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経理・決算業務のBPOとは?メリット・デメリット・リスク・活用方法を公認会計士が解説

  • 執筆者の写真: 安田亮
    安田亮
  • 21 時間前
  • 読了時間: 14分

こんばんは!代表の安田です。


  • 経理人材の採用が難しい

  • 決算期になると残業が増える

  • 担当者が退職すると業務が止まりそうになる

  • 会計基準や税務の専門論点に対応できる人材が社内にいない。


こうした悩みを抱える企業は少なくありません。


近年、経理・決算業務のBPO、つまり外部委託を検討する企業が増えています。

BPOとは、Business Process Outsourcingの略で、企業の業務プロセスを外部の専門事業者に委託することをいいます。経理、人事、総務、ITなどのバックオフィス業務では、古くから活用されてきた手法です。


特に経理・決算業務は、BPOとの相性がよい業務といえます。

なぜなら、経理業務には、仕訳入力、支払処理、請求書発行、入金消込、決算整理、連結決算、開示書類作成など、一定の会計知識と業務フローに基づいて反復的に行われる業務が多いからです。


一方で、経理・決算業務は会社の財務情報を扱う重要業務です。安易に外部へ丸投げすると、品質低下、ノウハウ喪失、情報漏洩、委託先依存といったリスクが生じます。


本日は、経理・決算業務におけるBPOの基本、メリット・デメリット、委託できる業務、導入時のリスク、目的別の活用方法、成功のポイントを、公認会計士の視点からわかりやすく解説します。


BPOとは何か

BPOとは、企業の業務プロセスを外部の専門事業者に委託することです。


単なる一時的な外注ではなく、継続的な業務プロセスそのものを外部の力を使って運用する点に特徴があります。バックオフィス業務では、経理、人事、総務、IT、カスタマーサポートなどでBPOが活用されています。


経理・決算業務におけるBPOとは、会社が自社で行なっている経理処理や決算作業の一部または全部を、外部の専門事業者に委託することです。


たとえば、仕訳入力、支払処理、請求書発行、経費精算チェック、月次決算、四半期決算、連結決算、開示書類作成、監査対応資料の作成などが対象になります。


なお、税務申告書の作成、税務相談、税務代理については税理士法上の制限があるため、委託先が税理士または税理士法人であるかなど、法令面の確認が必要です。


なぜ経理・決算業務はBPOと相性がよいのか

経理・決算業務は、BPOと相性がよい業務です。


理由の1つ目は、反復継続する業務が多いことです。

仕訳入力、支払処理、請求書発行、入金消込、経費精算チェックなどは、毎月同じような手続を繰り返す業務です。このような業務は、マニュアル化や標準化がしやすく、外部委託に向いています。


理由の2つ目は、会計基準や税法に基づく共通ルールがあることです。

経理業務は会社ごとの違いもありますが、会計処理の基本的な考え方は、会計基準や税法に基づいています。そのため、一定の専門知識を持つ外部事業者が対応しやすい領域です。


理由の3つ目は、専門性を外部から補完できることです。

上場会社やIPO準備会社では、連結決算、開示、税効果会計、退職給付会計、金融商品会計、減損会計など、専門的な論点が発生します。社内に専門人材を常時確保するのが難しい場合、外部の専門家を活用することは有効です。


理由の4つ目は、経理部門の価値を高められることです。

経理業務には、単純な処理業務と、経営判断に役立つ分析業務があります。定型業務を外部に委託することで、社内経理人材を業績管理、経営分析、資金繰り、予算管理、意思決定支援などの付加価値の高い業務に集中させることができます。


