フリーレントの賃料は外形標準課税の「支払賃借料」にどう計上する?付加価値割の取扱いを解説
おはようございます!代表の安田です。
オフィスや店舗などの賃貸借契約では、入居促進のため、契約開始から一定期間の賃料を無料とする「フリーレント」が設定されることがあります。
例えば、1年間の賃貸借契約だが、最初の1か月は賃料無料という契約です。
このようなフリーレント契約について、令和7年度税制改正に伴う法人税基本通達の改正により、一定の場合には、賃料総額をフリーレント期間を含む賃借期間全体で按分して、各事業年度に損金算入する取扱いが設けられました。
では、外形標準課税の付加価値割を計算するときの「支払賃借料」はどうなるのでしょうか。
結論として、法人税で按分処理を行なう場合には、法人税上の損金算入時期に合わせて、外形標準課税の支払賃借料にも算入します。
本記事では、フリーレント契約における法人税と外形標準課税の関係を具体例を交えて解説します。
フリーレントとは?
フリーレントとは、不動産の賃貸借契約において、一定期間の賃料を無償とする契約です。
例えば、
契約期間:1年間
1月:賃料無料
2月~12月:毎月120
という契約であれば、1月がフリーレント期間となります。
借手にとっては契約当初の賃料負担を抑えられる一方、税務上は、「実際に賃料を支払う月だけ費用にするのか」「契約期間全体にわたって按分するのか」という論点があります。
法人税ではフリーレント賃料の「按分処理」が可能に
令和7年度税制改正に伴い新設された法人税基本通達12の5-3-2では、一定のフリーレント契約について、新しい取扱いが設けられました。
課税上の弊害があるものを除き、損金経理を要件として、賃料総額をフリーレント期間を含む賃借期間全体で按分し、各事業年度に損金算入することができます。
<イメージ>
例えば、
賃借期間:12か月
フリーレント:1か月
残り11か月の賃料:各月120
とします。
賃料総額は、120 × 11か月 = 1,320です。
これを12か月で按分すると、1,320 ÷ 12か月 = 110/月となります。
つまり、実際には賃料を支払わない1月についても、税務上は110を含めて各月に按分するイメージです。
外形標準課税の付加価値割とは?
外形標準課税の対象法人では、法人事業税について所得だけでなく、
付加価値額
資本金等の額
などを基礎として税額を計算します。
このうち付加価値割では、付加価値額の計算上、
報酬給与額
純支払利子
純支払賃借料
などが関係します。
今回問題となるのが、このうちの支払賃借料です。
支払賃借料は「法人税で損金となるもの」が前提
外形標準課税上の支払賃借料には、法人が土地や家屋の賃借権等の対価として支払う金額が含まれます。
フリーレント期間のある契約の賃料も、この支払賃借料に該当します。
そして重要なのが、支払賃借料は、その事業年度の法人税の所得計算上、損金の額に算入されるものであることが前提とされている点です。
そのため、法人税でフリーレント契約について按分処理をした場合には、「法人税上の損金算入額=付加価値割上の支払賃借料に反映する額」という関係になります。
フリーレント期間も支払賃借料に含まれる
ここは実務上、特に注意したいポイントです。
フリーレント期間は実際の現金支払いがないため、「1月は賃料を払っていないので、付加価値割の支払賃借料もゼロでは?」と考えたくなります。
しかし、法人税で按分処理を採用している場合には、そうではありません。
外形標準課税の支払賃借料は、現金を実際に支払ったタイミングではなく、法人税上の損金算入時期に合わせて計上します。
具体例|1月フリーレント、2月~12月は毎月120
具体例で確認してみましょう。
3月決算法人が、次の賃貸借契約を締結したとします。
項目 | 内容 |
賃借期間 | X年1月~12月 |
フリーレント | X年1月 |
2月~12月の賃料 | 毎月120 |
賃料総額 | 1,320 |
契約期間 | 12か月 |
按分後の月額 | 110 |
賃料総額1,320を12か月で割ると、1か月当たり110です。
<X年3月期の法人税>
3月決算法人ですので、X年3月期に含まれるのは、
1月
2月
3月
の3か月です。
したがって、「110 × 3か月 = 330」を法人税上の損金に算入します。
<X+1年3月期の法人税>
残りは4月から12月までの9か月です。
したがって、「110 × 9か月 = 990」を次の事業年度の損金に算入します。
付加価値割の「支払賃借料」も330と990
外形標準課税も、法人税の損金算入時期に合わせます。
したがって、支払賃借料として計上する金額は次のとおりです。
事業年度 | 法人税の損金算入額 | 付加価値割の支払賃借料 |
X年3月期 | 330 | 330 |
X+1年3月期 | 990 | 990 |
合計 | 1,320 | 1,320 |
つまり、実際に払った金額をそのまま付加価値割へ入れるのではなく、法人税上で各事業年度に損金となる按分額を、支払賃借料へ反映するという処理になります。
「現金支払額」と「支払賃借料」は一致しないことがある
今回の事例では、X年3月期の実際の賃料支払額を単純化すると、
1月:0
2月:120
3月:120
ですので、合計240となります。
一方、法人税上の按分処理では330を損金算入します。
その結果、
項目 | X年3月期 |
実際の賃料支払額 | 240 |
法人税上の損金 | 330 |
付加価値割の支払賃借料 | 330 |
