新リース基準のFL判定|「残価保証額」ではなく「残価保証支払見込額」で現在価値基準を判定
こんにちは!代表の安田です。
新リース会計基準は、2027年4月1日以後に開始する連結会計年度および事業年度の期首から強制適用されます。
新基準では、借手についてファイナンス・リースとオペレーティング・リースを区分せず、原則としてすべてのリースを貸借対照表に計上します。一方、貸手については、従来どおりファイナンス・リースとオペレーティング・リースを区分します。
こうした新リース会計基準を踏まえ、令和7年度税制改正に係る改正法人税基本通達では、法人税法上のリース取引の判定方法が明確化されました。
実務上、特に注意したいのが、現在価値基準における残価保証の取扱いです。
新リース会計基準を適用する借手では、契約上の「残価保証額」そのものではなく、実際に支払うと見込まれる「残価保証に係る支払見込額」をリース料に含めて判定します。
本記事では、新リース会計基準と法人税法上のファイナンス・リース判定の関係、現在価値基準・経済的耐用年数基準、残価保証支払見込額の取扱いについて、税理士が分かりやすく解説します。
今回の改正ポイント
今回の取扱いを整理すると、次のとおりです。
項目 | 内容 |
対象 | 法人税法上のリース取引の判定 |
主な根拠 | 法人税基本通達12の5-1-3 |
フルペイアウト要件 | 現在価値基準または経済的耐用年数基準で判定 |
現在価値基準 | 会計リース料の現在価値が原資産の現金購入価額のおおむね90%以上 |
経済的耐用年数基準 | 会計リース期間が原資産の経済的耐用年数のおおむね75%以上 |
残価保証の取扱い | 借手が支払うと見込む金額を会計リース料に含める |
従来との違い | 契約上の残価保証額ではなく、残価保証支払見込額を使用 |
最も重要なポイントは、次の違いです。

契約書に記載された残価保証額と、会計上見積もった支払見込額が異なる場合、現在価値基準の判定結果にも影響する可能性があります。
ファイナンス・リースとは
貸手の会計処理では、新リース会計基準の適用後も、リースを次の2つに区分します。
区分 | 一般的な内容 |
ファイナンス・リース | 解約不能かつ、原資産の経済的利益とリスクが実質的に借手へ移転するリース |
オペレーティング・リース | ファイナンス・リース以外のリース |
ファイナンス・リースに該当するためには、一般に次の2つの要件を満たす必要があります。
解約不能要件
フルペイアウト要件
解約不能要件とは、中途解約が禁止されている、または事実上解約できないことをいいます。
フルペイアウト要件とは、リース期間中に、原資産の取得価額や維持管理費など、原資産への投資額のおおむね全額を、借手が支払うリース料によって回収できることをいいます。
法人税法上のリース取引も2つの基準で判定
法人税では、今後も資産の賃貸借を「リース取引」と「賃貸借取引」に区分して所得金額を計算します。
新リース会計基準で借手の多くのリースがオンバランスされるからといって、そのすべてが法人税法上のリース取引になるわけではありません。
改正法人税基本通達では、フルペイアウト要件について、次のいずれかに該当すれば要件を満たすことが明らかにされました。
現在価値基準
賃貸人または賃借人の会計リース料の現在価値が、原資産の現金購入価額のおおむね90%以上である場合です。
経済的耐用年数基準
賃貸人または賃借人の会計リース期間が、原資産の経済的耐用年数のおおむね75%以上である場合です。ただし、原資産の特性、経済的耐用年数の長さ、中古市場の有無などを考慮した結果、現在価値が90%を大きく下回ることが明らかな場合は除かれます。
判定のイメージ