経理BPOのメリット

経理BPOのメリットは、大きく6つあります。


1つ目は、人的リソース不足への対応です。

経理人材の採用は簡単ではありません。特に、決算実務、連結決算、開示、税務、監査対応まで対応できる人材は限られています。

BPOを活用すれば、自社で多くの経理人員を抱えなくても、外部の専門チームを活用できます。突然の退職や人事異動で経理業務が止まるリスクも下げられます。


2つ目は、業務の安定性向上です。

BPO事業者は、複数人で業務を担当し、マニュアルやレビュー体制を整備していることが多いため、属人化リスクを低減できます。


3つ目は、業務品質の向上です。

専門事業者のノウハウやチェック体制を活用することで、処理ミスや属人的判断のばらつきを減らせる可能性があります。


4つ目は、残業時間の削減です。

経理業務は、月次・四半期・年度決算のタイミングに業務が集中します。決算作業の一部を外部委託すれば、繁忙期の残業や休日出勤を抑えやすくなります。


5つ目は、専門性の補完です。

社内に専門家がいない会計論点について、外部の公認会計士や会計専門家のレビューを受けられる体制を作ることができます。


6つ目は、経理業務の変革です。

会計システム刷新、DX、シェアードサービス化、業務フロー統一などのタイミングでBPOを活用すれば、単なる外注ではなく、経理機能全体の再設計につなげることができます。


経理BPOのデメリット

一方で、BPOにはデメリットもあります。


まず、業務品質が委託先に左右されます。

BPO事業者の能力、経験、体制、担当者の理解度が不十分な場合、期待した品質が得られないことがあります。特に、自社のビジネスへの深い理解が必要な業務を外部化すると、社内担当者による補完が必要になる場合があります。


次に、効率化したつもりが、かえって手間が増えることがあります。

外部委託をすると、業務指示、資料送付、質問対応、確認作業、進捗管理など、これまで社内では意識していなかった業務が発生します。業務設計が不十分だと、外部委託したのに社内負担が思ったほど減らないことがあります。


また、自社内にノウハウが蓄積されにくくなります。

委託した業務については、自社で実際に処理する機会が減るため、社内人材のスキルとして残りにくくなります。将来、業務を内製化したくなった場合や、委託先を変更する場合に困る可能性があります。


さらに、情報管理の問題もあります。

経理業務では、財務情報、取引先情報、従業員情報、給与情報、未公表の業績情報など、機密性の高い情報を扱います。外部に情報を渡す以上、情報漏洩リスクや委託先の内部統制評価が重要になります。


BPOで委託できる具体的な経理業務

経理・決算BPOで委託できる業務は幅広いです。

日常経理業務では、仕訳伝票入力、仕訳チェック、支払処理、請求書発行、入金消込、固定資産判定、マスタメンテナンス、経費精算チェックなどが対象になります。


単体決算では、決算整理仕訳の作成、勘定残高確認、財務諸表レビュー、増減分析、決算報告資料の作成、決算タスクや進捗管理などが考えられます。


連結決算では、連結パッケージ作成、連結修正仕訳、グループ内取引・債権債務消去、連結精算表作成、連結キャッシュ・フロー計算書作成、連結財務諸表レビュー、IFRSコンバージョンなどがあります。


開示書類作成では、注記作成、有価証券報告書、四半期報告書、決算短信、計算書類、事業報告、統合報告書、IR資料、英文財務諸表などが対象になることがあります。


監査対応では、監査提出資料の準備、監査質問対応、会計論点整理なども委託可能です。

業績管理では、業績管理数値の集計、管理資料作成、予算・計画数値作成なども対象になります。


ただし、すべてを外部に出せばよいわけではありません。企業のビジネスを深く理解したうえで判断が必要な業務は、社内に残す方が望ましい場合があります。


BPO導入時のリスク

BPO導入時には、リスクを理解しておく必要があります。


1つ目は、サービス品質に関するリスクです。

導入当初から期待した品質が確保できないケースもあれば、当初は品質が高かったのに、担当者変更や時間の経過により品質が低下するケースもあります。

このリスクを下げるには、契約前に委託業務の性質、難易度、必要な専門性、委託先の体制を十分に確認することが重要です。また、担当者が変わっても品質を維持できるよう、マニュアル、引継ぎ計画、レビュー体制を整備する必要があります。


2つ目は、コストに関するリスクです。

導入時に安すぎる金額で契約すると、後で追加報酬が必要になったり、品質を維持できなくなったりする可能性があります。安さだけで選ぶのではなく、業務量、工数、難易度、繁忙期対応、レビュー体制を踏まえて、適正な報酬水準を設定することが大切です。


3つ目は、自社内ノウハウ低下のリスクです。

BPOにより社内の業務知識が失われると、決算書の内容を説明できない、会計論点の検討が漏れる、委託先変更時に対応できないといった問題が起こります。最低限の知識を持つ人材を社内に残し、委託先へ質問できる関係を作ることが必要です。