となります。
このように、フリーレント契約では、キャッシュベースの支払額と外形標準課税上の支払賃借料が一致しないケースがあります。
法人税と付加価値割を別々に集計しない
外形標準課税の申告では、会計データから支払賃借料を集計することがあります。
その際、家賃の振込額だけを抽出して支払賃借料を集計すると、フリーレント契約について法人税上の按分処理とずれが生じる可能性があります。
今回の取扱いを前提とすると、フリーレント契約については、
法人税上の賃料損金算入額を確認
その損金算入時期に合わせて
付加価値割の支払賃借料へ反映
という順番で確認すると分かりやすいでしょう。
経理実務ではフリーレント契約を別管理するとよい
フリーレント契約が複数ある会社では、通常の月額賃料と同じように集計すると、事業年度ごとの支払賃借料を誤る可能性があります。
例えば、次のような管理表を用意しておくと整理しやすくなります。
管理項目 | 内容 |
物件名 | ○○オフィス |
賃借期間 | X年1月~12月 |
フリーレント期間 | X年1月 |
契約賃料総額 | 1,320 |
按分月額 | 110 |
当期損金算入額 | 330 |
翌期損金算入額 | 990 |
付加価値割への反映額 | 法人税損金と同額 |
外形標準課税の申告時だけではなく、決算時点でこの情報を整理しておく方が効率的です。
貸手側は「受取賃借料」の計上時期にも注意
今回の取扱いは借手だけではありません。
フリーレント期間のある賃貸借契約について、貸手が法人税上、賃料を一定の方法で益金算入する場合には、外形標準課税上の「受取賃借料」についても法人税の益金算入時期に合わせて計上します。
<借手・貸手を比較>
立場 | 法人税 | 付加価値割 |
借手 | 賃料を損金算入 | 同時期に「支払賃借料」へ |
貸手 | 賃料を益金算入 | 同時期に「受取賃借料」へ |
したがって、不動産賃貸業を行う外形標準課税対象法人についても確認が必要です。
フリーレント契約で確認したいポイント
実務上は、次の事項を確認するとよいでしょう。
チェック項目 | 確認内容 |
フリーレント | 無償期間があるか |
賃借期間 | 契約全体の期間 |
賃料総額 | 契約期間全体でいくらか |
法人税処理 | 按分処理を採用しているか |
損金経理 | 通達の要件を満たしているか |
課税上の弊害 | 通達適用上の問題がないか |
外形標準課税 | 対象法人か |
支払賃借料 | 損金算入時期に合わせているか |
貸手の場合 | 受取賃借料も確認したか |
よくある疑問
Q. フリーレント期間は付加価値割の支払賃借料がゼロですか?
A. 法人税で賃料総額を契約期間に按分して損金算入する場合には、フリーレント期間についても按分額が法人税上の損金になります。そのため、外形標準課税でも、その損金算入額を支払賃借料としてカウントします。
Q. 実際に支払った賃料をそのまま支払賃借料にすればよいですか?
A. 必ずしもそうではありません。外形標準課税上の支払賃借料は法人税の所得計算上損金に算入されることが前提であるため、法人税の損金算入時期に合わせて計上するとされています。
Q. 法人税のフリーレント按分処理には条件がありますか?
A. 資料では、課税上弊害があるものを除き、損金経理を要件として、賃料総額をフリーレント期間を含む賃借期間にわたって按分する取扱いが示されています。
Q. 貸手側の付加価値割も同じですか?
A. 貸手についても法人税上の益金算入時期に合わせて、付加価値額の計算上の「受取賃借料」に算入するとされています。
まとめ
フリーレント契約について、令和7年度税制改正に伴う法人税基本通達の改正により、一定の場合には、賃料総額をフリーレント期間を含む賃借期間全体で按分し、各事業年度に損金算入する取扱いが設けられています。
そして、外形標準課税の付加価値割における「支払賃借料」も、この法人税上の損金算入時期に合わせて計上します。
したがって、
フリーレント期間だから支払賃借料がゼロとは限らない
実際の現金支払額と支払賃借料が一致しないことがある
法人税上330を損金算入すれば、付加価値割でも330を支払賃借料へ算入
貸手側も益金算入時期に合わせて受取賃借料を計上
という点が重要です。
外形標準課税対象法人がフリーレント契約を締結している場合には、実際の家賃支払額だけから支払賃借料を集計せず、法人税上の賃料の損金算入額と整合しているか確認することが重要です。
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【この記事の執筆者】
安田 亮(公認会計士・税理士)
安田亮公認会計士・税理士事務所 代表
京都大学経済学部在学中に公認会計士試験に合格。有限責任 あずさ監査法人、株式会社神戸製鋼所での実務経験を経て、2018年に神戸市で独立。
現在は、中小企業から上場企業に対する税務顧問、決算支援、税効果会計、連結決算、新リース会計基準への対応、組織再編、補助金・助成金に関する支援などを行なっています。また、金融機関や大手企業が運営する税務・会計・経営分野のWebメディアにおいて、記事の執筆・監修にも携わっています。
事務所ブログでは、税制改正や会計基準、経営実務に関する情報を、専門用語をできるだけかみ砕き、経営者や経理担当者の方に役立つ形で解説しています。






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