これまで税務上は経済的耐用年数基準の取扱いが明確ではありませんでしたが、今回の通達改正により、現在価値基準だけでなく、経済的耐用年数基準による判定も明示されました。
「賃借人の会計リース料」に含まれるもの
現在価値基準では、借手である賃借人の「会計リース料」の範囲が重要になります。
会計リース料には、主に次の金額が含まれます。
会計リース料に含まれるもの | 内容 |
固定リース料 | 契約上固定されているリース料 |
指数・レート連動の変動リース料 | 指数や金利等に応じて変動するリース料 |
残価保証支払見込額 | 残価保証により借手が支払うと見込む金額 |
購入オプションの行使価額 | 行使することが合理的に確実な場合 |
解約違約金 | リース期間に解約オプションの行使を反映している場合 |
このうち、実務上とりわけ注意が必要なのが「残価保証に係る賃借人による支払見込額」です。
残価保証とは
残価保証とは、リース終了時の原資産の価値が一定額を下回った場合に、その不足額を借手などが負担する契約です。
例えば、リース終了時の残価を500万円と保証する契約で、実際の資産価値が300万円となった場合、契約内容によっては借手が差額200万円を支払います。
残価保証があることで、貸手はリース終了時の資産価値の下落リスクを一定程度抑えることができます。
旧基準と新基準で残価保証の取扱いが異なる
旧リース会計基準では、リース料総額に、契約で定められた残価保証額を含める取扱いとされていました。
これに対し、新リース会計基準では、契約上の残価保証額の全額を含めるのではありません。借手がリース終了時に実際に支払うと見込む金額を見積もり、その支払見込額を借手のリース料に含めます。
項目 | 旧リース会計基準 | 新リース会計基準 |
基準となる金額 | 契約上の残価保証額 | 借手による残価保証支払見込額 |
見積りの要否 | 原則として契約額を使用 | 将来の支払額を見積もる |
リース料への算入額 | 残価保証額 | 支払うと見込む金額 |
現在価値基準への影響 | 契約額を含めて判定 | 見込額を含めて判定 |
税務上の現在価値基準についても、この新リース会計基準の考え方が踏襲されています。
残価保証額5,000、支払見込額3,000の場合
具体例で確認してみましょう。
契約上の残価保証額が5,000であるものの、リース終了時の原資産の見込価値などを踏まえ、借手が実際に支払うと見積もった金額が3,000であるケースです。
この場合、新リース会計基準を適用する企業では、5,000ではなく、3,000を賃借人の会計リース料に含めます。