4つ目は、情報漏洩リスクです。

BPO事業者に会計システムのIDを付与したり、請求書や契約書を共有したりする場合、情報管理体制の確認が不可欠です。秘密保持条項、アクセス権限、PCセキュリティ、書類管理、定期的な確認を整備しましょう。


5つ目は、過度な依存リスクです。

委託先に何らかの問題が起きた場合、自社の経理業務が止まる可能性があります。自社にも一定のノウハウを残す、業務マニュアルを共有する、重要業務について代替手段を用意するなどの対策が必要です。


6つ目は、地政学リスクです。

海外のオフショア拠点を活用する場合、政治情勢、戦争、規制、災害、通信障害などにより業務継続が難しくなる可能性があります。BCPの観点から、委託先の拠点やバックアップ体制を確認しておく必要があります。


目的別に見るBPOの活用方法

BPOは、導入目的によって活用方法が変わります。


コア業務への集中が目的であれば、社内に残す経理機能を、分析、経営報告、意思決定支援などに絞り、日常経理から決算業務まで広い範囲を外部化することが考えられます。この場合、コスト削減よりも、本業成長のための投資としてBPOを位置づけます。


人的リソース不足への対応が目的であれば、退職者や異動者が担当していた業務を外部委託することが第一候補になります。外部化が難しい業務であれば、別の社内人材の業務を外部化し、その人材が不足業務を引き継ぐという方法もあります。


働き方改革が目的であれば、決算業務のBPOが有効です。決算整理仕訳、財務諸表レビュー、増減分析、連結決算、開示書類作成など、繁忙期に集中する業務を外部化すれば、残業削減につながります。


コスト削減が目的であれば、定型業務をニアショアやオフショアに移管することが選択肢になります。ただし、コスト重視の場合、専門性やコミュニケーション品質が低下する可能性があるため、自社側の管理体制が重要です。


専門性の補完が目的であれば、会計論点、決算レビュー、連結決算、開示、IFRS、税効果会計などに強い専門家を抱えるBPO事業者を選ぶことが有効です。


経理業務の変革が目的であれば、会計システム刷新、DX、業務フロー統一、シェアードサービス化とあわせてBPOを検討します。この場合、単なる外注先ではなく、経理機能を一緒に再設計できるパートナーを選ぶことが重要です。


BPOを成功させるポイント

経理BPOを成功させるには、まず目的を明確にすることが重要です。

コスト削減をしたいのか、残業を減らしたいのか、人材不足を補いたいのか、専門性を補完したいのか、経理機能を変革したいのかによって、委託すべき業務範囲も、選ぶべき事業者も変わります。


次に、委託業務の範囲を明確にすることです。

どの業務を委託し、どの業務を社内に残すのか。資料の受け渡しは誰が行うのか。レビューは誰が行なうのか。会計論点の最終判断は誰が行うのか。監査対応の窓口は誰か。

このような役割分担を曖昧にすると、導入後に混乱します。


さらに、マニュアルと業務フローの整備も必要です。

BPO導入は、単に人を外部に置き換えるだけではありません。業務を外部に説明できる状態にする必要があります。その過程で、社内業務の属人化や非効率が見えることもあります。


また、委託先とのコミュニケーション設計も重要です。

定例ミーティング、質問ルール、資料共有方法、進捗管理、エスカレーションルール、繁忙期対応などをあらかじめ決めておきます。


最重要事項は信頼関係

経理・決算BPOで最も重要なのは、委託元企業とBPO事業者との長期的な信頼関係です。

経理業務は、どの会社にも共通する部分があります。


しかし、取引内容、業務フロー、社内文化、経営者の考え方、現場との関係、監査人とのやり取りは会社ごとに異なります。


そのため、BPO事業者には、単に手続きを処理するだけでなく、委託元企業のビジネスや組織文化を理解し、同じ目標に向かって協働する姿勢が求められます。


一方、委託元企業も、BPO事業者を単なる外注先として扱うのではなく、経理・決算業務を安定的に遂行するためのパートナーとして関係を築く必要があります。


実務では、想定していなかった論点やイレギュラー対応が必ず発生します。

そのときに、契約書だけを盾にして硬直的に対応するのではなく、双方が協力しながら解決していける関係があるかどうかが、BPOの成否を分けます。


中小企業・IPO準備会社にもBPOは有効か

経理BPOは、大企業だけのものではありません。


中小企業やIPO準備会社にとっても、有効な選択肢です。

中小企業では、経理担当者が1人または少人数であることが多く、担当者の退職や病気で業務が止まるリスクがあります。BPOを活用すれば、日常経理や月次決算の安定化につながります。


