手続などを経て、決算日前に効力発生日を迎えているかが重要です。


  • 資本金1億円以下ならすべての中小企業向け税制が使える

資本金1億円以下でも、適用除外事業者、大法人支配、通算法人などに該当すると、使えない制度があります。


  • 減資すれば必ず税負担が下がる

税制上の効果はありますが、所得金額、株主構成、地方税、外形標準課税、金融機関対応、会社法手続きなども含めて検討する必要があります。


まとめ

増資や減資により資本金が変動した場合、中小企業向け税制の判定で用いる資本金は、事業年度終了時点の額で判断することが多くあります。このとき、法人税上は商業登記上の変更日だけでなく、会計上の資本金の額を基準に考えます。


増資の場合は、原則として株主総会等で定めた払込期日に資本金が増加します。変更登記が決算日後になったとしても、払込期日が決算日前であれば、事業年度末の資本金は増資後の金額で判定することになります。


一方、減資の場合は、株主総会決議や債権者保護手続を経て定められた効力発生日に資本金が減少します。変更登記が決算日後であっても、効力発生日が決算日前であれば、事業年度末の資本金は減資後の金額で判定します。


ただし、資本金が1億円以下になっても、適用除外事業者や大法人支配などに該当する場合には、中小企業向け優遇措置を受けられないことがあります。


増資・減資を税務対策として検討する場合には、登記日だけでなく、払込期日、効力発生日、事業年度末、株主構成、所得規模、制度ごとの要件を総合的に確認しておきましょう。


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【この記事の執筆者】

安田 亮(公認会計士・税理士)

安田亮公認会計士・税理士事務所 代表

京都大学経済学部在学中に公認会計士試験に合格。有限責任 あずさ監査法人、株式会社神戸製鋼所での実務経験を経て、2018年に神戸市で独立。

現在は、中小企業から上場企業に対する税務顧問、決算支援、税効果会計、連結決算、新リース会計基準への対応、組織再編、補助金・助成金に関する支援などを行なっています。また、金融機関や大手企業が運営する税務・会計・経営分野のWebメディアにおいて、記事の執筆・監修にも携わっています。

事務所ブログでは、税制改正や会計基準、経営実務に関する情報を、専門用語をできるだけかみ砕き、経営者や経理担当者の方に役立つ形で解説しています。

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