したがって、現在価値基準は、次の金額を基礎として判定します。

契約上の残価保証額5,000をそのまま使用する場合と比べると、現在価値は小さくなります。その結果、90%基準を満たすかどうかの判定が変わる可能性があります。
数値例で確認
次のようなリース契約を想定します。
項目 | 金額 |
原資産の現金購入価額 | 10,000 |
固定リース料等の現在価値 | 8,600 |
契約上の残価保証額 | 500 |
残価保証支払見込額の現在価値 | 300 |
新基準では、契約上の残価保証額500ではなく、支払見込額の現在価値300を加算します。
8,600+300=8,900原資産の現金購入価額10,000に対する割合は、89%です。
8,900÷10,000=89%この例では、現在価値基準の「おおむね90%以上」を満たすかどうかについて、契約条件や原資産の性質も含めて検討する必要があります。
仮に契約上の残価保証額500をそのまま使用すると9,100となり、割合は91%です。
8,600+500=9,100
9,100÷10,000=91%残価保証額と支払見込額のどちらを使用するかによって、判定結果が逆転する可能性があることが分かります。
残価保証支払見込額はどのように見積もるか
実務上は、リース終了時の原資産の価値と、契約上保証している残価との差額を基礎として、借手が負担すると見込まれる金額を見積もることになります。
検討資料としては、次のような情報が重要になると考えられます。
確認資料 | 確認する内容 |
リース契約書 | 保証額、精算方法、借手の負担範囲 |
原資産の中古市場データ | リース終了時の予想売却価額 |
過去の売却実績 | 同種資産の残価実績 |
使用状況 | 稼働時間、走行距離、損耗の程度 |
保守・修繕計画 | 資産価値への影響 |
市場環境 | 技術革新、陳腐化、需要変動 |
外部評価資料 | 鑑定、査定、メーカー見積り等 |
見積額には判断が伴うため、算定根拠を社内資料として保存しておくことが重要です。
見積りが変わった場合にも注意
残価保証支払見込額は、契約締結時に一度決めれば終わりとは限りません。
原資産の市場価値、使用状況、技術的陳腐化などによって、将来の支払見込額が変動する可能性があります。
ただし、見積りを変更した場合に税務上のリース取引判定をどのように取り扱うかについては、添付資料では詳しく触れられていません。
実際の処理に当たっては、新リース会計基準・適用指針、法人税基本通達、今後公表される国税庁の情報などを確認する必要があります。
借手と貸手で判定に使う会計リース料が異なる可能性
改正法人税基本通達では、現在価値基準について、賃貸人または賃借人それぞれの会計リース料を基礎として判定します。
そのため、借手と貸手でリース料に含める項目や見積りが異なる場合には、現在価値の計算結果が一致しない可能性があります。特に残価保証については、借手側では支払見込額を用いる一方、貸手側では貸手の会計リース料の定義に基づく計算が必要です。
契約当事者間で、次の事項を確認しておくことが望ましいでしょう。
残価保証条項の内容
リース終了時の精算方法
購入オプションの有無
解約オプションと違約金
指数・レート連動のリース料
リース期間の判定
原資産の現金購入価額
経済的耐用年数
新リース基準を適用する企業の実務対応
新リース会計基準を適用する企業は、リース契約を単に会計上オンバランスするだけでなく、税務上の取扱いも並行して確認する必要があります。
<実務チェックリスト>
確認項目 | 実務上のポイント |
契約の特定 | リースに該当する契約を網羅的に抽出する |
解約不能要件 | 中途解約条項と違約金を確認する |
現在価値基準 | 会計リース料の現在価値を計算する |
経済的耐用年数基準 | リース期間と経済的耐用年数を比較する |
残価保証 | 契約額と支払見込額を区別する |
購入オプション | 行使が合理的に確実か検討する |
変動リース料 | 指数・レートに連動する部分を確認する |
税務区分 | 法人税法上のリース取引か賃貸借取引か判定する |
証拠資料 | 見積根拠と判定過程を保存する |
会計上のリース負債計算と、法人税法上のリース取引判定は関係しますが、同じではありません。「会計上オンバランスしたため、税務上もリース取引になる」と機械的に判断しないことが重要です。
まとめ
令和7年度税制改正に係る改正法人税基本通達では、法人税法上のリース取引におけるフルペイアウト要件について、現在価値基準と経済的耐用年数基準の取扱いが明確化されました。
現在価値基準では、賃借人の会計リース料の現在価値が、原資産の現金購入価額のおおむね90%以上かどうかを判定します。
この会計リース料には、残価保証がある場合、契約上の残価保証額そのものではなく、借手が実際に支払うと見込む残価保証支払見込額を含めます。
例えば、契約上の残価保証額が5,000でも、借手の支払見込額が3,000であれば、現在価値基準に含めるのは3,000です。
残価保証額と支払見込額の差が大きい場合、現在価値基準の判定結果が変わる可能性があります。
新リース会計基準の適用に当たっては、契約書の確認だけでなく、残価の見積り、原資産の市場価値、リース期間、購入・解約オプションなどを整理し、会計・税務の双方から判定することが重要です。
神戸での起業や開業に関するご相談、確定申告にお困りの方、顧問税理士をお探しの方は安田亮公認会計士・税理士事務所までお問い合わせください!
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【この記事の執筆者】
安田 亮(公認会計士・税理士)
安田亮公認会計士・税理士事務所 代表
京都大学経済学部在学中に公認会計士試験に合格。有限責任 あずさ監査法人、株式会社神戸製鋼所での実務経験を経て、2018年に神戸市で独立。
現在は、中小企業から上場企業に対する税務顧問、決算支援、税効果会計、連結決算、新リース会計基準への対応、組織再編、補助金・助成金に関する支援などを行なっています。また、金融機関や大手企業が運営する税務・会計・経営分野のWebメディアにおいて、記事の執筆・監修にも携わっています。
事務所ブログでは、税制改正や会計基準、経営実務に関する情報を、専門用語をできるだけかみ砕き、経営者や経理担当者の方に役立つ形で解説しています。






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