IPO準備会社では、経理体制の整備、月次決算の早期化、監査対応、内部統制、開示準備が必要になります。社内だけで短期間に体制を整えるのが難しい場合、外部の専門家を活用することは現実的です。


ただし、IPO準備会社では、すべてを外部に任せればよいわけではありません。上場後も自社で財務数値を説明し、監査法人や投資家と対話できる体制が必要です。そのため、BPOを使いながらも、社内に経理責任者や会計判断を担う人材を置くことが重要です。


実務で確認すべきチェックポイント

経理・決算BPOを検討する際には、次の点を確認しましょう。

  • BPO導入の目的は明確か

  • コスト削減、人材不足、残業削減、専門性補完など、優先順位を決めているか

  • 委託する業務と社内に残す業務を整理しているか

  • 会計判断や経営判断が必要な業務まで外部化しようとしていないか

  • 委託先の経験、専門性、体制、レビュー体制を確認しているか

  • 業務マニュアルや業務フローを整備しているか

  • 社内に最低限の経理ノウハウを残す設計になっているか

  • 情報管理体制、アクセス権限、秘密保持を確認しているか

  • 委託先に過度に依存しないバックアップ体制があるか

  • 報酬水準が業務量や難易度に見合っているか

  • 定例会議やエスカレーションルールを決めているか

  • 委託先を長期的なパートナーとして見られるか


BPOは、導入して終わりではありません。運用しながら改善していくことが大切です。


まとめ

経理・決算業務のBPOとは、会社の経理業務や決算業務の一部または全部を、外部の専門事業者に委託することです。


経理業務は、反復継続する手続が多く、会計基準や税法に基づく共通ルールがあり、専門性も求められるため、BPOと相性がよい業務です。


BPOのメリットには、人的リソース不足への対応、業務安定性の向上、業務品質の向上、残業時間削減、専門性の補完、経理業務の変革などがあります。


一方で、業務品質が委託先に左右される、自社内にノウハウが蓄積されにくい、情報漏洩リスクがある、委託先に過度に依存するリスクがある、といったデメリットやリスクもあります。


重要なのは、BPOの目的を明確にすることです。コア業務への集中、人的リソース不足、働き方改革、コスト削減、専門性補完、経理業務変革のどれを主目的にするかによって、委託範囲や委託先選定の基準は変わります。


また、BPOは単なる外注ではありません。経理・決算業務を安定的に遂行するためには、委託元企業とBPO事業者が長期的な信頼関係を築き、同じ目標に向かって協働することが不可欠です。


経理人材不足、決算早期化、IPO準備、働き方改革、経理DXに課題を感じている会社は、自社の課題を整理したうえで、経理・決算BPOの活用を検討してみる価値があります。


神戸での起業や開業に関するご相談、確定申告にお困りの方、顧問税理士をお探しの方は安田亮公認会計士・税理士事務所までお問い合わせください




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【この記事の執筆者】

安田 亮(公認会計士・税理士)

安田亮公認会計士・税理士事務所 代表

京都大学経済学部在学中に公認会計士試験に合格。有限責任 あずさ監査法人、株式会社神戸製鋼所での実務経験を経て、2018年に神戸市で独立。

現在は、中小企業から上場企業に対する税務顧問、決算支援、税効果会計、連結決算、新リース会計基準への対応、組織再編、補助金・助成金に関する支援などを行なっています。また、金融機関や大手企業が運営する税務・会計・経営分野のWebメディアにおいて、記事の執筆・監修にも携わっています。

事務所ブログでは、税制改正や会計基準、経営実務に関する情報を、専門用語をできるだけかみ砕き、経営者や経理担当者の方に役立つ形で解説しています。

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